第二十一話 新と気まぐれメニュー
あらすじの注意通りでよろしくお願いします
「それでは、いただきます」
スプーンで一口ずつとって食べる。食べてる姿も美しい。って、言ってる場合じゃねぇ。さっさと話を終わらせて仕事に戻らないと。
「会長、食事は楽しんでほしいんですけど早く仕事に戻らないといけないんですよ。あと少しなんですよね。すみませんけど早くしてもらえませんか?」
「それもそうね。わかったわ」
会長はスプーンを置いて俺に質問を開始する。その姿にはさっきまでの可愛さはなく、真剣な様子だ。
「真琴君、あなたは今回のことについてどう考えてるの?」
「どうって言われましてもねぇ」
「考えてることをぶちまけてくれて良いのよ」
「考えてることですか。とりあえず犯人のやりたかったことが知りたいですね。あとはこういうことはやめてほしいです。僕ならまだ良いけど、霙とかの周りの人を巻き込むのは嫌なので」
「そう。ありがとう。もう良いわよ」
「そうですか。では」
俺は席から立ち、仕事に戻る前に猫田さんと彩音さんにお礼を言おうと二人がいるレジ前に行く。向かう途中で客が入ってきた。
「いらっしゃいませー」
「ここか。例の場所は」
「新かよ」
「あれ?なんで真琴が店員姿でいるんだ?」
「ここでバイトしてるからだよ」
「そうなの?まあいいや、さっさと席に案内してくれ」
「はいはい」
俺は新を空いてる席に案内する。
「あ…あのさ真琴」
「?どうした?」
注文をとるメモを取り出し、準備万端の俺に新は問いかけてきた。なんだろう。
「なんで雪華生徒会長がっ!」
「なんでって、客として来てるだけだけど」
「それはどうでも良いよ。俺が言いたいのはあのオムライスにかかったケチャップだよ。ああいうサービスしてんのかって聞いてんだ」
「やってない。あれはまあ、特別だ」
「良いじゃねぇか。俺とお前の仲だろ?」
「…じゃあ俺描くけど良いのか?」
「あっ、大丈夫です」
俺が描くって言った瞬間、勢いが一気に消えた。まあ、男からあんなの描かれたくないだろうからな。俺も嫌だ。
「注文、決まったか?」
「…この気まぐれメニューって何?」
「気まぐれのメニューですけど」
「何が入るの?」
「気まぐれですけど」
「日替わりとかじゃないの?」
「違うよ。文字通り気まぐれ。料理の内容も材料も。新アレルギー無いよな?」
「ないけど」
「どうする?それにするか?」
「…する」
「わかった。じゃあ注文を確認します。猫の気まぐれメニューが一人前で良いですか?」
「ああ」
「では少々お待ちください」
新は小刻みに震えてる。そんなに怖いか?俺はその注文を、厨房ではなく猫田さんに言いに行く。
「猫田さん。一人前だそうです」
「おー!久々に私の出番かにゃ?とびっきりのやつを作ってやるにゃよ!」
「ちゃんと食べられるやつを作ってくださいね?」
猫田さんは袖をまくり、厨房に行く。数十秒後、料理担当の店長が出てきた。
「真琴君、ほんとに気まぐれメニュー頼んだお客様いるの?」
「はい。本人小刻みに震えてますよ」
「あー…真琴君、あの子にコーヒーを1杯あげて」
「了解です」
俺はコーヒーを用意して、新に持っていく。
「ほらよ新」
「え、なんでだ?頼んでないぞ?」
「店長からだよ。気まぐれメニュー頼んだ人にはよくあげてるな」
「そうか、ありがとうございますって伝えてくれ」
「あーい」
俺は店長の所に行き、新からの言葉を伝える。すると
「お礼を言われるのはまだ早いよ。それはメニューを食べてからじゃないと…」
「そうですね…」
この店の料理は基本残すことはない。だが、気まぐれメニューにおいては別だ。店側から「食べられなかったら残してください。回収します。それでその分のお代はいただきません」と言うほどだ。たまにそれほどヤバイときがある。
「おーいまこ坊、できてるにゃよー」
「はい!」
俺は皿に盛りつけられた、なんとも言えない料理を新の所に行く。これは…どっちだ?
「き、来た」
「一口で食べれないと判断したらすぐ言え。回収する。そのときはこれの代金はとらない」
「わ、わかった。いただ…いただきます」
新はスプーンで一口分取り、口に運んだ。どっちだ?どっちだ?!
「!!うまい」
よかったぁ。そっちか。俺はほっと胸を撫で下ろす。
「うまい!うまいぞ!」
「ああ、その調子で食べて残すなよ」
この気まぐれメニュー、食べれないときはとことん食べれないし、食べれるときはものすごい美味しさを誇る謎めいたメニューだ。流石と言うべきか。いやまぁ外れ引いたらとんでもないぐらい不味いよ?一回食べたことあるけど外れは無理だよ。