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11 聖女スイーツ

 実力を認められたリブは書類を作った後、正式に冒険者として認められた。

 役割は前衛で得意なものは魔法というリブの主張は、マシブの「ややこしい」という指摘により前衛で武闘家と名乗ることになる。


「マシブ。冒険者の掟のようなものがあれば知りたい」

「そういうもの特にはないな! 法と交わした約束を守る。あえて言うならそんなとこか?」

「その法だが、あいにく私もシロノも詳しくない。どこに行けば調べられる?」

「お前さんは真面目だな。ギルドを出てまっすぐ行った広場に看板があるから、そこで読むことができるぜ!」

「助かる」

「リブ、丁度いいからパーティ申請しとこうよ」

「おう、やっとけやっとけ! こっちも冒険者同士の繋がりが分かるようになってありがたいからな!」


 マシブが取り出した羊皮紙には、冒険者の名前がびっしり書かれていた。

 シロノとリブは最後の方に名前を書き、広場へ向かう。

 広場にはちょっとした人だかりができていた。


「あ! 姉ちゃん!」


 レムが走り寄ってくる。


「姉ちゃん! あれ買って!」

「なんだこのガキは」

「えっと、この子はレムって名前で、街の案内をしてもらったんだ。レム、この子はリブ。よろしくね」

「よろしくな!」

「シロノが世話になったのか。よろしく」

「それで、いきなりどうしたの?」

「それがさ、クレエプっていうお菓子が売ってるんだけど、ちょっとお金が足りなくって」

「ほう、菓子か。それは是非とも食わねばな」


 3人が屋台に近づくと、騎士が声を張り上げていた。

 屋台には何十人もの人が並んでいる。


「順番だ。列に並んでくれ! そこ、割り込むな!」

「わ。結構並んでるね。リブ、待てる?」


 リブはえっへんと胸を張った。


「ふっ、この程度どうということはない。1日30個限定のアプリルパイのために、私は朝一で並ぶことも辞さない女だ」

「リブは食いしん坊だなー」

「今でも思い出す。持っただけで香る甘酸っぱいアプリルの匂い。口に入れた時のサクッとした軽やかな歯応え。その後にふんわりと優しく」


 リブのアプリルパイ談義は順番が来るまで続いた。


「……む、もう私達の番か。おやじ! 3つくれ!」

「あいよっ。ほい、聖女印のクレエプ3つ!」

「はい、レム。しっかり持って食べるんだよ」

「ありがとう!」


 3人は近くの木陰でクレエプを食べる。

 クレエプは薄い生地で生クリームとナバナという果物のジャムを包んだ食べ物だった。

 レムはすぐに食べてしまうと、シロノに礼を言って走り去っていった。

 リブは黙々と静かに、ゆっくりと、噛みしめるように食べている。

 シロノも食べ終え、くにくにしてるー、と味より食感の方が印象に残った。


「うむ、なかなか面白かった。味は大雑把だったが、これからに期待だな」

「今度はリブが言ってたアプリルパイが食べてみたいな」

「そういえば長らく食べていなかったな。明日にでもレムとかいうガキに良い店を案内させるか」

「それもいいね。じゃあ、そろそろ看板見に行こっか」

「看板? ……ああ、そう言えば法を見に来たんだったな」


 看板はすぐに見つかった。

 盗みや犯罪について始まり、街中で使用できない魔法などについて書かれている。

 シロノ達が気にしていたレッダを返り討ちにしたことについては、殺人の項目の中に「山賊等に襲われた場合は返り討ちにしても罪に問わない」という旨が書かれていた。


「あまり心配していなかったが、これで一安心だな。奴らに仲間はいないと思うが、似たような輩が他にいないとも限らん。注意だけはしておくぞ」

「うん。今度からはパーティ申請は絶対するよ。きっと怪しい人は証拠を残さないためにやらないんだと思う」


 ぐっと拳を握り気合を入れるシロノ。

 リブはシロノの空いている方の手を握った。


「シロノ。この後はどうする? 服は買ったし、腹も膨れている。金もまだ余裕があるし、宿に戻ってゆっくりするか?」

「んー。狩りがしたいんだけど、今日は色々あったからね。ボクもまだ自分の体力を把握しきれてないから、あまり無理はしないほうがいいのかなぁ?」

「まだ生まれたばかりだからな。それは仕方がないことだ」

「リブに狩った獲物を運んでもらえば大丈夫かも」

「私は一応お前の主なんだがな。あまりこき使ってくれるなよ」


 相談をしている2人に、トテトテと近づいてくる者がいた。

 クリーム色の大型犬、ダッグだ。


「奇遇だな、シロノ君。君も聖女の郷土料理を食しに来たのか?」

「こんにちはダッグ。まあ、そんなところ。紹介するね。この子はリブ。さっきパーティ組んだんだ」

「リブだ。よろしく」

「……」


 ダッグはじっとリブのことを見つめた。

 リブはやれやれと肩をすくめる。


「『看破』は効かんぞ。犬のくせに器用な奴だ」

「ふむ。失礼した。実は想定外のことが起きてね。戦力になりそうな者を探していたのだ」

「ダッグはね、オークの肉が大好きなの」

「オークか。美味かったな、あれは……待て。シロノが言っていた知り合いというのは」

「え? あ、あはは」

「まあいい……ダッグ。戦力が要るとはどういうことだ?」

「結論から言うと、オーク・キングがやってくる」

アプリルが何かはバレバレだと思いますが、異世界の雰囲気を大切にしようと思って直接アップルと書くのは避けてみました。

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