表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
8/18

 ギルドを慌てて飛び出したはよかったが、しかしリゼの家がどこなのかはわからない。

 曖昧な記憶を頼りに道を歩いていく。

 そう考えると、自分の記憶の悪さがひどいものだと自覚する。

 この世界に来る前――いや、俺が本当にこの世界の人間じゃないとわかっているわけじゃないが、昔のことがわからない。

 どうしてここにいるのかが、まだわかっていない。

 とりあえず生きていくために、いまはお金をどうにかしなければならないし、そして最後には


「あの人の場所にいかないと」


 名前も知らないだれか。

 俺のことを知っているのはきっと、あの人だけだ。

 俺をここまで飛ばしただれか。

 いつか会えるのだろうか。


「お、デメブヒ……ってことはこっちか」


 デメブヒのことは覚えていたので、なんとか道を思い出す。

 やっとのことで見つけた家。

 外出していなければいいが。


「リゼー。ヒナタさんがリゼを連れてこいって」

「……まだ気持ちの整理がついてないの。どう伝えれば怒られないかを考えてるから」

「……」


 ベッドの毛布に包まって、ぶつぶつと呟いている。

 すでに怒っているとは伝えにくい。

 まさか怒るとは思わなかったし。

 もう過ぎた話だ。

 忘れよう。


「はやく行こうぜ」

「明日にしましょう。今日はだめだわ」

「あ、いや……」


 そうすると今度は俺が怒られそうなので困る。


「すでに怒ってるから今行ったほうがいと思うんだよね。うん」

「……」


 声が止まって、すごい勢いでこちらを見た。

 信じられないといった様子で、目を見開いたまま口をパクパクとさせている。


「あんたまさか……」

「誤解だ」

「よくそんな嘘が真顔で言えるわね。殴るわよ」


 ダメージ12。

 相変わらずいい威力である。


「殴っておいてよくそんな笑顔でいられるな!」

「HPは減ってないでしょ。いいじゃない」


 HPと言われて、自分のブックに書いてあったステータスを思い出した。

 意識すれば自分の体調が数値ではっきりとわかる。

 スライムとの戦闘の後、リゼの一撃で19のダメージを受けていた。

 俺の最大HPは34。

 残り15しか残っていなかったわけだ。

 しかしいまのHPは27になっている。


「女神の鉄拳。あたしが新しく覚えた武器スキルよ。与えたダメージの2倍、HPを回復する」

「なにそれ怖い」

「これで、いくらあなたを殴っても問題ないわ」

「大有りだ! 痛いんだからな!」


 そこでリゼはため息をついた。


「あたしクレリックなのよ。回復魔法で味方を後ろから補助する役目なわけ」

「とすると……」


 素手が武器だというのは少しばかり問題があるわけか。

 いや、少しで済むならいい方なのかもしれない。

「一応回復魔法は使えるんだけど、拳の武器スキルのせいで魔法力が落ちてるのよ。だから前衛と並んで、死にそうな味方に直接殴りかかるしかない」

「……」


 下手をすれば殺してしまうのではないだろうか。


「あなたのクラスは?」

「エンチャンターだってさ。まだ何かできるわけじゃないけどな」

「役立たずね」


 容赦なく言ってくれる。事実なので言い返しのしようもない。


「さ、行きましょ。ここでうじうじしてたって、ヒナタの怒りは収まらないし」

「そうだ。はやくいこうぜ」

「そもそもあんたが言わなかったらゆっくり作戦たててから行けたのよ」


 ダメージ12。

 しかしHPは満タンに回復しているようだ。


「だから痛いっていってるだろうが!」


 リゼはまた鼻で笑って、部屋を出て行く。


「そうだ。ひとつ言わなきゃいけないことがあるわね」

「なんだ?」


 途中で振り返って、リゼはわざとらしく咳をした。


「わけも聞かずに攻撃して悪かったわ。謝っとく」

「ああ、いや」


 初めてリゼに会った時のことを言っているのだろう。

 あの時は入浴中で――今にして思えばずいぶんと大変なことをしてしまったと思う。

 望んでやったことではないにしても、彼女が謝るようなことではないだろう。


「これからヒナタに話して、まあじっくり、じーっくり怒られるだろうけど――」

「悪かったよ。俺も謝っとく。だから俺も一緒に怒られるよ」

「一人だけ逃げようとしてたのならいまから10発殴ってあげるところだったわ」

「まあ、そのくらいされても仕方ないくらいのことはすでにしてるからな」


 ばっちり素肌を見ていることは、いまもしっかりと覚えている以上どうしようもない話だ。


「俺はいま何もない。これからどうすればいいのか、どこに向かえばいいのかもわからない。でも、今決めたよ」

「なに」

「お前が前衛に立つんだ。俺も後ろに立ってないで、お前を守ってやるよ」

「レンタルした盾で?」

「ああ。本当ならお前は他のスキルが解放されてた。俺に関わらなければ、素手でスライムに殴りかかることなんてなかったかもしれないし」


 言ってから、彼女ならいつまでも解放されない腹いせに殴りかかりそうだと思ったのは言わないでおく。


「お前の盾になる。だから俺を、お前の仲間に入れてくれ」


 リゼは拳を構えたと思うと、ぐっと前に出した。

 それがなにを意味しているのかわからなかったが、どうやら殴ろうとしているわけではないらしい。


「ん」


 もう一度、顔を逸らしてリゼは拳を出した。


「あ……ああ」


 俺も拳をあてようかと手を出して、そしてやめた。

 彼女が拳で戦うとして、俺はそうじゃないからだ。


「よろしくな、リゼ」


 盾をコツンと拳に当てる。

 リゼはそれからこちらを一度も見なかったが、その横顔はなんとなく――嬉しそうに見えた。


◇篝ヒトシ(カガリヒトシ)

レベル4

クラスエンチャンター

武器盾

装備E

レンタルした盾(DEF+8 MND+6)

ジャージ下(DEF+2 MND+1)

シューズ(DEF+1 AGI+3)

HP34 MP23

ATK18

DEF34(BS+5)(E+11)

INT10

MND24(BS+5)(E+7)

AGI26(E+3)


☆武器スキルBS

A盾使いレベル1

 盾の扱いが上手くなる。レベルによってDEFとMNDが上昇する。

シールドパリィレベル1 消費MP10

 攻撃をはじき返す。レベルによって成功率が上昇し消費MPが減少する。


☆魔法スキルMS

Aアベレンジレベル?対象?魔法種?



◇リゼ

レベル3

クラスクレリック

武器素手

装備E

魔法士の服♀(DEF+7 INT+3 MND+10)

皮靴(DEF+2 AGI+3)

奇跡の指輪 (INT+8 回復魔法の回復量が3%上昇する)

HP27 MP46

ATK38(BS+15)

DEF24(BS+5)(E+9)

INT29 (BS-5)(E+11)

MND18(BS-5)(E+10)

AGI21(BS+5)(E+3)


☆武器スキルBS

A拳の達人レベル2

 素手時、ATK・DEF・AGIが上昇する代わりに、INT・MNDが減少する。

無慈悲の鉄拳レベル2 消費MP20

 ATK1.4倍ダメージ。

女神の鉄拳レベル1 消費MP13

 ATK1.2倍ダメージ。与えたダメージの2倍HPを回復させる。


☆魔法スキルMS

スプラッシュレベル2 対象1~5 魔法種水 消費MP13

 大量の水を呼び出し攻撃する。

クリエイトスライムレベル7対象1 魔法種水 消費MP5

 スライムのような半固形水球を生成する。

ヒールレベル2対象1 魔法種光 消費MP15

 対象のHPを少し回復させる。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ