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場面は物語後半入るか入らないかくらいの話です。
読むか読まないかの目安にしてください。
ネタバレは嫌!という方は飛ばしてくださいな。
その大広間には何人もの人が倒れていた。中には私のクラスメイトも多く含まれ、もう動くことはなく横たわっていた。
一つと二つの影が中央付近にあった。
一つはこの状況に呆然と座り込んでいた。その影が僅かに動き、口を開いた。
「そんな、嘘だ・・・」
絞り出た言葉に二つの影が反応する。
『イオリ、大丈夫か?』
「テン・・・皆、は?」
喋りかけた者の方は見ずに辺りを見回す。それを咎めることもなく、話し掛けた者が質問に答えた。
『どうだろうな。他の者が守っていたようだが・・・』
『これはひどいな。あやつめ、お前の同胞まで巻き込むとはな』
もう片方も辺りを見回し、現状の感想を告げてきた。
「カムイ。どうしよう・・・こんなことになるなんて・・・」
誰か、ただの一人も息をしている者はいないの!?
あの日、偶々召喚されてしまった私達がなぜこんなことになってしまうんだ。
どうして喚ばれたのか? どうして私達だったのか? なんであんなことのために私達が巻き込まれなきゃいけなかったの!?
なぜなぜなぜなぜなぜ!?
こんなにもあっけなく人の命を奪ってしまうなんて!
戸惑いや不安、恐れ、悲しみの混じったその言葉に反応が返ってくる前に誰かが動く気配がした。
ガラガラッ
崩れた瓦礫の中から二つの影が起き上がった。
「アスト! ニア!」
「ん、お姉、ちゃん」
「っつ・・・イオリ、無事か?」
「私は大丈夫。皆が守ってくれたみたい」
「そうか、良かった」
「待って。今回復するから!」
「私はあの時判断を間違えたのだろうか・・・」
周りを見渡すとアストは力が抜けたように、そう言った。
「アストお兄ちゃん、大丈夫?」
「ああ、ニアすまないな。大丈夫だ」
ガラッ、ドスンッ!
向こうからも大きい岩を押し退けるようにして、新たな影が見えた。
「いてててて、おう。お前ら無事か?」
「ありがとうございます。まぁ、大丈夫かと言われればある程度は大丈夫ですが。ったくあなたは頑丈すぎるんですよ」
「あいたたた。ほんと。ボクにもそれ、分けてほしい」
「ヴェイグルド! フェリアス! シルフィウムも! 大丈夫!?」
岩を押し退けたヴェイグルドに庇われたようで、その下から二人がのそりと体を起こした。
「えぇ。多少怪我はしていますが、この体力バカが庇ってくれましたから大きな怪我はありませんね」
「イオリ、怪我した。治して?」
「お前らなぁ! ちったぁ礼の一つでも言ったらどうなんだよ!」
「礼を言われたくて助けたんですか? 親切の押し売りは止めてくださいよ」
「へぇへぇ、俺が勝手にお前らを助けたんだ! シルフィウム! お前は自分で治せるだろうが!」
「無理。イオリに治してもらう」
ドォーーーン!
爆発でも起きたのかと思えるほどに勢い良く瓦礫が吹き飛び、雄叫びを上げる。
「ぅがああぁぁーーーっ! おのれぇぃっ! 敵はどこだ!?」
「ヴィト!」
「はぁ~。あんたねぇ、もう誰もいないわよ! もうちょっと戦闘中に活躍したらどうなのよ!」
「ファリエル? ヴィトだって一所懸命頑張ってたわ?」
ヴィトの背後から二人の女性が腕や足から血を流しながらも回復魔法をかけつつ、呆れ気味にこちらへと歩みを進めてくる。
「姉さんはそうやっていつも甘いのよ! 戦士の国から来たんだからもっと動いてくれないと困るわ!」
「うむ。そうだな。お前の期待に応えねばな!」
「別に期待なんかしてないっての!」
「ファリエル、ラーシャも! 良かった」
「イオリ! イオリもそう思うでしょ~!?」
ファリエルが駆け寄り抱き付いてきた。
『お前達はこんな状況でも騒がしいな』
「何よ! テン、あんたとカムイだっていつも騒がしいじゃない!」
『我が騒がしいのではない。こやつが騒がしいのだ』
『何ぃ? お前がうるさいのだ!』
『何を!?』
「ほ~ら、やっぱりそうじゃない」
『『ぐぬぅ・・・』』
結局二人とも言い合いをして騒がしくなるのはいつものことだ。
皆お互いにこれだけ言い合いできるのなら問題はなさそうだ。
「しっかし、この状況はひでぇな」
「念のため皆で生存者がいないか探しましょう?」
「そうだな」
「うん!」
だが、皆で手分けして探すも生存者発見の声は一つとして上がらなかった。
「ダメ・・・か・・・」
「・・・なんで・・・皆さっきまで・・・」
どこか信じられなくて泣いちゃ駄目だと思っていたのに、現実を突きつけられ涙が溢れてきた。高校からの付き合いの人もいれば、小学校からずっと一緒の付き合いの人だっていた。これからの人生でまだまだ同じ時を生きていくはずだった。
皆には皆の人生があるのだから、自分で選べばいいと思った。けど、こうなることが分かっていたなら・・・
「あんたも皆と同じようになれば良かったのに」
「っ!?」
私達以外、誰も動かないこの部屋の中にハッキリとした強い声が響いた。
・・・あいつ、まだ残っていたのか。
「田渕!!」
「どうしてあんた達は皆と同じように死ななかったのかしら? 残念だわ」
どこから現れたのか、すぐ近くに田渕は立っていた。
「あんた、自分が何言ってるか分かってるの?」
「分かってるか、ですって・・・? ふふっ、もちろん、分かってるわよ! 」
彼女は狂気の混じった笑みを浮かべた。