図書館で2人
図書館に入ると、意外と生徒数が少なくて
テスト勉強しなくても大丈夫なのかと逆に心配になってしまった
図書館へ来るのも久々で、思わずテスト勉強の事も忘れ
自分の好きなジャンルのコーナーに行き、本を探してしまう
ミステリーものが好きで新刊は入って無いかと著者名を探す
残念ながら、新刊は無かったものの2冊気になった本を手に取り
いつもここに来ると決まって座る自分のお気に入りの場所へと座る
少し奥まっているけど、人の行き来があまり無く集中しやすく尚且つ日当たりも良いので
ちょっとした個室空間的な場所になっている
先程手に取った本を机の上に置き
テスト勉強用のノートを出して苦手な理数系から始めようと数学の教科書を出す
勉強モードに切り替える為に携帯のアラームを30分に設定して音量も最小にする
ダラダラ勉強は頭に入りにくいし時間の無駄使いになるので自分の中で集中時間は30分と決めて勉強する様にしている
よし!
始めるか!
と教科書を開いた時
今まで静かだった図書館が少しざわついた様に感じた
僕の座って居る場所からは入口付近が見えないので何かあったのだろうか…
少し気にはなったものの自分には関係のない事だと思い直し勉強を再開する
特に苦手な問題は教科書と睨めっこしても意味が無いので書店で購入した数学の攻略本も活用する
この公式が社会に出ていつ活用する場面に出くわすのかと言いたくなる程にややこしい…
こんなにややこしい問題を数学の担任で少し風変わりな先生は決まって
「前年度の特進の生徒は君達よりもよく出来た」
と見下す様に言い放つ
「本当に嫌味な先生・・・解けないのは教え方が下手なだけじゃん」
つい先生の文句が出てしまう
あの偉そうな態度も嫌いだし、自分だけ納得して生徒は置いてけぼりだ
そんな事をブツブツ言っていると
不意にフッと笑う声が頭の上から聞こえた
パッと顔を上げるとそこにはさっきホール前にいたはずの佐々木くんが僕の目の前にいた
制服のブレザーを腰に巻きネクタイがないシャツは幾つかボタンが開けられている
なんて、マジマジと観察してる場合じゃない!
いつから居たんだろ?
1人でブツブツ言ってたのを聞かれてたんだ・・・
恥ずかし過ぎる!
一気に顔が熱くなるのが分かって佐々木くんから顔を隠す様に下を向いてしまう
せっかく佐々木くんと会えたのにこんな態度じゃ感じ悪過ぎる
どうしよう・・・
そんな僕の様子を知ってか知らずか佐々木くんは
僕の座っている席の前に自分の鞄をドサッと置き「俺もテスト勉強しよかな!」
と言いながら僕の前に座った
「え・・・?」
まさか僕と一緒に?
ってこの状況で2人でテスト勉強とか・・・
それに、さっき一緒にいた友達は?
一緒に帰ったんじゃなかったの?
聞きたい事はあるのに僕の口は一向に開かず
ただ、じっと佐々木くんを凝視してしまう
佐々木くんも僕の視線に気付いて「ん?」といつもの笑顔で聞いてくる
「あ、あの・・・友達と一緒にテスト勉強しなくてもいい、の?」
友達とか言いながら本当はあのマネージャーの子とは?とは聞けなくて・・・
すると、佐々木くんは「あぁ~」っと苦笑いしながら
「俺らのクラスってテスト前でもちょっと緩いつーか、テスト勉強なんて一緒にした事無いなあ」
まぁ。俺も含めだけどさ
なんて笑いながら佐々木くんは言う
そうなんだ・・・テスト勉強するって当たり前だと思ってだけど…
一夜漬けの生徒もいるんだなぁ
僕のクラスは塾に行ったり家庭教師に来てもらったり様々だけど、因みに僕は塾も家庭教師も断っている
自分が納得するまでとことんやりたい性格だから
まぁ。それが良いとは言えないけど
「てか・・・西野の方こそ滝沢と一緒にテスト勉強してると思ってたけど?」
教科書をパラパラ捲りながら佐々木くんが僕の方を見ながら言う
「あ、京ちゃ、京弥は勉強よりバイトだって先に帰ったから、それに基本的にテスト勉強しないみたいだし」
佐々木くんは途端に顔を歪め「うぇ、嫌味な奴だな…」なんてボヤいてる
そんな佐々木くんを見ながら思わず笑ってしまう
「だよね…京弥は僕よりずっと勉強出来るのに、バイト優先させちゃう所とか僕も嫌味だな~って思うよ」
でも、頼りになるし辛い時には絶対側に居てくれる大切な幼なじみであり親友でもある
「そっか・・西野と滝沢って幼なじみだもんな」
パラパラと教科書を捲る佐々木くんの大きな手を見つめながら僕は「うん」と頷く
「でも・・・時々意地悪だけど」
佐々木くんは「ん~?」と考える素振りを見せながら
「あれは、意地悪てか西野が可愛くて仕方がないって感じの扱いだと俺は思うけど?」
肘をつきそんな事をサラッと言うもんだから
一気にピシッと固まってしまう
可愛い!?
僕が?
まぁ。顔の造り云々じゃない事は流石に分かるけど・・・
「可愛いとか、、さすがにそれは無いかなと思う、けど・・・」
むしろ僕の行動や発言にいつもイライラしてる様に思う・・それを可愛がってるって言うのかな?
「滝沢みたいなタイプは興味が無い奴とかには自分から関わろうとしないだろ?」
確かに・・・
言われてみればそうかも
基本的に京弥は人と群れるとかしないし
友達がいない訳じゃ無いんだけど、好き嫌いがハッキリしてるし
その代わりそういうクールさが良いって言う女子もいるみたいだけど
「そうかも・・・京弥は一匹狼みたいな所があるし、女子達は何かそこがカッコイイとか言ってるの良く聞くし僕のクラスでも、人気はあるんだと思う…」
女子の好みって良く分からないよね…
僕は佐々木くんみたいにいつもにこにこしてて誰とでも分け隔て無く接してくれる人が良いけどなぁ…
なんて思いながら佐々木くんを見る
それにしても、制服姿の佐々木くんは凄く新鮮だし、かっこいい
何か得した気分
思わず顔が緩んでしまう
ジロジロ見ていたのを視線で気付いたのか
バチッと佐々木くんと目があってしまった!
何か話さないと変に思われる!
「…あっ…な何かユニフォーム姿じゃない佐々木くん見るの…新鮮だね!」
そういうと佐々木くんは自分のワイシャツを引っ張りながら「そう?」と僕の方を見る
僕はコクコク頷いて話を繋げようと口が勝手に動く
「うん!制服姿も新鮮だけどユニフォーム姿の方がかっこい……!」
言った後に思わず口を押さえたが既に遅し
バカ!僕のバカ!
かっこいいなんて男の僕に言われたって
嬉しくないし気持ち悪いに決まってるのにぃ~~!
恥ずかしくて顔が熱くなるのが自分でも分かる
もう!穴があったら地の果てまで掘って埋まりたい気分だ!!
顔が火照ってて変な汗まで出てくる
すると突然 フハッと笑う佐々木君の声が聞こえて視線を向けると「西野…顔真っ赤 」と言いながら僕の頬を指先でつついて来た
その顔はとても優しげで嬉しそうに見えるのは僕の勘違い…じゃ無ければ良いけど