表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
5/7

万年コートの高校生

さてここからは僕のターンだ、高校性で早くも寮という親と隔絶された環境に身を置けたことは、芽生え始めた反抗心と自立心を自分の中で沸々とマグマ溜まりのように溜まっていた独立心を爆発させる為の起爆剤となっている。

親の庇護下である事は分かっているけれどもこの自由な環境は悪魔にも似た魅力があった。


マリアさんとの事務的処理と世間話はお茶二杯分を飲む時間ほど掛かった訳なんだけど交流も大事なことだしあの人も物腰柔らかく良い人だと確認をして僕は管理人室を後にする。


僕にはあの人はずいぶんと大人びて見えた、多分ここの寮は「当たり」だよね!! 別にあの人が全てってわけでもないけどさ少なくとも建物自体はきれいで管理が整っている。

後は自室が前の人によって壊滅的にまで荒らされていなければ文句なしの満点なんだけどおそらく問題はなし、先に荷物は運ばれている様なので今日はあとしなければならないことは荷解きをして必要な物を取り出すだけである。


自分で全てをこなさなくてはいけない反面、時間を縛られなくて済むので炭酸か何かが頭のなかに溶け出すような何とも言えない高揚感が血行から視力まで底上げしているようだよ…

やりたいこともあるし不安もあるが4月くらい入学生は浮かれたって良いはずだと僕は少しばかり地に足が付いていないのだった。


階段を上がって行くと一人の長身の男が立っているのを僕のとなりの部屋から出かけようとしたところを偶然、出くわしたみたいだね


「さて、鍵を閉めてと…まったく、モノの奴め我に相談もせずに美術部に入れよってまだ学校も始まっていないと言うのに作品を出しに行くだと?どれだけあやつは真面目なのだ…いや、はやりすぎか…」 


今日は小春日和に加えて無風状態、桜も満開に近いことからお花見日和だぜっていうくらいには天候はいいにも関わらず腰にまで届きそうなほど長い真っ黒な外套と言うにふさわしいコートを着込んでいる。


長身に痩せ型というか痩せ過ぎなんじゃないかな大丈夫?ご飯食べてる? そう思ってしまうのは彼の格好がそう印象付けさせているせいかもしれない…。


「ん?D51でもない、旅人とか言う奴でもない…とするなら貴様は何者なるか?」

あちらも突然の来訪者(僕)に戸惑ったのだろう、黒い外套をわざと棚引かせながらなんだろうかこの人、高校性デビューとかで色々間違った方向に行ってる人?


遅れてやってきた中二病の人? なんだか此方が反応に困ってしまう、完璧にキャラを演じていて「我が名は真紅の暴君ウラド也!!」とか創作なら創作のキャラクターらしくしてくれれば突っ込みどころ満載でやりやすいのだかれど…

一先ずは何か僕も声をかけよう、そうだね折角第一寮生を見つけたんだから気の利いたセリフの一つくらい言ってやらないといけないよ!


「あのーすいません、その格好は暑くはないんですか?」


自分で後悔するからちょっと待って…突然何言ってんの僕は!適当にキャラ演じて誤魔化すとか、さもありなんみたいに返すとか脳内選択肢があったでしょ!!

なんで意図せずに一番突っ込んじゃいけないとこに狙撃を食らわせるの!

穴があったら入りたいって?奇遇だね僕もだよ!!どうしろっていうのさ!

「…うんそうだな暑いわこれ…」

思考が頭のなかでああでもないこうでもないと始めたところで外套男から以外な返事が帰ってきて僕は我に返ってきた。ダメだね、きょうは大分頭が回っていない気がする。

というか主に的を得てそのまま言葉にしてしまう当たりが抜けている、きっといつもの頭脳明晰な僕ならこの灰色の脳細胞を回転させてこの男ともうまくファーストコンタクトを取れたっていうのに…


「わ、我は微風久我と皆からは呼ばれる予定だ、みるからに今日はじめてここに来たという感じだが春季の講習会が有ったはずなのだがそれを聞くのはどうだろう野暮になるのか?」

「引っ越しと事務手続きがいろいろありまして」

そこはあまり触れて欲しく無いので適当な言い訳を投げたらそれで彼は納得してくれた。


質問をこっちに投げてくれたその人はキャラづくりはどこへやら徐ろに外套を脱ぐともう一度部屋のドアを開けて黒い外套を華麗に投げ捨てたのである。


「この外套は使えんなぁぁぁぁぁ!!!全く持って使えんなぁ!これかなり重いんだが!暖かいし春一番さえ防ぎきる程度の能力を持っているのだがなぁ!!」


それにしても、そよかぜ…?管理人のマリアさんがそうだったけれどどう聞いても本名で答えてこないのだろうこの寮特有のものなのかな?


「野暮にはならないよ、単に準備が揃わなくって来れなかったんだ、引っ越しのめどが立たなくなっちゃって…講習会って何か言ってた?」


会話のネタは僕にはアドバンテージがある此処で上手いこと知り合いを作らなくちゃ…何でそんなことを考えているかだって?

既存の寮生内のコミュニティに上手いこと入り込めなければ出遅れるというか、学校が本格的に始まった時に孤立してしまうじゃないか、これから入る高校には付属の中学校もあるって聞くから。


ただでさえ遠くの高校に来てしまったんだから知り合いなんて皆無なんだこれから始まるのは自分の「僕」の腕試しという名前の逃避行だ。


「講習会か…うむ、正直行かない方が平和的でよかったと思うぞ?あれはアカン」

おかしい、ただの事前指導なんだからそんなに思い出したくないようなことを例えば「見ろ!新入生の皆さんはゴミのようだ!!」とか「学力たったの5かゴミめ」みたいなことを言われたわけじゃあるまいに何故微風は首を傾げるのだろうか、


「ま、まあ詳しく聞かせてってほどの時間もないようだし急いでいたんじゃないの?」

微風は確か何か提出するためにこの廊下に立って出掛ける為にドアを開けて僕に出くわすというこの結果に陥ったはずである、

茶飲み話はそれとしてもあまりに長居させてしまうと提出期限を過ぎてしまうことになってしまうと悪いし…。


「んん?いや待て早とちりをするではない、

別に期限があるというわけでもなく自由に参加できてな、そこへたった二人で乗り込もうとしているのだ…高校生の先輩などいるのにも関わらずそこへ道場破りとはやれやれだぜ…」


そう首を振る微風はいままで余り急いでいる様子ではなかったけれど気乗りしない感じでは確かにあった。


「そうなんだ…えっと美術部って言ってたような気がしたんだけれど絵を描くの?」


「モノ」と微風が言っていた人?

には悪いけれど急ぎでないなら少し立ち話をしても構わないだろう。と少しの間だけだが話に春らしく花を咲かしてもらった。

「そんな絵を描くんだーー。」「あまり人に見せることの出来る代物と言うわけでも無いのだが…」

「そんな事は無いと思うよ、何でもそうだと思うけど「生み出せる」っていうのはきっと凄い事なんだ。

古い故事にコロンブスの卵って言うのがあるんだけどね」

「コロンブスの卵か…初めにそれを行った者が称賛されるべきと言うやつか」

褒め上手な訳じゃないけど自分に出来ない、やってない事をしている人には素直に褒めてあげるのがいいって僕は勝手に決めている。

「そうそうそー言う事」

 何分か話が噛み合い掛けては少しずれ込んだそんな会話だったが楽しいものであることに変わりはない。


文化系の知り合いが中学校時代にいた気がするがその時にした話を上手いこと利用させてもらったのでそこは良かった点である。


「む…かなり話し込んでしまったなまぁ、これから先も住んでいる場所はほぼ同じなんだまた近いうちに語り合う事があればよろしく頼む」


「うん、これからよろしくお願いいたします」


わざわざ頭を下げなくとも…とは思ったのだけれどここは礼儀を欠いてはいけないという考え方がある。

本来であるならば蕎麦の一人前でも持っていくのが正解のようではあるが残念ながら手荷物の中の食料といえば粒のお菓子位であった。


「いやいや、頭を下げなくても良いからからな、それを下げられてしまうと我としてはやりづらいのだ」


そうだったのか、知らなかった。微風は僕と入れ替わるように一階に続く階段へと向かう、近くを走る電鉄がまた近くを走るのか、遮断機のカンカンという音がいやにけたたましく感じる、

微風は階段を少し降りて此方を振り替えると僕に言葉を残して階下へ去っていった。


「言い忘れていたが但し事実であるから言わせて頂こう………D51には気を付けろ、講習会自体は普通の何ら変わらないものだったのだ。講習会自体はな…。ああそうだ、せっかくだからそれともうひとつ言っておこうか、背負っているバックの一番小さいポケットのチャックがわざとなのかは知らんが空いている、そして中から茶色の長財布が顔を出しているぞ?」

本当だ、多分先に事務室で色々取り出して来たから出し忘れたんだろうな。


「うむ、盗ってくださいと言わんばかりではないが、意地の汚い連中のいいかもネギだから気を付けろ?

では、我はこれにて失礼するとしよう。それではこれからの我々の輝かしい未来を!希望を在らんことを!」


最初から最後までなんだかぶれにぶれぶれな微風のキャラクターはあまり嫌いじゃない。

それは誰しも人間なんだから時にはその軸から大きくずれたことをしたって、元の土台がちゅうぶらりんだってそれでも生きていけてしまう、生きることが出来るのが今の世の中かのかもしれない。


しかし、本当に「生きる」と言うのは軸がちゃんとしている人のことを言い、僕なんてのは人の顔色ばかり伺ってしまうからいけないのかもしれない。

「軸がぶれている」ね…


少しばかり何でも無いことで落ち込んでしまったけれど気にしない気にしない!気を取り直して行こう!

微風の302号室を通り過ぎてこの寮のタイルの色を少しくすませた様な黒みを帯びたドアが目の前にあった。


「気負うことなんて無いからさっさと入ってしまおう、落ち着くのはそれからでも遅くない」

望んでいた新天地はココにある!!!鍵はマリアさんから貰っているから後はこれを鍵穴に入れるだけ!!


何を緊張しているんだ?! 何の気なしに目の前のドアに意識を向けると何かドアの向こうから寒気にも似た何かを感じる、まるで異形の怪物が此方にその口を開けているかのような妙な間隔に襲われるなんだこれ…?

それはオーバーなのだとしても何か嫌な予感が首筋にぞわぞわと駆け上って来た。


悪寒に似た何かが背中から感じてしまえるのはおかしい…いままで霊感なんて全く無い。

よく言うのは霊的話をするとそれらしきものが集まってきて時たま悪さをする百物語やらすると呪われるというのならその手の話を百ほどしてしまえば…


「こーいうお話をしているとね、良くないものがあつまってきちゃうのよーー!」

と母親に子供をからかう親の口調でこう言われたのを唐突に思い出したら何だか腹が立ってきた。


取り敢えず入るだけ入ってしまおう、事故物件なんてことはありえないし…ありえないよね?

開けてしまおう!!開けたら何か居るのだろうかまさか…


ありえない事象なんてものは今までの経験上会ったことがないし在り得ないし…自分の小動物並の直感は当てにしないほうがいいのかもしれないそんな事を考える必要は合ったかどうかはさておき、簡単な作業を再開しよう、

要点は2つ


1 ドアノブをひねる


2 ドアを開ける


たったそれだけの簡単なる作業だよ?後から考えてみればここで一旦落ち着いてしまえばよかったものをと思うけれど、だがしかし、この運命は絶対に変わらなかったのではないかって思う。

この結末…最初から変わることはなかったのかもしれない、もし、春の講習会シーズンに此処にこれたとしてもだ。


何故こんな事を長々言っているかと言うとアリバイの証明を皆さんにしてほしいからである、青い服の治安維持がご専門のお兄さん方に説明する時が来たのなら僕の無実を証明してやってほしい


ぎぃ…初対面とはいかず無音で開いたドアの向こうにはなんともおぞましき光景が僕を待っていた…


ってあれ次回に続くの?ホントに?殆ど話動いてないけどいいの?!あーあ…尺稼ぎと来たかぁ…


次回に続く!!



評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ