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二百年の引き籠もり、そして伝説へ!  作者: イグナイテッド
第一章
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第二十六話 作戦会議、そして思わぬ開戦 終

新年明けましておめでとう!

と、いう訳で0時で投稿しました。

「……え、マジで? 姫さま抜きで勝てるのか?」


 驚愕すべき情報を初めて知って、ちょっと間抜けな声を出した。


 別にレイクシスの戦力を侮ってはいないが、神持ちのウィルを抜きにしては正直勝機はかなり薄くなる。現在一番強いのがSランクのあいつとして、向こうは少なくとも二人以上のゲファレーナが存在する。Sランク一人を千の軍勢と匹敵する存在で例えるなら、単純な個の力では敵側はこちらの倍以上を持っている。


 一人を囮に使えば、もう片方はこの国を好き勝手に蹂躙できるのだろう。いや、敵指揮官がもっと知恵があれば、魔物のみの部隊でレイクシス現在唯一の最高戦力を引きつけながら本命へ向かうはずだ。この戦いは始まる前にレイクシス側はすでに劣勢に落ちいたのだ。よっぽどの策を用意しなければ負けは必至。


「だから……それが心配で、アスルさんたちにも力を貸して欲しいっすよ!」


 そういうことか、という理解の色が浮かべた顔を作った。オルギの考えは悪くはないと思う。むしろ、それはある種もっとも正しい答えでさえ思えてきた。


 が、残念ながら今は戦争に構っている暇はない。


 レイクシスは負けると知った以上、残された僅かな時間で砂サメのレシピをなんとしても手に入れ、速やかこの国から離さないといけない。よって、彼の願いが届くことは永遠にない。


「ごめん、戦争はやっぱり無理。この国が負ける前に美味しい砂サメの料理法を見つけ出さなければならないだ」


「なんでうちの国がいきなり負けることが前提になってるっすか! あれ……アスルさん、いま砂サメのことがどうとか言ってなかったっすか?」


「ああ、それを食べるのに今は忙しいだ。だから他に当たってくれ」


 超マジ顔でオルギの問いに答えた。これでこいつも諦めてくれるだろう。しかし、オルギはしばらく何かを考え、予想もつかないことを言ってきた。


「砂サメで作るラーメンならうちにもあるっすよ。裏メニューのものっすけど」


 時間が止まったように数秒惚けて、頭の中にもう一度そのセリフを繰り返し、一瞬でオルギの前に飛びついた。


「まじか!? 本当に調理できるだな!? ちゃんと完璧に砂サメの肉を活かせるのだろうな? そうじゃないとリノは俺に食べさせないだ!」


 オルギの両肩を捕まって揺らしながらそれを確かめた。身長差のせいで両足が宙吊りになっていたが、この際はどうでもいい。いつの間に彼の隣に来たリノも真顔で同じことを尋ねる。


「オルギさん、それは本当ですか? 嘘だったら私が許しませんよ!」


「ま、まじっす! ……でも、あれはかなり稀有な食材で、三つの大市でもあんまに見かけないので、今うちにも材料がないからまずはそれを――」


 予想外な反応だったのか、オルギは顔を引き攣きながら答えてくれた。


「ふん、材料なら問題ない。俺がたくさん持ってるから、いくらでも持っていっていいぜ!」


 最後まで聞かなくでもその内容を察して宙から降りてきて、ドヤ顔で材料提供を約束した。リノとリムもまさか主人がここまで砂サメが食べたいなんて思っておらず、乾いた笑いをしていた。


「やれやれです。まさかこんなすぐ近くに砂サメを調理できる料理人がいるなんて、灯台もと暗しとはこのことですね」


 リノの一言に、リムと一緒にうんうんと頷いた。まさにその通り、この三日間で必死に首都を探し回った苦労はいったいなんのためなのか、と自分で笑いたくなってきた。


「でも、どうして裏メニューなの、です?」


「さっきが言ったように、砂サメは滅多に手には入れないレアな食材だから、ごくまれにしか出せないので裏メニュになったっすよ」


 そういえば最初リノから聞いた砂サメとは、本来そういうものだった。狩りすぎてすっかりそのことを忘れていた。


 砂サメの件が解決できそうなところで、オルギはどこかソワソワしながら尋ねてきた。


「その、アスルさん、戦争の件については――」


「……はぁ、分かった、そっちも任せてくれ。俺としても店が潰られるのは困るし、ようやく食えそうな砂サメ料理が見つけたんだ。報酬が貰えないのは一番勘弁して欲しい」


 まさかこんなにすんなり受けてくれるなんて思ってなかったみたいで、オルギは思わず拳を握り、「よっしゃー!」と叫んだ。


「結局は参戦になりましたね、リム」


「戦争かー、人がいっぱい死ぬのは好きじゃない、けど……ご主人が決めたことなら、全力でやる、です!」


「うふふ、でも、おそらく私たちは戦場には出ないかもしれませんよ」


「え、じゃどう戦うの、です?」


 姉からわけのわからない言葉を受け、戸惑いながらもリムはその真意を問うた。


「うふふ」


 だが、返されたのはいつも通りどこか余裕たっぷりで、イタズラぽくな笑いだった。


 そして、円を囲むように座り、みんなで作戦会議を開くことにした。


「今更ではなんだか、アスルさんたちの助力を得たとは言え、本当に勝てるっすかね?」


 まっさきに飛び出したのはオルギの不安溢れる言葉である。無理もない、強い人たちと気付いても、その強さはどこまでなのかは分からない。また人数が頼りなく、これだけ一つの戦争の勝敗を左右できるなんて破天荒な考えにもほどがある。


「心配しなくでも策や方針さえ決めて、準備を整えばこの国の連中が勝ってくれるだろ。ま、いざという時はこっちも手助けするからさ」


 それを聞いたオルギは不思議と安心し、すべてを彼らに任せばいいと思えた。


「アスルさん……ありがとうっす!」


「やめろ、男に感謝されても気持ち悪い」


「ひどっ!」


 目が潤いながら礼を言うオルギを一蹴した。悪いとは思うが、これは別にテレ隠しなどではなく、本心なのだ。男にそう言われて嬉しく感じるオスはホモだけだろう、と世界中にいるほとんどの男性を全否定した。


「開戦するのは確か夜って言ってたな……時間も残り少ないようだし、さっさと対策を練るか」


 朝の集合で聞いた話を思い起こし、空色を確かめたあとそう言った。日が完全に暮れるのはあと一時間程度で、ゆっくりとできるのも今だけだろう。


「具体的なにをすればいいっすか? あっ、もしおれにもできることがあれば遠慮なく――」


「オルギさんはいいです、大人しくケッシュさんたちと避難してくださいね」


「です、オルギさんがいっても足手まとい、だから……」


 非常に協力的なテンションの高い鬼の言葉を、なんの悪気もない姉妹二人が遮り、一瞬で彼を撃沈した。心が傷され、涙目となったオルギは傷心のあまり地面にうなだれていた。再起するにはしばらく時間がかかるだろう。


「こほん、それで話は戻るけど……まず聞きたいのは大結界と西側のことだ。どうやら冒険者やミーラン族のみんなは結界が破されることも、西から攻めてくることもないと信じてるようだが、そんなに頼りきって本当に大丈夫なのか? その辺はどうなんだ、オルギ?」


 いつまでもそう居ってはかわいそうなので、せっかく本人がやる気を出したから少しわざとらしくでも質問を投げていった。


 それに、何こともちょっとは疑う性格を持っている自分にとってはそれが一番心配なところで、長くここに住んでいる彼ならその理由を教えてくれると思う。


「はい! 大丈夫と思います、アスルさま!」


 まるで天使か救世主かと出会ったように感激が満ちた顔で答えてくれた。何故か話し方も変になっていたが、とりあえずスルーにしておこう。


「な、なんでだ? 性能がすごく高いとか?」


 顔を引き攣りながらも言葉を上手く出せた、と思う。


「それもあるけど、やっぱり実績っすね」


「実績……ですか?」


 人間ではないリノも何故その二つのことにレイクシスの人々がそこまで信じれるかを理解できず、首を傾けながら興味ありげで尋ね返ていった。


「はい、大結界には百年に渡って一度も破ったことがない実績が持っていて、西側の砂漠は入ることこそできないけど、その荒ぶる砂嵐もいい意味で外敵の侵攻を何度か阻んでくれたことがあったから、みんながそれに信じて疑わないのは当然と思うっす」


 オルギの説明を聞いてようやく腑に落ちた。


 しかし、だからと言って今回もきっと大丈夫と決め付けるのは危険だ。この世に絶対は存在しないので、長くここを守っているこそ、その情報はすでに敵にも伝わっていると考える方がいい。だとすると、相手はそれらを知っていた上で首都に攻めるとしたら、この二つの要素は自分たちにとって大きな隙を生まれるかもしれない。


「早急に対処しておかないと……」


「え? なにかっすか?」


 どうやら考えていることを思わず口に出したようだ。


「いや、何でもない。それより対応策を一応思いついたので、聞いて――」


 そこで、言葉が詰まった。


 視線は遥か大空に固定され、訝しむほかのみんなもそれにつれて一斉に空を見上げていた。



 ――夕色で染まれた空に、突如赤黒い魔法陣が次々と現れていた。それは、まるで平和の終わりを告げる紋章なように、美しい空を汚し、刻んでいく。


「……誰だよ、夜で攻めてくることを言ってたやつは!? 太陽はまだ沈む途中じゃないか!」


 どこにいるかも分からない野郎に対して、憤りのあんまりそんな言葉を何もない空間にぶつけた。


 具体的な数は分からないが、少なくともあそこから来るであろう魔物たちは三人でどうにかできるレベルではない、普通ならば……。だからと言って、この国を救いたいという衝動が湧いてくた訳ではない。正直、いますぐ逃げ出したい気持ちの方が大き。


「き、気持ちは分かるっすけど! でも今はおれらも早く動かないと!」


「いや、これ……どう見ても無理だろ。本の主人公たちでさえ開戦前は準備期間というものがあって、それを除外すると丸腰で戦争に飛び込むみたいなものだ。ましてや勝てる見込みの薄いこの戦いそんなことできるか! もうこの国を救うなんて諦めるんだな」


 瞬間、プライドを捨てた人間のようにオルギがなりふり構わず泣きついてきた。


「うおおおーっ、アスルさん、お願いだから見捨てないでください!!」


 だけど現実はいとも残酷なもので、彼の隣に視線を向けると、リノとリムはすでに逃げるための準備をし始めた。同じことを考えている彼女たちが一心不乱で準備する美しい姿を目にし、自分もようやく覚悟を固め、決意した。


 そう――逃げる決意を!


「ここまでお願いしてるのに、どうして三人どもはまだ逃げる気満々っすか!!?」


 そんなこんなで、アスルたちはなんの策もなしでこの戦争に参加する――巻き込まれることになった。


久しぶりにブクマ、感想をしてくだしゃった皆さんや読んでくれる皆さんにありがとうございます。

年が一区切りになった今日は、偶然にも第一章がこの話で一区切りになりました。(と言っても折り返し部分ですが……)

ともかく、これにで第一章上部分は完了です。


下部分については、実はまだ初稿が書き終えていないので、もしかしたら途中でちょっと停更になることもあるかもしれません。

そうならないように頑張って完成するつもりで、どうか見捨てないください!


では、次回は土曜日から。

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