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二百年の引き籠もり、そして伝説へ!  作者: イグナイテッド
プロローグ
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第二話 逃走、そして世界の終焉 終

 一方、アスルたちは隠れ通路の滑り台から出たあと、アーカデアの地下に存在する旧地下水道経由で国外近郊にある森に向かっている。


 年季の入ったボロい旧地下水道の中に、


「はぁ……はぁ……やっぱり……子供の体じゃ……キツイ……な」


 使い慣れない小さな身体を駆使し、絶え絶えの荒い呼吸をしながら、アスルが水晶珠を右手抱えて走っている。

 真っ黒の旧地下水道でも迷いわず、真っ直ぐ走れるのはリノの指示と水晶珠から発する光で道を照らしているお陰でである。


『すみません。私にも体があればいいのですが、試作の体がどれも適応しませんでしたから』


「はぁ……はぁ……仕方ない……だろ。お前に……適する体なんか……そう簡単に作れる……もの……じゃない……からな」


 リノの性能は世界最高峰、人型の外見を作れても内側のパーツがそのオーバースペックに耐え切れず、壊れてしまう。もっとも一番の原因はリノがこの世界の全ての知識がほぽ持っていることで、その中にある現存しない技術を引き出すと内部パーツがオーバーヒートを発生し、体そのもが溶けてしまう。


 故に未だそれらの問題点を解決出来る素体が完成できず、さっきの部屋にある素体がその失敗作たちだ。


「はぁ~、ふう~……ところで、囮の方はどうだ? あそこを残すと後々面倒なことになるからな」


 かなり遠く離れていると思い、スピードを落とした。呼吸を調整しながら、屋敷を離脱する時リノに頼んだことを思い出して、それについて聞いてみた。


 アスルはデータの消去工作のついてに囮に使うことで、あの部屋を爆発するつもりだ。


 ちょっとした足止めと時間稼ぎのため、更にはW.C.Mの最終階段にも、時間は必要である。


『はい、あちらは問題ありません。そりゃあもう屋敷ごと爆破しましたからね! ちなみに敵の三分の一くらいもやっつけました。すごいですよね、流石はマスターの策です!』


「…………え、俺はあの部屋だけを爆発するつもりだけど! なにその戦果、屋敷の爆破だけであんなに殺せるもんなのか? 幾ら何でも侵入するヤツ多すぎだろ!」


『ええ~、でも折角外で散々挑発して、たくさん入らせてましたから、ここは盛大に"全員まとめて飛んでけぇー"という勢いで爆発するのが常識ではありませんか』


「そんな常識ないから! でいうかお前やっぱり外で何かやらかしたな、じゃないとここまで過剰な戦力を侵入することに指揮官が許すはずないだろ!」


「てへ♪」


「……はぁ~」


 リノのイタズラに思わず溜息をしたが、でもこれでほぼ追っ手の心配がなくなったから、何とも言えない気分だった。




 それからひたすら走ると、ようやく旧地下水道を抜け、外に出た。目の前に広かるのはアーカデア外れの森だ。


 再度呼吸を整えなから、アスルはこれからの予定を整理する。


「あとはこの森を抜けて、南にある町辺りに辿ればちょっとは安心できるな」


『はい、私には結界装置とかの知識がありますから、それを作って中に隠ればまず発現される恐れはありませんね』


「……やけに用意がいいな、お前マジでそんなもん何時用意したんだ? どれも記憶にないだけど。いや、何となく記憶を欠ける前でも作っていない気がするのだが」


『うふふ、いやですねマスター、あなたはその辺りの記憶がないから当然覚えてませんよ。その気もきっと気のせいです』


「……」


 さっきから遊ばれている気がするが、心の中でこれからはスルーの方向で対処することを静かに決意した。


 そこで、リノの真剣な声が聞こえる。


『マスター、これから私は制御作業に入るため、暫くそちらに集中しますね』


 どうやらいよいよ彼女が世界を滅ぼす兵器に全処理能力を使いって、その最終段階を実行するところまできったようだ。


「分かった、こっちは何とかするからお前も自分の仕事に集中すればいい」


『はい!』


 リノの元気な返事を聞いた、森に踏み入れる。


 ふっとアスルは思う。もう追っ手は来ないだろうし、少しはこの体をどうすれば速く、長く走れるが練習がてらで進むか。



              *



 アーカデア近郊にあるこの森はそれ程大きくはない。西と東側は狭き、道路のように南に向かって伸びており、森の真ん中には同じ小川が流れていく。緑豊ではあるが、大型動物はほとんど生息していない。


 そんな森でも、夜は周囲が見えない程暗き、ゾッとする雰囲気が漂っており、故に人々は夜の森には近づかない。


 割りと激しく流れいる水の音を楽しんでいながら、アスルは川沿いで微かな草踏音も出さず、風のように軽快な歩調で走ている。練習していた成果が早くも出てきたようだ。


 息ももう荒げることなく、今では大人にすら負けない速さでしばらく進んでいると、


「そこの子供、止まりなさい!」


 突然、後方から女性の声が聞こえた。


(追っ手? いや、このルートはヴレーデゥすら知らないはず、こんなに早くここまで嗅ぎつけるはずが……)


 疑問を感じながら足を止め、子供を演じながら後ろに左半身だけを振り返た。右手にある水晶珠であるリノを隠すための仕草である。


 薄暗い視界に現れるのは黒軍服を着ている女性らしきシルエットと、その手に持っている白銀の拳銃。


 女性が更に近づくと、森の中でもその姿をはっきりと見えるようになった。


 整った顔と、軍人に似つかわしくない華奢な身体から、二つの丸い果実が自分の存在感を示している。キラキラとしたウェーブロングの金髪はたまたま吹いている風と共に空に浮き上がる。


 腰には一本の軍用剣が帯びており、拳銃の銃身にも金色の紋章が浮かび見えて、オレンジな瞳と銃口はこちらに狙っている。夜の森を照らしているその姿はまるで映画のワンシーンだった。


 普通なら見惚れた光景であろう。だが、そんな美人を見でもアスルは逆に警戒を強めた。


(あの紋章は……確かフロスト家のもの、こいつがヴレーデゥの中で噂されている天才か? 一人で追ってきたのか、だったら簡単に……いや、この考えは相手を侮りすぎる。ここは全力で対処すべきか)


 考えがまとまったところで、基本中の基本、情報収集を始める。


「なんだい、お姉さん、僕に何か用?」


 純真な顔でちょっと頭を傾き、子供らしく訊ねると、


「そんな演技をしても無駄です、あなたに関しての幼年期から現在に至る資料は全て覚えていますわ。勿論、顔もね。アスル・バハドール博士」


 返てくるの予想外の答えだった。早くも最初の策が無駄になった。


「はぁ……マジか、普通そこまでするか? 俺もよっぽど狂熱的なファンを持ったものだ」


 相手に演技は通じない見たいですぐ口調と表情を戻した。あんまりにさっきとの雰囲気が変わりすぎて、向こうはちょっとキョトンとしたが、それでも何とか俺の冗談に応える。


「そ、そんなに狂熱的ではありません。普通です、ただちょっと尊敬しているだけですわ」


「尊敬されることはしていないと思うがな……で、お前はなんでここにいるだ? まさか一人だけで俺を追ってきたじゃないよな」


 どこかテレている様子な女軍人を警戒しながら、少し昔開発した兵器を思い出そうとするが、記憶が欠けていたことを思い出し、複雑な気分になった。仕方なく、別の情報を取ることに優先する。


「屋敷の爆発が聞こえましたから、もしかしてここに逃げて来るかもしれないと推測して、来てみただけですが、まさか本当にいるなんて……。仲間を連れて来るべきでしたわ」


「憶測だけで逃げ道が割られたか。俺もついてないな……んで、お前は俺をどうするつもり、殺すのか?」


 肩をちょっと大げさに竦めて、相手の油断を誘ってみたが、引かがらないところか、逆に警戒を強めた。さっきよりまずい状況になったかもしれない。どうやら中途半端な小細工では通じないタイプのようだ。


「殺すつもりはありません、大人しく捕まえなさい。あなたには然るべき処罰が下しますわ」


「罰なら間に合わないな。どっちにしろあと数分もすればこの世界は終わるだ」


「な、なんですて!」


 彼女は兵器が使用されたことをまだ報告にないみたいで、まさかすでに使われたことに対して動揺している。


「俺が作った世界を滅ぼす兵器ならとっくに空に向かっている。今はもう落ち始めたかもな」


 実際はもうちょっと時間がかかるが、そこまで教える義務はない。


「く……っ、もう使われてましたの。今までたくさんの人々を救ったあなたが何故、そうまでして世界を滅びたいですの?」


 どうやら彼女は俺が救ったというあの戦争の数々の裏事情を知らされていないようだ。光の面しか知らない彼女が、果たしてこれからの世界にどうなるか、少し興味を湧いた。ここで真実を彼女に告げない方がいいかも。


「……この世界は腐りすぎたからだ。俺にとって、理由はそれだけで十分だ」


 昔のことをちょっと思い出させたせいか、声がちょっと重くなった。これくらいで動揺するなんで俺もまだまだのようだ。


「許しませんわ。必ずあなたを捕まえて、その兵器とやらもなんとしても破壊して見せますわ!」


 ずいぶんヒーローみたいなセリフだ。呆れながら溜息をしつつ、もう一つの絶望を教える。


「あれには特殊なバリアが覆われているだ。今の世界の技術も、俺でもすぐ壊すのは無理だ。それに時間的に不可能だ。ま、それでも止めようとするのならせいぜい足掻くだな。んじゃ、俺は行かせてもらうぞ」


(もう情報は揃えた、これ以上この場に留まる必要はない)


 アスルは体の向きを戻し、再び走り出す。


 その時、バンという銃声と共に弾が顔に掠りさった。


「待ちなさい、まだ聞きたいことがあ――」


 だが、その先のセリフは続かなった。


 アスルが何もかも無視して走り続けた。川を離れ、暗い森の中に向かった。


「え……嘘! 無視!? 発砲したのにガン無視ですの!!!」


 発砲による威嚇が無視される状況は初めてゆえ、女軍人は激しく動揺しつつも慌ててついて行った。




 夜の森中、二人の追いかけこが始めた。


 アスルの不規則な動きを先読みし、引き金を引く。


 バン! ……バン!

 銃声が響いたが、その前に、アスルは既に銃弾が飛ぶ反対側にジャンプした。


 まるで未来予知した躱し方だった。どの弾も引き金を引く寸前、その射線から離れた。


「そんな、何故そこまで躱せますの?」


「お前、そんなことも分からないのか。確かに銃は強力な武器だが、所詮は直線しか撃てない。狙われる場所と撃つタイミングさえ分かれば幾らでも躱せるぞ」


「ぐ……例えそうだとしても、こちらに後ろを向いているあなたが、何故狙われる場所が分かりますの!」


「さあな……もしかしたら背中も目があるかもしれないな」


「またそんな風に誤魔化して!」


 このまま弾を浪費して当たりはしないことを知り、女軍人は攻撃のリズムを変えることにする。


 ッ……バン! ……ッ……ッ……バン! ……バン! ……ッバン!


 フェイントを加えて、引き金を引く直前で指を止め、狙いを変えてまた撃つ。パターンもバラバラにしたが、相変わらず神業のような回避動作で全部躱された。一番驚くのはフェイントをまったく引かがらず、本命のみを躱すことである。


「くぅ~、本当に何なんのですの、その動きは! 精鋭部隊の先輩たちすらわたくしの銃撃をここまで躱せないですわよ! 研究者はずのあなたがいったいどこでそんな技術を……」


 悔しいながらも、ちゃんと素早く新しい弾に替えた。


「その先輩たちが俺より劣るということだろ。本気で俺に当てたいなら跳弾でも撃ったらどうだ……あっ、まさか、出来ないのか? そいつはごめんな、無知とは言え、失礼なことを言ってしまった」


(……七発、か。急所はやはり狙わないだな)


 アスルはチラと後ろの女軍人を見て、不敵な笑みを浮かびながら相手を挑発したが、心の中では必要な情報を脳に刻んている。


 今までしている回避運動は実はそんなに大層なものではない。ただ手に持っているリノこと水晶球を使って後ろの状況を把握し、狙われる場所の弾道を計算して割り出せ、相手の呼吸を走るという行為から撃つ瞬間を見極めて、寸前でその場所に離れたに過ぎない。


 まさに『狙われる場所と撃つタイミングさえ分かれば幾らでも躱せる』の言葉通りに動いている。


 最も向こうはその動きを解析することに夢中になり、水晶球の存在すら気づいていない様子。


「っ~! では、お望み通りに、そうさせて貰いますわ!」


 突然、後ろからそんな言葉を聞こえて、アスルはハッとした。


 バン!

 再度の発砲、しかし、こちらを狙っていない。弾は丁度左隣にある樹の凹みに当たり、中を削りながらも曲がり、左肩へ向かって飛んで来た。


 それを回避すべく、アスルは腰を前に屈み込み、ジャンプした。速度を落とさないためだ。


「っ……! ははは、驚いた。本当に跳弾が扱えるやつがいるのだな」


 本でしか知らない跳弾が現実に飛んでくることを思っていないため、本気で驚かされた。それでも予想外の事態に遭ったことに対して高揚感を感じて、思わず笑いだした。


 バン! バン! っ……バン! …………バンバン!

 それからの弾も全ての跳弾に代わり、それぞれどこかに当たり、曲がったのち、多方向からこちらを襲いてきた。それらを時に樹を盾にして、時に走りながら身体や頭を傾き、躱した。もちろん、速度をまったく落とさないままそれらを成し遂げた。


 ここまで跳弾を使えるとはまったく思ってなかった。お陰で今は面倒になった弾道を計算する手間も増えた。


(仕方ない……ちょっと早いが、次の一手に移すか)


 まだまだ続く追いかけこの中、今度は前方に走っているアスルが問いかけてきた。


「そう言えば、まだお前の名前聞いてなかったな。何で言うんだ」


「……ルーシェです。ルーシェ・セリュミア・フロストと言いますわ。聞いてどうなさいますの?」


 名を聞かれて、女軍人改めルーシェは戸惑いながらも名乗った。


「いや、ただもうすぐお別れだからちょっと聞いてみただけだ」


「くぅ~、また馬鹿にして、本当に逃げられるとお思ってますの!」


 顔が怒りで赤くなりながら、再び狙いを定め、引き金を引こうとした。だが、今までの流れから闇雲に撃っても躱されるのがオチだと知り、残りの二発をなんとか我慢して次の機会を待つ。


(かと言って、剣を使うにも樹に邪魔されますわ。どこか、広いところがあれば……え、前方に樹がない場所が……しかし、何故いきなり都合よく……? いいえ、今はそれより、そこを利用すべきですわ)


 バンバン!

 高速連射した二つの弾はアスルの左右にある二本の樹に当て、枝を使って跳弾させた。ご丁寧にアスルの頭がある位置、前進方向の少し前でクロスさせる神業。あと一歩踏んたら、二つの弾はその頭を撃ち抜くであろう。


 が、やっぱり無駄だった。アスルはその手前に止まり、体ごとこちらに振り返た。


(ようやく足を止めましたわね。でも、何故体の向きまで……? 何を企んでいるのが知りませんが、今度こそ終わりさせますわ!)


 ルーシェはさっきまでとは違う躱し方に戸惑いつつも、銃をホルスターに入れ、もう一つの手で腰にある剣を素早く抜き、アスルに向かって踏み込んた。


 最後の二つの弾はただの足止めに過ぎず、本命は近接による斬撃だ。さっきまで邪魔している樹がなくなったことで、ついにもっとも得意とする剣術が使えるようになる。


 本来なら相手を生け捕りのために、頭や心臓を狙わないが、アスルがあんまりにも人離れな動きを見せたから、これくらいの攻撃では当てられないと確信したからの仕掛けだ。


 一気にアスルの懐に入り、渾身な袈裟切りで見舞われる。


 アスルはそれを地面に倒れるように体を仰け反ることで躱した。


「もちろんそれも予測しましたわ。その体勢では次は躱せm――っ!」


 一の斬撃が躱せる最初から予測していて、ニの斬撃で決めるつもりだったが。


 そこでようやく気付いた。彼の倒れる場所には川があることを、いつの間にかまた川の傍に戻ったのだ。


(っ……! これこそがあなたの狙いですね。全部……最初からこうなることを誘導していましたわね)


 彼があえて出会いの時に対話を応じたのは、何故ここにいる情報ではなく、自分の人格を話から聞き出すためだった。あえて森の中に誘い、川から引き離した。あえて銃弾を躱すことで彼自身に注意を出来る限り引きつけた。あえて次々と発砲を誘導させ、銃の情報を引き出し、自分が取る行動を完璧に予測できたのちにここに誘い込むためだった。あえてふざけた言動を取ることすらも、全ては本当の狙いから目を逸らすためだけに。


 答えがもし最初から見える範囲にあるのなら、誰もか問題を簡単に答えるであろう。しかし、その答えが見えず、他の要素を問題に加えれば、人の思考は案外身近いにある答えを無意識で避けることになるだろう。


 この森の川の流れが速いことはアーカデア首都に住む者の中ではもはや常識、彼の狙いは最初から目の前にあった。もし、彼の動きや言葉に動揺しなければ、すぐにそれを気づくはずだった。


わたくしができた彼にとって唯一の予想外は、跳弾を使っただけ。なんて凄い方ですの。子供の姿なはずなのに手も足も届きませんでした。完敗ですわ)


 互いの視線はアスルが川に落ち切るまでずっと見つめ合い、別れ惜しむ恋人のように何時までも目を逸らさない。


「じゃな、ルーシェ・セリュミア・フロスト。お前となら、変われた世界でまた会える気がする」


 アスルは平淡な言葉とどこか嬉しいそうな笑いを残し、落水音と共に川に落ちた。


 そのまま川の流れに身を任せて、ルーシェがいる場所から離れて行った。最初の狙い通り、川の深さなら問題なくこの子供の身体を半ば水中で浮かびながら流される。


 水流は早く、ルーシェはもう追い付くことが出来ない。


 それが、アスルとルーシェの初めての邂逅と、別れであった。




             *




 宇宙と空の境界線に、七つの超大型ミサイルはリノの遠隔操作でそれぞれ指定された場所に到達した。


 直後、ブースターは停火し、分離を始める。最下部のブースターは地上に弾けた。弾頭の真ん中からほぽ同じ長さのミサイルが飛び出した後、残りの部分は外壁を畳み、大量な小型ミサイルを周囲にバラ撒き、巨大な皿を描くように点在した。


 七つの超大型ミサイルがすべての動作が終えたのち、飛び出した長身ミサイルたちも方向変換し、小型ミサイルの大群と共に一斉で地面に向かって急降下した。


 地上からそのミサイル流星群を視認できたことで、人々は驚愕を通り越してもはや恐怖しか感じでいない。


 恐慌や絶望、自棄になった人たちの中、まだ冷静さを保ている者たちがいる。彼らは巧妙な方法で民を落ち着かせ、励み、何とか大空にある絶望に立ち向かった。


 やがて、地上の全ての国や軍事基地などから同じ、いや、上空以上の数の対空攻撃が放たれた。


 ビーム掃射、同じミサイル攻撃、実弾砲撃、ジャミング弾などなど、数えるのもバカバカしい程の閃光と花火が上空にばら撒いた。


 しかし、空一面にあるミサイルの大群を打ち落とすどころが、一本を逸らすことすらできなかった。理由は落ちて来るミサイルの大群全て表面に謎のバリアに覆われ、攻撃だけでなく、ジャミングすら通らない。


 人間は何一つ出来ないのまま、ただただミサイルの大群が落ちることを待つしかできなかった。


 そして、それは事実として証明された。


 ドッゴゴゴンンンー!!

 途轍もない震動と轟音に包み込まれ、世界は、滅びた。


 後々、人々はこの日をこう呼ぶ――<シュットジュール>。

誤字脱字などは活動報告にお願いします。

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