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悪夢と共に振り返る、サクリウスの前世の死因

「……んっ……もう朝か?」


 寝ぼけていて視界が定まっていない中、明るいことに気づいたが、あまり寝た気がしない。


 ……今、何時だろう?


 そんな事を考えながら起き上がり、時間を確認しようとして違和に気づいた。


「あ~、夢か」


 何故か直ぐに理解できた。それも夢だからかもしれない。そして、夢故に起きたら忘れている可能性すらある。


 ……何故気付いたか?


 それは目の前に広がる光景が前世のモノだから。今の環境に比べれば、素晴らしく恵まれた環境だ。自分の部屋にはテレビもゲーム機もパソコンもある。本箱にはコミックやライトノベルが並んでいて、受験生としてはツッコミを入れざるを得ない部屋である。


 ……夢の中とはいえ、前世の部屋。ここなら『竜騎幻想』を遊べるのでは?


 そう考えた瞬間に意識が覚醒した。カレンダーと時計を見て、今が3月。時間は9時を把握。この時間に学校に行っていない時点で春休み設定なのかもしれない。テレビを付ければ何日か把握できそうだが、そんな時間はない。いつ現実に戻るかわからん。


 まさに寝起きでゲームをしようと思った矢先、ガチャっと扉が開く。


「お兄ちゃん、そろそろ起き……てるね。朝御飯、そろそろ食べないと……」


 妹の杏珠が扉を開け、俺が起きていたことに驚いているようだった。


「おはよー、寝坊助君。さっさと起きないと!」


 杏珠の背後から親戚の舞歌が俺の部屋を覗く。


「あと、換気もした方が良いねぇ……ゲームの前にご飯食べている間だけでも」


「うわっ、舞歌も来ていたのか……わかった」


 ……仕方ない。ゲーム断念か。


「そうだ。頼みがあるんだけど」


 そう話してきたのは舞歌だった。


「頼み?」


「実はわたしと美鼓ちゃんで、卒業旅行を企画したんだけど、朔理君も一緒に来て欲しいの」


「あ~」


「舞歌ちゃん、スキーしたいんだって。お兄ちゃんが行くなら、わたしも行けるからさ」


 ……あれ? 俺はこのやり取りをした事がある。あぁ、これは……アレか。


 それに気づいた瞬間、視界が暗転。……これは目が覚めるのか?




「……お兄ちゃん」


 暗闇が晴れると、違う場所に違う格好で立っていた。……あぁ、場面転換か……。


「お兄ちゃん?!」


「ん? あぁ、ゴメン」


「もぅ、機嫌治してよ」


 周りを見回して……あ~、理解した。


 ここは高速バス乗り場。バスの出発をバスの外で待っているところ。理由は居心地が悪いからだった。


 何故居心地が悪いかというと、舞歌達に騙されていたからだ。


 最初は舞歌、美鼓と杏珠の3人に付いて行くという話だった。だが、美鼓の反対隣りに住む杏珠と同級生の花蓮、お向かいで暮らす2歳年上の胡桃さんも一緒だという。これだけ大所帯なら、俺要らないじゃん……むしろ、邪魔じゃんって本気で思ったんだよな。


 しかも、高校は違うものの、見知った顔が2名ほど別件で同じバスに乗るようだし、本当に最悪である。……むしろ、帰りたい。


 ……今の俺であれば、対処法として同性の友人も誘って孤独を回避するという手段をとるかもしれないが、当時の俺には男友達が居なかったんだから、仕方ないかもしれん。


「お兄ちゃんにとっては『両手に花』だよ? むしろ男の願望、ハーレムだよ?」


「……男の全てがハーレムを望んでいると思うなよ?」


 そう、ハーレム願望なんて思春期男児に限る。あとは一部金で得た権力で道徳心の価値を理解できず捨ててきた上級国民くらいだろう。……多分。


 ……そして、悲しいかな。俺は思春期男児真っ只中である。


「まぁ、そんなに捻くれないの。実はね、最初は舞歌ちゃんとわたしの3人で計画していたの。だけど、それを知った美鼓ちゃんから舞歌ちゃんに一緒に行きたいと打診されて了承する形になったの。でも、そのせいで、わたしも花蓮ちゃんにお願いされて断れず……そして、打ち合わせしているところを胡桃さんにも見つかって……まぁ、そんな感じで……」


 ……あ~、そんな理由だったかな。だったら、俺抜きで計画して人数的に可能だっただろうに。でも、最初は身内で行く気だったってことなのか。


「念のために聞くけど、アイツ等は?」


「知らない。偶然でしょ? わたしは聞いていないけど……」


 無視しているが、チラチラ視線を感じるんだよな。


 1人は小学校の時の同級生で何度か同じクラスになったことがある永時さん。中学も一緒だったが、同じクラスになったことはない。物静かで気が弱く真面目な印象だけど、実際は知らない。


 もう1人が俺のトラウマ、御剣さん。中学時代に彼女を好きになったんだけど、好みじゃないとフラれた。……まぁ、それは仕方ない。だけど、次の日には学校中に広まっていたあげく、聞こえるように悪口を言われたら、反転アンチ……いや、嫌悪の対象になるまである。


 このメンツで長時間バスに乗らなきゃならないのかと思うと地獄としか思えなかった。




「そっか……まぁ、事情はわかった……大丈夫、帰るとか言わんから」


「う、うん。……ちゃんと出発までにバス乗ってね?」


 そう言って杏珠はバスに戻る。


「出発する前に居なかったら呼んでくれ」


 その背中に声を掛けて、ギリギリまで外に待つ。……中に居ると女子に囲まれて居心地が悪すぎるんだ。これが全員俺目的なんて漫画みたいな展開だったら問題ないのかもしれない。そんなわけないのは俺自身が自覚している。


 ……というか、あの時は俺を連れ出したいという杏珠以外に俺への関心は無いんだよな。そう考えたから、疎外感と居心地の悪さを感じた訳で。


「あの……」


「はいっ?!」


 思考に耽っていたら、いきなり聞き慣れない声に話しかけられて驚く。


「知念君だよね? 久しぶり……だね」


「あ~、うん。永時さん」


 何故、声を掛けられたのかわからないが、次の言葉を待つ。


「その、今の子は知念君の彼女?」


「妹」


「そ、そうなんだ……」


 あまり詳細には憶えていないが、彼女のフルネームは永時 奏楽。奏楽と書いて「そら」と呼ぶのが珍しくて何となく憶えている。小学生時代から髪が長かったとは思ったけど、今は足首近くまで髪を伸ばしていて、それ自体は良いけど、前髪も長くて顔が見えないのが若干怖い。昔は友達が少なそうだったから、御剣さんと一緒なことが正直意外だった。……「貞子」ってあだ名が男子の間で付いていそうだけど……。


「御剣さんとは友達?」


「あ、うん……同じ高校で……」


 あ~、女子高に進学したのか。なら、男子に弄られる心配は無さそうだが、女子の方が怖そうなんだよな……。


「なるほど。それで要件は?」


「えっと……その……知念君は今、好きな人って……?」


「居ないよ」


 ……ただし、二次は除く。


「そ、そうなんだ……教えてくれて、ありがとね」


 そう言うと、彼女は急いでバスに乗る。……話のネタにでもするのか? やはり二次云々は言わなくて正解だったな。


 そんなことを考えていたら視界が再び暗転する。今度こそ目が覚めるかと期待したが、次に明るくなると悲惨な光景が視界に広がる。




「あ~……これは……」


 痛くないし、熱くもない。それが夢だという証拠でもあるが、聞こえてくる声はとてもリアルで、思い出したくない記憶でもあった。


 まず、バスは横転していた。車体は変形して、俺の下半身は潰されて動くことができなくなっていた。


 この時に何があったかというと、高速バスに乗って新潟へ向かう最中、長いトンネルに入った際に地震が発生した。その結果、斜面が崖崩れを起こし、トンネルの出口を塞いでしまった。


 当時の交通量はそれなりで、速度には影響が無かった。結果、崩れた土砂に向かってトラックが突っ込み、そのトラックを回避するために避けてきた車がバスにぶつかり……車は弾かれてトンネルの壁にぶつかり火災が発生。バスはぶつかられてバランスを崩したところに大型のトラックが突っ込む。……まぁ、玉突き事故の典型のような状態になっていた。


「逃げろ! なんか油が漏れている!」


 バスの外で男性が叫んでいる。……まぁ、彼も死ぬだろうな。間に合わなくて。


 視界にタンクローリーが見えて、多分何かの油を運んでいたのかもしれない。……そう、あと数分で引火してトンネルの中は爆炎に包まれる。多分、一瞬で酸素不足で沈静化しそうだけど、俺にはそれを確認する術がない。


「生きてるよな? 早く逃げないと……」


 隣にいるはずだった杏珠に視線を向けるが、残念なことに座席には居なかった。多分横転した際に何処かに飛ばされたのだろう。


「おい、誰か……舞花、美鼓、花蓮、胡桃さん!」


 ……反応がない。この時点で生きている可能性はあるが、俺はもう動くことができない。


「はぁ……まさか、このタイミングで最大の女難に遭うとはな……」


 そうボヤくと、視界がどんどん暗くなっていき……目が開いた。




「あっ、どうやら本当に起きたか……」


 頭が若干ボーっとする。でも、見慣れた自分の部屋で安堵したのは久しぶりな気がする。


「多分、全員死んだんだろうな……気絶した人達もバスの爆発で終わったよな、きっと……」


 なんか、思い出すと杏珠の死がマリアンジュの死と被って涙が溢れてくる。それだけでなく、あの頃は恵まれていた。俺はオマケだったかもしれないが、卒業旅行に誘って貰えたことは嬉しい事なのだと、今なら理解できる。


 女難は今でも勘弁だが、大勢でなければ……1人1人には感謝したい。


 ベッドから起き上がり、窓を開け、時計塔を確認する。


 ……まだ少し早いのか……。


 空はまだ暗く、東の空が薄っすらと明るくなっているかなって程度。だから、遠くの時計塔の時刻は確認できなかった。


 ……王都に行ったら懐中時計買うかな。


 寝ぼけた頭でそんな事を考えながら、身支度を開始する。


 夢見は懐かしくも最悪ではあったけど、少なくとも今は島を離脱できる寂しさと清々しさを両方感じている。


 ……悪くない。


 顔を洗ってから着替えて、身なりを整える。普段とほぼ一緒だけど、違うのは若干大荷物であること。……これでも厳選したのだが、どうにも厳しい。


「16年間、世話になりました」


 誰も聞いていない家の中にそう挨拶すると、俺は定期船がある桟橋へ向かう。


 歩きながら、ふと考える。


 ……確かに死因はトンネル内での爆発事故だ。俺の記憶もそこで途絶えている。今の俺はみんなに感謝をしているが、死ぬ直前の俺は女子に囲まれて女難が発動した事を悟り後悔していたはずだ。


 正直、転生させて貰える要素が何もない。


 前世の生前、特に善行を積んだ覚えはない。学校に行って、部活して、ゲームする。成績は上の下。家ではゲーム三昧。


 何より、死んだ時に女神ナンス様にお会いできた記憶が全く無い。


 ……どうせ異世界転生するなら、何かチート能力をくれれば良いのに。


 その代わり使命も負っていないのなら、推しユニット達に会える機会があるかもしれないのは幸運だったと考えるべきなのだろうか?

読んで頂きありがとうございました。

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何卒よろしくお願いします。

尚、本日中にあと1回投稿します!

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