11:練習あるのみ!
結局今日も投稿することにしました。
おおおおぅ。
た、食べおったで。
こいつ、Gを食べおったで。
私はよつん這いになりながらおぞましい光景に震えていた。
『よし、行くとしようか。ぁむぁむ』
「・・・その口からはみ出てるのを仕舞っていただけませんかね?」
『む。なぜだ』
何故だ? それは私が言う台詞だ!
「さっさと平らげてくださいよ。なぜそれを咥えたままなんですか?」
『む? コックローチの葦は珍味だぞ?』
「いえ、そんなの知りたくありません。
てか食べることも一生涯ありませんのでお気遣いなく。
てか名前もまんまておかしいだろ」
コックローチは普通にGのことを言うのだから。
『美味いのに。ほれほれ』
カムイが咥えた葦の先をこちらへと向けてくる。
え、何この子、アホの子なの?
「遠慮いたします。近付かないでください」
『ほーれほれ』
「来ないで、来るな」
『ほーーーれーーー』
「しつっこい! 来るなっつってるだろ!?」
『ブフォーーッ』
尚もニヤニヤと葦をちらつかせながら近付いて来たカムイの横っ面に裏拳が炸裂した。
「いい加減に人の嫌がることをするな! 今度やったらただじゃ済まさない」
『これは、ただで済んでい、るというこ、とか。ぐふっ』
「ふざけてないで時間がないんだから! 案内お願いします!」
『怒りながら物を頼むとは、これいかに』
飼い主として悪いことは悪いと教えてやらねば!
*
「やっっっっと戻って来れたぁー、時間かかったー」
『それはお前があちこち動き回ったせいだろう? 辿るのも大変だったぞ』
「しょうがないじゃないか。アイツ諦めねんだもん。
ありがとうございましたー、お疲れ様カムイ」
頭を撫でてやる。
『・・・・・』
「カムイ? そんな怒らないでよ。マッサージならしてやるぞー」
ワキワキ
『む。いや、いい』
プイッとあちらを向くカムイ。なんだよー。
ここまでの移動中にも魔獣は数体現れて今はカムイの腹の中である。
炎と水しか使ったことなかったから、風と闇魔法も試しで使ってみたけれど、風魔法は吹いたか? ってくらいの超微風しか出せなかったし、闇魔法は毒をイメージして魔物の顔の前で使ってみたらくしゃみ一つしただけだった。
闇魔法の使い方が分からん。
さっきの洗濯水は私の潜在能力が開花した生活魔法ではなかったわけですなー。無形魔法、練習したのに。
これは戦闘中に試すものじゃないな。魔法がちゃんと出なくてめっちゃ焦った。炎とか最初から普通に使えたから。
カムイ曰く。
『炎はお前が元々持ち合わせていた属性だ。
さっき存在に気付いたばかりのものを早々に使えるわけがないだろう。
今の状態だと適性があるだけで日々回数をこなし熟練度を上げねばまともに使えるようにはならんのだろう』
だと。
炎が私の適性ならば他の三つはなんなんだと問いかけると、俺様の属性だ、と返ってきた。
なんてこった。魔法剣士だから使えるようになったのかと予想したのに、まさかのカムイさん魔法三つ持ち。
「カムイも使えるまでかかったの?」
『俺様は天才だからな! 元々魔法が一つということはなかった! 最初から複数持ちだ! よって問題なく使えていた。
小娘や他の者のように軟弱ではないのだ。わはははは』
ふむ。〈魔狼の主〉とは魔狼が持っている属性魔法を使えるようになる特典が付くということのようだ。
それで私も三つ増えるとか、いいのそれ? いえ、返しませんよ? ありがたく使いますけども。
練習あるのみ、か。
これってもしかしたら第一号と合わせて超レア称号なんじゃないか?
やふーっ!
ここに戻って来るまでに時間かかったので、いまはもう辺りは暗くなっている。今日はもうここで野宿するか。
「しかし、私が倒した魔獣ってあんたが全部美味しくいただいてたってことよね?」
『うむ。お前が倒した傍から俺様の前に差し出すようにしておったからな。
食べてやらねば勿体ないと思ってな。お残しは許されん』
「どこのおばちゃんだ。いや、ただ倒したやつを背にした時にいつの間にか消えてただけなんだけど。明日からはちょっとでいいから」
『お前も食べたいのか?』
「・・・ちょっとでいいから素材を残すようにしてもらいたいんだけど。
街に着いたら素材売って路銀の足しにしたいからさ」
誰が食べるか、あんなもの!
『まぁ、そのくらいなら譲歩してやってもいいが』
「よろしくお願いします」
『う・・・うむ』
「美味しくはないけど、この干し肉食べる?」
乾いて固くなった肉を歯で噛み千切りながら、狼だから肉を食べるだろうと思い聞いてみる。
『いや、それは人間の食べ物だ』
俺様の口には合わんということかしらん?
『俺様が食べるのは魔力だ。
魔獣とはこの世界に漂っている魔素と生命が混ざりあって生まれたものを言う。
それは躰全てが魔力を含んでいるので、俺様は食べることができるのだ』
あ、そゆこと。魔力・・・
「じゃぁ魔力を持ってる人族も食べれるってこと?」
『そう、構えるな。
人族や他の種族達は魔力を内包しているというだけで混じっているわけではない。
体を食べたところで不味いだけだ』
胸の前で手のひらをクロスさせて、きゃっとやってみたが普通に返された。少し恥ずかしい。
てか不味いってことは食べたことあるんですかねー? あえて聞きませんけどもー。
『だから城にいる間はお前から魔力のみをいただいてたんだが、如何せん魔力だけでは腹は膨れるがやはり食べた気にならんからな。
今頃になってようやく食べたと思えるものだ』
「それは何よりです」
食事に満足してるらしいことも、人族を食べるつもりはないようだということも、私の魔力が取られないことも。
「あれ? シャッコウも魔獣なら、シャッコウ食べれたんじゃない?」
その光景を見たいとは思わないけど、ふと思い付いたから聞いてみた。
『お前なぁ。俺様は今弱ってるんだぞ?
あの数を相手できるほど回復はできなかったし、下手に手を出して人族共に警戒されて城から出られぬなんぞあってたまるか』
「あー、我慢して私の魔力を食べてたんですねー」
『まぁ足しにはなったから、そう気に病むでない』
「いや、病んではいないけども・・・」
『ならいいではないか』
「よくはないって言ったのに、忘れたのか?」
そうか、仔犬だからな。まだおつむが弱いのかもしれない。
「明日もまた魔獣と戦うことになるんだけど、できれば自分で歩けるなら歩いてもらいたいな。
大丈夫かな? 背中でいいなら今日みたいに縛るけど」
『まぁ、歩いてやってもいい』
即答。
「戦闘になったら邪魔にならないように避けててくれたら助かる。
少しペースを早めるけど付いてこれる? やっぱり担ごうか?」
『問題ない! 造作もないことだ』
短い脚でよく言うなー。無理そうだったら嫌がっても担いでってやろう。
この世界に来てからというもの、体力がついたのかどうか分からないが、今まで以上に体が動くし軽くなったような感じがする。自分のステータスが数値化して目に見えるようになったのも、職業があるのも関係しているのだろうか。
体の構造が何か変わったんだろうか?
今までのままだったらこんな何日もかけて走り回るなんてこと出来ないから助かるけどさ。
*
さて、そろそろ明日に備えて寝なければ。
昨日はカムイで暖を取ったな。
「明日は今日遅れた分をできるだけ取り戻したいからよろしくお願いね」
寝袋を出し、会話しながらなるべく自然な流れでカムイを抱き上げる。
『うーむ、まぁ、いいだろう。その分飯にもありつけるということだろうからな』
「素材のこと忘れないでね?」
『はいはい、分かっておるわ』
「〈はい〉は一回でいいんだよ?」
母さんからよく言われていたことをカムイにも言ってみる。
そう言ったら少し人恋しくなってしまった。
『む? 何をしておる?』
脇に抱えたまま寝袋に手を掛けると、カムイが反応した。
『! 一緒には寝ぬぞ!!』
「まぁまぁいいじゃないですかー、昨日も一緒に寝たんだしぃ」
『はーなーせーぇ、ぬおおぉぉ』
「はぅー、暖かいー」
『ふぐぅ、なぜ抜けれないのだー』
「力の差があるんだねー、諦めなー」
ちぅ。
『な!? な、な、何をするのだ!!?』
「ちゅー? はっ!! ふぉぉー」
ごしごしごしごし、ふきふきふき
『何をしているのだ!!』
「いや、そういえばあんたその口でG食べてたんだったと思って、ぅえぇ」
『なんで俺様で拭くんだ!!』
「私で拭いたら意味ないじゃん」
『な、なんて理不尽なやつなんだ!!!!』
その日も抜けることを途中で諦めたカムイで暖を取りながら一晩を過ごしたのだった。
毎日投稿を止める時にまた言いますね。




