第三話 熊のぬいぐるみ
俺と葵と霙と新はゲーセンに行って遊ぶ。遊ぶって言っても新と葵はメダルゲームしてて、俺と霙はクレーンゲームとかして遊んでる。
「じぃーーーーーーーー」
霙がクレーンゲームの景品の結構大きい熊のぬいぐるみをじっと見つめている。その見てる姿が小さな子供のようでちょっと可愛い。
「それ、欲しいのか？」
「あ、いや、可愛いなぁって」
そう言いながらもチラチラぬいぐるみの方を見ている。言葉には出さないけど目が語っている。「めちゃくちゃ欲しい！」と。
「欲しいんだろ？取ってやるよ、荷物持っててくれ」
そう言って霙に鞄を渡す。財布を開き、小銭入れから１００円を取り出す。しかしそれは１プレイ５００円だった。高いな。だから霙は指を咥えて見るしかできなかったのか。もちろん俺は１００円玉を小銭入れに入れ、５００円玉を取り出し、コイン入れに入れる。
「よし、取るぞ」
「だ、大丈夫だよぉ」
「ほしいんだろ？」
「う…うん」
霙は申し訳なさそうにしながらこくりと頷く。欲しいんだったら取ってやらないと。俺だって男だ。２５００円、５プレイまでなら粘れる。けどかっこつけたいから１プレイで取ってみせる。こう見えてクレーンゲームは得意な方なんでな。そしてぬいぐるみが結構ダクト近くに来てるからこれなら俺でも取れる。
「位置調整はしっかりしないとな。横はこのぐらいか」
クレーンゲームの横を見たりする。この機体は制限時間内ならレバーで自由にアームを動かせるやつだ。制限時間は３０秒、十分すぎる。ただ、アーム３本のクレーンゲームはやった回数が少ない。そこがちょっと不安だから時間を多く取って調整する。
「ここで大丈夫そうだな」
「大丈夫かな？ちょっと横にずれてない？」
「大丈夫だ。長年(３、４年)の勘がそう言ってる」
アームを降ろすボタンを押す。独特な音楽と共にアームが降りる。ぬいぐるみの顔ぐらいでアームは止まり、ぬいぐるみを掴む。…ちょっと想定より高い位置で止まったな。一応掴んでるし大丈夫だろ。アームはぬいぐるみを掴んだまま上に上がり、ダクトに向かう。
「な！？」
ぬいぐるみが移動の途中に落ちてしまった。ぬいぐるみの掴み方が不安定だったかも。くそ、霙の忠告をちゃんと聞いとくんだった。ぬいぐるみはダクト前へ落ちる。もう一回チャレンジするのかと思ったそのとき、ぬいぐるみがはねてダクトに入った。
「でっでれってってってー」
どこかで聞いたことあるような音楽が流れ、ガチャンと景品取り出し口の鍵が開く。呆然としながら俺は取り出し口内のぬいぐるみを取る。ほんと、よくとれたな。
「はいどうぞ」
「真琴、ありがとう！！」
満面の笑みで感謝される。そんな顔で言われたら照れるだろ///。
「お、この機体のぬいぐるみ取ったんすか？」
「そうだぞ。凄いだろ」
「この機体、アームが弱いので有名なんっす。よく取れたっすね」
「あー、ダクトの近くまで来てたからきっと誰か頑張ったんだな。そっちはどうだ？」
「荒稼ぎ中っすよ。さっきジャックポット当たったんでうちは今日だけで二千枚ぐらい稼いだっすよ」
ジャックポット当てて二千枚て、今日こいつノリに乗ってるな。
「やばっ。新はどうだ？」
「新先輩はジャックポットとか大きいやつじゃないですけど、当たれば結構ガッツリとれるやつで四百枚ぐらい稼いでたっす」
「新もまあまあ取ってるんだな」
「ぐぅ～～～～～～～～～～」
俺の腹が鳴る。今何時だ？腕時計を見ると３時半だった。おやつ食べたい。
「もー、先輩食いしん坊っすねぇ～」
「ふふ」
霙が笑った。そんなに面白いか？まあいいや、とりあえずソフトクリームか何か買いに行こう。ゲーセンを出てすぐ近くにフードコートがあるから色々食べれるんだよな。俺はすたすたとゲーセンから出ようとする。すると俺の服をぬいぐるみを抱き締めている霙が引っ張って止めた。
「どこ…行くの？」
「そこのフードコートでなんか食ってくるだけだぞ？来るか？奢るぞ？」
「う、ううん。大丈夫」
「そうか？じゃあちょっと来てくれ」
俺は霙を連れ、メダル預かり所に行く。そこで俺が預けている一万五千三百枚から、百枚を取り出して霙に渡す。
「俺が帰ってくるまで暇だろうからこれで遊んでてくれ」
「でもなにやれば良いかわからないし…」
「そっか、おーい新ー」
「なんだー？」
「あそこか」
俺は霙を連れて今度は絶賛メダル稼ぎ中の新の所に向かう。
「どした？」
「俺が戻ってくるまで、霙にメダルゲーム教えといてくれ」
「戻ってくるまでって、どっか行くのか？」
「フードコートでなんか食ってくる」
「？じゃあ後で金渡すからチュロス買ってきてくんね？」
「了解、葵ー何かいるかー？」
「あー、飲みもん買ってきてくださいっす。新商品のビミンCってやつっす」
ビミンCってバケモノって呼ばれるぐらい炭酸が強いやつだよな。結構美味しいらしいし、喉が焼けるような感じが癖になるっていうんでリピーターが続出してるらしいな。
「霙は何かいるか？」
「私は大丈夫だよ。早く戻ってきてね」
「ああ」
俺はゲーセンを出てすぐのフードコートに向かう。霙、ちゃんと遊んどいてくれるかな。
あらすじにある注意通りでよろしくお願いします。
