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04 魔銃

 ゲスール達の拠点は平屋建ての一軒家で、壁の隅にシーツが無造作に置かれているだけの簡素なものだった。

 部屋の真ん中に座っていた男が顔を上げる。

 男は紫のバンダナをした目つきの鋭い男だった。


「盗賊のシイフだ。こっちはシロノ。狙撃手だ」

「へっ、悪くねえ。シロノ、ゲスールの分まで獲物を打ち抜いてくれや」

「うるせえ。弓は性に合わねえんだよ。日が暮れる前にさっさと行くぞ」

「そうしてもらえると嬉しいな。ボクも夕飯までに帰らなきゃいけないし」

「そうなんすか? 腕によりをかけて作ろうと思ってたんすけど……」


 4人は街の近くの森に向かった。

 シイフは地面に耳をつける。


(あれが「索敵」ですか?)

(敬語は不要っす。その通りっす)


「……いたぜ。つうか、来たぜ」


 茂みから猪が顔を出した。

 鈍い音がして、猪は倒れる。

 ゲスールは剣を抜いて猪に近づいていった。


「え? 何でいきなり倒れたんすか?」

「目を撃ったんだよ」

「すげえな。魔銃って言ったか。ちょっと俺にも撃たせてくれねえか?」


 シイフは土まみれのままそう言う。


「どうぞ。ちょっと多目にマナを持ってかれるみたいなんで気をつけてください」

「ありがとよ! えーと、的は」


 いきなりシイフが倒れた。


「あ、兄貴いいい!?」

「人が血抜きしてんのに何遊んでんだよ……おいシイフ! 起きろ!」


 ゲスールが頬を叩くが、頭が揺れるだけで起きない。


「はあ……今日の狩りはここまでだな」

「そっすねえ。あ、シロノさんどう……ぞ?」


 魔銃を拾ったテッタも倒れる。


「ゲスールさん」

「ゲスールでいい。つうか俺らに敬語はいらねえ」

「ゲスールは触らないでね。ボクだけじゃ皆を運べないよ」

「こっちの台詞だ。こんな下らねえ理由で全滅したくねえ」


 シロノは銃身を持つように拾った。

 ゲスールはシイフを背負いながら猪を引きずる。

 シロノは倒れているテッタを背負った。

 2人は拠点に戻ってシイフ達を寝かせた後、猪を肉屋に持っていった。

 解体料を差し引いても5万ジーになった。

 ゲスールは2万ジーをシロノに渡す。


「駆け出しだと何かと金が必要だろ。今回だけ特別だぜ?」

「ありがとう。いつもこれぐらい稼げるかな?」

「今度はもっといけるだろ。シイフとテッタは猪1頭ずつは持てる。シロノは帰る時は護衛だな」

「ボクは持たなくていいの?」

「いざって時、対応が遅れるだろ」

「うーん……」

「気にすんな。テッタなんて正直ただの足手まといだぞ? その分料理はすげえが」

「そんなにおいしいの?」

「味付けは薄いがな」

「ふうん」

「あの銃は1日何発撃てるんだ?」

「今日買ったばかりだから分かんない。最低でも7発は撃てるみたいだけど」

「無駄撃ちしなきゃ十分な回数だな。弾代とか大丈夫なのか?」

「マナで氷を飛ばしてるんだ。だから弾代はタダだね」

「そいつはいいな。弾代は馬鹿にできねえからな」


 2人はギルドの前で別れた。

 ゲスールは狩りの報告をするらしい。

 夕飯にはまだ時間があったので、シロノはミハエルの店に寄ることにした。


「おおシロノか。どうした? 魔銃はちゃんと撃てたか?」

「ちゃんと撃てましたよ。そのことでちょっと聞きたいことがあるんです」


 シロノは自分は何発まで撃てるか質問した。


「最低でも3発はいけるはずだけど。広場で触らせた水晶玉があったろ? 3つ目が光ればだいたい3発分なんだ」

「もう7発撃ちました」

「え? そんなに?」

「ボクのマナの量と魔銃の消費量って分からないですか?」

「手っ取り早いのはマナ切れするまで撃つことかなあ」

「それ以外でお願いします……」

「ちょっと専門的になるけど、マナの量は体調に左右されやすいんだ。どれぐらい変わるかも人によるってのが一般的。あと保有量が多くても回復力が低い人がいることも分かってる。シロノがそうだった場合、明日は1発でマナ切れするかもしれない」

「え、それは困るんですけど」

「そういう人は稀らしいけどね」

「せめて気絶しないようにできませんか?」

「気絶?」

「仲間は触っただけで気絶しちゃいましたけど……」


 ミハエルは顎に手を当てて考え込んだ。


「普通はそこまでいかない。凄く繊細な性格だとなるかもだけど。ほら、ネズミ見ただけで気絶しちゃう人とか」


(あの2人が繊細ならボクはチョー繊細だよ……)


「誤解があるみたいだけど、マナ切れっていうのは眩暈や吐き気、頭痛がする程度だよ。1時間くらい」

「地味に嫌ですね」

「大丈夫。シロノは気絶しないよ。図太そうだから」

「失礼な、ボクだって気絶しますよ」

「んじゃこれに撃ちまくってみる?」


 シロノは渡された黒い板を地面に置いて、魔銃を撃ち続けた。

 残念ながら気絶ではなく、頭痛だった。


「っ~~~!」

「ほらな。で、ここにマナポーションという魔法薬がある。飲むと頭痛が消えるぞ」

「く、下さい」

「5千ジーになります」

「鬼!」

「はっはっは」


 シロノはコメカミを押さえながら店を出た。

 そしてゲスール達の拠点に向かう。

 ドアを叩くとゲスールが顔を出した。


「あん? シロノじゃねえか。何だ?」

「これ持って」

「は!? 俺まで気絶しろっつーのか!」

「大丈夫。ゲスールは頭痛か吐き気か眩暈だから」

「ただの嫌がらせじゃねえか! あ、こら、やめ」


 ゲスールは気絶した。


「ずるいよゲスール!」


 なんでだ。

 後日、ゲスールはそう言った。

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