何故か辿り着いてしまう今からは遠い、望まぬ未来の話
……女性は『可愛らしさ』と『トラブル』で出来ている。
「サクリさん、わたしがついています! 絶対に一緒に生き残りましょう!」
「大丈夫、誰も死なせない。だから、サクリ……ずっと一緒にいてね」
俺にとってはこの世に存在する女性達の中でも至宝と呼んでも差し支えない程に極上な美少女達が共に立ち、強大な敵軍に対し武器を構えている。
……それは純粋で友情的な善意であり、利己的な悪意ではけしてなく、ただ運命という名の偶然による必然。
「ごめんなさい。わたしが安請け合いしたばかりに……」
「誰も予想できないよ、こんなの。それに、あたし達にはサクリ君がいるよ」
そんなに期待されても困る。確かに俺は凡人とは言えないし、恵まれた環境ではあるけれど。ただ、今の俺に英雄願望は無い。
……好かれてもダメ。嫌われてもダメ。関わった時点でダメならば、せめて好かれたい。
総勢150人を超える現存冒険者チーム最大のクラン“サクリウスファミリア”。9割くらいが俗にいう『ロリボ』や『かわボ』の持ち主である可愛らしい美少女な推しユニット達。それ以外であっても理想的な可愛らしいヒロイン級美少女達で、男はリーダーの俺1人。……しかし、この環境に後悔はしていないものの俺から望んだものでもなかった。
……普通の男なら喜ぶ環境に違いなく、俺も間違いなく嬉しい。それが男の性というもの。
「相手が例え誰であろうとも、絶対に死ねない! あたしはサクリと生き残って見せる!」
「さりげなく抜け駆けは許さないわ。貴女が死んでも、わたしが彼を幸せにします」
いや、無理だろう。こんなに大勢の魅力的な美少女に囲まれて、俺の生き残る未来があるとは思えない。そもそも、俺にはそんなに好かれる心当たりがない。
ましてや俺の前世から続く女難は、その女性が魅力的なほど。好意や嫌悪が強いほど。そして、その人数が多いほどにトラブルを引き寄せ、その深刻度は高く、場合によっては生命の危機に関わる。この事実は前世が既に証明している。
……女は更に女を呼び、そして嫉妬する男達には悪意や呪いを重ねられる。誰に話すことも許されず、自覚ある被害者は俺1人。
「さぁ、最後の戦いです。勝つのは当然ですが、全員で生き残りますよ! わたしとサクリ様との結婚を祝って頂くために!!」
開戦の合図に「ふざけるな!」と全員が呼応して戦闘が開始される。
「……どうして、こうなった?」
1人、俺だけが勝ち目のない戦いに絶望していた。
おかしい。俺はただ、実在する推しユニット達の幸せが続くのを確認するだけで良かった。そのために冒険者としてマイペースな生活を目指していたはずだ。なのに、何故こうなった?
……話したとしても誰に理解されることなく。ただ、ハーレムの園にて欲情を許されず。永遠に真綿で首を絞め続けられる。
今いる俺の戦場は本来、この世界の主人公である【剣の乙女】が立つ場所だ。そこに俺が立たなきゃならない理由が解らない。
この敵達のボスに弱点はほぼ無く、唯一【剣の乙女】が扱う『勇者の剣』のみが弱点のはずだ。……いったい何をしている、【剣の乙女】!
多分、この事態も俺の女難が引き起こした盛大な死亡フラグだろう。生き残るにはこのフラグをへし折るしかないんだが……いったいどうすれば?
……とても大好きな女性達だとしても、その心身は『可愛らしさ』と『トラブル』で出来ていた。
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