怪人と友達
作者「出番よー」
百合要素「よっしゃあ!」
というわけで恐らくは百合要素が含まれております
(作者の観点では百合と考えている
引越し作業が片付き、引越し先のアパートに向かうと
少し怒った表情の白菊さんが待っていた。
私を見るなり、速攻で距離を詰めて問い詰める。
「なんで私の魔法少女コスの写真持ってるの?
というかいつ撮ったの!?」
「愉悦」
「この外道め!畜生、私はこの邪智暴虐の
友人を除かねばならぬと決意した…!」
「セリヌンティウス役は誰なんです?
おやおや?私の記憶が正しければ
私以外に友達が…」
「いるよ!!少しはいるよ!!」
「ほう、名を申してみよメロギク」
「ネコットさん」
「ネトゲのフレンズのでは…?」
ネトゲの中で私とロックリサンと共通の
フレンドであるネコットサンの名前を出すとは…
やはり私の想像通りだったようだ。
「それが最近偶然会えてね…ほぼ
ボルサバのアバターまんま」
「マ?」
想定外の対応に私は驚いた。
ネコットサンと会えたまではいい。
それは確率で起こりうる事態だ、
しかし、あのシリーズモノの狩りゲーの
アバターがそのまま…そのままときたか…
「え、じゃあ本当に銀髪?」
「うん、しかもアバターより美人」
「えぇ…?」
ネコットサンのアバターは銀髪ポニテの
スタイルのいい女性アバターだ、
武器は素早いものを好んで使っているらしい。
何故かと聞いたら爽快だから、という回答が
帰ってきた、極めて単純明快である。
「どんな人だった?」
「ネコットサンまんま、
丁寧な口調の綺麗な人〜って感じの」
「ほうほう…長話になりそうだから、
それは置いといて荷解きしよ。
荷物とか家具はそんなに買ってなかったから
量はないけど時間が時間だし…」
「あ、そんな時間?じゃあ頑張って手伝うよー」
「ありがとー、まず冷蔵庫とかから運ぼうか」
「うげぇ…」
「先に運ばねば我ら女子には地獄よ…」
「あぁ…確かに軽い奴先に運んで
ちょっと疲れてから重いの運ぶのキツいよね…」
「ええい!さっさと終わらせるよ!
終わったらお寿司食べよう!」
「わーい!お寿司ー!私頑張るー!」
ふふ、本当に白菊さんは騙しやすい…
私の持っている魔法少女コス写真について
見事に忘れているようだ…。ふふ、計画通り。
…というかシンプルに幼女らしいセリフ
を吐いているのはどうなのだろうか…?
◆◆◆◆◆◆◆
荷ほどきが終わってお寿司を食べ終わり、白菊さんを部屋に帰ったと確認した
あと、布団を敷いて寝始める。慣れない部屋だが、布団のにおいに安心して
比較的早く意識が薄れる。
直前、何か人影が見えたような気がしたが…
疑問に思う前に眠りに落ちてしまった。
◆◆◆◆◆◆◆
私はナツさんが完全に眠りについたことを確認したうえで、
隠れていたクローゼットの中から出る。
いやぁ…まさか本当にうまくいくとは。
部屋にいないってことしか確認しないだろうなぁ、と思っていたのだが
クローゼットに隠れるだけでなんとかなるとは思わなかった。
私はそっと、ナツさんに近づく。きれいな寝顔だ、
だが私の計画を失敗させないためには
音の出るリアクションをする訳にはいかなかった。
ふへへへへ…ナツさんは本当に不用心だね…
一度寝たらほとんど何をされても起きないって言ってたけど、本当らしい。
おかげでこんな至近距離に近づいても気づかない。
そんなナツさんに私はキスをする。
ふふふ…ファーストキスは頂いていくよ…。
した事はないらしいからね、多分私が始めての
はずだ。
私はナツさんが好きだ。
あの天才に捕まって、
強制労働させられて精神的に弱っていた私に
手を差し伸べてくれた、話をしてくれた、
ちゃんと私を理解してくれた。
あの天才にメッタメタにされた私の心を、
ナツさんが優しく癒してくれた。
それから、私はナツさんが大好きなのだ。
…そして、いつかきっと。
ナツさんを人間に戻して見せる。
ナツさんに施された改造は、他のキメラ怪人
とは違う。
ただ二つの性別を持っているだけではない。
全く別の肉体に変わるのだ。
しかも、ナツさんではなく、
男性側の変化であるならば、毎度姿が変わる。
つまり、女性側はナツで固定されているが、
男性側はランダムで入れ替わる…
そこが不可解なのだ。
男性、女性の変化をする程度ならばあの天才なら
容易に行える。しかし理性を残してあの施術を
行うのは不可能だ。
しかも、男性側のみ複数人の
変化が可能である…そこには、何があるのか?
もしかしたら、ナツさんは、両性怪人は、
今は亡き天才の最後の切り札の可能性がある。
ナツさんだけ方法も行動も力が入り過ぎている。
ナツさんを怪人で無くすことは、
それだけの意味がある。
あの天才は、馬鹿のような思想を掲げ
馬鹿のような作戦を立てていた馬鹿である、
と世間には認識されている。
だが奴はそんなものではない、
実際に近くで見たから分かる。
奴は…天才は、天道愛斗は
生き急いでいた。まるで、何かを追うように、
何かに焦がれるように。
それが何かは分からない。だが、
生き急いでいる人間は総じてロクなことをしない。
故に、奴の計画を潰す。そのために私はナツさんを
人間に戻したいのだ。
…まぁそんなことは今はどうでもいい。
寝ているナツさんを好きに出来る、
そんな幸福な権利を前に思考なぞ無意味。
私は、ナツさんの布団に潜り込み、
ナツさんを抱き枕にして寝るのだった。
あっ、そうだ。そういえば魔法少女コスの件の恨みがあったんだった。
ふふ、コスプレの恨みはコスプレで返してくれる…
シリアス君「クハハッ!俺を読んだか!」
というわけでちょっとだけシリアス。
怪人要素つけないとちょっとタイトル詐欺になっちゃからね、仕方ないね
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