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 目を覚まさないままのローナの病室で、俺はヒナタさんと座っていた。


「ローナはこの街で5本の指にはいるレベルの元魔法士だ。それがこうして戦闘に負け、いまも意識を取り戻さない」

「俺を疑っているのか?」

「確かに、お前の周りで事は起きている。だが、お前を疑ってはいない。今回の犯人は例の商人だ」


 攫われたのは二人ではなく、リゼだけだということか。


「彼のことを調べてみたが、ゲントという商人は聞いたことがないと、全く情報がなくてな。それだけで十分、彼が犯人だという証拠のようなものだが」

「なんでリゼを……」

「リゼが狙われたわけでもないかもしれない。次はパットやジャコの可能性もある」


 ヒナタさんの妙な言い方に引っかかる。俺は狙われないとわかっているようだ。


「それに、攫われたというのも妙なところではある。ローナを置いていけば、彼女からなにか情報が漏れる可能性だってあるはずなのに。どうしてローナも連れて行かなかったのか」

「なんにしても、ローナが目覚めないとわからないですね」


 眠ったままのローナを見ていると、妙な胸騒ぎがした。

 まだなにか見逃しているような、そんな感覚だ。


 ――――――


 ある森の奥。


「ブルーム。ねえ、ブルーム聞いてるんでしょ」

『なによ。いまそんなに暇じゃないんだけど』


 人影は一つ。


「見つけたよ最後の英雄。主人様に伝えてほしいんだけど」

『あとでね。いま暇じゃないの』

「なんでだよ。英雄の捜索は最優先事項じゃないか。僕の手柄になるのが嫌なの?」

『見つけただけのやつがなに言ってるんだか。たまには他人を信用しなさいよ。いつも自分が言ってるじゃない』

「お前が一番信用ならないんだよなあ」

『なに? 聞こえてるわよチャム』


 咳払いをしてごまかそうとする着ぐるみは、ぱたぱたと手を振った。


『ところでベルはどうしたの? 一緒じゃなかったの?』

「いまは別行動中。しばらくは連絡できないだろうね。英雄のすぐそばにいるから」

『大胆な作戦ね』

「ま、僕たちの魔法は絶対的なものだからね。ばれるわけがない。うふふ」


 不敵な笑み。

 ぶつりと何かが切れる音がした。


「ん? ああ、切られちゃった。だから信用ならないんだよなあ」


 着ぐるみはてくてくと歩みを進める。

 木にもたれ掛けさせていた荷物をふたつ背負いあげた。


「そうだ、英雄に手紙書かないとねえ。返して欲しかったら見つけてみろって。うふふ」


 そこは森の奥。

 誰一人近寄らない魔の森。


「最期の英雄が、人を助けるようなやつだとは思えないけどねえ。人を助けるような僕みたいにやさしい人なら、最期の英雄だなんて言われないもんね。うふふ」


 

 魔法に溢れた世界 終

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