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二百年の引き籠もり、そして伝説へ!  作者: イグナイテッド
第一章
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第二十五話 作戦会議、そして思わぬ開戦 続

クリスマス第三弾です。

 眠げな目ですでに帰ることを前提とした言葉に、さきほどまでの熱が一気に霧散した。この状況下でまさかの協力拒否と帰り発言をする者に呆けていたのだ。


 十秒ほどの時間が過ぎ、何とか気を取り戻したイリュウガは言い辛いそうにアスルに尋ねる。


「少年……その、もっと詳しく理由をお聞きしてもいいかな? さすがにそれだけではこの場にいるみんなも納得しないだろう」


「別に大した理由じゃない。ただうちのパーティーは全員Eランクで、ゲファレーナところか、魔物すら倒しそうにないから、こうして辞退しただけだ」


 言いながらリノたちに視線で示す。イリュウガはその言葉に一理あると納得した。確かに新米冒険者が戦争に参加しても何の役にも立たない。無駄死よりは退出した方が合理的である。


「そういうことか、納得はした……が、それなら後方支援などで協力してもいいのでは?」


「悪いけど、俺たちはそもそも外から来た余所者だ。どこに何があるのかも分からないのに、居っても邪魔になるだけだろ。それに、首都の大きさを考えると今から案内しても覚えられないと思うぞ」


 そう言ってくることは予想されたので、即時に返答した。


 首都レイクシスにはたくさんのブロックがあり、今までの話の流れからして、彼らは城壁をメインに防衛網を張るようだ。そうなる後方支援だけでも、各ブロックを経由して物資や武器など門へ運ぶことが考えられる。


 メインストリート経由ならやれなくもないが、王宮周辺では富裕層が住んでいるため、道が分からない者では迷子になりやすいことは昨日で体験済みだった。


 王宮からの物資ならば問題ないと思うが、ここのものはレイクシス最後の備蓄でもあるとケッシュから聞いた。最悪の場合、籠城戦になることを考慮すると、今動く訳にはいかないだろう。


 他にも怪我人の搬送、情報伝達などすべて道に詳しい必要がある仕事ばかりだ。傷の手当てなどならこちらもできるが、辞退のためになんとしてもできないと嘘ぶっていくつもりだ。


「……確かに君の言う通りだ。しかし……」


 同じ問題点についても考えていたようだが、まだ諦めないらしい。仕方なく、最終口実を使うことにした。


「大事なことを忘れてるみたいけど、俺たちは余所者だぜ。協力をしてもスパイと疑うやつもいると思ったから、面倒ことが起きる前に辞退したのさ」


「……ふ、ふむ、分かった。君たちの辞退を認めよう」


 さすがの彼もスパイという可能性を示せば安易に協力を申し出ることはできないようだ。いまはただ冗談で言っているが、万が一本物な時は一人ではその責任を背負えないのだろう。


 なんとか諦めてくれたはいいが、まだ油断はできない。また医療兵などになれと言い出す前に、リノとリムを連れて王宮から去ることにした。


「……おい、あれってコーラルをあしらったヤツじゃねーか?」

「ああ、おれも覚えてる。でも、なんであんなすごいヤツが参戦しないだ」

「ま、きっと彼らにも色々あるだろうさ」


 後ろから冒険者たちのそんな呟きが聞こえてきた。正体はともかく、実力がバレそうで、思わず歩幅を大きくしてこの場から逃げ出した。



                    *



 首都レイクシスから、人知れずに一体の黒い影が日が暮れ始める砂漠を泳ぎ、黒き悪魔の元に辿り着いた。


 影から情報を得た彼は大声で笑い出した。


「けはははは、思った通り、レイクシスのバカどもはまだ準備をしておるようだ。我らがすでに近くまで来たことも知らずにな」


「ギルアーム、これからどう動く?」


 テンションの高い悪魔と相対する沈着な声で尋ねたのは姿形が透けて見える幽霊男だった。


「ラーザクの魔力が回復してくれればすぐにでも始める。奴らは我らが馬鹿正直で国を囲むでも思っているだろうか、そんな古い策はせん。奴らの戦力をたっぶり削ったあと、ゆっくりと我らの使命を果たそうではないか、けはははは!」


「となると、吾は今まで通り眷属たちに情報を集めればいいのか?」


「それもあるが、念のために一番重要な役目を任せよう。我は顔をバレており、狙われるのは当然だが、貴殿なら誰にもバレずに近づけるだろう。まったく、放浪癖な姫を持っておる国は対処易くで良いな! お陰で厄介なウィルを相手せずに済んだ」


 幽霊の男もそれに賛同して、頷いた。


 彼らにとって一番対処し難いのは姫であるエリーカのみ。この世界で神の化身を持っているだけですでに一種の別存在、あらゆるものを超越せし化物、国を滅ぼす最終兵器とも言われた。弱い化身を持つ者たちがいくら束になってもどうしようもない絶対者である。


 ギルアームたちがここ最近首都近くを攻め続けたのも、姫が不在という情報を確かめるためだった。そして、確信した今こそ、大軍を引き寄せ、一気に首都を攻め入るチャンスだ。


「でもさ、本当にこれでうまくいけるかね。なんかさ、あそこにもっとやばいヤツがいる気がするんだわ」


 いきなり話に混ぜたのは目まで隠すほど深い緑の長髪をしたネゴ背の青年、上に立つ者とは思えないボロそうな服を着ている。


「けははは、ラーザク、冗談はよせ。神持ちのウィルよりやばい相手なんでおるはずまい。おったとしても、それは我らの邪神さまほかあるまい」


「そうだ、ラーザク。余計のことを考えないで、ちゃんと自分の仕事をやれ」


 幽霊の男もギルアームに賛成のようで、ラーザクはやれやれと肩を竦めた。


(女好きなドーウの旦那に言われたくねーわ。ま、いざの時は転移で逃げればいいか)


 転移魔法という戦闘にはあんまり向いてない使い手であるため、自分の勘にはかなり自信が持っている。だから、今回もきっとなにかが起きるなはず。


「さて、我々もそろそろ作戦会議を始めよう。さっきもらった情報でいい作戦を思いついた……レイクシスの奴らはきっと驚くだろう、けはははは!」


「それは楽しみだ」


「ギルアームの旦那、その策ってのは……?」


「ふむ、よくぞ聞いてくれた。まず先手はラーザクから……」


 数十分程度で、彼らはギルアームの策に必要な手順を固め、いよいよ侵攻を開始する。


「でも、いいのかね? あれを侵攻に投入しないのは?」


「ラーザクが言ったウィルより危険な存在を警戒するためだ。もしもの時に用意したに過ぎん」


「さすがはギルアームの旦那、さっき茶化してもちゃんと策を講じるとは」


「さー、これで準備は整った。レイクシスへの侵攻を始めようか!」


 約四万の魔物がその声に応じて雄叫びを上げていた。


 そして、悪魔ギルアームは別働隊を率いて進軍させた。残された四万の軍勢は静かに、これから開かれるであろう道を待っている。


 レイクシスに襲う悪夢が始まろうとした。



                  *



 軍議などが終わり、休憩を取っているカノーバ王は、ふと隣に控えているイリュウガに尋ねた。


「そなたは朝の少年についてどう見るかな?」


「とおっしゃると?」


 王は手で少し顎に当て、感想を述べる。


「わたしはどうもあの少年は娘と似たような雰囲気を感じてな」


「はははは、まさか! あの少年は最低のEランクですぞ。姫さまとは別次元の存在です」


「普通に考えればそうなるが、あの少年の存在はどうも引っ掛かるだ。それに、あの見た目、まるで……」


「少年の外見がどうなさいました?」


「いや、何でもない」


 そう言いながらも、カノーバ王はかつてヴレーデゥの世界会議の中で話に出てきた世界を滅ぼした男の外見と一致したことに疑惑を感じた。


 しかし、その男はかなり歳を取っていた老人で、またあれから更に百年が過ぎて、とてもまだ生きているとは考えられない。


(たまたま、他人の空似かもしれんな。だが、あの雰囲気は一体……?)


 異種族になった者は大まかに二種類に分かれており、一つは魔法に対する適性が向上して、普通より魔法が使えるタイプと、もう一つは元と大差ないタイプである。


 カノーバはその後者ではあるが、長年娘と一緒に生活しているため、神持ちウィルが持つただならぬ気配に敏感になったゆえ、もしもと考えていた。


「いかんな。今はそんなことを考える場合ではない。イリュウガよ、ここはもういい、そなたも早く南門に向かうといい」


「はっ!」



                  *



 国中が大忙しい時に、アスルは公園ブロックで遅めの昼寝を満喫していた。


 樹陰の下にある芝生の上、リノに膝枕をして、リムにマッサージをさせている。誰かに見られても『リア充、爆発しろ!』と言い出しそうな侍らせ具合だった。


 しかし、こんな風になったのは理由があって、今アスルは不貞腐れていて、メイド二人は彼を癒すためにこの行動に走ったにすぎない。


「……まったく、緊急クエストと聞いたから、てっきり空を飛ぶキャベツの大群が飛んできて、それらを倒したら金が入るとかいうあれみたいなイベントと思ったのに、まさかマジものの戦争とは。そんな物騒なものに俺たちを巻き込むなよな」


「まあまあ、確かに戦争のことは予想外ですが、お陰で情報を手に入れました。空飛ぶキャベツを倒すイベントがあるかどうかは分かりませんが……」


「あはは、この世界のキャベツは空を飛べないと思う、です」


 若干、慰めていないにも見えたが、とりあえずこの件について明後日に投げ飛ばした。今はそれどころではない。


「戦争のことはどうでもいいとして……リノ、砂サメの調理法はまだ分からないのか?」


「いえ、調理法自体は分かりましたが、ただどれも納得が行かない点があるので、まだ完璧に作れませんよ」


 前に狩った砂サメをリノが調理したら、その肉は通常の方法では味が損なうことに気付き、食べることを禁止された。『失敗作の料理をご主人様に食べさせるなんて私が許しません!』と言い、以来は砂サメの調理法をずっと探したが、どれも素材を完全に生かせてないみたいだ。


 どうやら砂サメの肉は調理し難い、ここにある凄腕な料理人でもそれを完璧に仕上げれる者は限られているらしい。別に露店で売ってるものでもいいのではと思ったが、リノが頑な許してくれない。


 そのせいでここ数日に、未だに砂サメの美味しさを体験できず、今もおあずけの真っ最中である。


「はぁ~、この際、もうその辺で売ってるやつを食べてもいいじゃないか? 未完成でも作り方の参考にはなるだろ?」


「ダメです!」


「……くだらない戦争より砂サメが食べたいぜ。どこか完璧に調理できるやつはいないかな」


 嘆いていると、リムが頭を優しく撫でてくれる。


「よしよし、です」


 微笑ましいその姿に心が癒されていると、遠くからこちらに走ってくる足音が聞こえた。


「アスルさん! ここにいたっすね。はぁ……はぁ……戦争に参加しないで聞いたすけど、それは本当すか?」


 まだ息が荒げなオルギの言葉にドキッとした。なぜならドンミャンで名乗されたのは本名の方で、冒険者としての偽名は知らされてないはずだ。


「もしかして俺の名前を聞いて、そのことを知ったのか?」


 少し探るように聞いてみると、オルギは普通に否定してくれた。


「違うっす。王宮から帰ってきた冒険者たちとすれ違って時に、黒髪と青い瞳をした冒険者が戦争の協力に断ったと聞いて、アスルさんのことだろうと思っただけっす。あのことでやっぱり本当っすか?」


「まあな、戦争と関わる義理もないし、そんなものより今の俺にはもっと大切なことがあるだよ!」


 あんなに派手なイベントと関わて正体がバレたら元の子もない。それに、面倒な戦争より今は砂サメの方がずっと気になるのだ。


「そんな、アスルさんたちが参加すればこの国は確実救えるすよ! どうして助けてくれないっすか?」


 ここ最近、毎晩のようにドンミャンに通っきりことで、すっかり彼らとも馴染んだ。お陰でアスルたちがただ者じゃないことに何となく気付きされていた。だからこの戦いに参加して欲しいのだろう。


「別に俺がしゃしゃり出なくでもこの国には神持ちの姫さまがいるじゃないか? 彼女一人だけで四万の魔物なんて一瞬で終わらせるだろ」


 それでもオルギの顔色は明るくにならず、沈んでいる声で話してくれた。


「……いないっすよ。エリーカさまは今、この国にはいないっす。姫さまは少し放浪癖で、どこにいるのか、国王さますら知らないっす」


 数十秒を数えれるほどの時間が過ぎ、ようやく反応できた。


「……え、マジで? 姫さま抜きで勝てるのか?」


次回は1月1日からです。


新年でも連投はしないですからね!

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