第二十八話 真琴の過去
あらすじの注意通りでよろしくお願いします
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人はいつ、どこで死ぬかわかったもんじゃない。それを両親の事故で学んだ。ついさっきまで生きてた両親が帰ってくることはなかった。
「両親がこの若さで他界なんて、可哀想ねぇ」
そう言う親族や親の知り合いの言葉を聞いて、 気が狂いそうだった。人は信じれたものじゃない、そう学んだ直後だったから。
「お兄ちゃん、お母さんとお父さんもう帰ってこないの?」
「………」
「お兄ちゃん?お兄ちゃん?」
俺は口を開かなかった。いや、開けなかった。ここで俺が断言すると、茜を悲しませてしまうから。けれど、言わないといけないことなんだ。だからこそ、口を開けなかった。
「お兄ちゃん、ねえってば」
「…ごめんな、茜。俺がお前を守るから」
「?何のこと?」
「何でもない」
それから俺は、茜を悲しませてしまわないように、必死に両親の代わりになった。家事洗濯、家計をつけることから勉強を教えることまですべてやった。だから、自分の宿題等がおろそかになった。先生は俺の事情を知っていたので俺に何も言わなかった。
ちなみに俺は児童養護施設へ行くことは拒んだ。人は信用できたものじゃない。そこで横に居る人間がいつ俺を殺すか、茜を辱しめたりするかわからないからだ。
俺は修学旅行には行かない。遠出して宿泊する学校行事は全く参加しなかった。まだ小学2、3年の茜を家に置いて行けなかったからだ。それのせいでノリの悪いやつだとか言われたが、俺は一切動じなかった。
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中学になり、交流旅行的な感じの行事が有ったが、それにも参加しない。茜に何かあったら心配だから。最後まで電話で俺を説得ようとした生徒指導の先生が居たが、俺が折れないので諦めた。ただ茜は俺がその学校行事があることを電話が来たので知られてしまう。
「何でお兄ちゃんは行かないの?」
「…そうだな、茜が心配だからだよ」
「大丈夫だよお兄ちゃん。私もう小学4年生だよ?」
「ダメだ!もう…誰も失いたくないんだよ。そのためなら俺はどれだけ自分が犠牲になっても良い。だけど茜が居なくなるのは嫌なんだよ…」
「……ごめんなさいお兄ちゃん」
それからと言うもの、茜は俺に色んなことを聞いてきた。料理や洗濯、家計の付け方など、俺のやっていること全てを。多分、自分は兄に負担を掛けすぎだとでも思ったんだろう。違うぞ茜、俺は俺の意思でこうしているんだ。
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中学2年、クラスである人が俺に話しかけてくる。名前は神崎新。1年の頃は幼なじみの霙ですら俺に話しかけて来なかったのに、彼は普通に、まるで日常のように俺に話しかけてきた。
「なあなあ、君って真琴って言うんだろ?1年よろしくな」
「…」
新は手を出してきた。こういうやつが、時に人を殺すんだ。そう思って俺は差し出された手を無視して何処かへ行った。
これであいつは二度と話しかけてこない。そう思っていたのだが、毎日毎日何故か俺に付きまとってくる。
「なあなあ真琴君、俺と友達になってくれない?」
「……」
「シカトかい?酷いねぇ。それでも俺は折れないよ?」
「…何処か行け。邪魔だ」
強く睨み、負の感情を思いっきり込めて言った。そして俺は方向を変えて歩きだした。その日、新は俺に関わってこなかった。
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「んでさー真琴君、あいつの話がちょー面白くてな」
「何で…」
思いっきり突き放したつもりだった。けれども次の日には俺に関わってきたのだ。
「何であんなこと言われてお前に関わるのかって?」
「…(コクコク)」
「そりゃ、お前が悲しい目をしてるからだよ」
「!!」
「なんかな、ほっとけねぇんだわ。そういう目をしてるやつ」
「そうか、そんな単純な理由だったんだな」
面倒見が良いやつだ。そう思った。そしてこいつなら信用できる。そう思ったやつでもあった。
それから俺は、学校ではいつも新と一緒に過ごした。俺は新と居るときは、自分が味わっていた苦痛を忘れられた。その明るさからか、何度か告白されたが全部断った。恋愛になんて興味はない。
そうして、俺は新のお陰で段々と明るくなっていった。俺が明るくなるにつれて、茜も明るくなり、家の雰囲気がよくなった。
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「どうした?ぼーっとして」
「…何でもない。昔のことを思い出してただけだよ」
「そうか?それでさあの五組のくるみちゃん居るじゃん?あの子めっちゃ可愛いんだよね」
「大概にしろよ?その女癖」
…こんな女たらしだけど、俺は感謝しているんだ。俺を負の連鎖から引っ張り出してくれて。だからこそ、新とは、親友で居られる。まあ、持ち前の女好きで何かなったら俺は助けないぞ。それが親友としてやるべきことだからな。