第七話 出発、そして冒険の始まり 続Ⅳ
太陽が中天に昇り、アスルたちは食事を終えて、今は世界最長と誇られるエンバト大橋を渡り始める。
唯一の難関である検問所を無事に通たところで、目の前広がるのは人を圧倒する大自然である。
<エンバト大橋>
今から七十三年前にアーカデアとヴェシテ大陸西部を再び繋ぐ大橋として建造されたもの、今では交易の要所として使われている。
大陸東部とは更に離れ、かつより多くな強い海の魔物が生息しているため、この一本しか建てられていない。
大陸東部に行くには船が必要で、それも大型軍用艦でないと簡単に沈んられてしまう。また、飛行船の選択もあるが、どっちも身分検査が厳しいゆえ、アスルたちはエンバト大橋を渡り、ヴェシテ大陸西部を最初の起点として選ぶしかない。
全長二百キロ超え、世界最長な大橋として誇るその姿は凄いというより、もはや雄壮としか言いようがない。大橋を構成しているの静洋石という新鉱石、海と似た色で、効果は荒ぶる水を鎮めることだ。
もっとも、通常ではちょっとした水溜りを鎮めることしか出来ないが、二百キロ超えの橋として積み上げると、海どころか辺りの気候すら鎮められた。実際、建造されてから周辺の海は一度も荒れず、時々雨が降っているくらいのものである。
上は普通の石橋と同じ、幅は十数メートル程度、下はアーチで連綿と先へ連ねている。柱は海の底まで伸びるではなく、二十数メートル辺りで固定魔法によって固定されて、以降は大型魔物にぶつかってもすぐには沈めないようになっている。
涼しい風に吹かれ、藍色な大橋の上に借りた魔導車で進んでいるアスルたちはその絶景を楽しんでいる。車は魔力さえ込めれば割と勝手に前を進むので、特に細い操作は必要ない。問題があれば警告し、あるいは強制停止するから、非常に安全的な乗り物である。
「これは最高だな」
「まさに、絶景ですね。空も海も橋も青一色、自然と一体化した感じです」
「ほぇ~、凄い、です!」
全てが一つに溶けているような、無限に広がる大自然の中、自分のちっぽけさと自然の大きさを感ぜさせるその美に、三人はルーフパネルの付いていない白い車で風や景色をエンジョイしながら、大絶賛した。
たまたま大橋を通る人が少ない時間帯なのか、過ぎ去ったのはほとんど同じ魔導車で巡回している兵士たちだ。
しばらくドライブを楽しんでいると、リムは充分に堪能したのか、さっき聞きそびれたことを思い出した。
「ご主人、さっき貰ったものはなんなの、です?」
「ああ、あれか……」
言いながら、ストレージから一枚のカードを取り出した。さっき検問所に衛兵に見せたものだ。
「これはギルドカードというものだ。通常では身分証明や金銭の支払いなどに使えて、そして握りながら自分のステータスを見たいと念ずると、こうなる訳だ」
カードから長方形な光デスクが浮かび、運転席から二人に見せやすいように空いている手を後ろに伸ばした。
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シュウド(アスル・バハドール) 男 レベル:???
種族:人間
職:Eランク冒険者
化身:???
強化を司る神――ディル・ヘギス
属性:無属性
HP:3530(+17650)(+35300)(+?????)
MP:?????
STR:3760(+18800)(+37600)(+?????)
DEF:3180(+15900)(+31800)(+?????)
AGL:3990(+19950)(+39900)(+?????)
MGR:3270(+16350)(+32700)(+?????)
スキル:強化魔法[圧縮強化・解放][多重強化・解放][事象強化・解放][範囲強化・解放][複数強化・解放][形態変化・解放][部分強化・解放][集中強化・解放][付与強化・解放][多重付与強化・解放][間接強化・解放][間接効果範囲拡大・解放][第二段階強化・解放][第三段階強化・解放][無詠唱・解放][遅延発動・解放][魔力消費減少・解放][終焉魔法・解放]、複合魔法、神の目、神化、高速魔力回復、魔力操作、魔力探知、気配探知、気配遮断、威圧、#$%&*……
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「まぁ! これは、素晴らしいステータスですね。さすがはご主人様です」
「ほぇ~……んん? ご主人、一部が表示されないのはなんでなの、です?」
リノはベタ褒めで、リムは感心しながら謎の一部について訊ねた。手を戻して自分も確かめると、
「俺も初めて見たが、ちょっと引くな。謎になった部分はたぶん計測できないからだろ。第三段階強化は少し特殊で、表示できないのは普通だ。ほかは……もう一つの化身の力が原因で読み込めなったかもな。これも仕方ないか」
バカげたステータスに溜息して、説明をする。
「レベルは二つの神化身を持っている時点で計測は無理だろ、これは強さの程度を測る意味以外には化身の力をどれだけ引き出せるかも数値で表すから。レベル100に達した時点で化身の力を百バーセント引き出せることを意味するが、ウィルならそれを越えることが可能だ。俺はどっちも既に使いこなしたから、レベルは少なくとも200は超えだな」
レベルを解説し終わると、魔力欄とスキル欄に視線を向け、更に続く。
「魔力量も二つの化身が合わせたものだから、計測限界が突破したのは無理もない。スキルのもう半分も……まあ、同じだろな。どれも普通ではこんな風にはなれないはず、二人は気にしなくてもいいぞ」
「なるほど、です」
「あの力がここまでのものになるなんてね……」
二人は説明に納得したところで、自分たちのカードを取り出した。
「次はわたしがする、です!」
「では、私もせっかくなので……」
同時にカードに念を送り、同じ光デスクが浮かべた。
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リム 女 レベル:1
種族:人間(AI)
職:Eランク冒険者
化身:なし
属性:なし
HP:28000
MP:0
STR:28000
DEF:28000
AGL:28000
MGR:28000
スキル:武装想創[+多重想創][+精密想創][+複製想創][+形態変化][+模倣想創][+武装解析]、エネルギーバリア 、精神攻撃無効、物理抗性、魔法抗性、魔力貯蔵、魔力操作、魔力探知、気配探知、気配遮断、魔力視、夜視、遠視、透視、自我修復
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リノ 女 レベル:1
種族:人間(AI)
職:Eランク冒険者
化身:なし
属性:なし
HP:100
MP:0
STR:130
DEF:200
AGL:70
MGR:200
スキル:道具製造[+魔道具製造][+精密製造][+改良][+改造]、エネルギーバリア、精神攻撃無効化、物理抗性、魔法抗性、魔力貯蔵、魔力操作、魔力探知、気配探知、気配遮断、魔力視、夜視、遠視、透視、自我修復、記憶事象復元、
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「おぉ~! わたしLv1なのに結構強い、です!」
「私たちには化身を持っていないからステータスは製造される時に固定されたものですから。でも、私はやっぱり弱いですね。お二人には遠く及びません、はぁ」
リムはステータスに満足したが、リノは逆に自身の戦闘力のなさに嘆いていた。
「なにさらっと嘘を言ってるだ。お前の価値はとっくに数値じゃ測れないほどになっただろうか」
リノの強さは数値にないことを知っているため、一応フォローをした。
「いやん~、ご主人様たら、"お前の女の価値は体だけじゃないだぞ"なんて、嬉しいすぎて今晩の夜伽はいつもより頑張ってご奉仕しますね」
なにやらひどい誤解がされているようで、イヤンイヤンと腰を揺れている彼女に一応反論する。
「いや、そんなことは言ってない……」
後半を反論できないのは複雑な男心ゆえ。もっともそんな肉体関係は結んでいない上に、リノの言っている夜伽とか奉仕とかはどれもギリギリ健全なもので、むしろいつも煽されてることに困っている。
「そう言えば、年齢は表示していませんね、やっぱりあの自称年齢騒動が原因でしょうか?」
「だろな、あの大移民以来は本当の年齢を認めないヤツが続出している。カードで読み込んでもそれを認めず、誤作動だとか、壊れているとかでとんでもない数の騒動事件を起こしたから、今ではその機能を削除することで騒動鎮めた。ま、俺たちにとってはむしろ好都合だけどな」
騒動事件のあと、人間以外の種族はほとんどが自称年齢で通ている。
もっともたとえ年齢が表示してもリノに改竄する予定なので、大した問題ではない。騒動事件やその他いろいろな情報も隠れ家に知り合った友人から知り得たもので、引き篭ってる間も外のことはそれなりに熟知している。
「あれ? ねえ、ご主人、なんでご主人の名前が違って、わたしたちの種族には人間で表示されているの? それにいつの間にかわたしたちは冒険者登録したの、です?」
今度は首をちょっと傾きながら次々と質問してきたリムに、言葉を選びながら慎重に教えた。
「ああ、そうえば言ってなかったな、これらはすべてリノに改竄されたものだ。でもカードは一応本物で、ちゃんと使えるぞ。俺たちじゃまともな手続きで登録できないからな」
そこで、いきなり横からリノが割入って、
「聞いくださいよリム、このカードを作るのすごく苦労しましたよ。誰もバレないようにごっそりギルトを侵入して、カードを盗み出し、資料をぎ――」
「ストップ!! そんな黒いの教えなくていいから! わざわざ触れないようにしたのに、なに勝手にばらすんだ!」
汚い裏仕事の内容を勝手にペラペラとバラし始めた。慌ててそれを止めた。純真なリムには出来るだけこういうことには手を染めないようにつもりだ。
「しんにゅ? ぬしみ? おねえちゃんがなにを言っているのか全然分からない、です」
「分からなくていいから!」
まだチンブンカンブンで考えているリムに、その思考を速攻に断ち切った。
「コホン、それと、このステータス欄は絶対に他人に見せるなよ。俺たちのものはどれも普通じゃないからな」
わざとらしく咳払いして、この話題を強引に終わらせた。
「うふふ、かしこまりました」
「です!」
一名はなにやら含みのある笑いをしているが、とりあえずスルーした。ともあれ、一応は上手くリムの純真な心を守りきったようで安心した。
それぞれのカードをストレージに戻したのち、今後について話す。
誤字脱字などは活動報告にお願いします。
ステータスは一応なもので、いつか改稿するかもしれません。