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レイアール王国への船旅が始まって直ぐに訪れる招かれざる来訪者と後悔

「……海で遊びたかった……」


 ……何故、水着が存在しないの? ありえないでしょ?!


 わたし達はレイアール王国へ向けての船旅へ出発したばかりだけど、今回は全く遊ばせて貰えなかった事が不満だった。


「海で何をするんですか? 武器や防具が錆びるだけです。それに暑い」


「まぁ、そうだよね」


 オイファルの素直な感想に、常識的な意味で同意しかなかった。だって、海で遊ぶ文化が無いんだもん。


 ……水着が無ければ作っちゃえば良い! ……なんて思った時期がわたしにもありました。


 海で遊ぶ文化が無ければ、水着があったとて海で遊ぼうという発想にはならないんだよね。


「それに、同じ暑いなら海なんかよりココの方が良くありません?」


「確かに」


 今、甲板の上はわたし達にとっての楽園と化していた。


 甲板では仲間達が鍛錬を行っている。……暑いので薄着で。


 特に今回、ユーキャレスとトモカルズが仲間なってくれた事がわたし的には眼福だった。


「いくぞ、トモ!」


「来い、ユーキャン!」


 【剣豪】ユーキャレスの剣は【格闘家】トモカルズの剣に受け流された瞬間、素早い動きでトモカルズはユーキャレスの背後に回ってバックドロップをする。


 プロレスは全く知らないけれど、流石にバックドロップくらいは知っている。


 ……うん、痛そうだけど……ほぼ裸の男同士が密着しているのは素晴らしいね!


「よい景色だね」


「ですね~」


 多分、オイファルもわたしと同じ気持ちに違いない。


 ユーキャレスは礼儀正しく真面目に見えるけど変な人で、トモカルズは冗談が好きで悪ノリ大好きだが実は周囲への気配り上手で優しすぎる人である。


 ……『竜騎幻想』の有名人2人を仲間にできて良かった。ゲームで動いている所は見た事ないけど。


 他にも高身長だが影の薄い美青年【軽戦士】タクトゥーヤとかアユミュルトに匹敵する男の娘な【騎士】ツバフィサゴ。他にも【修道士】や【話術士】といった女装の似合う男の子を仲間に加え、今回はホクホクだった。


「次の町に着いたら、3人分の女の子の服を買わないと……」


「付き合いますよ、ムッチ様」


 ムフフと2人でニヤニヤしていると、急に雲が増えてきたかと思ったら雨が降り始め、雷が鳴り始めた。


「キャッ!」


「オイちゃん、大丈夫? 船の中に入りま……って、ゴメン。1人で入っていて」


 彼女を船内に入るように促している間に、別の船が迫ってきていた。


「みんな、海賊船だ!」


 船員が叫ぶ。


「船員の皆さんは船内に避難を! みんな、戦う準備を!!」


 雷鳴に打ち消されないように声を張ると「おう!」と各々戦闘準備に入る。


 ……全く、男達が鎧を着始めてしまったじゃない! 折角の楽園を潰して……ゆるさん!


「接舷してくるぞ!」


 矢や魔法が飛んで来る。


「敵、サハギン、ボーンゴーレム各種、あと海の中にマーマンが!」


 【学者】ダイラースが〈アナライズ〉の結果を告げると同時に敵が船に乗り込んできた。




 海上でのサハギンとマーマンは強い。実はアックアイル王国へ向かっていた時も襲われていた。その時は死にそうになった人が何人もいて圧倒的な戦力不足を痛感していた。でも、それはわたしの考えすぎという事で処理されていたんだけど……今は違う。


 相手は骨も含まれているから、咄嗟に神剣“ディフェンダー”を取り出して、近くにいるボーンソルジャーへ殴ろうとするが、慌てて退くと先程立っていた場所に矢が突き刺さった。


「あれって……」


「ボーンアーチャーだ」


 そう言って、再び降って来る矢をトモカルズが刀身で受ける。それを見て自分も真似をする。


「トモさんのそれ、“ディフェンダー”みたい」


「まぁ、この剣の名は“ディフェンダー・レプリカ”だからな……っと!」


 氷の魔法の一撃が弧を描いて落ちてきたそれをトモカルズは薙ぎ払う。


「おい、トモ! 何イチャついてやがる! お前も働け」


「……ったく、俺が居ないとす~ぐ拗ねっから。飛び道具には気を付けろ」


 そう言うと、呼んでいたユーキャレスと共に戦い始める。


「カッコいい」


 ボソッと呟く声が聞こえた。


「……オイちゃん?」


「はっ! いやぁ、ムッチ様が心配で……あはは。引っ込んでますね、頑張って!」


 ……気持ちは解る。トモカルズとユーキャレスのカップリングは大人気だったからなぁ。


 甲板の上には仲間が溢れ、順調にサハギンやボーンゴーレム類を倒している。ただ、海賊船側のボーンアーチャーや海上にいるマーマン達は攻撃できず、防戦一方だった。


「コージュガンさん、カッシュさん、ユーキヴァルトさん、タクトゥーヤさんは海賊船に乗り込んで制圧を! コーフェイルさんは魔術で援護!」


 手短に指示を出す。


「わたし、マーマンを排除しに行きます。ジューングリムさんとサイオウルさんは矢で援護お願いします!」


 そう話しながら神剣“ディフェンダー”を格納し、狂飆剣“テンペストエッジ”と氷刃剣“アルマス”を持って海に向かって跳ぶ。


 左手に構えた狂飆剣“テンペストエッジ”を振って風の力で落下が一瞬止まると右手に構えた氷刃剣“アルマス”を振って海面を凍らして、そこに着地した。


 降り立った場所はそれなりに氷の厚みがあり、戦闘したくらいなら割れそうにない。その氷に捕まったマーマン族を斬っていく。左手の狂飆剣“テンペストエッジ”はタイミングを見て格納する。……二刀流で戦うとか無理だしね。


「見つけたぞ! お前が本物の【剣の乙女】か!」


 海賊船の上から男の声が聞こえた。


 ……本物? 偽物がいるとか?


「おい、マーマン達、その女を……って、おい、やめろ!」


 金属のぶつかる音が聞こえる。その間にわたしはマーマン達を倒し続ける。


 氷に囚われていたマーマン達を全て倒す。マーマン族は水属性に耐性があると聞いたけど、もちろん個体差はある。倒せなくとも動きを封じるくらいは出来たので流石は氷刃剣“アルマス”ね。


 ゴゴゴゴゴ。


 海賊船が動き出す。それを見たサハギン達が撤退する。マーマン族も戦域を離脱していく。


「……勝った?」


 思った以上にあっけない勝利で苦戦した経験から我ながら信じられなかった。


 バサバサと羽ばたきの音と共にペガサスが船から降りてくる。もちろん、乗っている人もいるわけだけど。


「ムッチさん、終わりましたよ。迎えに来ました」


「ツバ君、ありがとうございます」


 ……あぁ、可愛い……。


「後ろに乗って下さい」


 そう言ってツバフィサゴはわたしに手を差し出され、その手を取ると引っ張り上げて貰った。


 ……ロープを下ろしてくれるだけで良かったんだけど、優しいからなぁ。


 ペガサスには申し訳ないと思いながらも飛んで貰い、船の上に着陸する。


「2人乗せるのは重かったよね、ありがとう」


 言葉は通じなくてもペガサスに礼を言い、もちろんツバフィサゴ君にも礼を言う。


 重傷者も無く快勝でき、鍛錬の成果がでた事に内心ホッとしていた。




「ふぅ、サッパリした」


「お待ちしてましたよ、ムッチ様」


 普段ならまだ甲板にいる時間帯ではあったが、返り血を浴びてシャワーを浴びてしまった為に部屋に戻る。


「来るときの海賊団との戦闘と比べて、随分余裕ができましたね」


「うん。わたしが戦えるようになったからというのも大きいと思う」


 今日使った神剣“ディフェンダー”、氷刃剣“アルマス”、狂飆剣“テンペストエッジ”と出番は無かった香木剣“ミストルテイン” 閃光剣“ライトブリンガー”の5本の剣の使い方を特訓したから、わたしの戦力は格段にアップした。


 今まで強い人達に倒せる寸前まで追い詰めて貰って、わたしがトドメを刺す形で経験値を稼がせて貰っていた。しかし、レベルが上がっても強くなっているように思えなかった。


 問題の転機はレベルクラウンの仲間が現れて、【職審官】を訪ねた事で、その方法ではステータスは全く上がらないと断言され、自分で1から戦うようになった。


「やっぱり『大氷穴』での経験は大きかったですね」


「そうだね。ウサギ相手で死闘になるとは思わなかった」


 ……初めて『大氷穴』へ入った際に白いウサギが大量に現れて、うっかり触りに行ったから死にそうになったんだよね……。


「今回の件は勉強になりました。知識としては知っていたのですが問題が発生するとは思っていなかったので」


「わたしなんて知識も知らなかったよ」


 身体を鍛える努力を怠って経験値だけを得てしまうと、レベルだけ上がってしまって身体能力が上がらない。言われてみれば当然な話だけど、この世界はレベルで能力を保障されていると思っていたから、レベル上がれば関係ないと思っていた。でも、そうじゃなくてレベルの高い人は既にそれだけの努力と研鑽を積んでいたという事を懇々と説教された。


「やらないよりはマシだから、今から鍛錬をしっかりしなさいって言われたから頑張るけどね」


「その成果が剣の力を引き出せたってわけですね」


 引き出したというと凄い努力をしたように聞こえるけど、実際は剣と向き合っただけという……少し考えれば解る程度の事だったり……。


「ま、まぁね」


「実際、周囲の無人島を巡るだけでも苦労しましたからね。そのリスクが減っただけでも軍の成長だと思います」


「優しいなぁ」


 ……実際のところ、軍の戦闘力のアップはわたしをお守りする役割が不要になったことで戦力が増強しただけだと思う。


「今後は極力経験値入手速度を落として、その分鍛錬する方向にシフトしないと最弱のレベルクラウンになっちゃう」


「ムッチ様なら大丈夫ですよ」


 ……とは思えないんだよ。


「その根拠として、ちゃんとリヴァイアサンに会えたじゃないですか」


「……『水霊王の古祠』の場所、見つけるの大変だったよね」


 本当に場所の特定に時間が掛かった。海上に長く居ることで敵との遭遇率も高くて不利な水中戦とかもしなきゃならなくて、『大氷穴』の時もそうだったけど、何度も戻って回復してから再突入してっていうのを繰り返したからね。


「泳ぎが得意な人がいて良かったですね」


「それだって、だいたいの場所を知っている人の話を聞けた事も大きいでしょ」


 ……もし、場所の目星も付かなかったらと思うとゾッとする。それと、魔法は科学のようなモノだと改めて実感した。




 『水霊王の古祠』は海底にある遺跡。この時点で泳げない人は一緒に向かう事が不可能というハードルの高いモノだった。……この世界の人は授業で水泳を学ばないし、スイミングスクールなんてものもない。水着すらない世界なんだし、泳げることは当たり前ではない。


「仮に場所が判っても素潜りで海底に辿り着くなんて不可能だし、水中呼吸の魔法は本当に助かったよ」


「水中呼吸の魔法が無かったら、海中で戦闘になった時点で終わりですね」


「本当にね」


 実際にサハギンと水中で戦闘した人が言うには呼吸は魔法で酸欠にはならないけれど、水圧とか自由に動くことが不可能で戦い難い。……下半身だけ水没しても動き難くなるのに全身なら全く動けない。


 攻撃魔法だって、当然ながら火属性や風属性は発動しないし、雷属性は味方も巻き込む。それを知るキッカケとなったサハギンとの戦闘は地獄だったわ。


「今はあの時より強くなったと思うけれど、可能な限り水中戦闘は避けたいね」


「ですね」


 オイファルも同意する。彼女としても貴重な戦力を避けられる戦闘で失うのは嫌だろうし。


「実際どうしでした? 『水霊王の古祠』の中?」


「怖かったかな……」


 中は早い水の流れの中を逆らうように進む。魔法の灯りの効果も下へ向かえば向かう程に弱くなる。地下9層に来た時とか光源の位置しか判らず、周囲は真っ暗なままだったから、頼りは〈アナライズ〉の報告だけだった。……何度壁にぶつかったか……。


「やっぱりサハギンの存在がですか?」


「それもだけど、真っ暗で敵も光源目掛けて襲ってくるの。動き難いし、途中で空中呼吸の魔法が切れたらとか考えるとゾッとするよ」


「……行かなくて良かった……」


「え?」


「いえいえ、何でもないですよ。それより、リヴァイアサンってどんな感じでした?」


「大きな鮫よ」


「……鮫?」


「そう、口の悪い鮫だったわ。大きさはトロールを丸のみできる大きさよ」


「……おぅ……」


 最初に鮫だと聞いたオイファルは全長2メートルくらいの鮫を想像したかもしれない。でも、実際は10倍くらい差があった。


「圧、凄そうですね……」


「凄いよ?」


 そう言いながらオイファルの驚き具合が面白くて思わず笑みが零れる。


「オイファルさん、大変です」


「どうしたの?」


「アヤカシアさんが船の何処にも居ないんです!」


「え?」


 【学者】のダイラースからの報告にオイファルはもちろん、わたしも硬直する。最近、話してはいないけれど、船に乗っていた事はさっき確認して間違いなかった。




 スキルで不在は確認しているけれど、アヤカシアの足取りを探る。


「荷物、置きっぱなしだね」


「そうですね。少なくとも自分の意思で……といった感じではないかもしれないです」


 一応女性の部屋という事で、わたしとオイファルだけで調べる。


「……女性もわたしとムッチ様を除けば、残り1人になってしまいましたね」


「初めは多すぎて、あまり良い印象なかったけれど……こうして残り1人になってしまうのは寂しいね……」


 3人部屋だったのに1人になったら多分寂しいと思っているんじゃないかな。


 ちなみにわたしは何処か他人事のような感覚だった。彼女とほぼ話したことが無いのと最近は戦闘において控え側に居て貰った事が大きいかもしれない。


 戦闘において経験値という概念がある以上、より強い人に経験値を集めたい。なら、現状戦力外なら経験値取得量を抑えるのは仕方ない戦略だと教えて貰った。


「アックアイル王国内で2人目ですね」


「そうだね」


 1人は離島の遺跡の罠にかかり、助けたかったけれども戦力的にこちらが全滅しそうだったために仕方なく脱出を優先したという経緯がある。


「わたし達はまだまだ弱い」


 ……厳密に言えば、わたしが弱い。


 正直、特別な天職もない女の子が戦う事に違和がある。前世の記憶が無かった頃は思いもしなかった感情。本人が希望するなら別かもしれないけれど、女の子の身体は原則非戦闘向きに作られている。魔力があるからトータル的に身体能力の差が無いことは頭で判っている。それでも、戦場は男が主役なのではないだろうかって……わたしは思う。もちろん、言葉にする気はないけれど。


「あの、ムッチ様。なんか、部屋の外がうるさくありません?」


「……何かあったのかな?」


 扉を開けて、適当に船員を捕まえる。


「何かあったの?」


「修理ですよ、船の! 戦闘で破損しているんです」


「あっ、邪魔してごめんなさい」


 慌てて扉を閉めると、船員の足音が遠ざかっていく。


 ……沈没しないよね?




 船から降りて戦っていたのはわたしだけ。戦って亡くなったのなら、遺体が船上に残る。……反対側に落ちた可能性も考えたけれど、目撃者がいない時点で可能性は低い。


 結論としては、誘拐されたという事だろう。……身代金とか要求されるのかな?


「誘拐って、あの海賊船に乗っていたヒューム男性と関係あるのかな?」


「どうでしょう? どちらにせ拉致された時点で助けようがありません」


 オイファルとそんな話をしながら食堂に入る。


「オイファルさん。大事な話があるのですが……」


「船長? どうされました?」


「……実は船のダメージが酷く、安全な航海は厳しいですね。応急処置はしましたが、何時までもつか……」


「わかりました。レイアール王国についたら検討しますので」


 ……船も限界か……。


「今後は陸路でも良いかも?」


「簡単に言いますけど……陸路って大変ですよ?」


 でも、わたし的にはもう船旅はウンザリしていて、陸路の方がマシに思えていた。

大変お待たせしました! そして、読んで頂きありがとうございました。

下にある☆☆☆☆☆から、作品への応援お願いいたします!


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33人の読者様、ブックマークして頂きありがとうございます!

続読して下さる方がいるということを励みに頑張ります!!


今月は4日から5日間にかけて前回同様に1日5回、10万文字超のボリュームを投稿します。

楽しんで頂ければ幸いです。


何卒よろしくお願いします。

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