第六話 優秀じゃなくて完璧だった茜ちゃん
あらすじの注意通りでよろしくお願いします。
「ふいー、良いお湯だったよ」
「じゃ、私入ってくるね。入ってる間に弁当箱出しといてよ?いっつも出さないんだから」
茜は俺を指差してそう言い放つ。俺、いつも出すの忘れるんだよな。そろそろ茜さんの怒りメーターMAXだろうからちゃんと出さないと。
「返事は?」
「はーい」
「それで出してなかったら、お小遣い減額だよ?」
「は、はいぃ!!」
妹に脅される兄貴。普通か。いやぁ茜に逆らうなんてできない。この家の金銭関係は茜が管理してるからな。俺もバイトはしてるんだけど、やっぱり茜には逆らえない。
「さて、忘れないうちに弁当箱取るか」
自分の部屋に行って鞄を探り、弁当箱をとる。そして弁当箱を分解してキッチンに置く。これで茜にどやされない。すると、机に置いていた携帯が鳴る。誰かと思い開くと、霙からのメールだった。
『今日はごめんね。明日はちゃんと言っておくから』
メアド交換してからの久々のメールで何かと思ったら、謝罪のメールか。えーっと、『良いよ良いよ。明日はゲーセンじゃなくて喫茶店行こうぜ』っと。さて、リビングに行ってテレビでも見よう。そう思って移動しようとすると、また携帯が鳴る。見ると霙からだ。
『うん。ありがと(o^-^o)。明日、楽しみにしてるね』
いやぁ、今の時代顔文字使ってるの久々に見た。LENEで連絡しあってるんだからスタンプとか使うだろ。もしかしてスタンプ知らないのか?まあ良いや。それは明日聞こう。とりあえず返信返信っと。
『おう、楽しみにしててくれ』
ちょっと変わった喫茶店だけど、面白いからな。きっと霙も喜んでくれるだろう。あー、明日は土曜日なのに学校あるんだよなぁ。中学校は参観日以外無かったんだけどなぁ。とりあえずめんどくさい。俺はリビングのソファに飛び込む。飛び込むと急に眠気に襲われた。携帯を触りながら睡魔に負けて俺は眠ってしまう。
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目が覚めると窓の外が真っ暗だった。…今何時だ。起き上がって時計を見る。7時23分。確か寝るときは5時ぐらいだったから、二時間半眠ってたのか。
「お兄ちゃん起きた?」
「ん、起きたぞ」
「晩御飯できてるから食べよ」
「わかった。待っててくれ、今起き上がるっと」
寝転がっていたソファから立ち上がって食卓に向かう。美味しそうな料理が出来上がっている。俺は食器入れから箸を取り出し、自分の席について手を合わせる。茜も俺が手を合わせるのを見て手を合わせた。そして二人合わせて食事開始のあいさつをする
「「いただきます」」
「美味い」
茜の料理は天下一品。俺だって多少は料理できるけど茜の料理には到底及ばない。天と地ほどの差がある。頭がよくて料理ができて家事もできて可愛いって、なんでもできるじゃないか。学校の男子が惚れるのはよくわかる。茜はきっと学校内で将来結婚したい女子No.1だろうな。
「私の方見て何かを悟るような顔しないでよ」
「そんな顔してたか?」
「してたよ。普通、食事中にしないような顔をね」
「悪いな。にしても美味いなこれ」
ただの唐揚げとチキン南蛮とご飯、味噌汁なんだが多分俺が作ってもこのクオリティには遠く及ばないぞ。一体何したらこれだけ美味くなるんだ?思わず聞いてみた。
「なあなあ茜。どうしたらこれだけ美味しくなるんだ?」
「え?それはこれをこうしてあれをあーやって」
うん。全然わかんない。もはや何を喋りたいのかもよくわからない。
「これをこうしたらできるよ」
「へぇ、やっぱり凄いよ茜は」
そう言って茜の頭を撫でる。すると茜は「えへへ」と笑う。
「ありがとう。お兄ちゃん」
「どうしたしまして」
美味しい。これも美味しい。あれも美味しい。それも美味しい。あ、そんなに種類無いか。でも美味しいのは確かだ。こんな完璧妹の料理を毎日食べれるなんてお兄ちゃん嬉しいよ。
「ごちそうさまでした」
「ごちそうさまでした。食器片付けてね?お兄ちゃん」
「はーい」
食器を洗う。これぐらいはやろう。妹に負荷をかけすぎだと思うからな。
「茜。洗っとくから食器渡してくれ」
「あー、ありがと、お兄ちゃん」
「どういたしまして」
二人分の食器ぐらい洗うのは容易い。さっさと洗い終えて乾燥機の中に入れる。そしてボタンをポチっとな。世の中、便利になったなぁ。ってなんで15の俺がそんなこと感じてるんだよ。
「さあて、宿題やって寝るか」
「お兄ちゃん、教えてほしいところあるんだけど」
「おう、多分中学校の内容なら何でも答えれるぞ」
「えっと、この一次関数のところなんだけど」
「うん?それ中2の内容だよな?」
「そうだけど何?」
「………」
うわぁ。ほんとに勉強熱心、ってか一年の内容全部終わらせたのかよ。一学期の終わりの頃に?はええ、怖いね。自分の妹だけどちょっと怖い。高校入ったら俺、茜から馬鹿扱いされるかも…。ひえええ。そっちの方が恐怖なんだけど。ちなみに茜は勉強するとき、眼鏡をかけます。理由は特にないらしい。ただ眼鏡をつけてる方が集中できるとか。
「?どうしたの?お兄ちゃん」
「…いや、何でもない。これはな、ここをこうして」
「あー、なるほど。そういうことなのか。ありがとうお兄ちゃん」
「良いって」と言い、俺は自分の部屋に行く。…俺も勉強しよ。多少睡眠時間削っても良いから、茜にだけは馬鹿扱いされたくない!新には馬鹿にされるけど(意外とあいつ頭良いからな)。宿題を確認して始める。一時間ぐらいで終わらせて、一時間半ぐらい勉強する。このぐらいで十分。これを毎日続ければ学力も向上するだろう。
茜はまだ勉強しているのかと思い、茜の部屋を覗きにいく。電気は消えていて、茜は寝ている。寝顔が可愛かったけど、これ以上見てると何故か罪悪感に苛まれると感じとったため、静かに扉を閉じて自分の部屋に戻り、ベッドに入る。
「明日、めんどくさいなぁ」
でも霙と一緒に帰れるってことを考えると、そのめんどくささはどこかへ吹っ飛び、明日の学校が楽しみになる。目覚ましをセットして俺は瞼を閉じる。ああ、明日が楽しみだ。