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20話、それぞれの行く先

 二日後、秋人達は15階層まで到達していた。

この階層にはミノタウロスが出てきた。

斧を担いだミノタウロスに接近を許せば、環ではどうしようも無いが――。

これまで7階層以降……。

アオイに教えてもらい二人共結界魔法を使える様になっていた。


「こん先がミノタウロスの巣になってます」


 京風の言葉で黒髪、青の瞳のアオイが教えてくれる。

身長は環が160cmに対し少し高い位だが、

小顔でスレンダーの為に背が大きくは見えない。

瞳が青でなければ完全に日本人である。


「視界に捉えたら矢を放って殲滅しますね」


 そう答えたのは、一昨日から秋人と同じ部屋で寝る様になった――。

茶髪のロングヘアーを今はポニーテールに結っている。くっきり二重の美人。才色兼備を地で行くお嬢様の環である。

勇者の能力を覚醒させてからは、その細身の体で想像も出来ない程の、

力を叩き出す。


「じゃ、俺は矢から逃れたミノタウロスを槍で殲滅するよ」


 そう言う俺は、本作品の主人公で鷹山秋人だ。

身長167cmで茶髪をベリーショートにカットして格好付けているが、

童顔の文科系オタクである。二重の目に黒の瞳で鋭く前方を睨んだ。


「見えた!行きます」


 そう答えた環が、何処から取り出したのか、弓を手に持ち弦を引くと……。

弦に光の矢が現れる。

細い腕で、弓を引き絞り放つと――。

放たれた矢は数10本に分離し、迫り来るミノタウロスの集団へと着弾。

矢が当ったそれらは、腕や足が千切れ飛んだり、腹に大穴を空けたりしていた。


「弓の威力が半端じゃねーな」

「遠距離でこないな攻撃されたら、相手もたまれへんなぁ」


環の弓の威力には、アオイも秋人も驚きだ。

初日とはうって変わり、環の表情も自信に満ち溢れている。


「さて、俺の番だな」


 そう、言うや否や秋人は矢が外れたミノタウロスの集団に突撃する。

斧を振り下ろされる前にまず一突き。

お互いに走りながらの攻撃なので助走の分の力も上乗せされ、

穂先は深く突き刺さった。

秋人は穂先を抜かずに、手を離す。

すると……刺さっていた槍は消え失せ――。

次の瞬間には、秋人の手元に戻っていた。

そう、以前先輩である柔道部の鈴木が斧を放ち、

次の瞬間には新しい斧を既に持っていた事を不思議に思った秋人が、

自身の槍で試し覚えた技であった。


「アイスランス」


 相手が複数の場合は最初に魔法の槍で攻撃してから、

手に持つ槍で刺し貫いていく。

この戦い方は森の中でも行っていたが……。

アイスランスで死んでいないミノタウロスへはシルバーが――。

こうして実に呆気なく15階層も突破した。


この時点で、既に秋人は鈴木や山田よりも強くなっていたのだが、

それは本人はまだ気づいていない。


 16階層がオーガの巣である。

オーガは無手で掛かってくるが防御能力と再生能力に優れている為に、

魔法の火力で押す戦法を取った。

秋人はインフェルノを――。

環はラーヴァフォールを――。


 インフェルノはご存知、地獄の業火。

では、ラーヴァフォールとは……溶岩の滝とでも表現出来よう。

溶岩が空中から敵に降り注ぐ魔法である。

これにより、如何に再生能力に優れているオーガでも、

呆気なく死に絶えた。


アオイ同様、環と秋人も破滅クラスの魔法を取得していた。


こうしてダンジョンの一日は終わる。


「これだけきつきつならはったら、そろそろいいかいな」


何がそろそろいいかな?なのだろう……。

秋人と環はアオイの次の言葉を待つ。


「次はいよいよドラゴンどすなぁ」

「なっ」

「はぁ?」


「ドラゴンって――竜の事?」

「龍と竜のどっちでしょう?」


ちなみにこの世界では竜は西洋の竜を、

龍は東洋の龍の事を指している様だ……。


「なん。臆しはる事はあらしまへん。ただの蛇どすから」


龍の事だった……。


 そして、翌日。

やってきました20階層、地下だというのに天井が見えない。

いっそ、どこかに転移したのでは?そう思う光景が秋人達の前には――。

広がっていた。


「ちょっと、ここ地下だよね?」

「そうどすなぁ」

「でも、空がありますよ?」

「あるね……」


そう、空があった。地下なのに!


 そして空には、複数のワイバーンが飛んでいるのが見える。

青色、赤色、シルバー。色の違いが何を指すのか……。

一目瞭然だが、信じたくは無かった。

赤いワイバーンは火を噴きながら……。

青いワイバーンは冷気を浴びせ。

シルバーのワイバーンは光の光線を吐き出してきたのである。


「ちょっと、これやばいんじゃ?」

「結界はりますね!」

「ここはヤマトの兵でも、攻略出来なかった場所どすからなぁ」


 あんさんがたなら勇者だから行けるでしょうと――。

気楽に言ってくれた、アオイ王女であった。

実際、アオイはここをソロで走破したのであるが……。

主にグラビティーでワイバーンを地に落として止めを刺してだったが……。


 秋人も環も、勇者の武器を構え、急降下してきたワイバーンに投げつけた。

だが、秋人の槍はワイバーンに避けられ、環の矢は当ったが、

致命傷にはならなかった。

どんどん近づいてくるそれに対し、秋人はアイスアローを放つが――。

青い色のワイバーンに氷魔法を撃ってどうする。


全く効果が無く、そうこうしている内に20mの距離まで接近された。

環はテンぱって居る。


見るに見かねたアオイが魔法名を唱えた。


「シャイニングカノン」


アオイの手から光の大砲が一直線に放たれる。

それに当ったワイバーンは。

一瞬で消し飛んだ。


「すげー!」

「なんですか?今の!」

「簡単に説明すれば、光のブレスの様なもんどす」

「ブレスって竜の最大魔法じゃないですか!」

「人間にそれが撃てるなんて……」


ここにしばらく篭っていたら、次第と使える様になった……。らしい。


 何でも5歳の時に虐められて始めて勇者の能力が覚醒し――。

7歳までの間に、単独でここまで来たらしいから。

幼少の頃でその強さ……今は……自分でも分らないらしい。

ただ、そのアオイ王女でも60階層までしか到達出来ていない。

そう教えてくれた。


その後は、アオイ王女がグラビティーで落としたワイバーンを、

槍と刀で刺し殺す、パワーレベリングがひたすら続いて、

その日は終了した。


滞在先のリビングで二人、と1匹は今日の反省会をする。


「あのグラビティーを覚えれば俺達でも行けそうな気がするんだけどね」

「ですね、先輩達もあれで無力化されたんでしょ?」

「うん。そうだよ」

「なら使えるに越した事は無いですよね」

「また、アオイ王女に教えて貰わないとね……」

「そうですね……」


 アオイの魔法の指導は、一言で言えばスパルタであった。

発動するまで延々、命の危険に晒されるのである。

秋人達が、躊躇するのも分るというもの。

だが、強くなる為には、通らねばならない道でもあった。


 そうして。今晩も風呂に入り――。

一緒の寝室へと戻ってくる。

何故か、秋人達が帰宅すると毎回、部屋の布団はくっ付けられており。

如何にも、してください。と言われている様だった。


 これはアオイ王女の策略でもあるのだが……。

今のヤマト皇国の王族は、アオイと父の国王のみ。

国の将来を心配したアオイが、勇者同士の子を望むのも理解できる。

自身は覚醒遺伝であり、自身の子が確実に勇者の能力を持って生まれるのか?

実例がなく、分らないから仕方が無いのであるが……。

勇者である、秋人とアオイがそう言う関係になれば期待出来るが、

どうやら秋人はアオイの好みでは無かった様だ――。


確かに、秋人と環の子なら確実に勇者の能力を所持するだろう。

この二人は日本人で、ヤマト皇国にも愛着を感じてくれている。

この機会を、逃したく無いアオイであった。


秋人君、私が隣で寝ていても手を出したりしてこないけど……。

そんなに私、魅力ないのかな?

あんなに情熱的なキスまでしたのに……。


 小鳥がついばむ様なキスが情熱的なのかはさて置き、

秋人はこの3日間、ずっと悶々としていたのである。

秋人も健全な年頃の男だ。

岬の事が無ければ……きっと初日で陥落したであろう。

だが、やはり想い人を手にかけた傷は深いのであった。









岬達一行は、漸く正人が狼を倒した場所まで戻り、

狼の皮を剥いでいた。


「これ、なんか気持悪いんだけど……」


 そう文句を言っているのは……。

身長156cmで、金髪にくせ毛のセミショートの岬である。

くっきり二重の瞼から覗くエメラルドブルーの瞳は如何にも嫌そうに、

剥ぎたての皮を体に巻いていた。

元々細身で胸がBカップだった為に、その光景は官能的である。

童顔の顔でこのギャップ!

秋人が見れば下半身が元気に成っていた事だろう――。


「そんな事言っても仕方ないだろう!」


 そう言っているのは……。

身長175cmで細身、黒髪にベリーショートの髪型の正人であった。

奥二重の瞼から黒い目を覗かせ細めながら、苦笑いでそう言った。

日本では元サッカー部だったらしく、

地元静岡で優勝を果たし、

2年で全国大会まで出場した経験を持つ少年であった。

ただし――趣味が、ラノベと全国高校制服図鑑を読む事なのが……。

印象を悪くしていたのだが……。

勿論、要因は図鑑の方である。


「わらわには無いのか?」


 そう言っているのは――。

ご存知、ダメ天使のレミエルである。

身長130cmの幼児であるが、真っ白な髪をお尻まで伸ばす姿は、

まさに天上人である。

ブルーの瞳をキョロキョロさせ自分には何も無いのか?と――。

おねだりする姿はそっちの愛好家にはたまらないご馳走であろう。

だが、本人の趣味はBL好きである。


「今、剥いでいるからもう少し待ってくれよ」


剥ぎ取るのは正人の役目であった。


「それで、これから何処に向かう予定なの?」


岬が恥ずかしそうに胸を押さえながら言うと……。


「流石にアルドバーン王国は嫌だろうし――」

「ええ、あんな事する王子の国はちょっと……」

「だよなぁ、おんな癖が悪くなければまともだけど……」

「あれで?最初に私に妾に成れって言ったんですよ!」

「あぁ、それいつもの事だから」

「そんな国は絶対お断りです!秋人君に合わせる顔が無くなる……」


最後の方が尻すぼみになりながら岬が言うと――。


「所でその、秋人っていうのは誰なんだ?」

「えっと、私を助けてくれた……」


途中まで言って、どう言って良いのか分らずに顔を真っ赤にさせた。


「あぁーなるほどね。想い人って訳だ」

「ひゃっ、そ、そんな所ね」

「ならそいつの所まで行けばいい訳だな」

「そうしてくれると嬉しいかも――」

「でも何処の国が召還したのかが分らなければなぁ……」


そうこうしている内に、レミエルの分の皮も剥ぎ終わり。


「ほれっ、これで前だけでも隠せばいいだろう」


 どうせ幼児の裸なんて誰も見ないし……。

そう聞こえない様に言ったつもりだったが、

レミエルにはしっかり聞こえており……。

『ドンッ』という音と共に。

正人はまた、地面に這いつくばった。


「お前、口には気をつけた方がいいぞ。わらわには聞こえておる――」


このダメ天使、馬鹿にされるとすぐ行動に出る……。

見た目と違い短気なのであった。


「それで、ヤマト皇国も一応考えたんだけど、あそこが今回の勇者召還の原因だからさ……。出来れば関わらない方がいいと思って――」


フェスリシア王国に向っていたと語った。


ちなみにエルドラン王国は王子が嫌いなアヴューレ王女がいる国――。

という理由で移動先からは外されていた。


「フェスリシア王国は安全なの?」


岬が正人に尋ねるが……。


「それが、ヤマト皇国に戦争を仕掛けてヤマトの勇者に滅ぼされてからの情報が一切、入ってきていないんだよな」

「それって……言いたくは無いけど、良くないのでは?」

「でも仕方ないだろ?アルドバーン王国、エルドラン王国、ヤマト皇国、フェスリシア王国、エステランド王国の5カ国しかこの周辺には無くて、エステランド王国は南東の一番遠くだし……」


 途中に大河があって渡れないらしい――。

実際には渡し船はあるのだが、ワニなどの危険な魔獣が多い為に、

簡単に行き来する国では無いらしい。

昔は巨大な橋があったのだが、

勇者戦争の折に侵略を恐れたエステランドの王が橋を壊させたとか……。


「じゃぁエルドラン王国は?」

「バーンの話では、あそこの王女がやばい人らしくて、いい噂を聞かなかったんだよ。それで選択肢から外した」

「うーん……ヤマト皇国だっけ?日本っぽい名前だけどダメなのかな?」

「ヤマト皇国の建国が、昔召還された日本人らしいよ。その子孫の王女が、今回覚醒遺伝で勇者の能力に目覚めたのが全ての始まりって聞いているから」

「でも、同じ日本人の血が流れているなら……」

「にしても数百年前だぜ?」

「そんな昔なんだ……」


 環のように、ここで味噌田楽でも食べる事が出来たら、この二人の考えも変わった事だろう。

だが、そんな物はここには無い。

元々、アルドバーンの王子は、周辺国の王女は全て苦手であった。

王子の好みは自分の色に染められる女性が好みで、

性格のキツイ王女は許容範囲外だったのだから。


そんな話の結果。


当初の予定通り、フェスリシア王国へ行く事に決った。


3人とも。水着の様な狼の皮を肌にぴったりと貼り付けた格好で……。


お読み下さり、有難う御座います

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