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魔女と銀狼  作者: guju
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第1話 雛は飛び立つ

〜魔女と銀狼 〜 第1話 雛が飛び立つ




澄んだ空気は朝の森特有の木日の匂いがする。少し開いている窓から入ってきた風は一人の女性の髪を揺らす。


「シャル、日が出たぞ」


白銀の毛並みをもつ、大型犬程度の大きさの狼はシャルと呼ばれる女性のかぶっている毛布を口にくわえ、一気に引っ張る


シャルはかぶっていた毛布を奪われ、少し寒そうに目を擦りながら体を起こす


「おはよう……はく」


少し気の抜けた声で言ったシャルはハクと呼んだ狼の頭を撫でる


「おはようシャル」


ハクは嬉しそうに喉を鳴らし、シャルの手に自分の顔をスリスリと擦り付ける


目の前の壁にかけられている時計は朝の5時を指している


何時もは10時くらいに起きているシャルは、とても眠たい様子でベッドから降りた


「ハク、、、行くよ」


シャルが歩き出すとその後ろをついて行くようにハクは歩き出す


シャルは部屋から出るとキッチンに向かい、麻袋から食パンを二切れ出すと1枚にはバターを、もう1枚はミルクの中に入れる。


ミルクとパンが入った器を地面に置くと

シャルはバターを乗せた方のパンに手をかざしポツリと呟く


「火よ」


すると、シャルの手からガスバーナーほどの威力の火が出て、パンの表面をこんがりと焼く


「シャル、昔と比べてだいぶと上手くなったではないか」


ミルクを飲んでいたハクは顔を上げる


「そりゃね……昔って、、、170年も前の事」


「そんなに前か? 我にはつい昨日のことに思えるぞ」


カッカッカッ! と笑うハクにシャルは先程焼いたパンを少しちぎり口に入れる


「……っ!」


ハクはパンをミルクの中に落とし、ミルクを一生懸命に飲む


「ふふふっ……」


「熱いではないかシャル」


お淑やかに笑うシャルにハクは困ったような顔で言うだけで、特に怒っていることは無いようだ


「ほら、ハク……早く食べる、、、時間なくなるよ?」


小首を傾げたシャルはとても可愛らしく、この顔を見慣れていて、更に魔物であるハクで無い限り見とれてしまうことだろう


「シャルがそれを言うか」


軽く呆れつつもミルクがついて少し塩っけのある暖かいパターのついたパンを頬張り頬を緩ませる。


どうやらシャルは、ハクがこのパン(バターの焼いたパンなミルクが染み込んだもの)が好きな事を知っていたようだ。


それからシャルは直ぐにパンを食べ終わり、家を出る支度をする。

と言っても玄関にある斜め掛けの黒いバックを肩にかけるだけだ


本来、それだけでは足りないのだがシャルには魔法がある。その魔法で亜空間に繋げてものを取り出しする事が出来る。さらに、時間は止まっているため約180年間の蓄えが入っている


「これから、暫くお別れ……」


「そうだな。我らの旅立ちだ」


2人はその長い間を過した家の前に立ち、色々と思い出している


「かぁさん、とぉさん、、、行ってくるね」


「ユアさん、シャルの事はお任せ下さい」


シャルは扉に右手を添え、ハクは軽く頭を下げる


何分そうしていただろう。2人の体感時間で言えばほんの数十秒なのだろうが、長い間そうしていた事は間違いない。


それだけ募るものがあったのだろう。


シャルにとって父と母は偉大だ。


シャルの母親は神族で、シャルは母から様々な魔法を教わった。そして、その魔法の危険な面も沢山教わった。


確かに母の鍛錬は厳しく、何度も泣いたことがあったが、今思えば全て意味のあることで今も尚続けている。


父は人族で逞しく剣術に特化した戦士であった。


かぁさんがとぉさんの為に作った双剣は神木と魔鉱石から出来ており、その黒と白に別れた美しい剣に、幼い頃の私は何度も見とれていた。


その剣の影響もあってかシャルは白と黒の組み合わせが好きだ。


現在も、白と黒のタイツ、アームウォーマー。黒を基調とし、白のラインが入ったワンピース型のボディラインがくっきりと出るドレスに、外は黒中は白で出来、胸の下あたりで止めてシャルを後ろから覆うように被っているローブ。


殆ど……いや、全部が白と黒で出来ている。


それに、今回旅立つきっかけとなったのは母の死だ。


これと言った悲劇はなく寿命だから悲しく無い訳では無いが最後まで笑っていた母を尊敬し、「もっと世界を見てみたい」と、山を出て人族の住む町へと行く事になったのだ。


扉から手を離し、シャルの事を待っていたハクに一言礼を告げハクにまたがる


ハクは先程とは打って変わって今は軽トラより少し大きいくらいの大狼に変わっている。


これがハクの本来の姿なのだが、白銀の毛並みを持つ「プラチナウルフ」は小さくサイズを変えることが出来るのである。


その大きなハクにのおでこに手を伸ばし軽く擦る。


「いくぞ、シャルよ」


「お願い」


それを合図にハクは猛スピードで山を下る。


人里から離れ父と母意外と関わったことのないシャルは、様々な新しい世界のことに出会える、知れる喜びとわくわくを胸いっぱいに抱いている。


山の崖を大きく飛びだしたハクとその上に乗っているシャルは、太陽の光に照らされ、その白銀の髪の毛とその美しいハクの毛並はより一層と輝いている。


シャルと言う世界を知らない1人の雛はハクと言う唯一無二の存在と共に、今日飛び立った







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