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二百年の引き籠もり、そして伝説へ!  作者: イグナイテッド
第一章
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第四十五話 二つの暗闘、そしてさらなる危機 続Ⅲ

かなり苦戦していたので、深夜までになってしまいました。

それであざとく翌日人の多い時間帯を狙うことにしたのです。すみません。

あともう一個詫びなければならないことがあります。


アスルさん期待の人すみません。今回はリノさん回です……というか、数話は続きます。

 アスルがギルアームと戦っている頃、リノもまたもう一人の幹部と対峙していた。


「まずは私のパートナーを紹介いたしましょう」


 そう前置きして、手のひらから雪色の毛玉が現れた。


 毛玉だったこれこそがもっとも下位の精霊たちの姿である。細長い目はあるが、ほかの器官は存在しない。


 いまも眠そうな目をして、手のひらでコロコロしていた。


 精霊は始原種に属し、氷精たちのほとんどが睡眠を愛する。


「その名は――雪さん、です!!」


 そのまんまの名をなんの恥かしげもなく、誇らしげな顔で堂々と言い切った。ちょっとだけリムを真似したけど、きっとご愛嬌ってことで本人が許してくれるはず。


「ほうほう、これはこれは契約精霊――いや、精霊リンクによる精霊召喚かな?」


 もっとも、対峙する相手はこちらの言動にまったく気にならないようで、ちょっとショックを受けた。


「さすがはマルディユの使徒さんだけはあって、一目で見破りましたか…………別のことも少し気になって欲しいですが(小声)」


 契約精霊の召喚と精霊リンクという魔法による呼び出しは似ているけど、その実大きな違いが存在する。


 まずどちらも精霊との契約は必要とされている。が、正契約で結ぶ契約精霊に対して後者は仮契約で交わしたものだった。


 両者の違いは対象精霊に対する強制力にあり、精霊に命令を下り、使役する者たちを精霊使いと呼び、意思疎通のみでしか精霊を動かせない者たちは精霊使いのなり損いと蔑まれていた。


 単体の契約精霊で大きな力を振える精霊使いと違って、精霊リンクという魔法はあんまりにも不安定すぎた。


 精霊に対し自らの意思を強制できない上に、精霊の調子や態度次第で非協力的になる場合もあり、その十全な力を振るうにもままならない。


 利点と言えるのは魔力消費が正契約した精霊たちよりかなり少なく、呼び出せる数に制限が掛かっていないところでしょう。


 それでも、強大な力を持つ精霊を前に、いくら数を揃ったところで立ち向いできないゆえ、人々は真なる精霊使いのみを賞賛した。


 精霊使いでないことを知り、こちらに見下ろすような目をしていたドーウもまた、その中の一人でしょう。


 なり損いでは自分の相手ではないのだと、その考えを隠すつもりもなく、簡単に見受けられる。


「準備はできたみたいだし、先手もそちらに譲ろう。遠慮なく攻めて来るといい」


「あら、ではお言葉に甘え――」


 まだ言葉の途中にも関わらず、多方向からムチのように影の触手たちが打ってきた。


 しかしそれらは不意打ちになれず、上品な動きによってすべて回避されていった。


「約束すら守れない男は嫌われますよ」


 微笑みながらそう忠告しても、ドーウは聞き入れる様子がなく、たださっきの一幕を分析するのみ。


「割といいタイミングと思っていたが、どうやらキミを過小評価したようだな」


「こちらこそ、あなたの下劣さを改めなければ……」


「ふふ、では続けようかりりのんよ。心配しなくとも、ちゃんと手加減してやるからな」


「ふふふ、その慢心、命取りにならなければいいのですが」


 互いに笑い合い、そしてまたしてもドーウが先に動き出した。


 彼の下にある円形の影からたくさんの触手が湧き出て、不規則かつ外面から内側へと押し寄せてくる。


 バックステップでそれらをうまく躱し、何度目の後退で、樹木や建物などの影から別の触手飛び出て、絡めつこうとした。


 だが前面のものも対処しなければならないので、直接攻撃する意図のない触手まで躱すのは難しい。


「雪さん、頼みますね」


 すると、さっきまで眠そうな雪色毛玉がすごい速さで手のひらから飛び出し、絡めてくる触手たちを吐き出す冷気で凍らせた。


 だけど安堵するよりもまた危険を感じて、すかさず雪さんを掴みながら右へ跳び、いた地面が砕けられた。一際太い影が上から打ち下ろしてきたのだ。


 押し寄せてくる触手と絡めてくる触手たちでこちらの注意を引き、今の一撃で勝負を決するつもりでしょう。もし反応が一瞬でも遅れば今頃は倒されていたに違いない。


「その触手たち……魔力で強化されていますね」


「よくわかったではないか。正直、ここまで吾の攻撃に対応できるとは思っていなかった。ますますキミを吾の物にしたいぞ、りりのん」


 対応できたのは魔力探知のおかげでしかない。もし相手も魔力を隠す技術を持っていたらちょっと危ないかもしれない。


 相手が上手い具合で魔力の残滓をばら撒いてくれたところで、これに紛れてリムに連絡しておこう。


 左手首にあるブレスレットに魔力を流し、細心の注意を払って念話を飛ばす。一応精霊リンクを維持する魔力もフェイントとして作用させたので、たぶん気づかれないと思う。


 桃花色を基調としたブレスレットは自分が魔法を使う数少ない手段の一つである。この魔道具は違う種類の花をレア鉱石で彫り、そして貴金属で繋げた。それぞれの花には攻撃、防御、回復、支援、特殊、機能に属した魔法が記録されていた。


 もう一つの花があるけど、それは予備なもので、今は特に魔法を記録されていない。


 念話は機能を代表する花――アカンサスを象ったものから読み出した。


『リム、こちらは敵幹部と遭遇しました。あなたは何時戻れますか?』


『まだ十本はある、です。あと二十分くらいはかかると思うの、おねえちゃん』


『仕方ありませんね……こちらで少し時間を稼げてみます。なるべく早く戻ってください』


『です!』


 短い通話を途絶え、戦闘に使える魔力がどれくらいあるかを計算する。


(さて、昨日ご主人様から補充された魔力は六千、今までのことで半分程度は消費されたので、残りは三千ってところでしょう。相手の魔法を躱すためには身体能力強化を発動し続ける必要があり、偵察、監視、ゲートなどに使う魔力を加えますと、私が使えるのはせいぜい一千五百程度ですね)


 ゲートによる仕事が終われば、もうちょっとは使えるが、それでもこの量では下位精霊二百匹と高階魔法一発しか出せない。


 リンクで呼んだ精霊は維持する魔力さえあればいいので、精霊が使う魔法による消費は使用者とは関係ないのは幸いと言えよう。こういうところは仮契約の利点と言えよう。


 しかし、果たしてこれくらいの魔力でリムが戻るまでの時間を稼げるでしょうか。


 微かな不安を感じながらも、再度開かれたゲートにご主人様から託したあれを入れることを忘れない。


「ずっと気になっていたが、キミはいったいなにをしているのだ?」


 どうやら向こうさんはゲートを気になっているようで、時間稼ぎとしてちょうどいい。


「ふふ、やっぱり気になりますか? これはですね、空間ゲートです! 自家製の!」


「ほうほう、よもや空間を繋ぐ精霊まで持っていたとは、実に素晴らしい! して、そのゲートでなにをしているかな?」


 自家製って言ってるのに、どうして精霊のお陰になっていたでしょうか。


 と、顔を引き攣りながら、相変わず人の話を聞かない幽霊男に呆れた。


 この空間ゲートもブレスレットに記録された魔法の一つで、特殊系魔法を代表するサザンカの花から読み出した。


 効果は知覚できる場所の空間と繋ぐこと。適切な場所を選ぶために放った精霊たちから送られた視覚映像をもとで、そこと繋げたらあれを入れる。


 だけどこの仕事はすべてのブロックに仕掛ける必要があるため、戦闘中の区域に突っ込む訳には行けず、リムには水中で向かうことにしたのだ。


 彼女なら水中用の装備を構築でき、湖の中でも問題なく高速移動を行えるでしょう。


 もちろん、バカ正直でドーウにこのことを話す訳がなく、適当に誤魔化した。


「これはご主人様と別れる前に任された仕事です。見ての通り、ただ手元にあるこれをゲートに入れるだけでいいのですが、私の中では一本なくなるたびにご主人様が私にメロメロ、エロエロになってくれたと感じます!」


 言いながら、また一つを空間ゲートの中に入れた。


「随分と凝ったものを捨てたな。見た目だけでもなかなか高価そうではないか、惜しくはないのか?」


「そういう仕事なので、それに……」


(あとで回収できますからね!)


 続きの言葉が分からないドーウはそれ以上聞かず、再度影触手たちをうねらせていた。


「よく分からんが、まずはその主人の思いを断つ必要があるようだな」


 言い知れぬんイラつきに、ドーウはさらに魔力を漲っていた。その周囲の風が巻き起こし、地面が震え始め、闇属性の魔力が辺りを満ちていく。


 同時にドーウの影と周囲の物陰から再び影触手たちが動き出す。さっきのような使い手の意思がなく、おそらく魔法が完成するまで自律行動に切り替えたと思う。


 だけどコントロールされていないにも関わらず、まるで生き物みたいに波打ち、絡み、突いてくる。


 制御が外したことでより自由に動けるようだが、こちらにとってむしろ脅威度自体が下がっていた。相手の思惑を読む必要がなくなった攻撃は単純となり、歩を移動させ、体を僅かにひねるだけで触手はそのまま通り過ぎていく。


 ご主人様とリムのように戦うの才能はないが、敵の配置、相手の攻撃パターン、選択する行動、その狙いなどの要素を予測、把握するなら大得意だった。変化の乏しい攻撃なんて取るに足らない。


 しかし時間につれて、襲ってくる触手の数も勝手に増えていて、徐々に回避するための足場が減っていく。躱せないものは雪さんに凍らせ、囲まれないように回避運動を続ける。


 とは言え、いつまでも触手たちの相手をする訳にもいかず、未だ魔力の渦にいる幽霊男から目を離さない。


 練り上げるこの魔力量からして、間違いなく高階魔法がくるでしょう。


 そして彼の今までの言動と魔力属性、影を操る幽霊であることも総合して、発動する魔法タイプはおそらく――


 ようやく準備できたドーウは闇の渦から両手をこちらに掲げた。


「闇なる牢獄にで隔絶せよ、<影絶えいぜつ>!」


 直後、リノの影が拡大し、縁部分が立ち登り、小さなドームとなって彼女と一部の触手を閉じ込めていた。



                     *



 最後までリノの姿がドームの中にいることを目視でき、確信したドーウはすかさず歓喜に満ちて体を震えていた。


「おおおおーーっ! やったか!?」


 暗黒の牢獄を注視しながら、中身を再度確かめるように問う。


「な、なんなんですかこれは!? 雪さんの魔法が効かないなんて! ちょっと幽霊、ここから出してください!」


 ドームの方からメイドの慌てる声が聞こえ、ついに我慢できず、ドーウは高笑いし始めた。


 闇系統高階魔法――影絶、対象を影の牢獄に封じる魔法である。一度中に入ると、内部からは破壊不可能、転移系の魔法ですら脱出できない。


 声だけは微かに漏れ出てくて、強化した聴覚はそれを難なく聞き取れる。


「まだ終わりではないぞ、りりのん。ここからキミを吾の言う通りになるまで教育してやるのだ」


次回はちょっとサービス回(仮)


できるだけ土曜まで上げさせます。

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