第十七話 首都観光、そして新米冒険者としての初依頼
すみません、修正と改稿に少し手間取っていました。
今回はサービスシーンをちょっとだけ書いてみましたので、気に入ってくれると嬉しいです。
2000文字も増えたのは想定外ですけど。
翌日、アスルたちはいよいよ本格的なレイクシス観光を始めた。
「……まずはどこから回るか?」
行き先なんて本当はもう決まったようなものだが、念のためリノたちに聞いてみた。
「「巨樹です!」」
やはり同じのようだ。相変わらずリムは言葉がハモる時のみ、敬語が合っている。実に不思議だ。
軽く微笑み返したあと、巨樹に向かう。
ここ二十五ブロックはメインストリートを経由しなくでも巨樹に辿り着けるが、それでもわざわざ南側のS型大橋に通ることを選んだ。ついてに小町も見に行くためである。
レイクシスにある三つの小町はすべて市場で構成されている。そこには毎日のように商人や大道芸たちの戦場になっている。
南小町も当然、かなり賑わっている。
大きな円盤の上に各種な店や露店が渦を描くように並んでおり、ちょっとした小型迷宮みたいで、面白い意匠だった。わざわざ橋の部分に店を構させないところがなかなかこざかしい。
道のあちこちでは経験豊富な売り子が甘い声で通りすがりの客を煽り、大道芸などは派手な演出をみせ、吟遊詩人たちは聞いたことのない英雄譚を歌っていた。
雑踏の中、アスルたちが異常に注目されながら小町を回ている。いつものようにスルーして商品を見て回る。
(アントナルにいる時はそれほどじゃないが、ここに来た途端、妙に注目されるな。別に目立った行動はしてないと思うけど)
彼らが何を見ているかと言うと、間違いなく後ろにいる二人である。
自分が言うのも何だか、彼女たちの容姿はなかなかできたものだ。華奢な体に柔らかい肌と唇、顔も尖すぎずに注意しながら作り、まつ毛や髪の毛もちゃんと女性特有な滑らかさを持っている。
はっきり言って、心の中で描いていた理想な女性像を体現した姿だった。
だがそれはあくまで自分がそう思っているにすぎず、他の者もそうだととは思わない。
なので、ずっとリノたちの姿は世間でも普通だろうと、勝手にそう思っていたが、これほど注目され続けると、考え直すべきかもしれない。
小さくやれやれと溜息すると、いつの間にかリノとリムが両隣りに来ていた。人前では基本メイドのように後ろで控えるはずだが、今日は珍しく隣で一緒に歩く。
「にしても、レイクシスは一つの都市しかないはずなのに、よくこれほど活気溢れる国になりますね」
ふと、まるで何かを思い出したようにリノがそんな言葉を洩らした。
「そう言えば、ここも首都レイクシスって呼ばれる、です。どうして同じ名前なの?」
「元々この巨大オアシスの名前がレイクシスらしい、他国から国だと認めたあとも建国の功労者である先人たちに感謝の意を込めてレイクシスと呼び続けた。そして区別しやすいように都市には首都の二文字をつけた」
昨夜店長たちから聞いた話をそのまま二人に教えた。途中で男女グループに分かれたせいで、彼女たちが知らないのも無理はない。
「でも、一つの都市だけで国を名乗るのは無理なんじゃ?」
「前の時代なら確かに国とは言えないな。だが、今の時代じゃそう珍しいでもない……異種族大移民を経ってから、それぞれの種族がヴェシテ大陸の土地を分け、国や町をおこしたが、新世界の環境それほど優しいものじゃない」
視線を城壁の外に向け、それにつれて彼女たちも同じ方向に目を向く。
「この砂漠のように、過酷な環境の中に人が住める場所が必ず存在するとは限らず、異種族でも全部が驚異的な体をしてる訳じゃない。ここも先人たちの努力があって、初めて人が住める場所となった。だから昔みたいに都市や町をいくつ持っている国があれば、レイクシスのように一つの都市のみで国を成り立つところもある」
首都の中では砂漠にいると思えないほど涼しく感じるが、はたしてここまで作るのにどれくらいの時間をかかったのだろう。
納得したリムの次はリノから訊ねてきた。
「領土の方は確か……デゼール大砂漠全体、だったですね。一都市の国家としては大きすぎませんか? こういう場合は領土争うとか起こりそうですね」
「まあ、その辺は問題ないそうだ。この砂漠に安心して住めるのはここだけって店長たちも言ってた。他の場所は砂漠や魔物だらけで、占領しても正直何の役にも立たないので、他国からはむしろ潔くすべてレイクシス側に丸投げたって訳だ」
疑問が解けたところで、リノはすっかりこの話題に興味を失っていた。
「……それで、お目当てのものは見つかりましたか、ご主人様?」
「まだ数軒しか回ってないぞ。そう簡単に見つかるか」
二人に説明しながら店の品たちにも注意深く見ていたが、やはり心を惹かれるほどな物がない。
「ここは、リノ、と答えくれでもいいのに!」
何故そう答えなければならないのかと問いたいが、その前に彼女が腕を絡めて、体を押し付けてきた。白いブリムの部分から柔らかな感触を感じて、反射的に視線を向けると、服の隙間から現れた深い谷間と出会った。
イタズラな笑みを浮かびながら、妙に慣れているテクニックでその柔らかい部分を当てと離れを繰り返している。やはり理想な体を与えても、性格が悪いすぎる。
と考えつつも次第に鼓動が加速し、ドキドキする心を落ち着かせるために、思わず少し赤くなった顔を逸らし、道すがらに幾人が鼻血を出しているのがたまたま目に映り、一気に冷静さを取り戻した。マジで助かった、と心からそう思う。
おそらくリノのアタックで、彼らはその魅力に当てていろいろ我慢できなくなったのだろう。
「分かった、降参だ。だから早く放してくれ!」
「うふふ、分かりました」
しかし、答えとは違って彼女はより強く抱きしめてきて、更なる胸の感触でまた気持ちが昂ぶり始めた。いつもは人前でこんなことはしないのだが、これも彼女のイタズラだと考えられる。
(昨日のお返しなのか!?)
店長たちと一緒に無視したことがまだ根に持っているかもしれない。
その時、
もう片方の腕からも柔らかい感触を感じた。リムが頬を膨らんながら抱きついてきて、姉に対抗しているだろう。
「もうっ、ご主人。おねえちゃんだけじゃなく、わたしのこともちゃんと見て、です!」
上目遣いをしながら小さめな胸を押し付け、拗ねている甘い声で囁いてきた。
リノほどな大きさはないが、彈力はこちらが上で、違った感触が腕に擦れ、加えて甘える仕草をプラスしたその魅力が途轍もない。心臓の鼓動がさっきよりもすごい速度で加速していく。
「……リム、お前もか」
「うふふ、では、私は大人の魔性で攻めますね。さあ、ご主人様、これならどうですか?」
リノは持ち前の魅惑的な魔性を解き放ち、更に胸元のブリムを少し引っばて、奥にある性欲を引き起こさせる黒い下着をチラ見させる。
「ぐ……」
理性を吹っ飛びそうな誘惑に耐え、首を強引にリムの方へ戻せた。リノよりは刺激が小さいだろうと思っていたが、こちらはこちらで別の意味で興奮する。
それほど大きな胸ではないはずなのに、密接な状態で擦られると、どんどん二つの果実の存在感が膨らんでいく。
幼い気味な姿で、大人をぶる仕草とのギャップがまた心をそそる。
「ご主人ー」
「ご主人様」
「「どちらの胸がいいですか?」」
姉妹の甘い誘惑に、理性もいよいよ崩壊寸前だった。
道端ではすでに多数の人が缺血症状で倒れており、まだ無事な人はこちらに向けて凄まじい羨望な怨嗟を放ってきた。とても市場の雰囲気ではない。
「……両方だ。大体似たような質問はこれで何度目だ? どっちが上だなんて比べたことないし、何度聞いても同じ答えしか返せないぞ」
「もう、一度くらいは選んで欲しかったです」
リムもそれに同意したように激しく首を縦に振るった。
「無茶言うな。どっちかを捨てるなんて選択、俺には無理だ。で、お前たち……満足したらそろそろ離れてくれ。ここで野獣になるのはちょっと勘弁したいだけど」
「はーい」
「でーす」
危うく理性が外れかかったところで、どうにか離させてくれた。「はぁ~」といつもより長く息をついたが、依然とドキドキが収まらない。
まだほんのわずか腕に残されている二種類の柔らかさを意識しながら、再び店を回っていく。
一時間ほどが経過して、結局は目当てなものはなく、巨樹に向かうことにした。
「近くで見ると、とんでもないな」
今は巨樹を囲む幾重の円環、その一番奥のブロックにいる。
巨樹に一番近いこのブロックは平面ではあるが、十数メートルの空中に浮かんでいる。さらに不思議なことに、ブロックのみならず、下にある湖の一部も盛り上がり、頂部の水はブロックの底部に張り付いていた。周辺のブロックがなければ、水の丘に見えるだろう。
円環の内側は横幅が計り知れない巨樹が聳えているが、それを触れることはできない。ブロックの内縁と樹は距離があり、ジャンプして張り付けようとしても湖に落ちるであろう。
いや、その前に、近衛兵衆によって押さえたかもしれない。
幹に幾つの小屋が張り付いており、そこへは巨樹の中から木造りの階段が伸びている。見張り台みたいのものかもしれない。幹の南方向には一つ大きな空洞があり、そこが王宮とその入り口となった場所である。
「触れないのはちょっと残念、です」
「でしたらいい方法があり――」
「やめとけ、どうせろくでもない方法だろ」
どうやらツ星のようで、リノが「ぶ~」と言いながら拗ねている。
「王宮とか言う場所には入れないの、です?」
リムはまだ諦めきれず、他の方法も訊いてくる。
「王宮はちょっとな。ほら、俺って一応は指名手配だろ。顔写真とかはないけど、王族には知ってるヤツはいるかもしれないし、あんまり関わりたくないな」
「あぅ~、残念、です」
落ち込んでいるリムの頭を撫でて宥める。
「ご主人様、ここがその一つって間違いないでしょうか?」
「ん、ああ。湖の大きさと位置からして、そうだと思う」
「なんのこと、です?」
周囲に注意深く、微々たる声でリムに教えた。
「W.C.Mの爆発地点、七つあるメインミサイルの一つがこの場所に落ちたのさ。目の前にある巨樹ペルグランデがなによりの証だ」
「えー! この樹ってあのミサイルによって生み出したの、です!?」
「あの七つは一番影響力が強いからな。その爆発地点となった場所が驚異的な地形やものが生まれるのはおかしなことじゃない」
湖の溜まり場はどう見てもクレーターの跡地、その中心に巨樹が存在する。他にもペルグランデの特性とか、湖の水に混ざっている魔力とか、もはや確信と言っても過言ではないのだろう。
考えを再確認したところで、リノからちょっと真剣になった囁く声が聞こえる。
「ご主人様、巨樹を守る兵の数が少し足りない気がするですが、気のせいでしょうか?」
まったく、さっきの話はどこに行ったのやら。
「さあな、大体俺はあの屋敷に配置されたヴレーデゥの守備しか知らないし、もしかしたらこれくらいが普通なんじゃないか?」
と言っても、あの屋敷を守る数は一国さえも攻めらるほど過剰なもので、正直あれと比べるのはどうかと思う。
「う~ん、あっ、では私の考えが正しいとして、ご主人様はどう思いますか?」
「そうだな……例えば、何らかの事件に兵力をそっちに集中させたせいで、守りが薄くなった、とか?」
もしそうなら、これは国に関わる問題で、自ら脚を踏み入れない限りは巻き込まれることはないのだろう。
「もしかして戦争になるの、です?」
「いやいや、こんな攻め難い国を相手に誰が挑むだよ」
リムの疑問にすぐ否定した。
砂漠の中に存在するレイクシスに戦争を仕掛けようとするバカはそうそういない。掛かる軍資金も馬鹿にならない上、神持ちのウィルという強大な戦力が待っている。更には守る側は安全で涼しい結界内に対し、攻める側は外の地獄な砂漠や野良魔物とも相手しなければならない。
どう考えても勝ち見込みが薄い、その上でなおも攻めてくるなら、相手はきっと……。
リノとリムも結局はそんな相手を浮かばず、やがて納得した。
そのままブロックを沿って西側にいくと、また何かに気付いて、リノが訊ねてきた。
「ご主人様、西の空はなにやらひどい天気がしてますね!」
なんでお前がそんな嬉しそうなのかはあえてつっこまないでおこう。
「ああ、そっちは本物のデゼール大砂漠がある場所だな。いつもはああして砂嵐が荒っているようだ」
これも店長たちからの受け売りである。
レイクシスの西側は誰も踏み入れることのできない死の砂漠、一定な周期にしか止まらない砂嵐はその場所を荒い続ける。止んだ時に入った人たちは全員十メートルも進めず、ひとり残らず砂の中に出現する見たことのない魔物に殺されていた。
夜も他の場所と違い、部分的ではなく、地域まるごと凍り付くそうだ。その異常な環境ゆえに、先に何かあるのか、誰にも知らない。
「……砂漠の大きさも俺たちが通った場所より何倍以上はあるみたいだ」
「それは凄いですね……いったいあそこに何かあるでしょうか?」
「さあな、行く必要もないし、今回は無視すればいいだろ」
「死の砂漠かー、ちょっと怖い、です」
「……もしかしたらたくさんの虫魔物が出てくるかもな」
「ひぃー!」
思わずからかってみたが、リムの反応に思わず吹き出した。彼女の可愛さに当てて、リノは思っきり妹を抱きついた。ちょっとした桃色? 百合色? な空間が生まれた。
次回、月曜日です。




