40:改めて
「じゃぁ、改めて、こっちがカムイ、ランに、ニア。
今は攫われてきたニアを国の親元へ返すためにジャックレイブへ向かっているところで、アスト隊長には、それまでの案内と手助けをお願いします!」
「ああ。私はアスト・レンブロント。
最初に情けないところを見られてしまったから説得力がないかもしれないけど、これでも一隊長としてやってきた身だから戦闘は任せてくれ。剣も魔法も使える方だとは思う。属性は風だ。
もう隊長なんて肩書きはないし、私のことは〈アスト〉でいい。敬語も必要ないから。
ニアにカムイに、ランだな。これからよろしく頼む。
ああ、そうだ、イオリ。ちょっと聞きたいんだが〈盗賊〉とは、どういうことだ?」
まだそこ引っ掛かってたの!? スルーしてくれても良かったんですけど。。
「商隊が村に行く途中に襲われたんです。
でも、皆捕まえましたから安心していいですよ?」
「いや、別に盗賊が出ることが不安とかそういうのじゃなくて。
君達が襲われたのかい?」
あ、そっち?
「大丈夫ですよ? 皆でちゃちゃっとやっつけちゃいましたし、私は怪我もなかったので問題ありません!」
エヘンと言い放てば、アストに「そういうことじゃなく」と首を振られてしまった。なんだよー。
「そんな危険があったなんて、やっぱり自分だけでももっと早く来れば良かったか?」
アストが何やらモゴモゴと言っている。アストの中では私はまだ弱いイメージなのかな? 責任感の強い隊長さんだ。
「そんな言っても今まで色んな魔獣と戦ってきたし、これからも戦うことになります。私はあれから強くなったので心配は無用ですよ?」
ムンッと、無い力瘤を作って見せる。
「強くなったのは分かるが、それとこれは別だろう? それと、敬語はなしでな」
おおう、そうですか。
「そうは言ってもアストだって敬語じゃない・・・」
「私のはもうずっとこれだから普段もこんな感じになってしまったんだよ」
不平等だ!
まぁ、私がどれだけ成長したか実際見てもらえば心配は必要ないと分かってもらえるだろう。
しかし、まだ話してないことがいくつもある。
戦闘はその時に見てもらうとして、ステータスだよね。
うーん、でもステータスはあの水晶みたいなのがないと他の人には見えないんだよね?
「カムイ、ステータスって他の人には見せることできたりしない?」
『ああ。できるぞ?』
「だよねぇ・・・どう説明しようかなぁ・・・はい?」
『む? 聞いてなかったのか? でーきーるーぞー!』
「なあっ、聞こえてるって! でも、あの人達できないって言ってたじゃない?」
『あれはシャッコウの話だろう? 俺様を奴らと同等に扱うなぞ馬鹿のすることだ』
「・・・バカでスミマセンね!」
魔獣と精霊の違いなのかな? でも、これでアストへの説明は問題なくなった。
「アスト。今から私のステータス確認をするのから、一緒に見て。
カムイ、お願いね」
『うむ』
「うん? ああ、分かった」
カムイにお願いして、不思議そうな顔をしているアストと一緒に私のステータスを確認する。
まぁ正直、盗賊倒した後に確認してるからそんなに変化してないだろうけど。
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宗源 伊織 (16) 女 人族
職業:魔法剣士 Lv.20、精霊師 Lv.10
称号:器用貧乏、第一の召喚者、魔狼の主、ジェノサイド、VIP、先生、真打ち(new)
体力:1513(+20)
魔力:1468(+25)
攻撃力:1385(+45)
防御力:1137(+20)
魔攻力:1512(+25)
魔防力:1305(+25)
速度:1473(+25)
回復:48
魔法:炎魔法/火炎球・炎輪、水魔法/水渦球・水晶球・癒水陣、風魔法/疾風刃・円風舞・疾風駆(new)・裂風球(new)、闇魔法/体力吸収・魔力吸収、複合魔法/爆炎陣風
スキル:気配察知、先読み、動体視力、召喚/魔狼・花精、剣技/斬撃・連撃・打突
属性剣技/一華閃・旋風迅・氷雪槍・爆華突(new)、体術/壁走り、風捉拳、風爆衝(new)
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お。意外とレベル上がってた~♪
称号新しいのが増えてる。盗賊云々の時にカムイが言ってたけど、その時にはなかったはず。なんでだろう? その後したことと言えば集団暴走した村の手助けと、皆の状況を確認しに行ったくらい?
〈真打ち:100人以上の危機に際して救援活動を行い、認められた者に与えられる。カムイ命名〉
「え? これは、どういう・・・?」
「城で確認してた時のステータスは、全部このカムイが改竄したステータスで、本当の私のステータスはこっちだったらしいんです。
魔力切れとかで、魔法の練習も儘ならなかったのも、カムイが私の魔力を採っていたからで、城の外にはカムイの餌もたくさんいて充分にエネルギー補給はできるようになったので、もう私は問題なく戦えます」
「職業も二つ?」
「元からなのか、そうでないのか私にも分からないんですよね・・・
まぁ、その辺りはこうしてカムイ達と一緒にいれるし、戦闘面でも助かってるので・・・ラッキーくらいに思ってはいるんですけど」
「この属性は?」
「アストも知っての通り私の属性は炎なんですけど、カムイ曰く、他はカムイの属性です。多分契約したことで使えるようになったと思うんですけど。今それぞれの魔法を練習中なんです!
ニアやランを守るためにも私はもっと強くなりたい。アストがいるからって守られる立場にはなりたくないんです。だから、アストも私を守るんじゃなく一緒に戦うつもりでいてほしい」
「・・・ああ。ちょっと色々と理解が追い付いてないが、イオリのステータスがもう低くはないということは理解した。私も今後はそのつもりでいよう」
「はい! お願いします!」
ふふふ~ これで今後は心配されることも少なくなるだろうし、アストの前でも魔法とか属性気にせず戦えるぞ♪ なんか楽になったかも。言えて良かった。
あとはこの国出たら、どうするか考えていかないとな。
ええ、本当に隠すのがただただ面倒くさいなんて思ってないから! 思ってないからね!
一人で納得していると、カムイが冷ややかな視線を向けてくる。
なんなの!? まさか私の感情筒抜けになってないよね!?
『お前の考えてることなど読みやすい』
「むー!」
「しかし、職業や属性を複数持っている者は私も初めてだな・・・
属性はさておき、もしかしたら職業は一つということは限らないのか・・・?
いや、召喚者であるイオリだからこその場合もあるからな。
だが、このままでは私とイオリのステータス差が開くばかりだよな。年下の、しかも女の子に負けるわけにはいかないと言うか・・・」
何かアストがブツブツ言い出したが、まぁ分かってくれたのなら放っておこう。
さて、このまま何事もなければ国境までは進めると思うんだけど、まぁ、そうそう上手くいきませんよねぇ。
ま、あれぐらいなら丁度いいか。
「カムイ、ニア達を見ててね」
『任せておけ』
「ちゃんと見ててねー!」
『わ、分かっておるわー! 二度も言うな!』
見ておけなかった前科があるからね。
「アスト! お互いの戦闘をアイツらで確認しよう!」
「ああ、分かった!」
双剣を構えて走り出す私に、アストが剣を一振り構えて続いた。
走り出した先には、二体の魔獣。
何やら二体が争っていたので、そこに割り込んでいく。
商隊と行動していた間、カムイと行動していた時に倒したことのある魔獣達だ。
「アイツらの情報は知ってます?」
「あぁ。プロトボスロップとハーペスグースだな」
話が早くて助かる。
どちらもC-の魔獣なのでちゃっちゃと終わらせよう。
「じゃぁ、まずは私から行くぞ。ウインドウェア!」
風を使って加速するアスト。私の使ってる〈疾風駆〉とは違い、全体を包む風で体を運んでいる感じだ。あれなら防御にも使えそうではある。
「裂風斬!」
アストは素早い斬撃でハーペスグースを切り刻んだ。
わー、すごぉーい!
・・・って、うぉぉぉぉいっ!!? なんてことしてるのぉ!?
素材が。貴重な収入源がぁっ!! そいつは毛皮が素材なんですよぉ!?
やり切った顔をしても駄目です! あなたはもう固定給のないフリーターみたいなもんですよ!?
解雇されたんですよ!? 稼げるものは稼がないと!
〈ハーペスグース〉
Lv.6~9 C-
2.5mのマングースに似た魔獣。昆虫型、鳥型、獣型などを捕食する。雑食性は高い。
基本、行動範囲は狭く、縄張り意識が高い。集団で生活するものの狩りには単独で出ることが多い。生息域が近く、行動範囲の広いプロトボスロップとは習慣的に争い合っている。
毒耐性を持っているため、二匹の決着はなかなか着かない。
うっすら涙目になりながら、「もう一匹は私がやります!」と、アストに倒されないうちに宣言しておく。
残ったプロトボスロップは、二匹の戦いの間に入ってきた邪魔者に対し特別な感情もなく、ただただ別の獲物が来たと攻撃の対象を移行した。
こいつは、その牙に弛緩性の毒を持っている。
この毒を喰らうと、麻痺を受けたように体の力が入らず、意識を持ったまま胃袋へと納まってしまう。
麻痺と違うのは、即効性があり、毒消し薬などで解除しないと治らないというところだ。
一人で戦えば、掠っただけで、=あの世行きのようなものだ。
運良く食べられなかったとしても、全身が弛緩しているため、心臓の動きも鈍くなり結局あの世行きは変わらない。
こいつが別の魔獣を襲っているところに出会わした際に、これはどんな衝撃映像かと思った。
近付いた魔獣を一瞬で襲い、毒を与えるとすぐに呑み込みはじめたんだよね。
もちろん、こいつに真っ向勝負なんてしない。
熱感知が優れているというのであれば、それを機能できなくすればいいんだから、炎魔法使えばいいんだよね。
「炎輪!」
プロトボスロップの周囲を全て囲い、私の体温を感知できないようにする。
〈シャーーッ!! シャーーッ!!〉
キョロキョロと敵の位置を探ろうと動き回るが、頼りの感知が全く機能していないため、的外れな方向に威嚇し続けている。
「旋風迅・流!」
側面より飛び出して来た私に対応できるはずもなく、うねった躯をウナギのように捌かれた。
〈プロトボスロップ〉
Lv.6~9 C-
4mサイズの蛇型魔獣。獣型、両生型、魚型などを捕食する。雑食。
温度を可視化するピット器官が発達しており、近付くものには問答無用で襲い掛かる。
地表でも水辺でも樹上でもあらゆるところで生活できるため、行動範囲が広い。
しょっちゅうハーペスグースの縄張りに入っては、争い合っている。
寒くなると動きが鈍くなる。弛緩性の神経毒あり。
「イオリ! すごいな。一太刀か。
君の戦闘をまともに見るのは城にいた頃以来だから、理解していても実際見ると、ここまで強くなったのかと驚いてしまうな」
展開した魔法を収めると、アストが近付いて来た。
彼の後ろには細切れになったハーペスグースが見える。
私はアストにニッコリと微笑んだ。
さて、ちょっとアストさんとオハナシをしましょう! 現状を理解してもらわないと。
*
「そ、それでこいつの素材はイオリが取り出すのか?」
私に指摘されたアストが、素材の取り出し方法を聞いてきた。
そういや二人とも戦闘は速攻で終わったから戦い方見るも何もなかったな・・・。まぁ、今後まだまだ機会はたくさんあるか。
「いや、魔獣はカムイのご飯だから」
「うん?」
そんな話をしていると、やって来たカムイが近くのハーペスグースから片付け始める。
「・・・・・」
それを目撃したアストが声も出さず固まってる。
あ、そういえば餌のこと詳しく話してなかった。
『今回の素材はこれだけだな』
消化液の含まれる牙をカムイが持ってきた。
「ありがと」
「・・・カムイはすごいんだな」
『!!?』
復活したアストがポツリと溢した言葉を、カムイが敏感に拾い取り、耳がピンッと反応した。
『お前、なかなか分かっておるではないか!』
「アスト、カムイを持ち上げないで? すぐ調子に乗っちゃうから」
「いや、魔法がいくつも使えることに加え、こんなことができるなんてすごいよ!?」
『むふふ、そうだろうそうだろう?』
あぁ。尻尾振り乱して調子に乗り出してしまったじゃないか。
これでもかと持ち上げるアストに、胸を反らしムフーと鼻息荒くしてるカムイ。
「おねえちゃん、カムイちゃん楽しそう」
『カムイちゃん、褒められることが少ないからね』
「そうだね。まぁ、仲良くなったようで何よりだよ」
私がカムイを褒めないからねー。なんかカムイを褒めるのって気恥ずかしさがあるんだよ。なんだろ? 身内を褒めるような感じというか。
子どもを褒めて伸ばすってのも世間ではあるけど、カムイと私じゃ私が子どもなはずだ。カムイも私を褒めてはくれないし。
・・・しかし未だにアストによる褒め殺しが炸裂している。盛り上がってるとこ悪いけど、そろそろ先に進もうよ・・・。




