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二百年の引き籠もり、そして伝説へ!  作者: イグナイテッド
第一章
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第四話 出発、そして冒険の始まり 続

ようこそ、長ったらしい世界観解明の部分へ、この話を抜ければ多少は進み具合がよくなると思うのです。読者のみなさんには少し我慢して欲しいです。



 あの日、シュットジュールから、世界は大きく変わった。


 ヴェシテ大陸の姿は変わり果てた。アーカデアの国土は大陸から切り離され、一際大きな島として二百キロ先に流された。大陸中心部はあのミサイルの一つに撃たれ、そこから大陸の西と東を分断する山峰群が突如現れたなどなど。


 そのことで世界人口は元の半分まで減っていた。一つは地形変異やそれによる倒壊などに巻き込まれたことによって命を失っていた。もう一つは新世界に化け物が各地に生まれ、それらと遭遇し、襲撃されたせいであっさりと命が奪われた。その化け物どもは後に魔物と呼ばれている。


 アスルの屋敷爆発によって損失した兵士も統計に入れたことは、本人たちは知らない。


 各種の被害は大きものの、半分の人間は生き延びたのだ。どうしてあの大爆撃を受けてもなお、生きているなのかは誰もその理由を知らないが、それでも生き残った事に対して互いに喜び合っていた。


 また、人類が今まで築き上げた実在する全ての文明はまるで消去されたように何も残されていない。唯一残されたものがあるのなら、それは生き延びた人々の脳に刻んた記憶である。


 しかし、それも何の役にも立たない。地形変異により昔存在したあらゆる鉱物、植物、動物なども変異し、本来の技術を再現するどころか、作るすら困難な状況に落ちいた。

 新世界と旧世界の物は一部外見と性質が似ているため、そのまま旧世界の呼び名でそれらを呼んでいる。


 そして、人々が真に今の世界が元の世界ではないことを理解するには、そう時間は掛からなかった。


 ある日、一人の男は突如脳に伝わる謎の声に導き、化身という謎の存在と契約を交わした。直後、彼の胸中央に晶核という結晶体が生まれ、魔法という力が使えるようになった。

 それから、彼はその特別な力に自惚れて、気に入らないことがあるたびに、力の振り、力なき者たちを嬲って屈服させ、暴走し始めた。


 だが、それも長くは続かなかった。力を手に入れたのは彼一人ではなかった。時間差こそあるが、多くな者たちが同じ力を手にした。彼は新しく魔法を手にした者たちによって倒され、捕まれた。


 更に数日過ぎると、また新たな異変が起こった。驚くことに、契約した人々は姿を変え始め、最後は空想でしか存在しないはずの異種族となり果てた。残された人間種は更に二割まで減らされた。


 そうして、新世界に化身、魔法、異種族、魔物などが現れ、昔の世界からどんどん変わっていく。


 経過時間に連れ、異種族になり果てた人たちは外見のみならず、思考パターンも変化が生じた。自分の家族や友を忘れ、あるいは見捨て、彼らの元から離れた者が続出し始めた。ただひたすら今の自分が住みたい土地に移住するため、新たな故郷や生活を探しに行った。その事態は世界中に蔓延していた。


 これが新世界に起きた最初の事件――種族大遷移事件。


 事件の中、異種族になれず、人としての自我を保ち、かつ誰よりも魔法に対する適性が高い存在が見つけ出された。


 後に、人々はその者たちをこう呼ばれる――|<ウィル>(屈強な意志を持つ者)。




 月日が過ぎ、一番早く再建した国はやはり彼の国アーカデア。


 ただ以前と違い、科学のみならず、魔法と科学の複合技術をテーマにした新技術の開発にも力を入れる事にした。


 今では魔導の国<アーカデア>として、新世界を君臨する。


 その上層部は素早く世界連合<ヴレーデゥ>を立て直し、体制を再編した。本来は全ての国に代表を一人ずつトップに選出する制度を廃除し、世界中に最強の6人のウィルを新しく行われた魔法大会で選抜して、上に立たせて新世界を君臨させた。その中に自国の王を代表として割り込み、緩衝役と称して利益を搾取している。


 ヴレーデゥの下にある五つの治安部隊は体制こそ変わらないが、同じくウィルを取り入れて、こうして、再編した名実ともに世界最強の戦力を持つ新生ヴレーデゥが生まれた。


 噂では一部の人たちはまだアスルを探しているが、その真実は定かではない。


 それもあってアスルたちは百年も隠れ家に引き篭り、世界から存在が忘れ去ることを待っていた。


 幸いにも契約した化身のお陰で寿命そのものがなくなり、体も少年期に固定されたので、時間だけはもち余っているのだった。


 化身の種類によって世界中の寿命限界はバラバラとなり、本来二十歳の人間のはずでも、異種族に落ちると自称二百歳の人が続々出てくる始末のため、もはや元ある歴史すら、存在しない扱いである。百年の経過で更に代替わりも重なって、いよいよほとんどの人が前の世界について覚えていなくなった。


 そして、現在に至る。



                    *



 朝、アスルたちは百年の隠居を経て、遂にずっと夢見る冒険の旅が始まる。


 今まで行かないのは、いろいろな準備に手間取ったことも一因にあった。力の制御や鍛錬、リノとリムの素体製造、冒険に必要なアイテム用意などなど。


 一番の理由は、改変したこの世界には過渡期があり、新しい構造に完全定着させるにはかなりの時間が必要である。


 しかし、アントナルの外れ山にある隠れ家から出てきたのはいいものの、町にウロウロしている最中、冒険者らしき者に絡まれた。それをあしらうたら、そいつはなんとBランクの冒険者で、たまたま盗賊団に金を盗まれた領主は彼に依頼しようとするために、探してきた部下に見られ、依頼が回してきた。


 そこで、盗賊の下っ端一人を捕まり、少しボッコてわざと逃がし、アジトまで案内させたわけだ。ついてにその仲間たちにも知らせる時間を与え、楽に一網打尽する計画である。予想外と言ったら計画がうまく行きすぎて、罠じゃないかなと少し疑心暗鬼になったことだ。



 領主の城の応接室。


 アスルは現在大ブームしている商品の一つ、異空間ストレージを使い、盗賊アジトで回収した金袋を虚空から次々と取り出した。この商品は仕組んまれた異空間にそれぞれ対応している装飾品を身に着けることで使える優れもの、大量な品でも楽に運べるから大人気である。


 その人気ゆえ、需要に応じて様々な機能が新作に追加され、容量の拡大や収納物の時間凍結、魔物を自動で素材に分解できるなど、多岐に分かれている。


 もっとも、アスルたちが所持しているものはリノによって魔改造されていた。なにかきっかけなのかは知らないが、開発側に対抗し、既存の機能はもちろん、他にもバカげた機能を注ぎ込んたせいでもはやそれはストレージと呼べるかどうかも疑問を覚える魔道具となった。


 その張本人は今、リムと一緒に扉の傍に控えている。彼女たちはメイドスタイルで外を通しているため、こういった場は基本無言のまま主人を待つのが仕事である。二人の自称ではあるが。


 アントナルの領主の名はトンプ・フトフド。名前通りかなり太っている豚のような外見で、違っているのは身に着けたものは高級品ばかりであり、指全てが種類の違い宝石が嵌めている指輪を付けていた。お腹は大きすぎて服からはみ出し、へそが丸見えになっている。一応は人間種である。


 初対面の時は『これが豚の獣人か!』と本気で思っていたが、当然本人には言っていない。


「いや~、まさか冒険者でもないキミたちが本当に僕の金を取り戻せるとはね」


 金を出し終わると、トンプは数人の部下に金を数えつつ、話しかけてきた。


「たまたま相手が弱いから上手くいったので、大したことはしていない」


 長年引き籠もりの弊害で、敬語が使い慣れていないなため、領主に対しても失礼のないタメ口で話している。


「弱い? あはははは、キミは冗談がお上手だね。相手はあのBランク冒険者にも匹敵するほどの盗賊、ファンム君だ。なかなか倒せる者はいないから、弱いはずがないよ」


(……マジか、あれでBランクなら冒険者ギルトはランク分けを一から考え直す方がいいじゃないか?)


 予想外な情報が出てきて、冷汗を垂らした。あの盗賊は殺しではなく、手加減して倒すべきだったかもしれないと今更ながら後悔している。


 しかし、今は過ぎたことを悔いより、アスルにはもっと大切なことがある。


「それはそうと、報酬はちゃんと払ってくれるのか? 幾ら冒険者じゃないからで、無駄働きはしたくないだ」


「もちろんだよ。僕は約束を守る男だからね」


 何故こんな依頼を受けなければならないのか。それはズバリ、金を持ち忘れたから! 百年を耐えてようやく夢見る冒険に行けると思うと、いろいろ先走ていた。準備も割と雑にしたせいで、金が持っていないことを町に入ってようやく気付いた。かと言って今更隠れ家に戻るのも面倒で、そのまま町中をウロウロしているとこの事態に落ちいた。


 そして本当に偶然で、この領主が盗まれた金を取り戻せば五十金はくれるといういい話? を持ってきたのだが、今更ながらそれを本当に払ってくれるかどうかも怪しい。


 新世界の貨幣は全部で四つある。一番高価なのは碧貨、その下が旧世界と似た物質で製造された金貨、銀貨、銅貨である。


 碧貨一枚で千枚の金貨と相当する。同じく一枚の金貨は千枚の銀貨、一枚の銀貨で千枚の銅貨という換算である。


 碧貨と言うのは新世界で発掘された新鉱石の一種である。


 価値と稀有度も割と高い、かつ美しい碧色を持ち、金より高貴ゆえ新しい貨幣として製造され、組み入れた。もっとも一般人では滅多に見れないし、手に入らない。例え持っていても使いしにくい、それゆえ基本は国家規模の予算や一部の金持ちの間しか使われず、世間に流通しているのはむしろ金貨の方である。


 トンプの盗まれた金は八千金超え、中の五十金を報酬として支払いでもまだまだ沢山残っているが、それでも彼のひととなりを知らないから、正直不安でいっぱいだった。


 十数分ほど待つと、ようやく数え終わたのが、部下の一人が恭しく知らせてくる。


「トンプ様、盗まれた金貨は一枚も少なず、全部戻ってきました」


「おおぉぉー、そうかそうか、そりゃあよかった。では、五十金を僕に、報酬として支払いてやるからね」


「はい」


 部下の人は金貨を積んでいる袋の一つから、間違いないようにと五十枚の金貨を取り出し始めた。


 どうやらちゃんと報酬は支払ってくれるようだ、ひとまずほっとした。


「トンプ様、これを」


 部下の人が領主に小さめな金袋を手渡し、控えるべき場所に戻る。


「うむ、それでは報酬を受け取ってくれ、シュッド殿」


 シュッドというのはアスルが名乗ている偽名で、ここはまだアーカデアの領土内、幾ら離れていても、本名を出すの危険すぎる。

 ちなみに、偽名は終焉の日から引いたものである。


「ああ、ありがとう」


 手を伸ばし、袋を受け取るが、トンプの手は何時までも離してくれない。


 しばし訝しむと、向こうから丸キモイ顔が近づき、互いにしか聞こえない声で尋ねる。


「ところで、シュッド殿。一つ頼みがあるのだが、そちらの女性二人を譲ってははくれないかね」


(はぁ……結局来たか。新しい世界になっても、腐ってるヤツは相変わらずいるな)


 当然、二人を売る気はまったくないし、むしろ早く金を貰ってここから出て行きたい気分だ。


「悪いが、それは出来ない」


「では、一晩でいいから、借りてはくれないかね?」


「それもちょっと……俺たちはすぐにこの町を出るつもりだから」


「では、2時間くらい……いいえ、1時間、なんなら30分でもいい! ぜひ、借りてもらいたい」


 『しつこい!』と心からそう叫びたくなった。しかし相手は仮にも領主、ここで騒ぎを起こしてヴレーデゥの耳にでも入ったら最悪だ。運がよければ隠れ家に逆戻り、悪ければ世界中に追い回されるハメになる。


「彼女たちは俺にとって特別だから、譲るつもりはまったくないだ」


「金も積んてやるよ。もし借りて貰えるのなら、取り戻した金も全部持って行ってもいいんだよ」


(今度は金できたか……俺はそんなに金の亡者に見えるのかな)


 これ以上しつこくされるのも面倒なので、最後は少し強めな声で断りを入れる。


「金なら報酬分で充分だ。彼女たちについては譲るのも借りるのもすべて断らせてもらう」


「そう……か、では仕方ない。これは持って行くといいよ」


「ああ、これで失礼する」


「うむ、また会えることを楽しみに待っているよ」


 ようやく諦めたのか、トンプは含みのある言葉を残しつつも手を離してくれた。貰った金を素早くストレージに入れ、部屋から出る。


 その間もトンプはずっとギロリとした目でこちらを見送った。もちろん相手の目が黒く濁たことを気付いていたが、スルーことにした。もう用はないので、また絡まれたら適当にあしらうつもりだ。


誤字脱字などは活動報告にお願いします。


この話から連載速度が少し変わり、投稿は手動でやります。


字数も多かったり、少なかったりになるが、

今後ともどうかよろしくお願いします。

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