【狩人】ハルクアルマ=スターニャ
ヴァンバードからウインドノルドに向かっている最中の野営。このタイミングかと思いつつ、これが夢だとは最初から自覚していた。
「落ち着いて。さぁ、あなたが賜った新たな天職は?」
「【狩人】です。これまで通り、細々と狩猟生活で生きて行きたいですね」
彼女の名はハルクアルマ=スターニャ。尻まである茶髪と藍色の瞳が特徴の美人さんである。身長が158センチと俺の推しの中ではそれなりに高い方ではあるが、ヒューム族女性の平均身長が155センチなので平均より少し高めという程度である。……もちろん、『竜騎幻想』の設定通りの平均身長であればの話。実際は計測して統計をとっていないだろうから判らない。
今でこそ彼女の事が好きではあるが、彼女のストーリーをちゃんと追いかける前までは顔と声は良いのに性格がクソだと思っていた。……故に人気は無い。全員が各ユニットのストーリーを追いかけるわけが無い。ただでさえプレイヤー人口は少ないのに全員のストーリーを追いかける奴は動画へのアップ目的でしかないと思うが、そういった連中でも全員分をあげている人は見たことがない。
ちなみに、ハルクアルマの動画を上げている人は知らない。……印象が悪いんだ。
視界が暗転し、教会から家に戻る途中の街中で。
「ハル」
「……」
ハルクアルマと同世代くらいの男が彼女に声をかけるが、彼女は立ち止るものの黙って男を見ている。
「成人おめでとう」
「……用件は?」
男の声は優しく、親しみがあるような感じだが、彼女の声は冷たい。まるで関わるなと遠ざけるような冷たさ。
「いや、何もないけど、そんな言い方……」
「そう、それじゃ……」
彼女はそう言うと家に入って行く。
「どうした?」
「あぁ、いや……ハルが教会から出てきたから声をかけたんだけどさ」
ハルクアルマが家に入る様子を見ていた男に別に男が近づいて声を掛けてきた。
「あ~、もう構わなきゃいいじゃん」
「でもよぉ、せっかく成人したのに誰にも祝って貰えないって可哀想じゃね?」
「普通はそうだけど、アイツはスレ過ぎ。どれだけ可愛くてもアレはない。あんなのほっといて行こうぜ?」
「あぁ……」
その友人がこれ以上気にしないように男を別の場所へ連れて行く。
「……」
家の中、ハルクアルマは扉のすぐ傍でその会話を黙って聞いていた。
視界が暗転し、今度はオープニングの残り映像を飛ばしてクエストの回想イベントだ。何故判るか? ……これは全部やっているからである。
「ママは若くて可愛らしく優しくて強くて……とにかく自慢だった」
彼女の母親は16歳の時にハルクアルマを産んだ。実質、15歳の時には妊娠していたことになるが、父親は3歳年上だったらしい。……ハルクアルマの談によると、彼女は父親の顔を憶えておらず、5歳の時には既に居なかったらしい。
彼女が母親にベッタリだったのも、母子家庭だったからかもしれない。
母親は狩猟を仕事にしており、森に入っては魔獣を仕留め、肉や毛皮等を売って生計を立てていた。
当然ながら、幼い娘だけに留守番させるわけにもいかず、ハルクアルマも幼い頃から森で動物の生死を見て育った。
「ママは大きな魔獣も仕留めるし、生きている者は命を頂いて生きているということ教えてくれた。ママは憧れで自慢だった。だけど……」
ここからアニメ―ションに切り替わる。
「ハルちゃん、ショーヤハトさんよ。ご挨拶してね」
「……こんにちは」
「初めまして、ハルちゃん。仲良くしてね」
ある日、彼は我が家に来た。彼女の継父だ。当時、ハルクアルマは9歳。この継父は17歳と若く、彼が母親とどういった経緯で知り合ったのか、そして何時の間に結婚するような仲になったのかは描写されない。……つまり、ハルクアルマの居ないところで愛は育まれたということになるのだが。
……彼女は彼と母親が結婚することに賛成できなかった。
「ショーくん」
「どうしたの、ハルちゃん」
「ママと結婚しちゃうの?」
「うん」
「わたしのこと、好きじゃないの?」
ショーヤハトと一緒に暮らすようになって、数日。彼はハルクアルマに認めて貰うために彼女へ愛情を注いだ。その結果、彼女はショーヤハトを異性として好きになってしまった。同世代の男の子より優しくて頼りがいがあって、甘えさせてくれる彼に特別な感情が芽生えてしまったことは、彼の誤算だった。
「もちろん、大好きだよ。でも、ママのことが好きなんだ」
「なんで? どうして?」
「ごめんね」
彼はハルクアルマの髪を優しく撫でる。でも、その接し方は小さい子供に対するソレで、既に9歳になっていた彼女には若干不服だったかもしれない。……それでも嬉しいと思ってしまう辺り、彼女自身が悔しそうでもあった。
視界が一瞬黒くなるが、別のシーンに移動するわけでなく……アニメーションが続く中で一度黒くなるんだよな。
「おめでとう!」
数日後、母親とショーヤハトは教会で結婚した。
「(正直、今でも別の人と結婚して欲しかったけれど……幸せそうなママを見たら何も言えないよ……)」
本来であれば、幸せな3人家族……いや、家族はもしかしたら増えたかもしれない。でも、少しずつ歯車は狂い、幸せな時間は続かなかった。
場面が暗転し『3年後』の文字が表示される。続きのように見えなくもないが別のクエストの回想シーンだ。
「ねぇ、ハル。近くの泉まで出かけないか?」
「ハル、菓子を作ったんだ。一緒に食べよう」
歳の近い男がハルチェルカをチヤホヤする。多分歳の近い男はみんな夢中になっていたかもしれない。小さな村の中ではあるけれど、彼女は母親に似て美しく成長していた。まだ12歳ではあるが、身体は立派な大人と大差無かった。
「ゴメン。泉には行かないし、お菓子は太るから要らない。……でも、ありがとね」
そういって、男達にウインクする。
思春期男児は可愛い女の子に甘い。モテたいがために簡単には怒ることもできなかった。
ハルチェルカも含め、「優しくする」と「甘やかす」の違いを理解できない輩が多かったせいで、彼女は男を内心馬鹿にしていた。
ただ、怒ることができないのは男だけで。
「……なんか、ムカつかない?」
「だよねぇ」
女子達はわざと聞こえるように悪口を言う。
「なら、わたしと同じことすれば良いんだよ。男なんて馬鹿なんだから簡単だよ?」
厄介なのがハルクアルマは「自分は可愛い」という自信と自覚があった。
「……行こう?」
「そうだね」
女子達は侮蔑の眼差しでハルクアルマを見ると、何処かへ行ってしまう。
「(雑魚だわ)」
……まぁ、彼女の性格は悪い。でも、それを指摘してくれる友人がいないことを彼女自身は気付いていないし、友達は居なくても問題ないし、面倒だとも思っていた。
こんな風になってしまったのは全て家庭環境に起因する。
夜暗くなってから家に帰宅するとショーヤハトが玄関で待っていた。
「帰って来るのが遅すぎる。もっと早く帰って来なさい」
「ごめんね! 次は気を付けるからさ」
「……全然反省してないよね?」
「もう、わかったから。お腹減った~」
あれだけ大好きだったショーヤハトのいう事は聞かない。好意も無い……とは思う。断言はできないが、描写している様子からは無いように見える。
「あれ? ママは?」
「まだ帰ってきていない。そろそろ帰って来ると思うんだけど……」
彼女は狩りに森へ行っていた。彼女の仕事は一定数の魔獣や野獣を狩り、人の暮らす集落へ近づけさせない事。でも、それでも普段であれば夕飯前には帰ってきていた。
……結局、ハルクアルマの母が家に帰って来ることは二度と無かった。
再び視界が暗転し、別のクエストのイベント。
場所は村の墓地。
ハルクアルマの母親は森で死んでいた。死因は獣に襲われて出血死。遺体を発見したのはショーヤハトだったが、その遺体も欠損が激しくハルクアルマは悲しみよりも気持ち悪さが勝ってしまった。
遺体は火葬され、墓地には母親の墓が新しく追加された。
ショーヤハトは彼女の墓前で泣いていた。だが、ハルクアルマは大好きだった母親のはずなのに、泣くことも無く、ただ墓前を見ていた。葬儀が終わると、泣くショーヤハトを放置して自分だけ帰って、何も考えられずに布団で寝た。
……個人的には最初、ハルクアルマはまだ母親の死を受け入れられていないのではないかと思っていた。でも、クエストを進めると実は違うことに気づく。実は母親の結婚を機に心が離れすぎてしまったため、知人の死と同じ感覚になっていた。
端的に言うなら、『悲しいけれど、仕方ない』という感覚。……そして、後に後悔する。
翌日に目が覚めて、家に誰も居なかった。
「……誰もいないのかよ!」
文句を言いながらも適当に家の中にある食べ物を口に入れて、外へ出る。目的地は母親の墓。だけど、そこに誰も居ない。村の中を見回って、ショーヤハトの姿は無い。
「ねぇ、ショーヤハト見てない?」
「知らない。そんなことより、ウチに寄らない? 今、親がいないんだよね」
「行かない」
キッパリ断って、ショーヤハトを探しに行く。
「待て!」
「待たない。今は急いでいるから」
……今、家に1人はキツイ。アイツでも居ないよりマシ。だから探していた。
「なぁ、1人じゃ寂しいだろって言ってんの。俺が慰めてやっからさ」
「ウザい。余裕が無い時にふざけたこと言わないで。二度と話しかけんな」
腕を掴まれて、強引に振り払う。すると、彼女はビンタされた。
「頼みじゃないんだよ、命令してんだ。さっさと来い」
初めて見る男の怖さ。彼女は一瞬だけ怯んで硬直するものの、慌てて逃げる。そして、自分の家に帰って扉に鍵を掛けた。
「……何なの? わたしが何をしたっていうの? ありえない!」
家の中で怒りをあらわにすると、自分の部屋に向かい、ベッドに転がった。
目が覚める。きっと時間は起きるには早いだろう。
何故確認できないか? ……それは、起きたと自己主張した瞬間、二度寝が不可能になるからだ。……まだ眠い間は寝たフリを続けよう。
ハルクアルマは予知夢で見たシーンのみであれば、最低な女である。実際、それを見てクエストを進めるのを辞めた人もいたくらいだし。
仲間にするのは簡単で、村にいる彼女へ話しかければ仲間になる。しかし、初期値が弱い。攻撃させても距離があると他キャラと比べて当たらなすぎる。HPが低いため、殴られれば死にかける。育てるのに苦労するのに性格が悪いのだから、相手にされない。
彼女関連のクエストを進めないと『邪竜討伐軍』内でのトラブルメーカーで、会話イベントに彼女が絡むだけで印象が悪くなる。
だから、彼女にだけは誰のイベントであろうと「ハルクアルマを仲間から外しますか?」という選択肢が出てくる。全ユニットで唯一、仲間から外すことが可能なキャラなんだよね。
……じゃあ、何故推しキャラの1人になったのか?
理由は彼女のグッドエンドを見たから。仲間から外さず、彼女関連のクエストを全部やった上で、選択をミスしなければグッドエンドに行く事は知っている。……ただ、量が少し多いし、選択肢が出現する回数も若干多め。攻略サイトなどにも途中までしか編集されていなかったから、それだけ人気もない。
ちゃんと正しく攻略すると、彼女は改心して本来の心優しい少女になるし、あんな性格になってしまった原因も描写される。彼女の心を救うことでグッドエンドに行くというストーリーなんだよね。
何故、俺がグッドエンドを知っているかというと、ノーマルエンドも報われないし、バッドエンドは更に最悪で、両方とも死亡エンド。折角の可愛い声と顔なのに可哀想だと思ったから。……このシナリオで学んだ。甘やかされて育った物欲女子は、子供限定で被害者なんだろうなって事。救われるかどうかも本人次第なんだよなぁ。
ちなみに、ハルクアルマは大切に育てると、最強の弓使いにまで成長する。特にグッドエンド確定ルートに近づくと台詞も変わり、魅力にバフが掛かる。だからこそ、彼女のルートは早めに攻略する。……快適な環境にするために。
「……主人、起きてらっしゃいますよね?」
……バレてた。
「んっ、おはよう。何かあった?」
「お時間ですよ」
サヤーチカに起こされて、もしかしたら長い事布団の中に居たのかもしれない。
「どうしました?」
「いや、予知夢みたけど……どれだけ運命が歪んでしまったのかが気になって」
他のユニット同様に、大きく人生を狂わされているかもしれないんだよなぁ。ただ、彼女の死亡エンドが回避できるなら、多少の運命の歪みは許容しても良い気はした。
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