37:モフモフ好き
さて、村の近くまで戻ってきたんですけど、今更ながら重大なことに気が付いた。
カムイどーしよぉー!!!
行って戻ってきたら大きくなりましたぁ! ジャジャーン! ってありなの!? なしなの!?
ニアとか「カムイちゃんじゃない」って泣き出しちゃったりとかしないかな!? いやいや、ニアはカムイが精霊って知ってるから恐がったりとかはないはず。
問題は村の人達だよね? 魔獣に襲われたばっかなのに、いくら従魔だから大丈夫ですよーって言っても、この大きさは恐いだろう。
えぇー? カムイまだ大きくなるんだろう? その都度言い訳考えんの!? うー・・・
「もう、カムイ元の大きさに戻ってよぉ!」
ヒュンッ ぼてっ
『なぁ!!?!??』
私が言った途端、カムイが元の大きさに戻った。
「んん???」
『お、おい、イオリ、お前、何、え?』
「え? カムイが小さくなってくれたんじゃなくて?」
『せっかく大きくなれたものをなんで俺様がわざわざ小さくならねばならんのだ!』
「え!? お、大きくはなれない、の?」
『・・・む。・・・戻れたな』
私の問いに、カムイが念じるような表情を見せたかと思ったら、さっきの大きいカムイに戻った。
「ぐぁー、良かったぁーー!」
『ぐぉー、良かったぁーー!』
マジで焦った! 元の大きさにって願ったものの、カムイだって本来の姿に戻りたいんだから、小さくなっちゃったのが私のせいなんてなったらどうしようかと思った!
でも・・・
「小さくなって」 おぉ。
『おい』 「ちっちゃく」 『こら』 「もっかい小さくなって」
私が元に戻るよう意識したら普通の狼サイズに戻り、カムイが大きいサイズに戻ると、また私が普通サイズに戻すのを繰り返したところで、無事に大きさを変えられることを確認。
『ふぐっ、おい。遊んでないか?』
「まさか!」
そんなこと、とんでもない! という風に身振り手振りをしようとも、面白さで口元が緩みっぱなしだった。
「ちなみに自分でも意識して小さくなれる?」
『・・・』 ヒュンッ
「なれるみたいだね。人前ではその大きさでいてね?」
『はぁ。せっかく、成長したというのに面倒なことを・・・しかし、そうすると、コイツはどうやって運ぶのだ?』
「コイツ? はぅあぁぁぁっ!!」
なんの〈ぼてっ〉かと思ったらソレかぁぁっ!!
そりゃ大きいカムイの背中に乗せてたのに、小さくなったらそうなるよね! 地面に顔からいっちゃってる・・・ごめんねアスト隊長!
*
「あ! イオリちゃん!」
「!! イオリおねえちゃん!」
私に気付いたマリルさんとニアが走って近付いて来た。
「ただいま! ニアいい子にしてた?」
抱き着くように駆けて来たニアを受け入れるように手を広げて待っていたけど、ニアは飛び込んで来なかった。
あれ? この行き場のない手はどうしたら・・・?
「うん・・・あ、いや、えと・・・」
あれ? なんだか歯切れが悪いな?
「おかえり、イオリちゃん」
「ただいま戻りました。
ニアのことありがとうございました」
「いいのよ、ニアちゃん大人しくしてたし、逆にこっちの炊き出しの手伝いとかしてくれたし、助かっちゃった」
うん? なんの問題もなかったようだけど。
そう、思った途端、マリルさんが爆弾投下してきた。
「獣族って初めて見たけど可愛いね!」
「・・・あ・・・・・え!?」
驚いてニアの方を振り向くと、顔を伏せて足をまごまごさせていた。
フードの中ももぞっと動いたが顔を出さないところを見るとランのことはバレてはいないようだ。
別にバレたところでどうせこの国を出るんだから今すぐここを離れるだけだけどさ。
ニアを後ろに隠し、そっと剣に手を掛けると、マリルさんが慌てて話し始めた。
「心配しないで! 私しか気付いてないし、誰にも話してないわ!」
それは、マリルさんをどうにかすればニアのことは漏れないと暗に言ってるのだろうか。
「ニアちゃんのことをどうにかしようなんて思ってないの!
私がニアちゃんと遊んでる時にフードが取れちゃったのよ。驚いたけど、こんな優しくていい子に何かしようとか思ってないわ。むしろ可愛くてどうにかしてやりたいとは思っ・・・コホン。
ただ、イオリちゃん達が隠していたことを私が勝手に他の人に話すわけにはいかないからまだ誰にも話してはいないから、安心してほしいわ」
〈安心〉してほしいと言われても、なんかマリルさんの表情が何かしそうで安心できないんですけど!?
「イオリおねえちゃん、マリルさんだまっててくれたし、やさしかったよ?」
「ニアちゃん!!」
だから、その表情! 嬉しいんだろうけど落ち着いてくださ~い!
「マリルさん!」
「はっ、はい!」 ジュルッ
「重ね重ねニアのこと、ありがとうございます。
それでまたお願いになるんですが、このまま、黙っておいてもらえますか?
私は今、この子を家に戻すために国を出るところなんです。ニアは迷子で・・・」
「わたし、ゆうかいされてきたの」
「ニア!」
「イオリおねえちゃんにたすけてもらって、今からいっしょにおうちにかえるところなの。
でも、ここにはわるい人もいるから、おかお見せちゃダメなの」
「・・・・」
あれ? マリルさんが動かなくなった。
「・・・ユウカイ?」 あ、動いた。
「ニアちゃんを、ユウカイ? ユウカイって誘拐よね? こんな可愛い子を、誘拐? ・・・しんっじらんない!
誘拐ってあれでしょ!? 有無を言わさず連れ去られてくることでしょう!? 何それ! あったまくるわ!!
そいつら見つけたら、ふんじばって私がギッタギタの、ボッコボコにしてやるわ!!!」
「なぁぁぁあっ、マリルさん! しーっ! しーっ!」
あちらこちらから何事だ? と視線が集まったのでマリルさんを慌てて落ち着かせながら、「大丈夫でーす。なんでもないので安心してくださーい」と声をかけた。
「はぁっ、はぁっ、ごめんなさい。取り乱しちゃったわ」
「いえ、そんなに思ってもらってありがとうございます。
そういうことなので、あまり知られたくはないんです。
私自身のことならいいんですけど、ニアのことなので〈炎の絆〉メンバーには、本人がいいと言うならば止めませんが、その際にはくれぐれもよろしくお願いします」
「ええ。分かったわ」
「あの、それでもう一つお話というかお願いがあるんですが、まずはトマスさんと商隊長さんに話がしたいのでどこにいますか?」
「分かったわ。二人を呼んでくるからイオリちゃん達はここで待ってて」
私が真剣な表情をしていたのを見てマリルさんは直ぐ様動いてくれた。
「あ、私が・・・」
「いいから~!」
行っちゃった。
あっちでアスト隊長をちゃんと回復させたのはいいんだけどまだ意識は戻ってないから、ゆっくり休ませたいんだけど、いきなり連れて来たらどうしたんだって大騒ぎになるかもだし、助けに来てくれるはずの王都軍の隊長さんだとか、そんな人がどうして、だのになると思うんだよね。私は〈その辺りを確認〉しに行ってたわけだし。
とくに村の人達にとっては隊長がここにいるなら他の隊員は!? てことになってしまう。
とりあえず、バレないように匿いたいんだけど、私達が村から離れるよりは、二人には事実を伝えて助けてもらう方が確実だし、二人の性格を考えても大丈夫だろう。
『イオリ! おかえりなさい! そして、私が付いていながらごめんなさい!』
「ただいまラン。ニアのことありがとうね。
まぁ、一緒にいなかった私も悪いから。
とりあえず、マリルさんがモフモフ好きで本当に良かった。
二人に何事もなくて良かったよ」
『ええ。あの人を含め、皆ニアのこと可愛がってくれたわ。
顔を見せても皆変わらないならいいんだけど、こればっかりはわざわざ見せるわけにもいかないしね』
「おねえちゃん、カムイちゃんは?」
「大丈夫無事だよ。ちょっと、あっちで待ってて貰ってるの」
「イオリちゃんお待たせ」
「おう、おかえり。どうしたんだ? 何か話があるんだって?」
「ご飯ができてるからあっちで話さないかい?」
「ありがとうございます。でもその前に少しだけ話をさせてください」
*
私はその辺りではなく集団暴走を追ったこと、王都軍と集団暴走は衝突したがおそらく無事に終息するだろうということ、事情があり一人切り捨てられていたこと、今その人は意識を失った状態で連れてきていること、その事情があるので王都軍が着いても彼が生きてるとは知られたくないこと、私はその人に恩があることを伝え、彼が起きたらどうするか話した上で私は直ぐにでもここを出ようと思っていることを伝えた。
「皆さんには、一応事実をお伝えしておきたくて話しましたが、私達はこのまま林の中でテントを張って休もうと思います。」
「「「・・・・・」」」
皆それぞれに何かを考えるような、ムスッとしているような表情をしていた。
「彼もしばらくしたら目を覚ますでしょうし明日のうちには出て行けると思いますのでご迷惑は掛からないかと」
「・・・イオリさん、勝手過ぎやしませんか?」
やっぱり、そうですよね・・・
「助けてもらった私達がイオリさんを助けないなんておかしいと思いませんか?」
「えぇ?」
「そうだ。イオリやその彼に事情があるのかもしれないが、だからといって助けない理由にはならないな!」
「そうよー。イオリちゃんもニアちゃんもカムイくんも私達は友達だと思ってるんだからー。
こういう時は頼ってほしいなー」
「え、あ、で、でも・・・」
「その彼を隠したいってことなら、うちの行商車に乗せてたらいいさ! 丁度商品も減ったことだし、一台丸々使ってくれていいから、な!」
「う・・・ありがとう、ございます」
「うんうん。いいってことよー!
これで、貸し借りはなしだな!」
商隊長がウィンクを決めてきた。
まじ男気ありすぎでしょう商隊長!!
思わず、「あざーっす!!」って言いそうになるわー。
「そしたら、俺とマリルはその彼を見つからないように行商車まで運ぶとするか、どの辺りにいるか教えてもらえるか?」
「あ、私が」
「いいからいいから、イオリ達はご飯でも食べて来な。今日は動きっぱなしで腹減ったろう?」
ぐぉぉぉ~。
ひいぃっ、腹の虫が大きすぎる!
なんで毎回毎回この腹の虫は的確なタイミングで主張するんだ!
トマスさんもマリルさんも笑いを堪えている。
「ふふっ、ニアちゃんも君が戻ってくるのを待つって言って食べてないんだ。
一緒に食べてきてやってくれ」
「・・・じゃぁ、お願い、します。
あっちの方角でカムイが傍に付いていますので、私に言われたって声掛けてもらえますか?」
「あぁ。分かった」
「分かったわ! カムイくーん♪」
私達も炊き出しを受け取り、まだ瓦礫ばかりの村の広場で二人で腰掛けて食べ始めた。
「ニア、家に帰すのが遅くなってごめんね。
明日には出発できると思うから」
「ううん、だいじょうぶ。
みんなやさしいし、おもしろかった
あしたみんなとおわかれ?」
「うん。そうだね。お別れだね・・・」
あまり人と関わらないようにしたいと思ってるはずなのに、どうにも上手くいかないな。
毎回必要以上に仲良くなって離れるのが寂しくなってしまってる。
確かにこの国には悪い人達もいるはずなのに、関わる人にいい人が多くて困るな。
ズボッ
「ふぬぅっ!?」
ご飯を食べている腕の間にカムイが顔を突っ込んできた。
「ビ、ビックリしたぁー、も~」
あ。すごく不貞腐れてる顔だ。
カムイが脇に突っ込んで来た後に、マリルさんが遅れてやって来た。
「も~カムイくんったら、私の相手はしてくれないで真っ先にイオリちゃんとこに行くんだからぁ・・・」
あー。待っててって言ったのにやっと戻ってきたと思ったら違う二人で、私達は楽しくご飯を食べていたと。そういうことかな。
カムイを脇に挟んだまま、食べ進めるがカムイは動こうとしなかった。表情も変えず。
うーむ。
(「彼、運んで来たわよ。外傷はないみたいね。あの様子だと、直に目も覚めると思うわ。
あと、もし良かったらなんだけど、このことはメンバーには話しててもいいかしら?」)
こくん。
(「ありがとう! ちゃんと極秘扱いって言っておくから!」)
(「マリルさん、わたしのことも言ってもだいじょうぶ。
みんないい人!」)
(「ニアちゃん!! 大丈夫よ! もし洩らすようなヤツがいたら私が絞めてやるから!」)
子どもになんてことを言うんですかー!?
まぁ、あのメンバーなら大丈夫だろう。
・・・私、人を信用しやすくなったかな・・・?
ダメだ。こうやって信用して裏切られてって何回してきたんだ・・・はぁ。
私が今本当に信じてるのは、ここにいるカムイとランとニアだけだ。
未だに腕の間に嵌まったままのカムイに抱き着いた。
『・・・』
「おねえちゃん?」
(『イオリ?』)
心配そうに私を覗き込むランとニアに「なんでもないよ」と微笑み返せば、カムイごと抱き締められた。
とは言っても、二人には体に回す程の腕はないから頭に引っ付くような形ではあったけど。
そんなに顔に出てたかな? 子どもに心配させてちゃダメだな。
アスト隊長が運び込まれた行商車に行くと、しっかりと寝かされていた。
近付いてアスト隊長の様子を確認すると、ミエットさんかルハスさんがさらに回復してくれたんだろう、残っていた擦り傷なんかも綺麗になっていた。
顔色も良くなっているので、マリルさんの言う通りそのうち目覚めるはずだ。




