表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
あの時、一番好きだった君に。  作者: 三嶋トウカ
大学4年_冬

この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

95/176

第95話:季節外れの花火大会_2


 『花火大会行かない? いつものメンツでさー』

「花火大会? こんな真冬にあるの?」


 私は広絵から来たメールにそう返事した。すっかり寒くなって、もう十二月。今年も残りわずかだ。花火と言えば夏の風物詩で、冬にやっているイメージはあまりない。


『あるよ! 今年から、ふ頭の近くの遊園地で学校の冬休み中? にナイトパレードやるみたいなんだけど、最終日は花火が上がるんだって!』

「へぇ、きっと空気が乾燥してるから綺麗だよね」

『冬の花火って良くない?』

「期待できそう」

『でさぁ、直人と行く予定だったんだけど、なかなか千景含めたバイトメンバーで最近会えてなかったし、三月で千景もやめちゃうから記念にみんなで行かないかな? って思って。多すぎると休みとれないから、誘うとしてもあと航河くらいだけど』

「え、デートだったのにわざわざ良いの?」

『そういう思い出も必要じゃん? だから、行ける人みんな誘って行かない? 当日は入場券限定販売みたいだし、めちゃくちゃ混む……なんてことはないとは思ってるんだけど。券さえ取れれば』


 『もちろん行く!』と返信しかけてやめる。祐輔との仲はほとんど元に戻ったと言えるが、航河君との仲は微妙なままだ。正確には、もうバイトに関する連絡以外とっていない。仕事もほぼ一緒にならないから喋っておらず、気まずい空気しか想像できなかった。


 私はまだ、広絵に航河君に告白したことを言っていなかった。怖かったのだ。結果を伝えることが。広絵も私と航河君が付き合ってもおかしくないと思っている節があったし、私もよく相談していた。そう思われることに悪い気を抱いていなかったからだ。航河君と広絵のほうが、私と航河君、私と広絵が一緒に過ごした時間が長い。優しさから航河君にウッカリなにかを言ってしまいそうで、私は言うのをためらっていたのだ。


「あー……あのね広絵」

『なに?』


 私は意を決して、航河君に告白して振られたことを広絵に伝えることにした。


「私、先々月航河君に告白したんだよね」

『は? え? マジ』

「マジ」

『じゃあなに? ふたり付き合ってるの? え? みんな知ってるの?』

「それがその。付き合ってはなくて……」

『は?』

「フラれました」


 ヴーヴヴ。ヴーヴヴ。


「わっ! ビックリした!」


 電話だ。広絵から。


「……もしもし?」

『ちょぉっと千景? なにそれどういうこと? ビックリして思わず電話かけちゃったんだけど』

「どういうこと……と言われても……。告白してフラれたんだよ。だからちょっと、今はバイト外で会うのは気まずいかなー……なんて……」

『え、違う! なんでフラれてんの?』

「えぇ、そこ?」

『だってそうじゃん! 付き合ってるようなもんだったのに、なんで千景がフラれるの? わかんない!』

「あ、いや……うーんと。『そういうふうに思ってなかった』って言ってた」

『はぁ!?』

「『誤解させてたならゴメン』とも言われたかな……」

『いや、ちょっ……はぁ? 意味わかんない! 誤解ってなに!? 誤解なの!?』

「う、うん……誤解だったみたい……」

『あれが誤解なの!? 誤解……? わかんない、マジでわかんない……』


 電話の向こうで、広絵が『はぁぁ』と大きな溜息を吐いた。溜息を吐いてしまう気持ちは良くわかる。私も、これを聞かされる立場だったら同じく大きな溜息を吐いていただろう。この溜息を聞いて『あぁ、やっぱり、私たちは他人にそう映っていたんだ』と、再認識してしまった。


『誤解はさすがに酷いでしょうよ……。なにも言わなかったの?』

「う、うん……。その、私も思わず泣いちゃったし……。なにか聞くよりも、早々にその場を立ち去りたかったというか……。すぐに航河君から離れたかったというか……」

『気持ちはわかるけどさ……。あの態度は普通じゃないよ、って、それくらい言っても良かったと思うよ?』

「でも、勘違いしたのは確かだし……」

『あれで勘違いするな! って言うほうが無理じゃない? ……だって、実際広絵とか直人だって、付き合うもんだと思ってたし……。てか実は付き合ってましたとか言われても、驚かない自信あったし』

「はは……。やっぱりそう言われちゃうよね」

『……あー、でも、もしかしてそれで? 平日昼間バイト入るの増えてたの』

「うーん。ないと言えば嘘になるかな……。確かに、それもあったよ。みんな私たち一緒に帰ると思ってるだろうし、会話ないと怪しまれそうだし。でも、もう卒業に向けてだから、平日昼間入ったほうが生活リズムも崩れないし、仕事しやすかったのは本当。休日もね。あんまり遅いと疲れ溜まっちゃうし、そろそろ切り替えなきゃって思ってたから」

『うわーん、そっか……そっか、そっか。千景、頑張ったよね。お疲れさまだよね』

「ありがと」

『……なんか、聞いてて私がムカついてきた。なによアイツ。『俺が一番千景ちゃんと仲良しです。千景ちゃんに近づく男は許しません』って顔してんのに、いざ千景が好意を向けたら逃げるとか! 勘違いさせて……とか、全然千景と向き合ってないじゃん』

「でもさ、私もこれで良いや……って、なぁなぁにしてた部分もあるからさ」

『ハッキリ怒って良いんだからね!? ……なんか、時間無駄にされたみたいで悔しい』

「……大丈夫。全然無駄じゃなかったから。すごく楽しかったし。……それに、勉強になったし」

『航河は人生最大の後悔すれば良いよ! って、ごめん。……うわぁ、そうだよね。……それだと確かに、出かけたくないよね……』

「連絡も、最低限シフトの話しかしてないんだよね」

『普通の連絡してないんだ?』

「うん。もう出かけないし、下手に連絡して諦められなくなっても困るじゃん?」

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ