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【戦士】カエディステラ=M=グレイハチェットの引き籠り

「落ち着いて。さぁ、あなたが賜った新たな天職は?」


「……戦……士……?」


 今回の予知夢も直ぐに誰のものか直ぐに判った。しかし、彼女の夢を今の段階で見る事になるとは全く想定していなかった。


 彼女は頑丈な椅子に腰を下ろした状態で【職審官】による『天職進化の儀』を自室で受けていた。立てば2m以上ありそうな巨躯。全身重装甲を身に纏い、フルフェイスの兜の隙間から眼光が光っているような……そんな描写がされていた。


 声は変声機を通したような、鈍く低い男性の声なのに女の子口調のため違和感が全力で仕事をしている。


 彼女はレイアール王国の第一王女、カエディステラ=M=グレイハチェット。かなり優秀なユニットな上、簡単に仲間に加える事ができるので存在が知られてからは効率厨には大人気。RTA走者には移動力の問題とレベル1から育てなければならないという手間から好まれてない。俺のようなヌルゲー育成厨には最初こそ無視されていたものの、エンディングが動画でアップされるようになってからは愛でられるようになった遅咲きの正統派ヒロインの1人である。


「おい、【職審官】。本当にコイツが【戦士】を賜ったのか確認しろ。これは王命だ」


「は、はい!」


 数秒の沈黙の後、


「……はい、カエディステラ王女様は確かに【戦士】の天職を賜っております」


 再び数秒の沈黙。


「そうか……よりによってコイツが……はぁ……あ~、ご苦労」


 一応という感じで【職審官】に労いの言葉を掛けると不機嫌な気持ちを隠す様子も無く部屋から出ていく。


 【職審官】も役目を終えると、怯えるように一礼して部屋から出ていく。


「お疲れ様でした」


 入れ替わりで女性が入って来る。頭部以外を甲冑に身を包んだ騎士の女性。それとメイド姿の女性。


「疲れた~。まさか【戦士】を賜るなんて思わなかったよ~」


「そうですか? 姫様はむしろ【戦士】しかないと思われますが……では、私も戻ります」


 そう言うと、騎士の女性も部屋を出て行き、メイドと2人きりになる。


「国王様まで来るとは思いませんでした」


「本当にね」


 そう思うのも無理はなく、後で知るけど彼女と国王は血が繋がっていない。彼女は第三王妃の娘ではあるのだが、連れ子。国王は継父ということになるのだが、国王は夜の店で王妃に一目惚れ。通い詰めて口説き落とし、「娘も迎えてくれるなら」という条件付きで王女になったのだが……今でもカエディステラに愛情は全く無いんだよな。




 視界が暗転する。……ちょうどカエディステラの家族関係の事を考えていたからか、過去の

話のイベントムービーのようだ。


「……わたしの母は今でこそ第三王妃と呼ばれているけれど、王妃になる前は当然平民で天職も【娼妓師】。港湾都市プエルトリトスにある娼館の娼婦だった」


 カエディステラの本来の声によるナレーションと共にモノクロの映画風に娼館が映し出されるが、今だから客観的に思い出すと色々配慮された内容でちゃんと娼館だと判るようになっているのが凄いなと今だからこそ思った。


「ようこそ、王子様」


「部屋に女を集めろ。気に入った奴だけ残す……まずは品定めだ」


「仰せのままに」


 狭い部屋に若い女性が30人程並べられる。


「お前とお前……それとお前だ」


「……狭い部屋に集められた女性達。王子に選ばれた最後の娼婦。それが後の第三王妃……わたしの母だった。母にとってはお客様の1人。しかし王子は大変気に入って母の買取りを希望する」


 ナレーションの後、視界が早送りになっていく。


 その間も店へ頻繁に通っている王子。当時、王子の身分だった男は父である国王には逆らう事ができず、彼女を城に招くことができず。国王の命令で王子は国一番の豪商の娘を第一王妃に迎える。


「……国王健在の間は娼婦を妻として迎える事はできず、その間に第一王妃と結婚する。しかし、王妃が欲したのは権力と地位のみで王子の事は興味がなかった……そんなだから愛は育まれることは無く、王子は持て余した性欲で国王のメイドに手を出して妊娠させてしまう。国王に厳しく罰せられた後にメイドは第二王妃として当時の王子に嫁ぐことになった」


 女性の王族へ嫁いだ義務として、第一王妃も既に懐妊されており、第一王妃、第二王妃共に元気な男の子を産む。


 ……そして月日が流れ、前国王の急死。死因は一応病死。その真偽は不明……。


「迎えに来たぞ……」


 勢いよく娼館に金を持って現れた王子……新国王だが、娼婦は既に娼館を辞めており、彼女の家まで迎えに行って見たものは、生まれたての子供を抱く元娼婦だった。


「王子様……いえ、国王様、着任おめでとうございます」


「あぁ……迎えに来た。城に来て欲しい。待たせた私が悪いのは承知している。相手の男にも金を払おう。だから、私のモノになれ」


 彼女は数秒考えた後、


「国王様、わたしは娘を愛しております。もし、国王様が娘も受けいれて下さるなら、貴方の元へと向かいましょう。ですが、断られるなら……」


「……わかった。お前の要望は全て受け入れる」


 このやりとり、実は裏がある。実父も実は女好き。しかも、店に来て生まれて初めての行為をした結果、妊娠させてしまったという。まだ若い、子供のような男にとっては負担以外の何者でもなかった。……そういった背景があって彼女は男に人生をやり直して貰うために別れたのだという。


「約束ですよ? 娘ともども宜しくお願いします。それと夫……元夫の保証も……」


「任せておけ。国王に不可能はない」


 ……初見の時は、最低な国王に最低な王妃だと思ったけれど、今は複雑な気分だった。




 視界が暗転し、今度のシーンは城の中。また別のクエスト内のイベントムービーのようだ。


「パパぁ」


 高級な可愛らしい服に身を包み、腰まである緑色の髪、大きな橙色の瞳をした幼女が少しふくよかになった国王の元へ笑顔で歩み寄る。


 しかし、そんな幼女を侮蔑の眼差しで視認すると、フイッと視線を逸らし無視して通り過ぎてしまう。


「パパ……」


 遠ざかる国王の後ろ姿を見つめるカエディステラの耳に信じられない怒声が届く。


「おいっ! あの不細工なガキを私に近づけさせるな!」


「……も、申し訳ありません」


 多分、国王が幼いカエディステラに直接口撃したり、実際に接触しなかったりしたのは、後に第三王妃を怒らせないためだったのだと思う。


 実は、それから国王は『天職進化の儀』に立ち会うまでの間、一度も会っていない。誕生日ですら祝う事も無い。他の子供はパーティが開かれているのに。


 差別はそれだけでなく、彼女だけは部屋が離宮になった。もちろん、城への出入りは禁止されていない。逆に離宮へ誰かが向かう事も禁じられていない。それでも、自分が極端に嫌われている事は自覚していた。


 ……ある日。


「ねね、見て?」


 カエディステラ付きのメイドに当時6歳のカエディステラは頭に兜を装備していた。それはサリットと呼ばれるモノで口元以外を全て隠すタイプの兜だ。腰まである髪も全て兜の中に入れてご機嫌にクルクル回って見せる。


「ひ、姫様、それは?」


「見つけたの! 可愛いよね!」


「そ、そうですね」


 どう見てもメイドさんの顔は引きつっているのだが、6歳の幼女はそれに気づかない。……そして、それ以降は誰も彼女の素顔を見る事ができなくなった。……別に呪いの兜だったとかではなく、彼女が自主的に被り、素顔を見せなくなっただけって話なのだが。


 ……仲間に加わった彼女の通称は一時期『○ボコップ』になっていたっけ……。


 時間が経過して10歳になったカエディステラ。成長期を迎えた彼女の姿は重装甲な巨躯になっていた。まさに『天職進化の儀』のシーンで出た時の状態。


「わぁ、快適ね!」


「そうですね。ただ、その大きな体でその声は変かもしれないですね。変声機でも装着しますか?」


 後にそれが、カエディステラの急成長による声変わりと呼ばれるようになる。




 レイアール国王には4人の子供がいる。上から2人は男子、残りは女子。しかし、【剣の乙女】が仲間にできるユニットはその4人の王子達の中で1人、カエディステラだけだ。そんなカエディステラの物語は他の3人が抱える問題に接して一番扱いの酷かった彼女が他の3人を救う物語だ。


 ……だが、俺の場合の問題は「どうやって仲間に迎えるか?」という件。


 視界が暗転する。見た目が変わらないので直ぐにはどのシーンか判らなかったけど、部屋に入ってきた人物で直ぐに理解した。


「カエディステラ姫、初めまして」


「ようこそ、レイアール王国へ。お噂は聞いております、【剣の乙女】様」


 彼女の声はもちろん変声機を通した鈍い声になっている。


「ここは、城内の離宮。わたしの部屋があるだけで何もありません。もし、迷われたなら目的地まで案内させますよ?」


 この台詞が出た後、複数の選択肢が現れる。1つは「離宮も見て回りたい」、あとは「※※へ向かいたい」、最後に「仲間にお誘いしたい」……というもの。


 ここでカーソルを「仲間にお誘いしたい」を選ぶ。


「本気ですか? ……解りました。支度をしますので少々時間を頂けますか? 【剣の乙女】様が城から出る時に、合流致します」


 カエディステラがそう答えると、彼女の部屋から強制退出させられて二度と入ることができなくなる。


 【剣の乙女】達が城内探索を終えた後、城を出たところで呼び止められる。


「……はぁはぁ、お待たせしました。よろしくお願いします」


「えーっと?」


「カエディステラです」


 この時に『邪竜討伐軍』の面々が全員驚く。面会したのは主人公だけだっていうのに。


 彼女の姿は公式資料で身長152センチ。髪や瞳の色はサリットと呼ばれる兜によって隠れて確認する事はできない。身体には【重戦士】のような装備をしているが、彼女はただの【戦士】であり、武器は片手鎚で反対の手にはタワーシールドを装備している。


 あまりの身長差と声の違いに【剣の乙女】は戸惑っていたが、カエディステラも理解したようで、サリットの上を撫でる。


「部屋で見た、あの身体はフェイクですから!」


 まぁ、本来は疑わしさ全開なのだが……ステータス表示で本人だと直ぐに判るからね。




 視界が暗転した……と思いきや、どうやら目が覚めた。もちろん、時間的には早すぎだ。


 周囲の連中には目覚めた事がバレているはずだが、声を掛けてこない……微睡む時間がある事を理解してくれているのか、それとも起床時間ではないから放置してくれているのか……?


 ユニーク職が【剣の乙女】しか存在しない『竜騎幻想』の世界では、カエディステラがユニット内では最強の防御力を誇っていた。


 彼女は装備脱着不可能扱いのフルプレート装備に身を包んでいて、その防御力も普通に購入できる装備より高い防御力を持っている。タワーシールドは外すことはできるが、外す意味がないし、武器は片手装備であれば何を持たせても大丈夫。盾さえ外さなければ【重戦士】に進化するし、逆に【重戦士】以外に進化することはできない。


 彼女の場合は耐久力だけでなく筋力も成長しやすいので切り込み隊長には丁度良いユニットなため、効率厨には特に御用達ユニットとなっていて、邪竜王との最終決戦のマップでも出撃率は高い。


 欠点は、育成が【戦士】のレベル1からなので手間が掛かる事くらいだろうか?


 育成時間は多少必要かもしれないが、適当に戦わせても死に難い。味方があっさりトドメを刺さない限り確実に経験値を稼ぐことができる。


 レギュラーとして考えているのであれば自然とレベルは上がり、育ち切ってしまえば敵陣に突っ込ませても死ぬことがほぼ無い。……もちろん、魔法対策をちゃんとした上での話だけど。


 そういえば、最少ユニット数によるクリアとかやってる人もカエディステラを入れていたと思う。それくらい強力なユニットだ。


 ちなみに彼女もエンディングは全3種類発見済み。人気キャラは発見される確率も高いというもの。動画もアップされていて最初は動画で見たんだよな。


 動画で見る前までは、変声機のせいで男か女か判らなかったし、あの巨躯だったら可愛くないし。育成して何が楽しいんだ? ……って状態だったからスルーしていたんだよな。




 ちなみに『邪竜討伐軍』に誘わない場合やバッドエンドの場合は無理矢理婚姻させられてしまうというモノ。元々国の女性に権利は少ない上に政治的価値以外ない彼女には見向きされる事も無く、婚姻後も1人、あの離宮に引き籠り続けるというもの。


 ノーマルエンドはレイアール王国初代女王として君臨する。養父である国王を倒して代わりに国を治める。腹違いの兄2人と妹の存命はクエストの進行次第で変わるけれど、カエディステラ本人はともかく、レイアール王国は救われたエンドで終わる。


 グッドエンドは国王が倒され、第一王子が国王を継いで少しずつ男尊女卑や術士差別を混乱しない程度に緩和していく政治を行う約束をしつつ、カエディステラはオーアホージャの冒険者ギルドで親友と共にウェイトレスをしているというもの。


 グッドエンドのイベント時に【剣の乙女】の剣でサリットが縦にパカッと割られてしまう。その時は後ろ姿なのだが、現実なら彼女の素顔をもしかしたら確認できるかもしれない。

読んで頂きありがとうございました。

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何卒よろしくお願いします。

尚、5日間連続投稿1日目+本日中にあと3回投稿します!

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