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あの時、一番好きだった君に。  作者: 三嶋トウカ
大学3年 春

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第10話:摩央との恋愛話_1


 「ひゃーお疲れさま!」

「お疲れさま摩央ー!」


 久し振りの摩央とふたりでの飲み。他の大学のメンツと一緒に行くことが多かったからか、大人数での飲み会が最近は主流だった。


「話したいこと山ほどある」

「摩央も? 私もある! 特にバイトの話ー!」

「あー、去年いたところ辞めたんだっけ? その話も聞いてないし、今のところも聞いてないし!」

「私は今の摩央の恋愛話聞きたいんですけど? 彼氏さん元気?」

「あっ見事別れました!」

「早い!」

「で、新しい彼氏ができました」

「それも早いなぁ!?」

「早くお店入ろ? 飲みながら喋りましょうよ」

「危うく立ち話で数時間過ごすとこだったわ。入ろ入ろ」

「ほんとだわ、危ない」


 話が始まるとお互い長いのはわかっている。

 そんなに飲むほうではないが、喋っていたらどうしても喉が渇く。汗をかくこともあり、ドリンクは飲み放題をお願いした。まずはすぐにつまめる枝豆にタコワサ、鶏軟骨のから揚げを注文し、ドリンクとともに運ばれてくるのを待った。


「食べたいものある?」

「私はちょっと野菜多めに食べたいかも。シーザーサラダお願いしても良い? 千景は?」

「ここお肉美味しいみたいだから、カットステーキ頼みたい。レアっぽいけど、摩央平気?」

「全然平気。むしろ大好き。え、ひとりぶんにする? ふたりぶんいっとく?」

「ふたりぶんにしちゃおっか。あ、あと、味玉も頼もうかなー」

「ねぇタコのから揚げ食べない?」

「……タコのから揚げ、食べたことない」

「え、ウソ。食べてみてよ! 美味しいから!」

「摩央がそう言うなら食べてみようかな? じゃあこれも追加で……」

「塩だれキャベツも頼んどく? あいだ空いたときにちょっとつまめて良いよね? 次来るまで」

「おっけー。取り敢えずそれだけ追加しよっか」


 メニューを見ていると、すべて食べたくなってくるから不思議だ。居酒屋のメニューは、どれもこれも美味しそうに見える。味が濃いからかもしれないが、普段家で作らない物も多いし、その点も大きいだろう。


 ――コンコン。


「はーい」


 ――ガラガラガラッ――。


「――失礼します。お待たせいたしました。こちらファジーネーブルとジントニックになります」

「ありがとうございます! ここに置いておいてください」

「こちらですね。……こちら、枝豆、タコワサ、鶏軟骨のから揚げです」

「真ん中にお願いします」

「はい」

「あ、次の注文、一緒にお願いできますか?」

「かしこまりました」


 店員さんがドリンクと料理を持ってきたタイミングを逃さず、次の注文を入れた。予約を入れておいたからか、入口付近のテーブル席ではなく奥のほうにある個室へと通されており、思う存分喋ることができそうだ。

 喋り始めると夢中になってしまうし、周りが聞いたら、多少なりともえげつない話が出てくるかもしれない。全然知らない人に聞かれても困らないが、耳を大きくして聞き耳を立てられたら嫌だな……という、要らぬ心配も今日は不要だった。


「まぁ取り敢えず、乾杯しときます?」

「そうだね。毎日お疲れー。千景、バイトだったでしょ? バイトもお疲れさま!」

「摩央もお疲れさまー!」


 カチン、とグラスの合わさる音を響かせ、私達は乾杯するとグラスへ口をつけた。


「……一杯目、ソフトドリンクにしたほうが良かったかな」

「千景、すぐ顔赤くなるから、先に飲んで帰るまで時間置いたほうが良いんじゃない? 外出るときに真っ赤も嫌でしょ」

「それはそう。じゃあ先に飲んじゃお」

「私次梅にする」

「私柚子にしようかな。あ、梅は黒糖美味しくない?」

「黒糖まだ飲んだことない! 飲む!」

「確かあったよ? ……あ、これこれ」


 メニューを見ながら、再度品定めをする。揚げたての鶏軟骨のから揚げは、噛み締めるとじゅわっと油が出てきて口の中に広がった。


「あ……っつい! けど美味しい!」

「このコリコリ感と油がたまらないよね」

「それそれ。……ねぇ、話の続きよ。摩央、いつの間に彼氏と別れて新しい彼氏作ってたのよ」

「言ったと思ったんだけどさ。すっかり忘れてたっぽい」

「ちょっとぉ」

「ごめんごめん。別れたのは一週間前。お金ほしいから最近バイト入れまくってたんだけどさぁ。見事に彼氏と予定合わなくなっちゃって。彼氏……あー、元彼はしょっちゅう会いたかったみたいでさぁ。『バイト優先すんなら別れよ』って。言われちゃった」

「で別れたの?」

「うん」

「元彼さんの会いたいって頻度にもよる気もする」

「毎日」

「厳しいな」

「でしょ? 『バイトの日も、遅いなら家で待ってるから合鍵ほしい』って言われたんだけど、同棲もしてないし付き合ったばっかりなのに、毎日家に帰ったら彼氏いるってしんどくない? しかも、あの人自炊したりしないから、ご飯どうすんの? って聞いたら『帰ってきたら作って』って言うんだよ」

「夜遅くに疲れて帰ってくるのに、そのあとご飯作るとかやだ。自分だけなら賄い食べて帰れるし、別にコンビニとか残り物でも良いけど、人いたらそういうわけにもいかないよね……」

「そうなのよ! だから別れて正解だったと自分で思ってる」

「あぁ……それは摩央が正解かも……」

「千景もそう思うよね!? 付き合った当初はそんなことなかったんだけど。同棲し始めてとか、結婚決まってから知るんじゃなくて本当に良かったと私は思ったね」

「若干束縛の気を感じる」

「私から見たらだいぶだよ!」

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