第十四話 あの物音の正体は?
あらすじの注意通りでよろしくお願いします
「それじゃあ俺帰るな。長居してまた何か撮られたりしたら嫌だから」
「わかったよ真琴。ありがと」
「ああ、じゃあな」
俺は靴を履いて扉を開ける。そして歩き出す。霙ん家の敷地から出て、歩いてすぐ靴紐を踏んだ。最悪だと思った俺はすぐにしゃがんで靴紐を結ぶ。すると後ろの方で物音がした。ストーカーかと思った俺は靴紐を結び終わってないが、そのまま走って物音がした方に行く。このまま行くと交差点だ。もしかしたら見失うかもしれないと思い、出来る限り最高速度で走った。すると横から歩いてきた葵にぶつかりそうになる。
「うわっと!」
「きゃぁ!」
「すみません…って葵か」
「葵か、ってそんな簡単に言わないでくださいよ。私、こけてるんっすから」
「悪い悪い」
俺は葵に手を差しのべる。葵は差しのべられたその手を掴み、立ち上がる。って!こんなことしてる場合じゃない!俺は周りを見渡す。葵以外に誰も見当たらない。
「葵、俺と衝突する前に誰かと会わなかったか?」
「…やっ…り……そ…っすか」
「?何て言った?」
「何でもないっす。先輩と衝突する前、誰かが私に当たってどっか行きましたよ」
「なんだと!?それは本当か!?どんなやつだった?顔は見たか?」
「待ってください先輩。私、当たられただけなんで顔とか見えなかったっす。けど、身長は私と同じぐらいで、髪が長かったです。あとなんかカメラ大事に抱えてましたよ」
「くそっ、逃げられたか…いや、犯人の情報が入っただけでも充分か」
「何かあったんすか?」
「いやな、…」
俺は投稿されていたあの写真の話をする。ただし、さっきの霙との会話のことは言わなかった。あれまで言う必要無いだろ。
「なるほど、最低ですね」
「ああ、だから俺たちも簡単に外を出歩けなくなる前に一度、距離を置くことにしたんだ」
「…はー、良い案っすね」
「?何でだ?」
「もしかしたらその犯人、先輩の事が好きなんじゃないんですか?」
「はいぃ?」
思わず変な声が出てしまう。その声に葵は驚き、笑った。
「あっははは、なんすかその声」
「悪い悪い。それでどういう意味だ?」
「ストーカーするってことは、本物のクソ野郎か歪んだ愛の持ち主って言うのが大体なんすよ」
「ほーう?」
「多分、今回は歪んだ愛の持ち主っすよ」
「なんでだ?」
さっきから疑問ばっかりだが、仕方ないよ。俺はそこまで頭が良くないんでな。
「2つの写真の投稿ですけど、なんかカップルってところをいじってません?まるで付き合ってるって噂を冷やかすみたいに」
「なるほど。だから盗撮されてるってわかりやすいところに投稿したんだな」
「まあ、あくまで私の推測なだけっすけどね」
「いや、充分だよ。ありがとう、葵」
「そっすか。お役にたてて光栄っす。それじゃ先輩、また会いましょう」
「おう。またな」
葵は走ってどこかへ行った。良い後輩を持ったな。さて、葵からもらった情報を整理しよう。長い髪、葵と同じぐらいの身長、カメラ、歪んだ愛の持ち主。…うん?歪んだ愛の持ち主かは知らないけど、何故か雪華会長が想像できるんだなぁ。あの人なら、俺をいじるためにやるかも…。でも、会長としての地位が…。どうなんだろ。これも推測の域を越えないなんとも言えないな。とりあえず家に帰って風呂に入ろう。集中するのはそれからだ。
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「ふぅ~」
風呂に浸かる。ああ~気持ちいいなぁ。今あるもやもやしたこと、全部お湯で流してしまいたい。けど、こればかりはそれができない。
「とりあえず盗撮野郎を見つけないと…」
そうしないことには霙と遊んだり、会話したりしにくくなる。何なんだよ一体。確かに葵の言う通り、歪んだ愛の持ち主っていうのはあるかもしれない。どうしたものか。
「おにーちゃん」
「うん。どうした?茜」
「あのさ、入っても良い?」
「…ごめん、もう一回言ってくれないか?」
「久しぶりに一緒に入れないかなぁって」
「ふぇ?」
どういう事だ?もう何が何だかわからない。盗撮といい、霙といい、今度は茜か。今日は疲れるなぁ。