12,感情はいつも揺れ動く(蓮水視点)
ブクマありがとうございます。
サボってばかりですみませんが、新話です、どうぞ。
とてもとてもとても恥ずかしかったです……。お椀を片付けると言って台所に逃げてきてしまいましたが、耳まで真っ赤なのが、自分でもわかります。
ですが。
私がスプーンを差し出すたびに、体を動かして必死に食べる神影さんは、すごくすっごく……。
可愛かったです。
普段なら絶対に男子どころか、女子にもやらないようなことを自分からやってしまっていることに今更気づき、さらに赤面が激しくなっていくのを感じて一人台所で見悶える結果となったのは、また別のお話です。
***
日曜日も神影さんの看病をするつもりだったのですが断られてしまいました。
とても残念ですが、それでも心のこもったお礼が聞けたので、満足でもあります。
って違います。神影さんの体調が回復していただけたようで満足、です。
「ぁ……」
いつも通り、学校へ行く支度を終え、マンションの階段を下りていきます。
いつもならそのまま一階まで下りるのですが、今日はつい、二階のところで足が止まってしまいました。
「神影さんのお家……此処なのですよね」
久遠さんに案内していただいたときは、とても驚きました。
「――――行きますか」
なんとなく神影さんの部屋のドアを見つめていましたが、流石に何かするわけでもありません。
登校するべく、足を、階段のほうへ向けようとしたその時――――。
ガチャ。
「……あ」
ドアの開いた音がしました。
目の前のドアが動くのが、やけにゆっくりなような気がしました。
そして、ドアが動くということは、当然動かしている人が奥にいるわけで。
いつも通り、不機嫌そうな顔の神影さんと目が合います。
――――ってちょっと待ってください!
無表情のまま扉を閉める神影さん。
流石にそのまま完全に無視されるわけではなく、再びドアが開きました。
「……なんで閉めたんですか」
「……」
問い詰めたい衝動にかられましたが、我慢です。
「なんでお前が此処にいるんだ」
「そ、それは……」
その、不信感たっぷりの声を聴いて、今の私の状況が神影さんからどう見えるかを、ようやく理解しました。
――完全にストーカーです。
慌てて弁明するべく、口を動かしました。
「実は、ですね」
「ああ」
「私の家がですね」
なんというか迷いましたが、結局そのまま伝えることにしました。
「――――この上なんです」
「……は」
「な、なんですかその反応!」
何故か、神影さんが天を仰いでいます。
疲れたため息をつかれる理由がわからないのですが!
「あっ、今、失礼なこと考えませんでしたか?」
「……いや」
「間が空きました。怪しいです」
なんとなくそんな気がしただけでしたが、言いよどむ神影さんに確信を得て詰め寄ると、視線をそらされました。
「……ま、まあ何でもいい。じゃあな」
「え」
じゃあな、と。そういわれたとき私の心に芽生えたのは。
――――もうちょっと居たい。
そんな、自分でもどうにかしていると思うような、不思議な欲求でした。
「あ、あの……どうせですから、一緒に登校しませんか?」
「断る」
ですが、それはおそらく一番の悪手でした。
その言葉を告げたとたんに、どんどんと神影さんの瞳が冷たく、無機質になっていくのを感じながら、そんなことをようやく察するのでした。
「――あまり、俺に関わらないでくれ」




