第2回「下野紘・巽悠衣子の小説家になろうラジオ」大賞 への投稿作品
コン トロールが見る夢
トロールのコンだって夢を見ることがある。
新月の夜、見る夢は、いつも同じ。
森の奥で泣いていた赤子と暮らした日々を思い出して、自然と涙するコン。
コンは、真っ暗な森の中を泣き声ダケを頼りに、泣き声の主を探していた。
近付いているはずなのに、だんだん泣き声が小さくなってきた。
コンは、急がないといけないと直感した。
コン『ココか』
両親と思われる男女が折り重なって赤子をかばっていた。
泣き声が、か細くなっていたが、赤子は、無傷だった。
立派な女の娘に育った ゆいこにコンは、告げた。
コン『ゆいこ 人が住む所に行きなさい』
人とトロールが、いつまでも一緒に暮らしてはいけないことをコンは知っていた。
ゆいこは、コンが1度言ったら、聞かないことをよ〜くわかっていた。
新月の夜、音も無く、武装した人の群れで森が溢れていた。
戦う意思が無いトロールは、武器を持っていなかった。
力の差はあれど、武装した人との闘いは、概ね一方的な展開だった。
暗闇の中、コンは、ゆいこが作ってくれた寝間着のまま無我夢中で闘っていた。
夜が明けて、いつの間にか人が森からいなくなっていた。
朝食の準備をする頃なのにトロールの声は聞こえてこなかった。
コンは、怒りの眼差しで、昨夜屠った傍らの亡骸を睨みつけた。
その亡骸の両手には、旭に照らされて、ゆいこの為に創ったコン特製のガントレットが輝いていた。
コン『ナゼここに』
トロールの森は、痛いほど静寂だった。




