第二十一話 首都観光、そして新米冒険者としての初依頼 続Ⅳ
近くの露店でお昼を済まし、どうやって依頼された場所に向かうかについて考えた。
どうやら南門から出る必要があって、十一番ブロックとは完全に真逆な方向だった。
半径五キロ以上の首都内に徒歩で行くのはかなり時間がかかり、大橋の上に設置された横に動くエスカレーターを使用することにした。
大橋の外縁部は各ブロックと繋ぐ小橋が多く、よって外側普通な通行道になっていて、その内側にそれぞれ行き来するためのエスカレーターがある。幅は三人が横に並ぶ程度で、橋沿いに伸びていき、途中にいくつの切れ目が存在する。
中央の部分が馬車や竜車の通行道になっていて、橋を横断する場所には変な形をした樹が植えていた。幹の一部が光っており、一定時間ごとその色が変わて、特定な色になった時は向こう側に歩けるらしい。
エスカレーターなんてアーカデアにいた頃はけっこう見慣れたので、ついつい無視するようになったが、よくよく考えればリムにとっては初めて見たもので、リノも実際乗るのは初めてだ。
緩やかでS形の大橋を進み、ゆっくりと首都の風景を楽しめる。初体験の二人は子供のようにはしゃいって、危なっかしくてとりあえず注意をした。
ただ乗っているだけでは普通に歩くとあんまり変わらない速度だが、気をつけて上に歩けば門に到達するにはそれほど時間は掛からなかった。
レイクシス南門を出て、その西南側約数キロ先には広い岩地帯があった。
零細な岩たちが点在しているその場所は、何故か強力な魔物の一時な溜まり場となりやすい。弱い魔物と出逢わない代わりに、強い魔物の出現率が高いと聞いた。
アスルは手元の依頼を記した紙を改めて内容を確認する。
<クエスト内容>
首都南にある岩地帯にサンドリヴァイアが住み着いた噂が出たので、その真実を調査して欲しい。
<危険度>
A
<魔物特徴>
……
<報酬内容>
見つけ出し、なお退治した場合の報酬は250金。
存在のみを確かめた場合は50金。
追伸:噂が偽物であることに判明した場合や退治に失敗しでも調査料として50金を支払います。
<依頼主>
〇〇〇〇
「へぇ~、なかなか親切な依頼じゃないか。要は死ななければ、どう転がっても調査料はもらえるってことだな。でも、それがなんで誰も受けたがらないだろ?」
一通り見終えると、そんな疑問を浮かべたが、別に答えを求めた訳ではないので、すぐかき消した。
魔物を倒したらかなりの大金を手に入れそうだが、Eランク冒険者の自分たちではそれをやっても他の人に知らせる訳にはいかない。残念な気持ちを表すように溜息をした。
「砂リヴァイアサンってサンドリヴァイアが正式な呼び名ですね」
「えっ、今更そこをツッコムのか!? 依頼を取ったのはお前だろ?」
目を逸らしたリノがいきなり音のない口笛を吹き始めた。つまりはちゃんと見ていないのだろう。
「そう言えばカルガーさんがその魔物をしんわしゅって言ってたの、あれは何なんの、です?」
「魔物たちの種類のことを指してるだ。全部で六種類があって、それぞれが植虫種、動物種、亜人種、死霊種、始原種、そして神話種に分かれてた。変化した環境から生まれものは時々魔結晶というコアが宿され、それがやがて魔物となる」
ちょっと簡略化すぎたようで、各種の魔物を例えて六つの種についてリムに説明する。
植虫種は植物や昆虫系の魔物で、動物種は獣系の魔物である。亜人種にはオーク、ゴブリン、鬼、獣人など人を模した種で、死霊種にはスケルトン、ゾンビ、悪霊などの不死族が多い種である。始原種は主に精霊、スライム、恐竜など不定形で比較的原始な姿をした魔物たちを指してる。
最後の神話種は神話に出てきた魔物のことである。代表性のあるのはドラゴン、天使、悪魔、フェニックスなど、今回の砂リヴァイアサンという魔物もそのうちに入っている。
「でも、砂リヴァイアサンは亜種って言われてなかった? 違うとかあるの、です?」
「亜種ってのは姿はその種に似てるけど、力や知性とかは劣る魔物たちのことだ。要は完全にその種になりきれず、中途半端な姿や力を持つ存在だな」
「なるほど、じゃ砂リヴァイアサンって実は本物な神話種じゃないなの?」
「まあ、そうなるな。さらに付け加えると、異種族になった人もこの魔物の分類に当てはまるだ。神話種ってほとんどボスレベルの存在しかないから、それ属する化身たちが他のより強いな訳さ」
知りたいことが全部聞けたリムもいつの間にか探索に出ていた姉を追った。
それから約十分後、
「んー、けっこう探したのに、なかなか見つがらない、です」
「気配探知にも引っかかないみたいですね、もしかして寝ているでしょうか?」
珍しくリノはいつものイタズラをせず、真面目にやっている。二人が初めての依頼にはしゃいているご様子に思わず微笑んでいた。
「むむ、ご主人も一緒に探す、です!」
「そうです。笑ってないで少しは手伝ってください!」
サンドリヴァイアの探索が難航しているようで、二人は協力を求めてきた。
「はいはい、今考えるから……リノが探知できないとなると、やっぱり寝ってるか、あるいは魔法のせいかという可能性が大きな。だったらあぶり出す方が早いかも」
適当に応えつつ、魔物の行動について分析した。
「でも、ここは砂漠ですよ。あぶり出すにしても土系統の魔法以外では下に届きませんよ」
「地面をドカンすればいいの、です?」
主人の意図がわからず、二人は首を傾けた。
「んー、リムの方が正解に近いな。リノはちょっとはしゃいぎすぎじゃないか? 少し気持ちを落ち着け、いつもならとっくに答えを分かってただろ」
「う……すみません、ご主人様。こういったイベントは初めてて少々興奮すぎたみたいです」
「やった、です! じゃ、わたしがハンマーを出すから!」
リノは幾分冷静さが戻り、リムはちょっと早とちりしていたようで、すぐ止めに入った。
「いや、近いとしか言ってないだろ! そんな派手にしなくでももっと簡単な方法であぶり出せるぞ」
彼女がハンマーを構築される前に慌てて鏡月を抜き、切っさきを地面に向けて勢いよく刺さった。発する微々たる砂に刺さった時の音を圧縮強化し、一秒くらい溜めたのち、何十倍以上となった音波が岩地帯全体の地下に放たれ、響かせていた。
ほどなくして、辺りの砂が蠢き始め、自分たちの居場所以外ではとんでもない砂塵が引き起こした。
その中で感嘆な声を発しながら待っていると、やがて砂から姿を現れた。
巨大で長い胴体でこちらを囲んだのは蛇型な魔物だった。尖った口から鋭い牙が見えて、軽く何百メートルを超えている体の表面は泥色な鱗があり、けっこうな数のヒレを持っている。
「……なるほど、こうなるから誰も依頼を受けたくないか」
周りに突然できた肉壁を見て、この依頼がなぜ一週間も放置された理由をようやく悟った。
(これは飛んで逃げるか、倒すか以外ないな……今のところ首だけが動いてるみたいだし、すみっこなら安全かな?)
いろいろ観察していると、リノが訊ねてきた。
「これが砂リヴァイアサンですか、ご主人様?」
「ん、ああ、依頼書に書いた通りの姿だ」
「お、大きー、です!」
砂リヴァイアサンを見ているうちに、向こうが襲いかかって来た。牙を剥き出し、三人のいる場所に突っ込んだ。眠りから無理矢理に起こさせたせいで相当お怒りなようだ。
リムはすぐ構築した双銃で首に向けて撃ったが、弾が簡単にはじかれた。しかし、彼女は別段焦っていない。
隠れ家にいた頃は、すでに似ていた魔物たちと戦ったことがあるため、リムは動揺せず弾を撃ち続けている。サンドリヴァイアはそれに注意を引かれ、口から液体の弾丸を連続で撃ち返した。緑色な液体が岩や砂に当たって飛び散ると、あっという間にそれらを溶けていた。
今回の依頼をリノたちに任せるつもりで、何もしないまま観戦する。一応はリノの近くで護衛をしていた。
リノもリムの戦いをただ見ている様子で、訝しむながら話しかける。
「どうした? 混ざらないのか?」
「さっきの失態について少し反省して、今回は遠慮しておきます」
何でもないように答えたが、やっぱり先程のことを気にしている様子だ。彼女にとって主人の考えを誰よりも早く察するのが一番大切なこととして定めていたみたいで、だからショックを受けたのだろう。
「別にあれでいいじゃないか、いつも世話してる分、たまにハメを外しても俺は責めないぞ。それに……結構かわいいかったしな」
「もうっ、そういう嬉しいことを言ってくれたらまた調子に乗りますよ!」
ちょっとふざけた調子で宥めると、リノは恥じらいながらも元気を取り戻せていた。
「で……もう一度聞くが、混ざらなくていいのか?」
「はい、今はそれより、ご主人様の傍にいたいですから」
「……しょうかないやつだな」
「はい、私はしょうかないやつです」
いつの間にか、二人の周りは桃色の空間が作り出されていた。
姉のコアとは繋がっているので、目で見なくともその気配を感じたリムは頬を膨らんでむっとした。
(む~、おねえちゃんばかりずるい、です! わたしが頑張って戦ってる隙にご主人とイチャイチャと……! こうなったら、砂リヴァイアサンにこのモヤモヤな気持ちをぶつける、です!)
またいくど動かない胴体の部分を狙って撃ち、やはり同じようにはじかれた。別に惜しいとは思えず、砂リヴァイアサンに撃った弾は単に体各部位の強度を分析するためのもので、それが今しかた終わった。
「イクアちゃん、弾種|オーバーライト(上書き)、二十八式小型徹甲弾、です」
イクアに記録されている弾種から今の銃でも使える徹甲弾を選択し、上書きさせた。再度首辺りを狙い、二発を撃ちだした。
しかし、なおもその硬い鱗を貫けず、少し撃ち込まれたところで止まった。予想以上の硬さに一発一発の弾では威力が足りないようだ。それでも前に使った炎と氷の剣に変えるつもりはなく、早く終わらせないために効き目の少ない銃を使い続けた。
「んー、これでもちょっと威力が足りないなの……仕方ない、あの方法を試してみる、です」
また、サンドリヴァイアの口から強酸が連続に撃ち出され、斜めにジャンプしてそれらを躱すた。間隔の隙をついて両手の構え少し調整をいれ、引き金を引いた。
そこで、砂リヴァイアサンは初めて苦しそうに叫んでいた。
したのは一点集中射撃という技術、二発の弾を僅かな時間差をいれて、まったく同じ場所に寸分たがわず当たった。それが威力不足を補い、一発目の弾が皮に少し埋めた瞬間、二発目の弾がそれを肉の中押し進み、鱗を貫けた。
有効と見て、次々と一点集中射撃を打ち込む。
トバンン! トバンン! トバンン……!
サンドリヴァイアの傷が少しずつ増えて、這いている砂は深い緑色に染まっていく。
だが、
今までただ怒り任せの攻撃が止み、その瞳にもうこちらを見くびる色は消えていった。
次の攻撃に警戒すると、突如砂リヴァイアサンの胴体に沢山の穴が生まれ、そこから辺りを覆う砂塵を吹き出した。
次回、サンドリヴァイアの逆襲、書き直すつもりなのであくまで予定です。
水曜日の昼頃更新、かも。




