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二百年の引き籠もり、そして伝説へ!  作者: イグナイテッド
第一章
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第四十七話 二つの暗闘、そしてさらなる危機 続Ⅴ

 そう時間が掛からないうちに、項垂れるような姿勢をしている影眷属たちに囲まれた。


「数は、およそ三十体ってところでしょうか」


 特に動揺もなく、リノがそう呟いた。


 眷属を持つ化身の中でも比較的多い数と言えよう。


 単純な数だけならともかく、問題はドーウの影からも数体が現れたこと。もし彼に対して直接的な魔法攻撃を行えば、意思を持っている眷属たちが阻んでくるしょう。


 そうでなくとも、きっと何らかの妨害をしてくるに違いない。


(さて、どう対処すべきでしょうか。攻撃パターンも分からないですし、やはり最初は避けつつ、様子見になりますね)


 行動方針を決めた途端、不気味な眷属たちが動き出す。


 体が左右に小さく揺れながら、それぞれの頭からいきなり複数の触手が飛び出し、逃げ場を塞ぎつつ全方位から押し寄せてくる。


(ちょっと考えが甘かったみたいですね)


 ドーウがまだこちらを捉えるのをまだ諦めないことを早々に気付き、回避から防御へと切り替える。


「来なさい、火さん、風さん、雷さん」


 呼ばれてすぐ、虚空から赤、緑、黄色の毛玉が飛び出した。


 仮契約のルート経由で一瞬で彼らに指示を送り、瞬く間に風といかずちが球体となって旋回し、大量な触手から守ってくれた。


 同時に上へ飛んだ雪さんは小さな氷槍をたくさん造り、火さんは自身を燃して無数の小火球を影眷属たちにばら撒く。


 魔法の威力自体はそれほどダメージはないが、その一つ一つが積み重ね、やがて影たちの体で蔓延し、それらを凍りつき、燃え盛っていく。


 カウンターに見えるけど、実のところこれも防御のためにやったにすぎない。


 影の眷属たちに命も実体も持たないゆえ、攻撃を浴びさせておかないと際限なく仕掛けてくるでしょう。


 眷属たちの動きが止まっている今のうちに相手の親玉を倒さないと、また厄介な状況になる。


 風さんのみを防御に残し、雷さんも二つの毛玉と一緒にドーウのところへ行かせた。


「下位精霊と言えど、四重召喚をできるとは大したものだ。だが、その程度では吾を倒さんぞ!」


 そう言いながらドーウは無事だった自身を守る三体の眷属を迎撃に向かわせた。


 毛玉たちはそれぞれの属性を持つブレスを吐き出すと、眷属たちはそれらを避け、腕部分を刃に変えて斬りかかる。


 俊敏な動きで宙を駆き、相手の死角へ回った精霊たちは再度ブレスを吹いた。


 凍結、炎上、痺れの効果がそれぞれの眷属に襲い、それらの動きを遅延させた。


 再び三つの毛玉がドーウに向かって宙を滑翔する。


 が、途中で精霊たちの影から暗幕が飛び出し、全員を包むように捕まえた。


「甘いな。それに、我が眷属たちはそれくらいでは止められないのだ」


 ドーウの言葉が正しいとでも表すように、人型影たちの体があっという間に地面に溶けて、再び新しい個体として浮かんできた。いままで付きまとった異常状態もすべて消えていた。


 どうやら彼はわざと自身を囮にして、こちらの火力担当を誘い入れたようだ。そしてその精霊たちをうまく捕まえた今なら、一方的な攻撃を仕掛けし放題である。


 案の定、新生した眷属たちは攻撃を再開し、単純な影触手たちも加えてさらにおぞましい数が押し寄せてくる。


「……これはちょっと、隠す場合ではありませんね」


 顔をしかめつつ、切り札の一つを使う決意をした。


「少々早いですが、出番ですよみなさん」


 外側からの触手の大群に対して、突如姿を見せた大量の毛玉たちがそれに負けないほどのブレスで向かい撃った。


 黒と彩色の波が激しく押し合い、やがて凄まじい爆発によって引き分けとなった。


「そんなバカなっ! 同時使役できる数は四体までだったはず、それを遥かに上回る数を呼び寄せてくるなんて正気ではないぞ!」


 百を超えた下位精霊に囲まれるこちらに向けて、ドーウが驚愕した。


 それも無理はない。


 何せ、精霊使いが精霊を複数召喚できる上限が四体まで定まれていた。数に応じて魔力が消費するのはもちろんだが、何より召喚した個体一つ一つに正確な指示を与えなけれならないのだ。


 それをできないと、連携はおろか、動き自体がメチャクチャになって、逆に使い手自身を危険に晒すことだってある。


 ゆえに精霊使いたちは近接攻撃、防御、支援、遠隔攻撃という役目を精霊に与え、ちょうど一個小隊を指揮するような感覚で精霊たちを使役し、うまくバランスと整った。


 元々魔力量の高い精霊たちにそんなことをやらされたら、あらゆるポテンシャルが底上げされて、精霊使い単体でもかなりの脅威となりえる。


 それが世間で最適と言われる多重精霊召喚――四重召喚である。


 もっとも、その常識は単に人間や異種族たちの脳が持つ処理能力が足りず、四体以上を同時に使役するとオーバーヒートしてしまう。


 AIである自分にはその制限はないので、四体とは言わず、百体でも千体でも問題なく動かせる。


 それも持ち前の処理能力や昔よくロボットたちを操った経験があったからこそ、このような戦い方を編み出せた。


 純粋な戦闘力を所持していない自分に残されたのが、他人より飛び抜けた指揮能力だった。


 精霊たちの力を駆使すれば、強い敵とも対等に渡り合える。


「ご心配なく、私は正気ですよ。正気で、この精霊たちを使ってあなたを倒します」


「その自信……まさかこれらすべて実はキミの眷属なのか?」


 その問いに対して、ただ微笑んだ。


「ち、通りで――っ!」


 気づかれないように雪さんをドーウの背後から奇襲させたが、思った以上反応速度があるようで、地面から伸び出る影の壁に冷気のブレスが遮られた。


「コイツ、さっき捉えられたでは……!?」


「ふふふ、あなたの眷属たちが影に戻せるように、私の精霊たちだって一旦消してからまた呼び戻せますよ」


 ドーウはこちらの火力担当をうまく誘き寄せたつもりでしょうが、それは彼に油断させる策の一つだった。


 奇襲が失敗したのは残念だけど、注意さえ逸らしてくれればこちらの狙いは達成できた。


「――<光華旭撃こうかこくげき>」


 何の前触れもなく、光の柱が天から降り注いた。


「ぐっ、ぐぐぐっ……」


 咄嗟に何重ものの影を身にまとい、ドーウはそれに耐えしのぐ。


 何秒間の照射を経て、あろうことか尚も宙で浮かんでいる。


 光系統は幽霊族に大きなダメージを与えるはずだが、彼は自らの魔法を使って耐えきったとは驚きである。


「はぁはぁ……上空にもあれほどの数を隠したのか。なるほど、さっきキミが姿を隠せたのも光精霊のおかげだな。だが、この程度では吾はまだ倒れないのだ!」


 ダメージを受けてボロボロになっていたとしても、ドーウの強気は削られていないようだ。


「倒す必要はありません。あなたをここに留まれることさえできれば充分です」


 その言葉に戸惑い、しばらく思考を走らせたドーウはようやくある重大なことに気付いた。


「……まさか、キミは最初から吾をこの場に足止めるのが目的なのか!?」


「巨樹から戦力を引き離すという企みをすでにご主人様が見破っていました。この大混乱を乗じて巨樹に害をなそうとする存在を探るのが私に命じた役目の一つです」


 ただ首都を駆けたらご主人様への監視に集中できないからこの役を買ったのだが、それは棚に上げてさらに言葉を畳み掛ける。


「あなたが巨樹を狙っている者だと知ってしまった以上、ここに留ませることが最善かと……」


 一応倒すつもりだったが、百体の光精霊で集めた収束魔法でも仕留められないのは予想外で、ちょっと見栄をはっていた。


「くっ……一度のみならず二度まで吾をハメたな!」


 怒りに取り憑かれたドーウに、笑みを贈る。


「え~、悪いのは私ではなく、騙さた方ですよ」


 子供じみた理屈に相手はさらに激怒した。


「吾を騙した罪は必ず報いてやるぞ!」


「できるのですか?」


 再び動き出した眷属たちを精霊たちに迎撃しながら、可愛くそう尋ねた。


 しかし、まだ青筋を浮かんでいるドーウはニンマリと笑った。


 初めて、嫌な予感を感じた。


「一つだけ教えてやろう。キミは吾が巨樹に近づかないと何もできないと勘違いしていたようだが。ここからでも充分に届けるのだ」


 中央ブロックの端っことは言え、この場所と巨樹の間は数百メートル離れている。さらに聖壁にも遮り、簡単に届ける距離ではない。


(いったい彼はどうするおつもりでしょうか?)


 必死に考えるこちらのことなど構わず、ドーウは懐から禍々しい魔力を漂い小さな黒曜石を取り出して実体化させた。


 どうやら半透明な体でも物質に干渉できるようで、石を取りこぼすことはない。


「こいつが偉大なる邪神さまから授けられたものだ。彼の方の魔力を込められたこの石なら、巨樹の結界など簡単に貫ける。吾が何をしようとするか、もう分かっただろう」


 ここまで解説されたら、いやでも彼の思惑を分かってしまう。


「っ! させませんよ」


 撃ち合いが続く戦場外にいる火さんと雪さんに、ドーウを止めるよう指示を出した。


 だが、滑翔する二体の精霊の前にまたさっきの眷属たちが阻む。いつの間に作った新たな触手たちもその助けをする。


「そこでとくと見るがいい、この吾が偉大なる使命をまっとう時をな!」


 得意げな笑顔を浮かびながら黒き石を握り締め、ドーウはとある魔法を使う。


 それはよく知っている魔法――強化魔法だった。


 すかさずドーウは巨樹に向けて黒曜石を、投げていった。


「雷さん! ……雪さん!」


 ビリビリする黄色毛玉は主人の意思を受け、一瞬で上空まで上昇した。同時に近くの雪精霊に辺りの地面を凍りつく。


 影たちの動きが鈍る間、雷さんに電気を集めさせ、その体から中階魔法相当の雷撃が放たれた。


 大気を突き進む黒曜石よりも速い雷光があっという間に追いついた。


 が、命中する直前に石の周囲が黒い炎に覆われ、雷を喰らった。その光景に苦い顔をし、ドーウは逆に歓喜な色で満ちていた。


 障害がなくなり、石はいよいよ聖壁にぶつけようとした時――


 ゴーンン!!

 という音が響き、黒曜石が墜落した。

リアルの方でちょっと忙しくなったので、次話は来週末になります。

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