第八話 出発、そして冒険の始まり 終
今更ですが、ここまでが序章の部分です。
お詫びになるかどうかわかりませんが、おまけシナリオをつけました。
それぞれのカードをストレージに戻したのち、今後について話す。
「さて、まだまだ道は長いから、今のうちに情報のおさらいとこれからのことを決めるか。リムにとっては初めてのことも多いから、遠慮なく質問していいぞ」
「です」
リムが頷くことを見て、情報の整理を始める。
「まずはシュットジュールのことだな、リムはあのことについてどこまで知ってる?」
「確かご主人が兵器をぶっ放て、世界を滅ぼしてから、化身とか魔法とかが現れた、です」
「概ね正解だな。兵器の正式名称はWorld Change Missileと言い、俺とリノはW.C.Mで呼ぶ。原理は七つの主要ミサイルと大量な小型ミサイルと連動し、同時爆発によって散布されるある物質で、地脈や生き物などに影響を与えことで変異や変質などを促す。正確には世界を滅ぼす兵器ではなく、世界を変えるためのものだ。今の世界は俺とリノが生涯を賭けて、デーザインしたものと言っても過言ではない。とは言え、本来の七つの主要ミサイルうちの一つが現在行方不明になった。そのせいで割と本来のものとは違っているけどな」
「えぇー! それはやばいことじゃないの、です?」
まさかここでとんでもない情報が出てきたので、リムは慌て質問してきたが、
「だから今回の旅にはその行方を探しのも目的の一つですよ、リム」
答えたのはリノの方であった。それに続く情報を補完する。
「ま、そっちは焦でもしょうがない。百年の間も一応は情報を集めたがまだ誰にも発現されていないみたい、もしかしたらかなり隠蔽される場所にあったかもな。こればかりはゆっくり探すしかない……それと俺たちの正体はバレると面倒から、極力目立つな行動は避けるように」
「分かりました」
「です」
最後のものは今までもいくど注意していたから、割りと雑に済ませた。言われなくとも警戒している相手はあの世界組織だ。だが、それ以外にも気を付けるべき存在がいる。少し真剣な表情になって次の事項を切り出す。
「そして一番注意すべきなのは、ウィルとゲファレナーという存在たちだ。ぶつかると面倒だから、とりあえず逃げる方向で……」
「ウィルなら知ってるけど、そのゲファレナーの人たちは何なんの、です?」
「残念だが、そいつらは人じゃないだ。異種族落ちより質の悪いものだ。普通の契約者が化身の力に魅入れ過ぎるとその種族になり、これが一般的に異種族落ちと呼ばれる現象だ。ゲファレナーはウィルが力を暴走したせいで精神力や生命力が落ちた時に、契約した化身に全てを奪われた存在を指す。本来、化身は自分の意思でこの世界に動くことが出来ないが、ヴィルは元々化身との繋がりが強いせいで、その体が乗っ取られたなら話は別だ。存在そのものが化身となり、ウィルと匹敵するほど魔法が使いこなす危険な存在だ。その多くは欲望のままに暴れ、何より恐ろしいなのは神などの一部強大な化身がゲファレナーになると終焉魔法まで使えることだ」
「終焉魔法? そう言えばご主人にもある、です」
リムはステータスの内容をちゃんと覚えているようで、アスルはそれについても解説する。
「よく覚えてるな。ついてだから魔法についても説明するか」
この世界に置いて、魔法はすべて化身から借りたもの、化身なしではもちろん発動できないが、今は魔道具などが発明され、魔力さえあれば化身なしでも込められた魔法を使えるようになった。
発動する魔法の階段は五つに分かれている。下から順に初階魔法、中階魔法、高階魔法、神階魔法。一番上なのか終焉魔法。高位な魔法になればなるほど威力や範囲が増し、それゆえ神階魔法は戦略魔法とも言われている。魔道具にも高階魔法を込めることに成功したみたいだが、希少さゆえに手にし難い。
また、魔法の種類は系統魔法や特殊魔法、通用魔法に分かれている。通用魔法を除いて、一つの化身には基本一種類の魔法しか扱えない。特殊な化身や二重契約などに成功しなければ、複数の魔法を扱える存在はすくない。かと言って、特殊な化身で多くな魔法を使えるから強いとは限らず、二重契約を強行しても精神が耐え切れず自滅した者もいる。
通用魔法は主に魔力のみで使える魔法のことである。魔力弾とか、魔力障壁とか、身体能力強化とか、言わば魔力の応用で使える魔法を指している。一応は無属性に分類されて、俺が扱っている強化魔法もその枠にある。
「そして、終焉魔法でのは必殺技のようなものだ。レベル100以上じゃないと解放できず、また無詠唱じゃ発動できない。化身によっては神階魔法より威力も範囲も低いが、干渉力は確実上回る。ただし、これは基本神や竜王、魔王など強力な化身しか持ってないから、そうそう見れるものじゃない。終焉魔法は世界そのものに干渉できる魔法だから、さっきからそいつらとは関わるなと言ったのだ」
「ということは私たちが負けるかもしれないということですか?」
「えぇー! そうなの、です?」
元々終焉魔法を知っているリノは自分の懸念について聞いてきて、リムは驚きながら同じことを訊ねてきた。
「……いや、負けはしないが、かなり苦戦はするだろうな。なので面倒になる前逃げるだよ!」
「「…………あぁ、なるほどです」」
なにやら二人は妙なところに納得しているような気が、とりあえずはスルーことにした。と言うか、リムは何故かいつもリノとハモる時に敬語をうまく使えている。マジで謎だけど!
今はそれを気にしないでおこう。気を取り直して、次に移す。
「あとはこれからの目的地だが、大橋を抜けたらまずは砂漠の国<レイクシス>に向かうぞ。そこには<ペルグランデ>という巨樹があって、噂じゃすごい大きらしいぞ。どの道デゼール大砂漠を越える必要があるから、見に行かない手はないだろ。異論はあるか?」
「「ありません!」」
どうやら目的地については問題ないようだ。いよいよ最後の事項を切り出す。俺にとってこの議題こそ一番重要なものだ。
「ところで、そのご主人様とかいう呼び方を変えてくれない? 隠れ家にいる時は別になんの問題もないが、さすがに外でそう呼ばれるのはちょっと――」
「「だめです!!」」
またしてもリムが正しい敬語を使い、二人は見事にハモって提案を即却下された。いつかこの謎を解け明かそう。
この呼び方は何故か隠れ家の時に流行り、今までそう呼ばれた。俺もそれなりに気に入りではあるが、外で呼ばれるたびに恥ずかしい過ぎて死にたい気分だ。しかし、本人たちがいやがる以上は無理に変えることはできない。決してそう呼ばれるのが好きだからではない!
それでも旅を楽しむ気持ちはみんな一緒で、かくいう俺も結構楽しみなのだ。何せレイクシスは一番W.C.Mの影響を受けた場所の一つだから。
その後、何とか日が暮れる前にエンバト大橋を渡り切り、車をこちら側の租借屋に返した。橋の両側には小さいな村があり、今日はこのままこちらの村の宿に一晩を泊まることにした。
夜は結構楽しんだので、翌日は少し寝不足と痩せたまま二人を連れてデゼール大砂漠に向かった。一応言うが、エッチなことはしていない。
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おまけ:
隠れ家を離れる前日の夜。
リノ「ご主人様、リム! いよいよ明日は旅の日ですね!」
アスル「そうだな、俺の二百年も無駄じゃなかった」
リム「わたしも楽しみ、外の世界は初めて、です!」
アスル「リムが興奮するのは分かるが、お前はなんでそんなにテンションが上がるのだ?」
リノ「よくぞ聞かれました、ご主人様。実は噂でアーカデアの首都にはガチャというものがあるそうですよ。ここから出ればぜひそれを引いてみたいです!」
アスル「いや、そもそもルート的に逆方向だから無理だろ。何がお前にそこまで突き動かすだ?」
リノ「うふふ、それは、賞品です! すごいのか出るそうですよ!」
アスル「へぇ~、何かあるだ?」
リノ「大き屋敷とか、プライベートピーチとか、車とか……」
アスル「……確かにすごいな。そんな豪華な賞品を入れていいのかな」
リム「車はちょっと乗ってみたい、です!」
リノ「それと、エロ本とか!」
アスル「ぷぅー! 誰だよ、そんなもんを賞品にしたのは!」
リノ「細いことはいいです! とにかく、私はそれを回りたいです! だからお願いします、ご主人様。一度だけでいいから、一緒にそのガチャを回りましょう!」
アスル「まあ、一回ならいいか、金もそこそこ貯まっているから。リムもやるか?」
リム「です! わたしは車を当たりたい、です」
リノ「リムはともかく、ご主人様は一回だけ回すのはだめですよ! アーカデアの女性たちにはこんな言葉があります。漢なら三十回を回しなさい! と。ゆえにご主人様も最低三十回は回すべきです!」
アスル「三十回か……一回でいくら掛かるだ?」
リノ「一回で三十碧だから、三十回は九百碧は掛かりますね」
アスル「よし、首都は無視して本来の予定で行くか」
リム「……おねえちゃん、また変なものにハマったの、です」
リノ「えぇ~、さっきまで行く気満々だったのにどうしていきなり取り消しですか? 私は行きたいです!」
アスル「元々首都に行くのが無茶の話だ。誤りを早い段階に気付いてよかったじゃないか」
リノ「いいえ、それでも行くべきです!」
アスル「いや、お前、話聞いてる! だから無理だって、あそこは敵の本拠地だぞ」
リノ「さあ! ご主人様、リム、私たちの|冒険(ガチャ回しの旅)を始めましょう!」
アスル「で、全然聞いてない!」
リム「あわわ、おねえちゃんがまた暴走してるの、です」
リノ「さあ! 私について来なさい!」
アスル「だから行かないで言ってるだろうか!」
リム「わたしも、遠慮する、です!」
アスルとリムは光の速さで逃げ去った。
リノ「もう! 二人とも意気地なしだから……あら、これは……」
そこで、リノはアスルの金袋がテーブルの上に忘れられたことに気付いた。
リノ「ご主人様たら、大事なお金を持ち忘れてますなんて、こういうところが可愛いですから、きゃあ!」
そして、金を自分のストレージに入れた。
その後、主人が金を持ち忘れたことに気付いた時もわざと黙り、傍にずっと困っている主人の姿を楽しんでいた。
結局は新しい金を手に入れて、無事にアントナルを離れたが、その時にようやく金のことを思い出した。
しかし、旅に影響はないみたいで、このまま黙っていることにした。
アスル現在所持金:
49金 426銀 59銅
リノ現在所持金:
3碧 967金 503銀 352銅
誤字脱字などは活動報告にお願いします。
来週金曜からは真の第一章が始まります。