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遅くなり申し訳ありません!


(あぁ…愛しい。私の婚約者様、なぜ私を見てくださらないの?)


視界の先に映るのは、私の婚約者様と天から舞い降り、この国を支えてくださると言われている聖女様。二人は仲つむまじく学園の庭を歩いている。

クスクスと私を見て嘲笑う者達。

その場は私のモノなのに。なぜ…なぜなぜなぜ?

好きな人だからこそ、わかってしまう。彼は聖女様に恋をしているのだと。友情という名のものではなく、恋という名の。ずっと、私に向けて欲しかった。あなたのその視線を。いとも簡単に手に入れた聖女様。

私も聖女様のように天から舞い降りれば愛されましたか?

あの美しい顔を、黒髪で黒い瞳を持つ彼女になれば…私のこの恋は叶うのでしょうか。


自分らしくもない気持ちが募っていく。聖女様に向ける視線はきっととても醜くいものだろう。それでも、彼に愛して欲しかった。きっとこの恋は叶うまい。

私の初恋の人はこうも簡単に、誰かに取られてしまった。

あなたのために、妃の勉強。この国の母になれるように血を滲むような努力や我慢はなんのためだったのか。何も報われないのか。それはあまりにも辛い。


ふと目に映る赤い薔薇の花。薔薇の花言葉は「あなたを愛しています」「情熱」。まるであの時の私のような。感情の勢いに任せて、花を握りつぶし下に落ちそのまま踏みつける。胸が苦しい。悲しい。愛して欲しい。


(もう、何もかも消えてしまえ)


醜く黒い感情は湧き上がる。頭の中にあるのは「聖女排除」の言葉。私の心の中で誰かが囁く。



ーーーーーー


頭がひどく重い。寝ている間に涙が出ていたのか顔は腫れ、見るに耐えない顔になっている。心はひどく虚しい気持ちで溢れていて、まるで先ほどの夢が本当にあったことのようで。妙にリアルだった。


この世界で前世の記憶を思い出し、3日が経った。


倒れてしまったこともあり、なかなか外出もできず、しばらくは家で過ごすことになった。だが、その間に本を読みまくり、この世界の基礎知識をある程度身につけ、自分の記憶も整理してやるべきことが大体絞り出せた。

一つ、この世界の成人は平民と貴族とでは異なり、貴族は15歳から親の仕事を少しずつ任せられるようにはなるものの、前の世界と変わらず18歳だった。平民は王都の方は18歳らしいが、隣国では16歳だったり、20歳からだったりと様々。共通してないらしい。

二つ、メル情報だが、私には婚約者がまだいないということ。多分そろそろだとは思うがゲームならきっとこの国の王太子アンスヘルム ・バラック様が婚約者になる。

なぜ公爵家ではなく、私の家に婚約者として国王が申し出たかは知らないが、きっと何かしら理由があるに違いない。そこも探らなければ。


「お嬢様、失礼致しますね。」


部屋の扉の外からメルの声がし、音も立てず入ってくる。私の顔を捉えた時、メルは普段取る礼を忘れて顔を真っ青にさせプルプルと震えた。


「メル?どうかしたの?」

「お嬢様…どうされたのですか!なぜ顔がそんな大福のようにまん丸なのです!?」


大福って…かなり失礼なこと言われてる?このつやつやでもちもちのお肌も6歳の子なら仕方ない。そういえば、私寝てる時に泣いて腫れているんだった。きっと顔が大福…のようにまん丸なのは泣いたからだ。元から太ってました、なんて言わせない。

じとりとメルを見ると「申し訳ありません!」と急いで礼をされた。


「まん丸はひどいと思うわ。」

「大福のようにまん丸しか言葉が思いつきませんでした。申し訳ありません。」


ものすごく私は喧嘩を売られている?チクチクと言われているようでメルが反省しているように見えない。


「とりあえず、朝は旦那様方とお食事を召し上がらなければならないので、お化粧をして隠しましょう。」

「そうしてくれると助かるわ」

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