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ロリっ娘女子高生の性癖は直せるのか  作者: きり抹茶
第2章 自称御令嬢の恐怖症は直らないのか
16/136

2-5 「全然嬉しくなんか」

「はぁ!? デート!?」


 思わず俺は声を上げる。

 聞き間違いだと思ったが、堂庭は間違い無く二人でデートしろと言った。しかも明日。いくらなんでも急過ぎるだろ!


「そうよ。晴流とこの泣き虫令嬢の二人で仲良くデートしなさい。もししないと……修善寺。あなたには晴流から一発殴られちゃうわよ?」

「ひ、ひぃぃぃ!」

「おい堂庭。だから俺はそんな事しな、ぐはぁ!?」


 痛いよ!

 修善寺さんじゃなくて俺が一発殴られたよ! しかも堂庭に!


「デートコースは全部あたしが決めてあげるから、二人はそれに従って行動すること!」


 堂庭はてきぱきと話を進める。

 だが待ってほしい。今日初めて会った子といきなりデートとか、いくらなんでも無茶振りではないか?

 しかも相手は不良(という設定)である俺にビビりまくってるんだぞ?


 修善寺さんにとっては確かにお仕置きになるかもしれない。

 でも嫌がる女の子と無理矢理遊ぶ俺の立場も考えてくれ。

 ある意味俺も罰ゲームのようなお仕置きを食らう羽目になるんだが。


「み、みみ宮ヶ谷様と一日を過ごせばいいのじゃな。……えっぐ。し、仕方ない。家の名に恥じぬよう全力を尽くして、耐え抜こうではないか」


 修善寺さんは涙を拭いながら、力強く誓う。

 なんだか明日から山に籠もって修行する人みたいだな。

 というか呼び方が『様』に様変わりしてるんだけど。え? 誰が上手いこと言えって?


「ふふ、いい気味ね。あんたのその過度な恐怖症も世間ではしっかり差別されるわよ」


 ゴスロリの衣装、もとい黒いドレスを身に纏った堂庭は手を口に当て、悪の女王のように高らかと笑う。


 はぁ……。何か修善寺さんが可哀想に思えるな。今の堂庭は正直ウザいから黙らせたい。

 こいつちょろい上に調子に乗ると面倒だし、振り回されるのはいつも俺だからな。


「待ち合わせの時間は朝十時くらいでいい? 場所は後で二人に連絡するから」

「ってか本当に明日なのかよ!」


 問う俺に対し、何か文句ある?と言いたげな目でこちらを見る堂庭。


「いくらなんでも急過ぎるだろ! 来週とかでよくないか?」

「何? 明日は用事でもある訳?」

「いや、別に暇だけどさ……」


 残念ながら俺は明日もフリーだ。

 だが、何か特別な行事があった気がしたが……。よく思い出せないな。


「そこの泣き虫お嬢さんは平気なの? 明日は」

「うぐ……。童は問題ないのじゃ。こ、こういうのは早く済ませておきたいからのう」


 はぁ……。ここまで嬉しくないデートが果たして他にあるのだろうか。

 この調子で俺と修善寺さんの二人にされたら、絶対気まずい雰囲気になるだろ。

 まあコースは堂庭が勝手に決めてくれるようだし、明日はそれに従ってやり過ごせばいいか。


「じゃあ今日はこれで解散! あ、言い忘れてたけど、二人ともドタキャンとか無しだからね。 ちゃんと()()()すること!」

「へいへーい」

「分かったのじゃ……。ひっぐ」


 堂庭一名のみテンションが高いという異様な空気で話は決着し、俺たちは帰途についた。

 尚、桜ちゃんは終始裏の看板に身を隠したままで、出番が皆無という残念な結末だったりする。




「あぁ疲れたー。って舞奈海! どうして俺の部屋にいる!?」


 家に帰り自室に入ると、そこに何故か体操服を着た舞奈海が俺のベッドにごろんと寝転がっていた。


「あの……。何してるの?」

「ん、お兄ちゃんか。えっとね、さっきまで明日の練習をしてたの」

「明日? 何かあるのか?」

「え!? まさか知らなかったのお兄ちゃん! 明日は運動会だよ!」

「な、マジっすか……」


 あぁ思い出した。明日の日曜日は舞奈海が通う小学校の運動会があるんだった。

 俺は毎年応援に行ってあげていたのだが、今年は無理だな。デートの日程を変えようとすると多分堂庭が怒るし。


「今年もお兄ちゃん応援に来てくれるでしょ?」

「それがだな……。明日は用事があって多分来れない」


 多分という言葉を使って語尾を濁す俺。ちなみに間違いなく来れないという言い方がより正確である。


「えー!? 本当に? 私、お兄ちゃんに見てもらえると思って踊りとか一杯練習したのに……」


 がっくりと肩を落とす舞奈海。

 兄としてこんな健気で可愛らしい妹を悲しませるのは罪深いが許してくれ。こっちにはもっと重要な行事があるんだ。


「舞奈海。今度好きな菓子買ってあげるから許してくれないか……?」


 恐る恐る問いかけるが、舞奈海はベッドにうつ伏せで寝てしまっており、こちらを振り向こうとしない。

 やはり機嫌は直らないか……。そう思ったが、舞奈海はそっぽを向いたままぽつりと呟いた。


「私、許さないなんて言ってないんだけど。……それにお菓子じゃ全然嬉しくなんかならないし」

「ごめん……。でも本当に明日は外せない用事が」

「……ってよ」

「え?」

「今見てよ。……明日来れないなら今見て、私を応援してよ!」


 最後に力強く言い放った舞奈海は体を起こして、こちらをじっと睨んだ。

 その顔は赤く、目には薄っすら涙が浮かんでいるように見える。


 ……舞奈海も色々と思う年頃になってきたのだろうか。


「あぁ分かった。じゃあ明日の演技とやらを見せてくれ」

「うん、でもちょっとだけ待っててね」


 そう言った舞奈海は一旦俺の部屋から出て、またすぐにトコトコと部屋に戻ってきた。

 片手にラジカセを持っている。どうやら曲を流すつもりのようだ。


「じゃあ……いくね」


 舞奈海がラジカセのボタンを押すと、軽快なリズムを刻んだ三味線の音が鳴り始める。


「はぁっ!」


 一声上げた舞奈海は、腰を低くして踊る体勢に入る。


 もしかしてこれは。


 流れる三味線のメロディーに和太鼓も加わり、そして……。


「あードッコイショードッコイショー!」

「どっこいしょーどっこいしょ!」

「ソーランソーラン!」

「そーらんそーらん!」


 舞奈海が踊りだしたそれは運動会の遊戯では定番の『ソーラン節』だった。


 狭い部屋の中で、彼女はその小さな体をいっぱいに動かす。

 姿勢を低くする際のキレやタイミングも完璧で、俺はつい見入ってしまっていた。


 俺も小学生の時ソーラン節踊ったよなあ。

 でも確実に舞奈海の方が上手である。……相当練習したのだろうか。


 その後も数分間、舞奈海は最後まで俺の前で踊り続けた。


「はぁ……はぁ……。どうお兄ちゃん? 感想は?」


 踊り終えた舞奈海が息を切らしながら聞いてくる。


「そうだな。めっちゃ上手だったぞ。正直驚いた」

「ふーん。……それだけ?」


 物足りなさそうな顔をしてこちらを見つめる舞奈海。くっ、欲しがりな奴め。


「それだけじゃないぞ」


 そう言って俺は舞奈海の頭の上に片手をポンと乗せる。


「練習頑張ったんだな。……明日も気合い入れろよ」


 舞奈海の頭を撫でる。すると彼女は満足そうに微笑んだ。


「ありがと。……これで許してあげる」

「ちょっ。さっきと言ってる事違うぞ!」


 でもまあいいか。凄い嬉しそうだし。


 舞奈海の笑顔を見て、俺も顔がほころぶ。まだこいつは小学生で甘えん坊なんだよな。



 俺も気合い入れて頑張らないと!



「ちょっとお兄ちゃん手離さないでよ! まだ充電できてないんだけど!」

「充電?」

「そう! お兄ちゃんパワーがまだ足りないからもっと撫でて!」

「はいはい……」


 しかし今日はやけに甘えてるな。

 舞奈海が兄離れする日は、果たして来るのだろうか。

当小説をお読みくださり、誠に有難うございます。

次話からデート回になります。


※2章6話は3/22(水)投稿予定です。

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