ひよっこ巫女と妖怪の噂
「おーい、伶華、居るか?」
そう呼びかけてきたのは、長い金髪の片方を短く編み込んだ髪型に、よく童話などで出てくる黒魔女の衣装を身にまとった少女。右手には長めのほうきを持っています。縁側に座ったまま、わたしは答えます。
「いますけど、なにか用です?魔理沙さん。」
彼女の名前は霧雨魔理沙。魔法の森というちょっと危険な森に住む、ちょっと変わった
性格の人間の魔法使いさんで、この神社への来訪者の中でもかなりの常連さんです。
「いや、別に入用ってわけじゃないぜ。ちょっと暇だったから遊びに来たんだ。」
いつも通りのその言葉を聞いたわたしは、神社の奥の方に入りながら、
「遊び道具でももってきますから、お賽銭でも入れて待っててください。」
と言ってお茶と適当なゲーム媒体を取りに行きます。
「悪いが今は金持ってないんだ。ただ、ちょっと怪しい噂を聞いたからお前にも伝えてやろうかなって思ったんだ。」
「噂?」
お茶の乗った盆を持って戻りながら聞き返します。彼女のようにたまに来る来客の話を聞くのは、わたしの楽しみの一つなのです。
「そう、なんでも、夜な夜な女性を狙って襲う妖怪がいるらしいんだ。」
「妖怪なら、夜な夜な獲物を襲うのは当たり前じゃないですか。」
妖怪は人間から様々なものを己の糧とするために襲います。それは例えば血肉だったり、恐れだったり、妖怪によって様々ですが、基本的には獲物の油断しやすい夜中に襲うのは妖怪にとっては珍しいことではありません。
「ああ、確かにただの妖怪ならそうだろうな。だがこいつはな、人だけでなく地獄の鬼とか他の強力な妖怪も襲うらしいんだよ。」