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二百年の引き籠もり、そして伝説へ!  作者: イグナイテッド
第一章
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第十八話 首都観光、そして新米冒険者としての初依頼 続

 それから、円環を一周し、巨樹辺りの景色を楽しんだあと、アスルは次の目的地を切り出す。


「なぁ、次はギルトに行かないか? 砂漠で集めた素材をそろそろ売りたいから。今の金欠状態を脱するためにも早めに売った方がいいしな」


 レイクシスに入ってからすっかりそのことを忘れていた。人一人の食事代は平均一日で約五銀はかかり、例え自炊しても自分たちは毎日最低でも十数銀は減っていく。


 あの領主からもらった金はまだまだ残ってはいるが、旅とはいろいろ費用がかかるもので、見えない明日のためにも、貯めった方がいざという時に困らなくで済む。


 それに、何時までもあのとんでもない数の素材を持っていても仕方ないので、早々に金の足しにした方がいいだろう。


「そうですね、ついてに依頼というものも受けましょう! 私、そういうイベントを一度は試してみたかったです」


「依頼を受けるの!? わたしもやってみたい、です!」


 二人は金より依頼の方に注目しているようだ。それと、リノさん、冒険者の依頼はイベントではから、ちゃんと生死が伴い危険な仕事だから、そこを勘違いしないように。


 なんて言えるはずもなく、確かに彼女の言う通り、自分たちにとってそれはある意味正しいとも思っていた。


「やれやれ、依頼もついてに何かを探してみるか。でも、俺たちは最低のEランクだから、受けたい依頼が必ず受けられるとは限らないぞ」


 アスルたちは言わば初心者冒険者みないな存在で、危険な上位ランク依頼が受けられる可能性は非常に低い。


「そこは、きっとご主人様がなんとかしてくれます!」


「ご主人が頼り、です!」


 まったく、どうやら二人にとって自分は万能らしい。


 そんなことを思いながら、一緒にギルトへ向かった。



                     *



 第十一番ブロックに位置する冒険者ギルト、別称<レイクシス支部>。


 この国ではもはや見慣れた木造りな外観。中に入ると、左側は受付口、真ん中は依頼の張り出し、そして右側が普通な酒場に分けているようだ。


 もう本日何度目が数えない全員の視線に集中されている。


 アスルはスルースキル全開で受付口の方に向かった。昔読んだ本では受付は決まって美少女受付員が出迎えてくるのが定番で、実は割とワクワクしている。


 だがそんな考えもすぐリノにバレて、今も冷たい目でこちらを見ていた。リムは状況を分からず、首を傾けていた。


 やがて、受付の窓に到達し、そこに現れたのは――包帯で全身を巻いている厳つい顔のマッチョタルマなおっさんだった。


「へい、いらっしゃい、坊主! 依頼か、食事か、それともワ・シ・かな!!」


 怪異的で、情熱的なポースに歓迎され、アスルは灰となった。リノとリムも顔を引き攣き、さりげなく主人の背中に隠れた。三人は初めてミーラン族に対して恐怖を感じていた。


「おっと、ちったーやりすぎたか。かはは、すまんすまん、改めて、レイクシス支部にようこそ、ワシが受付のカルガーだ、よろしくな」


「あ、ああ、俺はシュウド……後ろに隠れていた背の高い方はリノで、もう一人はリムだ……。よ、よろしく」


 何とかショックから正気に戻り、挨拶を返した。後ろから小さな声で「ね、おねえちゃん、どうしてご主人は普通に話せるの、です?」「それはもちろんご主人様だからです!」「なるほど、です!」などどが聞こえた。何かご主人様だからだとツッコミたくなるが、今は我慢して二人にも挨拶させる。


 リノたちもなんとか気を取り直し、左右に戻って一礼して、挨拶をした。カルガーはそれを満足に頷いて、改めて用事を訊いてくる。


「うむ! で、今日は何用でギルドに訪ねた?」


「素材を売りたい、こっちの相場について分からないので、できれば鑑定も頼みたい」


「うむ……坊主たちのランクはいくつだ? 冒険者ランクを一つ上げることで売り額の五パーセントは上乗せできるぜ。Aランクでともなれば売り額の二十パーセントが上乗せできるもんだ」


 ランクが上がれば金をもっと稼げるのは知っていたが、うちには縁のない話だ。ランクを上げると、同時に自分たちのことが有名になるのだ。普通な人ならむしろ有名になりたいだろうが、うちがそうなる訳にはいかない。


 名が売れば、それがいつかはアーカデアに届くだろう。いや、それ以前に、もし各地にいるかもしれないヴレーデゥの関係者たちの耳に入れたら、かなり面倒なことになる。


 ここは上手く誤魔化すかと考え、カルガーに答える。


「全員Eランクだ。別の冒険者ギルトに登録したばかりで、すぐこっちに来たからな」


「そんなバカな、Eランクだと! ちょっとカードを見せくれてもいいか?」


 カルガーは渡されたカードを受け取り、冒険者ランク欄に確認する。


「確かにEランクだ……お前ら、よくそれでレイクシスにこれたな。この辺りの魔物じゃ最低でもCランクだぞ」


 言いながらカードを返してくれた。どうやらここではEランク冒険者は珍しいようだ。


「たまたま載せてくる商隊を見つけたので、それで何とかここまで来れたんだ」


「はぁ、無茶をするな……で、売りたい素材はどれくらいあるだ。隣の空き場で鑑定してやんよ」


「ちょっと待ってくれ……ええと、ワームが二百二十五体、砂サメが七十八体、毒蠍が三十三体、それと……」


 頭の中に浮かんだストレージリストで統計して、売りたい数を知らせた。


「――な、なんじゃその数は……! まさか、すべて全身分の素材じゃない、よな?」


「ん? そうだが……」


 カルガーのみならず、ギルト内もざわついた。無理もない、この数の素材は明らかにEランクを遥か超えている。


 世間一般での新米冒険者は基本採取系など簡単な依頼しかこなせない。もちろん、この反応にも予想したもので、すでに用意してある口実を口にする。


「勘違いしないでくれ、これは俺たちが倒した訳じゃない。商隊を護衛した冒険者たちからの別れ土産だ。何分、うちのメイド二人は美人だからね。Eランクの俺たちだけでこんなすごい量の魔物を本当に倒せると思うか?」


 でっち上げる口実だが、リノたちの美しさにすっかり心が奪われたギルドのみんなはすかさず納得してくれた。


(これまで周りの反応を見て、やはり彼女たちは世間じゃ上に属するほどな美人のようだ。こんな嘘でも簡単に信じさせるとは、持つべきは美少女メイドだな……本物なメイドじゃないのが実に残念だ)


 さっきの褒め言葉に反応したのか、背中からなにやら甘い空気が漂ってきた。


「うむ、確かにそれほどな美女たちを連れたらそうなるか……。すまん、ちょっと取り乱した。しかし、そんな大量な素材じゃ隣の空き場は無理だな。悪いが、倉庫の方で出してくれるか?」


「構わないぜ」


「助かる。すぐ他の役員も呼んでくるから、ちょっと待ってくれ」


 軽く頷いてそう言ったあと、カルガーが五名ほどの役員を呼び、ギルド倉庫に案内された。


 それから、彼らが大量な素材を鑑定し、最終的に三百金ちょっとを手に入れた。主に砂サメからの収益が高く、他の魔物たちの売り額と匹敵するほどだった。量より質の方が高く売れそうみたい、今後はそれを注意しながら素材を集めよう。


 ちなみに、売った砂サメはほんの一部で、実際狩った砂サメは二百体以上超えていた。何時まで食べるつもりかとツッコミされそうだが、少なくともストレージに入れている間は腐らないので、いつでも食べれるし、売れる。まさに砂サメさまさまだ。

次回、土曜日です。

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