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キミの声  作者: AYA
3/14

急展開!

どうして?

どうして?

わざわざ僕の所まで走って来たんだろう?


気持ち悪いって言いに来た?

何で見てたんだよって言いに来た?


でも、変わらず笑っている彼からはそんな言葉が返ってくる様子もない


何か言わないと!

そう思うのになかなか僕の口は動いてはくれない

ただただ自分の貧相な一重の目をこれでもかってくらい見開いてるだけ


すると

彼が気まずそうに苦笑いしながら野球帽をとり

あ~そうだよなと独りごちて野球部にしては長めの髪をかきあげた


こうして間近で見ると本当に彼はかっこいい

身長も高2にして165cmで止まってしまった僕より遥かに20cm以上は高いだろう

人懐っこそうな綺麗な二重の目やスっと通った鼻筋、少し薄い唇も笑うとニコちゃんマークみたいになる

比べて僕は

いつも眠そうとか怒ってる?とか言われてしまう野暮ったい一重に母親に似ず父親譲りの潰れた様な鼻ただ救いは小さい事

唇は1番のコンプレックスたらこ唇とまでは行かないけれどボテっとなって

まぁ。所謂イケテない顔なのだ


自分で解説してて虚しくなってきた

ふぅ

と口から思わずため息が漏れてしまう

そのため息に彼が気づいて

慌てた様子で僕の方を見ながら

「あ!急にごめんな?」

と突然の謝罪

声になったか分からない僕の「え?」が聞こえたのか、まくし立てる様な早口で、実はと言う


「いや!あのさ!良く教室の窓から野球部の練習見てるよな?」


サァーっと一気に血の気が下がって胸がヒヤリとなった

バレてる!

ずっと見てたのバレてしまった!

胸に抱え込んだ日誌をぎゅっと握りしめる

そうでもしないと倒れてしまいそうだったから


「ご、ごめんなさいっ」

俯いてそれだけ言うと階段の壁に手をつけながら足早に降り、彼の横を通り過ぎようとしたら


ぐいっと

日誌を抱え込んだ方の腕を掴まれ僕は勢い余って後に倒れそうになった


「わっ!?」

倒れ込む前に彼が背中を支えてくれていた

「おっと!悪い・・・大丈夫か?」

低音なのにグラウンドでも良く通るスッキリとした彼の声が間近で聞くと、こんなにも甘く聞こえてしまう自分はおかしいのかも知れない


しかも今は密着に近い状態だ

さっきは真っ青に近かったであろう顔も今はきっと真っ赤になってるに違いない

「あ・・・りがと」

すると彼が慌てたように「あ、悪い!」とパッと掴んだ腕を離してくれて、ホッとしている自分と何だか離さないで欲しいと思う自分が居て困惑する

学年こそ一緒だけどクラスも違う自分と彼の

今の急展開な状況にどうしてこうなったのか

いつから僕の事を知って居たのか知りたいのに

人見知りも加えてずっと気になって居た彼が近くに居るだけで臆してしまう

相変わらず俯いたままの僕

沈黙を破ったのはやっぱり彼の方だった

「西野・・・だよな?特進クラスの」



急に自分の名前が彼の・・・佐々木涼真の口から発せられ驚きのあまり彼の方を見た

彼、佐々木くんはまたニカッと笑い、お!やっぱり?と言いながら

「グラウンドの場所って特進クラスが良く見えるからさ、練習中に窓から誰か見てんなぁってずっと思ってて」

彼は屈託のない顔で笑いながらそう言う

確かに今日は日直でいつもの様に野球部の練習否、佐々木くんを見てたけれど、それ以外の日でも時々居残って勉強しながら見てたのも事実だった

それでも!っと思い

「ぐ、グラウンドから特進クラスって結構な距離あるのに・・・ぼ僕って分かった、の?」

言いながら彼の目を見る事が出来ず首から伝う汗を見る

そんな視線の合わない僕を気にせず

「あ!俺ね視力だけはいいんだ!2.0!」

頭の方は全然だけどさ!なんて笑いながら言う


いや。2.0でも流石に顔認識までなんて難しいでしょうが!

って言いそうになったけど、今日初めて喋る

ずっと気になって見ていた相手に軽口なんて叩けない

それより何より、明日から放課後に佐々木くんを見る事が出来なくなってしまった

馬鹿な自分を恨めしく思う


もう諦めて明日から猛勉強に励まないと

そう思うが早いか、彼を最後にちゃんと目に焼き付けようと彼を見上げながら「佐々木くん」

と初めて名前を呼ぶ

「まだ・・・練習の途中でしょ?僕も鍵」

返しに行かないと

と言うのを遮って佐々木くんは満面の笑みで「名前!俺の名前知ってくれてたんだ?!」

あ・・しまった!

でも、最後だしいいか

「う・・・ん。野球部のエースでしょ?僕のクラスでも結構有名だよ?特に、女子が騒いでるの良く聞でも、最後だしいいか

「う・・・ん。野球部のエースでしょ?僕のクラスでも結構有名だよ?特に、女子が騒いでるの良く聞いてたから・・・」

これは、本当の話


僕のクラス特進は進学コースだから、色恋なんて後回しな男子が多いし女子は女子でそんなガリ勉男子なんかに興味すら湧かないらしく

休憩時間は野球部の誰々がとかどこぞのクラスの誰々がって話で盛り上がってた

その中でも1番名前が上がってたのが、今僕の目の前にいる彼、佐々木涼真くんだった

始めは興味本位でどんな人物なのか…って見てたけど

いつも人が周りに居て、良く笑ってる笑顔が良いなぁって自分には無いものばかりだったから

体育祭や文化祭なんかでもクラスの中心的存在で盛り上げ担当でかっこいいのにたまにふざけたりする姿をみてる内に自分の中で佐々木涼真と言う人物の存在がどんどん大きくなって、遂には放課後野球部の練習をこっそり見る程になってしまった

これが、ただの憧れなのかどうなのか初めは分からなかったけれど

良く野球部のマネージャーの女の子と一緒に居るのを見たり、クラスの女子達がマネージャーと佐々木くんが付き合ってる

なんて話を聞いた瞬間に胸が苦しくなって、喋った事もないマネージャーの子に嫉妬までしてしまった

それで、あぁ僕はいつの間にか彼の事が好きになってたんだと胸のモヤモヤがスッキリしたのを覚えている

でも、接点の無い佐々木くんとどうにかなりたいなんて思って無かったし、こうして喋ってる事自体本当に奇跡に近い


そんな事を思い出しながら、佐々木くんを見ていると、さっきとは違う苦笑いになった佐々木くんは、癖なのかまた髪をかきあげながら

「あ~女子ね・・・」

と納得したような、してない様な顔で僕を見ていた

え?何か変な事言ってしまったのかな?

でも、女の子にモテるのは男としては嬉しい事じゃないのかな…

僕はモテた事が無いから良く分からないけど

そして、急に黙ってしまった佐々木くんを不思議に思って

僕は首を傾げて佐々木くんを見上げた

その仕草が俗に言う女の子が男の子にする甘えたい時にする仕草とは知らずに・・・


それまで黙ったままだった佐々木くんが、苦笑いから少し戸惑う様な顔つきになり、野球部で焼けた大きな手で自分の口元を隠し、西野・・・と小さな声で僕の名前を呼ぶと

「お前・・・それわざとじゃ無いよな

?」

え?

わざと?

何が?

女の子からモテてるよって話が?

佐々木くんの謎めいた言葉に困惑してしまう

何か気に障る事でも言ってしまっただろうか…

謝るにも何に対して謝るべきか分からないし

どうしたらいいのか

本当に僕は対人スキルが無さすぎる

自分の容姿や性格に少しでも自信があれば違ったのかな・・・

自分が女の子なら・・・

いや、それよりもっと活発な性格ならこんな事で悩まずに済むのにな・・・

勉強しか出来ないガリ勉の僕と

男女問わず人気者で野球部のエースの佐々木くん

こんな風に喋れる機会がまさか自分に訪れようとは思ってもみなかった

話しかけられて嬉しい気持ちとやっぱり僕と佐々木くんはでは、誰がみても釣り合いが取れてない


でも!

でも!

やっぱり僕は佐々木くんの事が好きだ・・・

この気持ちは絶対伝えられないけれど、友達・・とかになれないかな…

日誌を持った手に知らず力が入り

意を決し思い切って、あの!っと言うと佐々木くんはすこし驚いた顔をした後、優しげな顔になり

ん?と僕の次の言葉を待ってくれた

佐々木くんの存在自体、ずっとずっと遠くて見てるだけで満足だったのに・・・

ひとつ何かを得たら次も、次もと欲が出てしまう

野球部の練習ももっと近くで見てみたいし

もっと仲良くなりたい!!

ドクドクと脈打つ胸を抑え、口を開きかけた瞬間


「見てるだけで満足だったのに・・・

ひとつ何かを得たら次も、次もと欲が出てしまう

野球部の練習ももっと近くで見てみたいし

もっと仲良くなりたい!!

ドクドクと脈打つ胸を抑え、口を開きかけた瞬間

「奈央ー!!」

と荒々しい声と足音が聞こえ、声のする方へと振り返る

と同時に声の主が誰だか分かり、しまった!

と焦る

今日は部活が無いから教室まで迎えに行くからと言われてたんだった・・・

声の主、僕の幼なじみでもある

滝沢 京弥

は相変わらず「奈央ーー!」

と僕の名前を呼び続けている

元来、俺様な性格だから待たされるのが嫌なのだ

しかも、唯一佐々木くんの事を話している一人だから、こんな場面を見られたら何を言われるか、絶対本人の前でも平気で思ってる事を言うから、ややこしい!


明らかに焦った様子の僕に

「・・・西野?大丈夫か?」

と佐々木くんが心配そうな声音で聞いてくる

バッと佐々木くんに向き直り

こくこくと頷き

さっきまで喋るのもやっとだったのに、緊急事態のせいで緊張も吹き飛び、佐々木くんの背中を押しながら

「さっ佐々木くん!部活中だよね?ごめんね?」

背中をグイグイと押す

「え・・・?西野?」

佐々木くんは意味が分からないと戸惑い顔だ

でも、暴君の幼なじみに見られるよりかはマシだ!

「ぶ、部活に戻らないと、叱られちゃうよ?」

「あ~。大丈夫だって、今休憩中だし」

と言うと笑いながら振り返り、背中を押していた僕の手を掴んだ

ひぇっ!

と驚いて佐々木くんの顔を見ようとした

その時

「奈央!やっと見つけた!てめぇ教室で…って・・・何やってんだ?」


ま、まずい!

暴君が現れてしまった・・・!!!


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