第二十七話 新と帰宅
あらすじの注意通りでよろしくお願いします。
「うまい」
「じゃあ1つくれよ」
「あげねぇよ。何でこんなに美味しいものをあげなきゃならないんだよ」
俺は机の上に置いていた弁当箱を持ち、新の届かないところに移動させる。
「えー、酷くない?」
「…そうだな。ウインナー1つぐらいなら良いぞ」
「卵焼きは?」
「だめ」
「ちぇっ。ま、貰えるだけ良いか。いっただきまーす」
そう言って新はひょいっとウインナーを取る。凄く手際よく、まるでいつもやってるかのように。
「うまい!また腕上げたな茜ちゃん」
「うん。俺もびっくりしてる。何で市販のウインナーがここまでおいしくなるのか教えてほしいぐらいだよ」
「とか言って、教えてもらっても作らないだろ?」
「失礼な。俺はな、家事全般を茜に取られているだけで茜がやらなかったら俺がやってるぞ」
「本音はどうよ」
「全部茜に任せたい」
本音はそれなんだよなぁ。茜は頑張り過ぎだよ。だけどそれに乗っかる俺も俺だよ。茜に勉強だけに集中するように促せない。
「なあなあ真琴、お前さ、結婚するなら料理とか家事がめちゃくちゃ上手い人が良いか?」
「そう…だな…。まあ家事全般ができるなら養ってもらいたいけど、適度にできるぐらいが良いな。二人共同で家事をするんだ」
「まあ真琴ならそうだと思ったわ」
「?じゃあお前はどうなんだ?」
「そりゃもちろん、好きになる女子なら誰でもOKよ」
「うわぁ」
流石女たらし。相変わらずキモイよ。俺が女なら好きになれないだろうな。
「今俺のことキモイって思ったろ?」
「うん思った」
「ストレートに言うねぇ」
「ほんとのことだからな」
どうしてこいつがこんな女たらしなのに嫌われたりしないわけは、こいつの憎めなさにある。こいつのキャラがね、どうも憎めないらしい。俺は親友だから憎んだりしないけど。
「そうだ、今日お前んち寄って良い?」
「良いけど、バイトあるからそんなに長居できないぞ?」
「あの喫茶店でか?じゃあ俺も行こうかな」
「…まあ、店の利益になるから良いか」
その約束を承諾する。別に来られても特に問題は無いしな。
――――――――霙―――――――――
「…適度にできるぐらいが良いな。二人共同で家事をするんだ」
「!!!」
思わぬ形で情報が手に入った。適度にできるぐらいか、てっきり料理の上手い人じゃないとだめなのかと思ってた。これなら今の私でもどうにかできるね。
「今日も行こっかな…」
真琴のバイト先、喫茶店『春風』に。いつ、どこで撮られてるかわからないから、現状唯一真琴と話ができる場所だ。生憎、お金は小さい頃から真琴と一緒にいるためにずっと貯めたお金があるから大丈夫。
ふと、時計を見た。あと十分で休憩が終わる。だけど私の弁当は半分も減ってない。ちょっと遅いな、さっさと食べよう。
――――――――真琴――――――――
昼食の後は眠気に負けず、授業を受けた。そして本日の授業すべてが終わった。
「まーことー。帰るぞー」
「ああ、わかった」
俺は鞄を肩から掛け、新と歩く。廊下、階段、昇降口と進んだ。
「茜ちゃん可愛い?」
「いきなりどんな質問してんだよ。可愛いけど」
「ふーん」
「まさか茜にまで手を出すのか?」
「いやいや、親友の妹には手を出さんよ」
逆にいえば他には手を出すってことか?そう考えたが何も言わない。多分そうだから。
「いやぁ、お前んちに行くなんて一年ぶりぐらいだから何か変わってるのかなぁって」
「変わってないぞ」
「そっか、昔みたいに仲良くしてくれたら良いんだけどな」
ニッシシシと新は笑う。茜と新ってそんなに仲良かったっけ?
「さようなら~」
「「さようなら」」
校門に居る先生にそう言って校門を出る。そして帰路に着くこと10分。お前んちに着いた。
「ただいまぁ」
「おかえりお兄ちゃん!」
「お邪魔します、茜ちゃん」
茜は玄関から新も一緒に入ってきたところを見て、一瞬嫌そうな顔になったが、すぐに笑顔になる。
「こんにちわ。えーっと…」
「新だよ。神崎新。一年ぐらい前に来てたんだけど、まあ覚えてないか」
「すみませんね」
「とりあえず新、上がれよ。俺の部屋に案内する」
「覚えてるよ。お前の部屋の場所はな」
まあ覚えてるよな。何回も来てたしな。
「じゃあ先に行くぜ?」
「あっ!ちょおい…はぁ」
まるで幼稚園児のようにはしゃぐ新を見て呆れる。新は靴を脱いでちゃんと揃えると、階段に走っていき、トントントンと階段を上がる。俺はゆっくり階段を上り、自分の部屋に行く。新は俺のベッドに横になってる。
「いやぁー!ふかふかだなやっぱ」
「跳ねるな跳ねるな」
「わりわり」
新は横になりながら跳ねるのをやめ、ベッドの上であぐらをかいている。
「で、何するんだ?」
「それはもちろん!エロゲーかエロ本探しだよ!」
「無いぞ?」
「え?」
「無いって」
「嘘…だろ…。年頃の男子はベッドの下に隠してるのに」
「そういうお前はあるのか?」
「無いよ?」
だって、本とかで見るより実物見る方が可愛いもん。と言う。全く、これじゃどっちが良いか悪いかわからないな。そう考えていると扉が開いた。
「ジュースとお菓子入れたよ」
「ありがとう、茜ちゃん」
「ありがとな茜」
「ここに置いとくね」
小さなテーブルの上にことっとおぼんで運んだクッキーの皿とジュースの入ったコップを置く。そうすると茜は素早く部屋を出ていった。
「今思うとやっぱり丸くなったよな。お前ら兄妹」
「?」
「中学2年の頃、お前と出会ったときの第一印象はみんなを疑ってるような目をしてる。だったしな」
「そんなに怖い目をしてたか?」
「してたしてた。それで茜ちゃんも近寄りがたい雰囲気醸し出してたし」
確かに両親が死んでから4年、新と友達になるまでずっとピリピリしてたと思う。誰がいつ俺を殺すかわからないってことで。
「そんな俺たちをこんな状態まで戻れたのはお前のお陰だ。ありがとう」
「…改めて言われると照れるな///」
新はちょっと顔を赤くしてそう言う。でも、本当に感謝している。中学のあのとき、新が声をかけてくれたことで、俺は変われたんだから。




