第十二話 帰宅中は危険がいっぱい
あらすじの注意通りでよろしくお願いします
喫茶店を出た俺たちは、どこかに寄り道することは一切なく、帰路に着く。すると、よく小学校の頃に霙と通っていた帰り道を思い出す。少し遠回りになるが、良いだろう。
「霙、こっちから帰らないか?」
「?良いけど、そっちからだと遠回りだよ?」
「ああ、これが良いんだ」
「?そう?わかったそっちで良いよ」
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「わぁ。懐かしい」
「霙と最後に通ったのが小学4年だから…」
「え?5年生の時だよ?」
「お、おう。良く覚えてるな」
「確か日にちは7月…あ!17!ちょうど5年前だね」
「へ、へぇ、もうそんな年経ったのか」
俺は日にちまで的確に覚えてる霙にちょっと引いたが、きっと俺の記憶力が低いだけだ、霙はちょっと普通より記憶力が良いだけだと思った。
「覚えてる?幼稚園の頃、ここで真琴は私をお嫁さんにするよって言ってくれたんだよ?それが嬉しくてね。所詮子供の狂言だよ。でも私にはそれが本物のプロポーズだと思ったの。だから私、真琴のお嫁さんになるために頑張ったの。ねぇ、真琴。そんなの覚えてない、知らないって断言しても良いから答えて、私、真琴のお嫁さんになれるかな?」
霙は俺と密着して、顔をあげてそう言う。俺の両手は霙の両手と恋人繋ぎ?そんな感じの握り方で握られてる。良くみると霙のその可愛らしい目はうるうるしてた。くそ、話が重い上にこんなことされちゃ断れない!
「どうかな?」
「あ、うーん、いやぁ、今の状況でお嫁さんとか早い気がするからさ、今答えを出すのはどうかと思うんだわ。だから卒業までのあと数年、待ってくれないか?答えはそこで出すって、それだけは断言するからさ」
「…そっか、じゃあ、楽しみに待ってるね!」
満面の笑みでそう言う。その笑顔の奥にははっきりと悲しみが感じられた。そして霙は俺の両手を握っていた手を離す。ふぅ。一応は対応しきったけどさ、こりゃヤバイな。未来の俺、任せた。
「そろそろ着くな。つーか着いたな」
「うん。じゃあね真琴」
「ああ、また明日」
家に入る前に霙が見せた顔の奥には、やっぱり悲しいものを感じた。また、はっきりとそれを感じた。えー、どうしよ。家で泣かれたりしてたら困るんだけど…。でも、今はとりあえず家に帰ろう。俺は自分の家の扉を開け、入る。
「ただいまー」
「お帰りお兄ちゃん。お風呂できてるから入ってきなよ」
「ああ、いつもありがとな」
「えへへ」
いつも俺のことまでしてくれる茜に、感謝の意を込めて頭を撫でた。茜は喜んだ。そして俺は鞄等を置きに自室に行く。
「はぁ、今日はいろいろあったなぁ」
まだ2時半ぐらいなのにそう考える。今日いろいろあった訳じゃない。帰宅中にとんでもない告白されたんだ。はぁ、昔の俺、そんなこと言ったのか。くそ、自分で自分を恨むことになりそうだ。まあいいや。過去の自分のことは未来の自分に任せよう。
あ、そういや、あの変な噂の出所のサイト、もう一回見てみるか。そのサイトを開くとコメントがまた増えていた。今度は何があったのだろうと下にスクロールする。するとそこには…
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ふう。我ながら良い演技だったと思う。真琴は自分じゃ気付いてないけど、人の顔からだいたい感情を感じ取れるんだよね。だから、わざわざお嫁さんにしてくれるって言ったなんて嘘までついて、悲しみの感情を感じ取らせたんだよ。真琴は優しいからね。これで他の女からの多少の色仕掛けなら私のことを思い出して、効かなくなるはず。あの葵だったか青いだったかのやつも生徒会長もいつ色仕掛けしてくるかわからないし、あの猫野郎もいくら許嫁がいるからって油断はできない。
「でも、これで当分の間は私が直接監視しなくても大丈夫だね」
お母さんがいないから別に声に出しても大丈夫。でも誰かに言い聞かせる訳ではないので声に出す意味がない。意味のないことはしない。真琴と一緒に、愛を育めることにつながること以外のことはいらない。だって、私が一番真琴を見てきて、真琴を愛してるんだもん。
私は靴を脱いで、自分の部屋に行く。そしてベッドにダイブ。ああ、真琴、大好きだよ。その愛の障害を排除するためのことなら許してくれるよね?でも、幼稚園の頃のこと、覚えないのはちょっと悲しかったかな。にしても、流した噂があれだけ効果を持つなんてね。あは、凄かったなぁ。真琴の困り方。どんな真琴でも、困ってる真琴も大好きだよ。
どうなってるかな?あのコメント。問題になるから消されたかな?一応確認しよっと。わぁ、またコメント増えてる。ふふっ、これでまた真琴の困った顔が見れるね。にしても、下にスクロールしてもしても私のコメントにたどり着かないんだけど…。そんなとき、私はあるコメントを見つけた。
「何…これ…」
そのコメントは画像つきのコメントだった。その画像が…今日の帰宅中の私がした、真琴の手を握り真琴と密着して質問している時の画像だった。