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狂イユク夏ノ日ハ延々ト  作者: 大亀
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第二十九話 春風のもう一人の料理人

あらすじの注意通りでよろしくお願いします。

俺達は一時間程度、新と談笑していた。全てを忘れて話ができてとても楽しかった。


「っと、そろそろバイト行かなきゃ」

「よし、じゃあついてくぜ」

「ちゃんと注文しろよ?」

「わーってるって」


俺たちは部屋から出て、階段を下りて玄関で靴を履く。終始、談笑して笑っていた。


「お兄ちゃん、行ってらっしゃい」

「ああ、行ってきます」

「それじゃ、お邪魔しました」


そうして俺たちは家から出る。まあ、家に居るときと状態は変わらない。春風に向かう間、駄弁って笑っているだけだったから。


「それじゃあ、俺は服を着替えないといけないから」

「そうだな。お前が出てくるまで中でメニュー見て待つとするよ」


そう言って新は店内に入っていった。俺は裏口から入る。そして少し歩いたところにある男子更衣室に入って着替える。


「すぅ、はぁ」


深呼吸して、一気に仕事モードに変える。そして更衣室から出て店内に出る。そこで俺はビックリした。


「おーっ!先輩、きまってますねぇ」

「なんで葵がここに居るんだ!?」

「ちょっと近く通ったら新先輩が見えたんで」


そう言われて見てみると葵と相席になっているのは新だ。そして新は俺に笑って手を振っている。


「お前…」

「しゃーねーだろ?」

「…まあ、葵の話を聞く限りは不可抗力ってやつだな」

「じゃあ先輩。早速なんすけどこのうさぎちゃんパフェってやつをお願いするっす」

「はいよ。新はどうする?」

「俺はまだ良いや」

「そうか。じゃあ待っててくれ」


俺は注文を厨房に届けに行く。


「うさぎちゃんパフェ一つです」

「あ、真琴君久し振り…ってほどでもないか」

神矢(かみや)さん!」


この店のもう一人の料理人、神矢(かみや) 紅太郎(こうたろう)さんだ。昨日は風邪で倒れていてあの忙しい時に居なかった人だ。


「それで注文はなんだい?」

「うさぎちゃんパフェです」

「あれね」


そう言って神矢さんは作業に取りかかる。神矢さんは元々パティシエ志望だったらしい。だからこの店のスイーツ担当は神矢さんなのだ。しかし、店長は神矢さん考案のスイーツを再現するのだ。確かに味は神矢さんの方が上だけど、外見はほぼ同じにできる。


「ところで店長はどこへ?」

「店長ならお手洗いだよ」


神矢さんは冷蔵庫から材料を取り出しながら答える。なんかね、この人が料理をすると様になるんだよね。イケメンだからかもしれないけど。


「何ぼーっとしてるんだい?早く行かないと猫田が怒るんじゃない?」

「そうですね。戻ります」


そう言って戻ったが、今の猫田さんは注文が来ない限りは怒ったりしない。何故なら渚さんとのお話に夢中だからだ。


「真琴君…コーヒーを…頼めるかしら…」

「あっ、わかりました幸子さん」


この店の常連客の幸子さん。今年で82歳らしい。店には毎日来ていて俺は名前を覚えてもらえた。俺は注文のコーヒーを淹れる。


「はい。どうぞ」

「ありがとう…」


幸子さんは暖かいコーヒーを一口飲んで、「ぷはぁ」と息を漏らす。


「ありがとうね…真琴君…あそこの二人の…邪魔をしたくなかったから…」


そう言って幸子さんは指を差す。その指は楽しそうに話す猫田さんと渚さんを差していた。俺は笑って話を続けた。


「あー、わかります。幸せそうに話していると、物を頼みにくいですもんね」

「そうよねぇ…」


ほんとは働いている途中に駄弁っているのはダメなんだけどね。


「真琴君は…優しいわねぇ…」

「そうですか?」

「ええ…最近の若者は…私みたいな老いぼれには…冷たいもの…」


幸子さんはトーンを少しずつ低くして言う。俺はそれに笑顔で答える。


「老いぼれなんかじゃありませんよ。僕からしたら人生の大先輩ですから」

「…やっぱり優しいわね…真琴君は…」

「ありがとうございます」


幸子さんは笑顔になる。俺はその笑顔で心が満たされる。…別に俺は幸子さんが好きとか言うわけではない。ただ、人の笑顔を見るのが好きなだけだ。


「あっ、注文待ってる人が居るんで行きますね」

「ええ…」


俺は手を上げて注文を待っている人が居たのでメモを持って、その人のところへ行った。


「ご注文はなんでしょうk…霙!?」

「真琴、やっぱり気付いてなかったの?酷い」

「ごめん。ほんとに気付かなかった」


多分葵と新の衝撃が強すぎて気付かなかったんだと思う。いやそう思いたい。


「じゃあ改めて、ご注文は何でしょうか?」

「スイーツで真琴のオススメってできる?」

「ええっ」


ここに来てびっくりする回答が返ってくる。お、俺のオススメ?しかもスイーツで?


「無かったら良いけど…」

「あっ、いや、うーん。ここの店のスイーツ全部美味しいのは知ってるし…」

「そんなに悩むなら良いけど」

「いや、もう少し考えさせてくれ」


俺は腕を組んで考える。俺のオススメだろ?


「…このたっぷり苺のショートケーキ?」

「ほんと?」

「ああ、美味しいぞ」


一度だけ食べさせてもらったことあるけど、苺が凄くて美味しかった。


「…真琴って苺、好きだよね」

「大好きだけど、どうかしたか?」

「何でもない。じゃあそれお願い」

「わかった。待っててくれよ?」


俺は注文をメモって厨房に行く。すると葵のうさぎちゃんパフェはすでに出来上がっていて、店長も戻ってきていた。


「真琴君、できたから運んでね」

「わかりました。あと注文です。たっぷり苺のショートケーキです」

「了解」


すぐさま神矢さんは冷蔵庫を開く。なんかもう仕事人って感じでかっこいいんだけどあの人。俺もあんな風に料理できるようにならないかな。

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