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二百年の引き籠もり、そして伝説へ!  作者: イグナイテッド
第一章
36/49

第三十六話 奇襲再び、そしてエンカウント 続Ⅴ

ちょっと展開について悩んでしまって、投稿遅くなりました。

やっぱり複数の展開を思いつくとどちらを選ぶか迷いますね。

 まったく予想外な事態に対して、もうどうでもよくと感じた。


(いっそう、力を使うか? となると、問題はこいつの口をどう止めるか……だ)


 生半可な方法では一人の口を完全に閉ざすなんて不可能に近い、殺すのが一番確実というのも否定はしないが、重要な情報を持つ彼を殺めることはレイクシスをより不利な状況へころがしかねない。


「さて……どうするかな」


「お、なんか策とか思いついたか?」


 口にこぼした言葉に、大男が興奮気味で反応した。


「え、あっ、うん……ちょっと閃いたかも」


 ちょっと戸惑いながらもそう答えた。


(……言えない、実はお前を口封じする仕方について悩んでいたんだなんて、絶対に言えない! ま、まあ、一応策と言えなくもない策も確かにあるし、嘘は言ってない。力押すっていう策がな……)


「おおー……で、どんな策だ? 手伝えることがあれば何でも言ってくれ」


 やはりそう来たか。しばし黙って考えたのち、


「俺が考えた策っていうのは――ふん、陽動しながらで――はーっ、逃げる……ことだ」


 話す途中で、また攻撃してくる魔物たちを倒すつつ、とっさで思いついたアイデアを教えた。


「なるほど、おりゃああっ――それで、その陽動なんとかはどうすればいい? たあーー!」


 ちゃんと分かってないならなるほどって格好つけて言うな! とツッコミの思念を相手の頭へ送った。


「簡単だ。まず俺が魔物を倒しながら王宮方向へ逃げて、お前は反対側へ同じことをしながら逃げればいい。これでやつらの注意を分散でき、運がよければどっちも生き残れるはず」


「…………それ、おれさまが死ぬ可能性高すぎねーか? ていうか分かれて逃げるよりここは協力して王宮まで逃げた方が……」


 たっぷり十秒が過ぎたから、大男がまともの意見を返した。


(ちっ、ダメだったか……)


 結構それらしくいい策アピールしたのに、状況を理解するくらいの脳みそはちゃんとあるようだ。


「それに、おれさまはかなり疲弊してる。今のおれさまより強いお前の助力なしじゃ突破も無理だと思う」


 魔物たちの攻撃がまた一段落し、名の知らぬ大男はまた反論を重ねた。妙に正論なところから攻めくるし、とりあえず負けずに相手のことを立ててみよう。


「いやいやいや、Eランクの俺にどうしろと? いくら疲弊してたとしてもAランクのお前の方が絶対強いって!」


「ふん、謙虚しなくもいい」


「別に謙虚じゃないけど……。大体なにを持って俺が強いって判断したんだ?」


「おいおい、そんなもん地面に転がってる魔物の数を見ればわかるだろうか」


「…………」


(……しまった。物証があったのだった!! こいつってもしかして本当にバカじゃないの!?)


 言うまでもないだろうか、背後の彼が倒した数は十体未満、こちらの足元ではすでに二十体を超えていた。


 この光景を目にしたらどう見ても強いのはこちらと思うだろう。


(いやまあ、俺もまさかこんなに多く倒してしまうとは思わなくて、ただ空振りのつもりでやはり何故かそれで当たったんだ)


 そう言えば、こちらに飛び込んだ魔物たちより大男を襲ったやつらの動きがむしろ俊敏だった気が……。


(んん!? あれ、待て、これって、もしかして……)


 まさか…………


 つまりは――――!!


 さっそく自分の推測を検証したく思い、


「いたっ、いきなり何をしやがるっ!?」


 彼にはちょっと悪いと思うつつわも怪我した場所に少し刺激を与え、再び鏡月を空気を切る――そしてもはや当たり前になりつつある現象がまた起きた、起きってしまった。


 斬線の中に飛び込むはずのない魔物が現れ、長足の鷹の片翼が切断された。


 当然、その一体のみが攻撃してくるわけがなく、多方向からも突っ込んでくる個体がある。


 そのすべての目標は――後ろにいまだ痛みで体を俯く男である。


 つまり、この群れたちはこちらのことなど眼中にすらなく、最初から自分は魔物たちと戦っていると思い込んでいただけで、実際はただの一人芝居だったわけ。


 おそらくは大男の始末という指令は受けていたけど、予想外のイレギュラーアスルへの対処については空白のままと思う。指示なくして当然そのまま無視することになる。


 通りで大橋で走っている時も何こともなく、男に声を掛けようとした時に背後で現れた二頭狼もすぐ襲ってこなかった。


 それもそうだろう。辺りに味方の影すら見当たらない時点で、この一帯はすでに敵の手に落ちたともの語っていた。そんな場所に|逃げたネズミ(大男の冒険者)以外、ほかの存在アスルがいることさすがの悪魔も予想外みたい。


 また、本当にたまたま、不本意ながらも彼と背中合わせで立ってしまったせいで、魔物たちが襲ってきたと錯覚した。


 いままでのふざけた動きでも倒せたのはたぶん――無視する相手の攻撃など同じくどうでもよく、単に後ろの男が隙を見せたタイミングでも重ねたのか、魔物たちがそこへ飛び込んだだけ。


 ただ、途中にちょっとした|事故(アスルの斬撃とぶつかった)が起きて、それだけの話だった。


(は、は……恥ずかしいぃぃぃっ!! このこともしリノに知られたらいったい何日ネタにされるか!? 想像したくもない!)


 最悪な未来に思わず頭を抱えてしまった。


「おい、なにやってんだ!? そろそろ自分で防御しないとやられちまうぞ!!」


 背後から警告に満ちた叫び声が届いてきた。


 そこでようやく雑魚どもに襲われている途中だったことを思い出した。


 視線を下へ向くと、地面にまた数体の屍が増えて、どうやら思考している最中に彼一人でこの数を凌いていたようだ。


 頑張って守ろうとしたこの男には悪いが、自分が相手のターゲットではないと知った今、別に彼が守らなくでも魔物たちはこちらを襲わないのだろう。


 いまならこいつを捨てて、悠々とこの群れから脱出できる!! 


 ――が、これほどな兵力をけしかけてまで殺そうとするこの男が持つ情報とやらも少し興味を湧いてきた。


 口約束でも先に自分の力に関してバラさないと承諾させたかったが、状況が状況で、まずは邪魔ものを排除して、約束を交わすしかない。


「くっ、もう体力が……」


 そう言って、大男の足は立つ気力を失い、大剣を支えとしながら跪く。


 無論、魔物たちが坐して待つわけがなく、むしろそれを機に一斉にそれぞれの爪や牙を剥き出し、相討ちな勢いで突っ込んでくる。


 その光景に対して、後ろの男から絶望のオーラが漏れ出す。


(……ちょうどいいかもしれないな)


 場に似合わず、結局それくらいの言葉しか心に浮かべなかった。


「はぁ~」


 溜息一つと共に、辺りの雑魚どもをトゲタイプの空間障壁で一掃した。


「なんか、すごく時間を無駄にした気分……」


 体のどこかに大きな風穴が空いた屍たちの中心から、そうな感想すらならない言葉がひどく広がっていた。


 刀をひと振りしたあと鞘に戻し、背後の男に近づき顔をちょっと覗くと、未だ目開いたまま驚愕する真っ最中だった。声をうまく発せず、口も忙しく開閉している。


 何故そんなに驚いていたのか正直わからない。外でも集まった雑魚どもをまとめて倒すために、高階広域魔法を使うはず、自分もただそれと同じことをしただけで、そこまで珍しいことではないと思うけど。


 本来なら彼も魔法を使って一気に倒すべきだったが、その満身創痍の体から察するに、ここへたどり着く前に壮絶な戦いでもしたのだろう。


 ちなみに、魔力散布についてもともと男に声をかけるとき、保険のためしてあったので、その気があれば実はいつでも一掃できた。


(……さて、残る問題は二つ。一つは言うまでもないが、彼が持っている情報。もう一つは……どうやって俺のことを黙ってもらうか、だ)


 しかし、インビジブルみたいなすごい魔法を持っているのに、魔物たちは妙に弱い気がする。攻撃も原始的な近接戦で、別の魔法も優れた何かの能力も特に見当たらない。


 いろいろ気になるところがあるが、今はとにかく……。


「お――」


 おいと言おうとする途端、今度は突然周囲の死体たちが爆ぜて、尋常ならざる気配を漂い三体の巨大狼が、それぞれのクレーターの中心から姿を現した。


 姿からしてワーウルフに似ていて、またインビジブルを使ったと思う。


「こ、コイツら……もう追いついたか!? ちっ、中級強化!」


 目を合わせやいなや、大男は炎をあふれ出す体を使って片手で大剣を振るい、自分より大きな狼へ斬りかかる。


 対して三体の黒い化け物も問答無用なごとく、影に似た大爪を伸びながら突き出す。


 だがそのどちらの攻撃も互いに届けず、無形な壁に遮られていた。


(まったく、さっきの魔物たちといい、いきなり現れた狼×3といい、なんで毎回毎回俺が話しかけようとした時に限って邪魔してくるんだ!? おまけにまた無視されたし、悪いけど今回はこっちの用事が終わるまでちょっと待ってもらうぞ)


 にしても、これが世間でよく使われる強化魔法ってやつか! 本当に持っている属性が体からあふれ出すのか。


 知識として知っているのは汎用される強化魔法だと自分のように強化階段で分けるではなく、初級から高級強化まで分かれ、それによって能力の上昇具合が違ってくるそうだ。また同じ強化魔法に特化した化身を持つ者には極限強化というものがあるらしい。


 一番の違いはやっぱり属性漏れという現象であり、自身の属性がバレるデメリットに対して、その属性が得意としたステータスがより向上するようだ。


(はぁ~、せめて無属性じゃなければ、俺も派手に見えそうな強化魔法を使えたかもしれないのにな……)


 そう言えば、対面した時も男は強化魔法を使ったみたいけど、魔法名を唱えてないから分からなかった。


 唯一の例外は魔力が極端に下がた状態になると、魔力節約のために例え初階魔法の行使でも最低限その魔法名を口にしなければならない。


 察するに、さっき唱えたということはこいつもいよいよ魔力が枯渇しかけているってことだ。


 案の定、大剣が空間障壁に当たってまもなく、魔法が解かれ、男はフラフラと後退した。


 体力も限界に来てるだろう。


 どうやら悠長に話せる時間もないようで、やはりついさっき思いついた案で手っ取り早く済ませるしかない。


「これも、お前がやったのか?」


「そうだ。やつらにはしばらくは外で大人しくさせてもらう。今はこっちの大事な用件が先だしな……」


「大事な、用件……?」


 訝しむ男にああと答えて、そして続ける。


「なに、大した話じゃない。ちょっとした口約束を交わそうとしただけだ」


「その口約束ってのは――――っ!!」


 ――瞬間、


 神速で抜き出された鏡月の刃が男の首元まで迫り、一時いっときの烈風が弾け、


「今日ここで俺と会ったことすべて忘れると誓え。もし、約束を違えて一文字でも漏らしたら――この国を、滅ぼす」


 本気のみ構成される底冷えな脅迫に、大男のみならず、無形な壁の外にいる三つの巨躯の体まで震え上げていた。


次回、また水曜から周回を始めます。

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