第十三話 盗撮と罪の告白
あらすじの注意通りによろしくお願いします
その写真に付いているコメントが「真琴君に言い寄る霙ちゃんw」と馬鹿にしているようなコメントだった。だが、怒りよりも恐怖が強かった。誰かにつけられていたという恐怖。帰宅中はどこからも視線を感じなかったからだ。もしかしたら今も…。考えるだけでゾッとする。
「誰なんだよ。噂に続いてこんなのまで…」
更に下にスクロールすると、春風に居るときの写真まで投稿されてる。霙と笑いあってる時の写真だ。コメントが「さすがカップルw」とやはり馬鹿にしているように感じる。待て!春風の時に撮られたのなら猫田さんが気付いてるかもしれない!猫田さん、そう言うのに敏感だからな。俺は急いで渚さんの携帯にかける。渚さんの番号をなぜ知っているかというと、「何かあったら電話してね。出来る限り手伝うから」と言って教えてくれた。
「頼む!出てくれ」
「…はい。どうしたんだい?真琴君」
「すいません渚さん!無理を承知で頼みますが、猫田さんに代わってくれませんか?」
「?ああ、良いよ。菜那、真琴君からだ」
「うにゃ?まこ坊どうしたんだにゃ?」
「猫田さん!俺たちが店に居るとき、変な視線を感じませんでしたか?」
「??にゃにも感じにゃかったにゃよ?」
「そっか…ありがとうございます」
「にゃにか問題があったのかにゃ?困った時はこのお姉さんに相談してくれもいいにゃよ?」
「あ、ああ、大丈夫です。詳しい説明は明日します。ありがとうございました」
ピッと電話を切る。何なんだ?猫田さんが気付かない程に気配を消しているなんて。こいつはそこまでしてこんなことがしたいのか?そう考えていると霙から電話がかかってきた。
「どうした?霙」
「真琴…見た?あの写真」
「噂が流れてたあのサイトの写真だろ?見たよ」
「私たち、つけられてたってことだよね」
「ああ、そして春風の時の写真が投稿されてるから、少なくとも春風の時からだ。もしかしたら学校を出たところからかもしれない」
「嘘…でしょ?」
「今確認してくれ」
「いや、真琴が言うんだからあるんだろうね。真琴、今から私の家に来てくれない?制服を着替えて」
「わかった。じゃあ電話、切るな?」
「うん」
その返事を聞くと俺は電話を切る。そして制服を脱いで普段着に着替える。一体何なんだよ。ほんと。
「茜~、ちょっと出かけてくるな~」
「わかったー。行ってらっしゃいお兄ちゃん」
「行ってきます」
靴を履き、扉を開けて家から出る。そして鍵をして、走って霙の家まで向かう。今もつけられてるかもしれないからな。霙の家につくとインターホンを押す。すぐに霙が出て、「入って良いよ。鍵開けてるから」と言った。俺は扉を開けて中に入る。そして扉の鍵を閉める。念のためだ。
「お邪魔します」
「良いよ。真琴、リビング来て」
「わかった」
靴を脱いでリビングに行く。小学校の頃によく遊びに来たから大体の間取りは知ってる。きれいに整頓されているリビングには、霙がソファに座っていた。俺はそのソファの空いている所に座る。
「霙、一応聞くがお前はこれに覚えは無いんだな?」
俺はそう言ってあのサイトに投稿されていた写真を見せる。
「…うん。無いよ」
「だよな。それで霙も撮られてることには気付かなかったのか?」
「そうだよ。全然わからなかったよ。撮られてるってわかったらあんなに恥ずかしいことしないよ」
「そっか。一応電話で猫田さんにも聞いたんだけど…っとカーテン閉めないと」
俺は近くの窓にかかっているカーテンを閉める。きっちり外から中が見えないように。他の窓もそうした。
「どこで撮ってるかわからないからな」
「うん。それで猫田さんに聞いてどうだったの?」
「あの人、そういう邪念か何かに敏感なんだよ。だけど、気付いてなかった」
「へぇ」
「だから、これからも注意しないといけない。だから、こんなことが無いように一度距離をとらないか?」
「え!?何でよ!嫌だよ!真琴と離れるなんて!」
予想よりも遥かに激しく抵抗したので驚いた。だが、俺は必死に説明する。
「まてまて、別に長期間ぐらい話さないとかそう言う訳じゃない。4日間だけ距離をとって、この盗撮野郎の反応を見るんだ。何もなかったら元に戻そう」
「…わかった。真琴、私言わないといけない事があるの」
「何だ?」
霙の目はめちゃくちゃ真剣だ。あの後に一体何を言うことがあるのだろう。
「実はね、真琴が私が付き合ってるって噂、私が流したの」
「…ん?」
「ほんとに出来心だったの。それがこんなに大きな事になるなんて思ってもいなかったの。本当にごめん」
「…いや、ちゃんと言ってくれたんだから許すよ」
「ほんと!?私のこと、気持ち悪いとか思わない?」
「思わないよ。霙のことはきっと、いつでも可愛いと思ってるよ」
「良かったぁ。嫌われるかと思って言い出せなかったの。ねえ真琴、ハグしてくれない?」
「良いよ」
俺はそう答え、すぐにハグする。すると霙は嗚咽を漏らして泣いた。だが、俺の頭にはとんでもない考えが浮かんだ。『もし、全部霙が仕込んだことだったら?』と。そう考えた場合、この涙も、さっきの真剣な顔も、全部演技だと言うことになる。無いな。うん。無いと願おう。
「うっ、うっ、ありがと真琴。もう良いよ」
「そうか?」
俺は霙を離す。霙の顔は大粒の涙で濡れていた。無いよ。これの涙は本物だ。いくら勘の悪い俺でもこれは本物だとわかるさ。演技なんかじゃない。絶対に。