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二百年の引き籠もり、そして伝説へ!  作者: イグナイテッド
第一章
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第六話 出発、そして冒険の始まり 続Ⅲ

 門の近くにある街道にたどり着くと、異変に気付いた。


 まだ真っ昼間の町にいるにも関わらず、門を守るはずの衛兵の姿が見れず、周囲には人影一つもいない。いくら活気の少ない町とは言え、異常な光景だった。


 だが、そんなことはどうでもいい、目指すは町の外のみとでも言う風にアスルたちは真っ直ぐ門へ向かっている。あらゆる異常を無視して歩いている姿は、周りの景色と加えて更なる異常になっていく。


 そんな彼らを影から見ている存在たちはざわつき始めた。


「おい、そこのおめぇら……ちょっと待って」


 いきなり前方の建物の影から一人の黒ずくめのトカゲ人が出てきて、呼び止めてきた。


 言う通りにする必要がないのため、アスルたちはスルーしてそいつの立っている場所を迂回し、そのまま通り過ぎていく。


「おめぇらのことだ。無視すんじゃねぇ!」


 再びアスルたちの前に飛び出し、両手を左右に広けて道を塞いた。


「歩いている人の前に立つなと親から教われなかったのか?」


 完全に眼中にない様子に、トカゲ人の怒りは限界突破をしそうな勢いでどんどん上がっていく。


「おめぇ、いい度胸だ。状況を分かっていないようだな……本当におめぇがあのファンムを倒したのか?」


「知らないヤツだ。ファンムで誰のことだ?」


 いきなり知らない名前が出てきたので、一応聞き返してみた。


「おめぇが倒しただろうが!」


 首を微か傾き、少し考えてもやはり思い出せず、そしてある結論に至った。


「やっぱり聞き覚えがないな。きっとお前は俺を誰かと勘違いしたと思うぞ」


「んな訳あるか!」


 完全に遊ばれている謎のトカゲ人。


 そんなおかしいな対話をしているうちに、同じく影から黒ずくめなトカゲ集団が次々と現れ、囲まれた。地面にも、屋根の上にもおり、全員で三十人くらい。


「ま、この際それはどうでもいいとして。ひひ、悪く思わないのだな。おれらはおめぇの首を取って、そこの嬢じゃんたちを連れて行く依頼を受けているのだ。大人しく殺されるのだな」


 トカゲ人は手に持っているナイフを肩に当てながら警告してくる。同時に周りの黒ずくめたちも嫌らしい笑い声が伝わてきた。数は自分たちにあるから勝手にもう勝っていると思い上がり、哀れな存在たちだ。


「状況を間違っているのはお前たちだ。ここは諦めて大人しく引いた方がいいぞ……うあ~、なんかつまらない事が続出していたせいか、眠たくなってきたな」


 欠伸をしながら、手を振てささっと去れと伝わる。興味の持たないことに対してやる気は削る一方の悪癖があるせいで、ひどい時はその場で睡ってしまうこともたまにある。それかトカゲ人たちにとって、バカされているように見えたのだろう。


「この野郎、ふざけやがて、おれら<トカゲヒュマンズ>の力を見せてやる! おめぇら、やっちまいえ!」


 黒ずくめたちが一斉動き出した。近くにいる者は近接で仕掛け、遠くにいる者はすぐ詠唱を始めた。かなりこういった戦いに慣れているようだ。


「リム、あとは任せる。俺はもうやる気でないから全部片付けてもいいぞ」


 また『うあ~』と欠伸をし、そろそろやばいな気がする。空間障壁を展開するのも面倒で、普通に立ったままリムに丸投げした。


「です!」


 これも初めてのことではないのため、リムは特に反論もなく、すぐ真上に跳び上がった。空から戦場全体を俯視し、右手首に装着している白金色な腕輪に囁く。


「イクアちゃん、お願い、です!」


 リムの意思に応えるように、腕輪にハマているサファイヤが輝き始めた。両方の翼紋様にもその輝きが伝わり、やがて銀色な粒子が集い、両手には二本の黒い拳銃、周囲には八の紺色浮遊ユニットが構築された。その殺意溢れる兵器たちはもちろん、下にある敵を照準している。


 数人の黒ずくめはその時、すでにアスルの懐に入り、あとひと振りをすれば殺られるであろう。少し斜め後ろにあるリノの方も二人が接近し、彼女は拘束される寸前だった。


 しかし、次の瞬間で何もかも無駄に終わった。


 リズム的な銃声と規則的なビーム発射音と共に、天空から多数の弾と八本色違いなビームが降ってきた。トカゲ人たちは上から頭が撃ち抜かれ、あるいビームの属性ことに体が燃え上がり、凍てつき、痺られるなど。誰もか勝利の一歩手前に、悲惨な死を迎えた。


 三十人程度を相手に、戦闘はものの数秒で終わった。それと共に周りの空間は元に戻り、通行人たちも見れるようになった。


(結局、さっきのやつらはなんなんだ? 死体もどこかに消えたみたいで、あの結界の特性なのかな?)


 疑問を感じながらも、降りてきたリムも連れて、アスルたちはそのままアントナルの町を去って行った。



 その後、トンプは部下によってそのことを知らされ、怒り狂った。


「あのクズともめ! 女二人を連れて来ることもできないのか! わざわざ死体の処理も省けるように高価な結界魔道具を借りたのに、逆に相手の手間を省けたとはね。もういい、今回の失態は貴様の嫁に償ってもらうよ」


「そ、そんな! トンプ様、お願いします。どうか、それだけは……!」


「くどい! 恨むならあの二人を連れてくることもできないトカゲどもに恨め。もう死んでるけどね、ぶふ」


 ……以降も部下や領民に八つ当たりをした。やがて首都にその悪事が伝わり、クビとなり、新しい領主に代わった。


 いとも奇妙な因果のもと、この日から二つの悪組織と悪徳領主はなくなり、アントナルの町はより平和になった。

誤字脱字などは活動報告にお願いします。


次は28日水曜の朝と夜の連投です。


この部分もいよいよ終になります

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