怪人はお別れを告げる
時間は…忘れていなければお昼ごろには毎日上げたいと思います
笑顔で仕事場に向かい、デスクを片付け始める。
コーヒーや菓子類、魔法少女たちに貰った
贈り物などの私物を持って来ていたカバンに入れ、
重要な資料はまとめた上で段ボールの中に、
後のどうでもいいものはシュレッダーなど
適切な処理の後ゴミ箱に。
そうして、デスクの片付けが
完了し帰ろうとした矢先、
彼女たちと遭遇してしまった。
「あっ、ナツさん!どうしたんですかその荷物?」
「まるで…辞めるみたい」
「土曜日、何かあったの?アタシの約束ドタキャンする用事って
何…?それに、そのカバン…」
「…どうしたんだナツさん?何かあったのか?」
「何か悩みがあれば私たちが手を貸しますよ?」
全員私を心配してくれているようだ。
普段なら軽く受け流しながら全員に回答を
帰すのだが、今回で彼女たちとはお別れだ。
きちんと対応しなければマズいだろう、
そう思い、私はこう返答する。
「そうですね…私、今日でこの会社を
辞めることにしまして。このカバンには
デスクに置いてあった私物が入っています」
「「「「「え…?」」」」」
全員が沈黙する。
そして全員が一気に喋り出す。
「なんでですか!?」
「どうして…!?嫌な奴でもいるの…?」
「な、何があったの!?アタシに言ってみなよ!
相談ならいくらでも乗るからさ!」
「ナツさん!なんで辞めるんだ!?」
「ナツさん!これでお別れなんですか!?
そんなの嫌ですよ!?」
全員が心配してくれているようだ。
だが、これも予想していた。
「いえ…実は私の友人がお店を立ち上げまして。
その友人には、怪人活動時代に非常に大きな恩が
あるので、そこに務めることにしたのです。
まぁ…ちょっと遠いところに会社があるので、
会えなくなる、とまでは行かずとも
会いにくくなるとは思います。」
ちなみに怪人時代の友人は別に怪人ではない。あの天才の下で
優秀だったことが要因で強制労働させられていた研究者と、少し会話して気が合い、
仲良くなっていたのだ。やはり巨大ロボは性別を超えたロマンを誇っている。
まあ、その研究者が開く店は科学のかの字もない喫茶店らしいのだが。
少し会わないうちになにかがあったらしい。
ちょうど土曜日に「喫茶店を立ち上げるので副業として手伝ってくれないか」
といった感じの連絡がきたので、これはちょうどいいと了承したのだ。
まあ私が会社を辞めるというのは予想外だったようだが。
「そ、そうなんだ…じゃ、じゃあ!どこで働くんですか?
落ち着いたら行ってみたいです!」
「ちょっとした喫茶店ですね。名前は…そうだ、聞いていませんでした。
仕事が落ち着いたと思ったら連絡します」
「新しい場所でも頑張ってね…?何かあったら頼ってもらってもいいから…」
「ええ、何かあれば遠慮なく頼らせてもらいます」
「ナツさん、落ち着いたらまた遊びに行こうね!」
「はい、もちろん。皆さんと遊ぶのは楽しいですからね」
「ナツさん!新しいところでも頑張ってな!」
「はい、頑張って繁盛させます。期待しててくださいね?」
「ナツさん、今までご苦労様です。困ったときに相談に
乗っていただいてありがとうございました!」
「ええ、友人なら当然ですとも。羽田さんにも言いましたが、
こちらも困ったら遠慮なく頼らせていただきますので」
そんなこんなで全員の質問攻めを受けたが、
今後のことを考えて気分が上がっている私は返答が苦にならなかった。
土曜日に気が狂った結果、辞める、という判断をしたが、
日曜の朝、ふと冷静になって考えてみたのだ。
辞めて知人の一人もいない地域まで逃げ、連絡を絶ったとしてどうなるのか、と。
結論から言うと完全なバットエンドだ。確実に発見されたうえでの
探し出した対価を要求されるに違いない。
というかあんな好き好きオーラを漂わせている彼女たちに対しそれをすれば
確実にヤンデレとなるだろう。(オタクの偏見)
そこでこの折衷案だ。つまり、出会う量を減らせればいいのだ。
シンプルに毎週毎日会うのが苦痛ならば、会える回数を減らせば負担は減る。
それがこの計画の一番重要な部分だ。
そこさえ満たせればこの計画は成功であるといえる。
そんなことを内心で考えながら、彼女たちに別れを告げ、帰路に就くのだった。
百合要素「まだっすか」
作者「まだもう少し…せめて転職後の新キャラ出すまで待って」
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