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第63話 帰郷

 賢悟の意識が戻った瞬間、視界一杯に映ったのは満天の星空だった。

 煌々と輝くそれは美しく、少し手を伸ばせば届きそうなほど。

 それが、過去の光だと知りつつも人が手を伸ばすのはきっと、それでも触れたいと思うほど美しいからだろう。


「…………ん?」


 と、そこで賢悟は違和感を覚えて、体を起こす。

 辺りを見回すが、薄暗く……さらに、何処かの草原という事ぐらいしか分からない。ただ、傍らに横たわるリリーの姿を見つけると、賢悟はほっと胸を撫で下ろした。どうやら、リリーも賢悟と共に巻き込まれて飛ばされてしまらしい。


「……よし、無事だな、うん。まったく、心配させやがって…………いや、つーか、此処はどこだよ? それ以前に、あの後どうなった?」


 賢悟は感覚を研ぎ澄ませてみるが、周囲から敵意や殺意は感じない。それどころか、虫の鳴くような音しか聞こえないようだった。

 それは、少なくとも皇都の付近では有り得ない事だろう。何せ、賢悟がどれだけ意識を失っていたかは不明ではあるものの、最低、一晩程度は収まりが付くような事態では無かったのだから。

 原初神が、復活してしまったのだから。


「ええい、くそ! 俺よ! つーか、エリの脳みそよ! 気合いを入れて思い出せぇ!」


 ふぬぬと、賢悟が頭を抱えて必死で思い出したのは、結局、原初神との最後のやり取りのみ。

 賢悟の一撃終幕と、原初神の大魔術が相克し、その余波で空間が歪んだところまで。


「んー、皇国のどっか遠い場所にでも飛ばされたかね? まぁ、いい。さっさとこいつを起こして、戦線復帰だ……あのクソ神を仕留め損ねたからなぁ」


 幾度もの死闘を重ねた上、原初神と激突したというのに、賢悟の意気はまるで衰えない。流石に体力はかなり摩耗しているので、戦線復帰するとしても回復を待たなければならないだろうが。相変わらず、尋常では無いバイタリティの賢悟だった。


「ほら、起きろ、リリー。朝ではないが、こんなところで寝るな」

「…………ん、むぅ……」


 やることが決まれば、賢悟の行動は早い。

 己に寄り添うように眠るリリーの肩を揺すり、できるだけ優しく起こしてやる。本来なら、ぺちぺちと頬を叩いたりするのだろうが、それをしない程度には賢悟はリリーに対して優しさを持つようになっていた。


「……ん、あ……賢悟、様?」

「おうとも」

「…………賢悟様ぁ」

「何故、抱き付く?」


 揺すり起こされたリリーではあるが、未だに寝ぼけているらしく、賢悟に抱き付いて離れようとしない。


「賢悟様、賢悟様」

「はいはい、なんだよ?」

「死なないでください、賢悟様……お願いです、お願いです……」


 賢悟を抱きしめるリリーの肩は震えていた。

 声も、何時もの淡々としたものでは無く、震えて、今にも泣き出しそうなものだった。

 どうやら、リリーの意識は、賢悟が『剣士』と死闘を繰り広げたところで途切れているらしい。だからこそ、こんなに必死で賢悟に縋りつくのだろう。


「……あー、もう!」


 本来であれば、「寝ぼけるな、さっさと起きろ」と引きはがすところであるが、賢悟はそうはしなかった。

 傍に居たいと願われ、握りしめられたことを覚えているから。

 その手の温度を、込められた想いも知っているからこそ、リリーを無下に扱うことが出来なくなってしまっている。

 ストレートに好意を示され、縋られたのは初めてなので、流石の賢悟と言えど戸惑っているようだった。

 故に、仕方なく賢悟はリリーの背に手を回して、抱き返す。

 己の体温を、存在を証明し、安心させるように。


「いいか? よく聞け、寝坊助リリー。俺は、あの『剣士』も、ふざけた女も全部殴り飛ばしてやった。だから、大丈夫だ。俺は死なない、いいな?」

「…………はい」


 リリーは小さく頷くと、ようやく抱き付く力を弱める。

 そして、己の行動に初めて気がづいたように慌て始め、ボールのように丸まってしまった。


「申し訳ありません、賢悟様。私としたことが、従者としてあるまじきことを。どうか、お許しください、嫌わないでください」

「嫌ってない、嫌ってないからそのポーズを止めろ」

「すみません、三分だけ待ってください。平静を取り戻しますので」


 それからきっかり三分経つと、リリーは元の無表情メイドへと戻っていた。

 ただし、涙をぬぐった跡だけは誤魔化しようが無かったようだが。


「お待たせしました。これで、貴方様のパーフェクトメイド完全復活です」

「…………まぁ、突っ込まんさ。それより、行くぞ。なんか知らんが、見知らぬ場所に飛ばされた。恐らく、俺とあいつの攻撃の余波の所為だが……ああ、それについての経緯も歩きながら説明する」


 幸いなことに、夜とはいえど空は明るく、歩くのに困らなかった。

 周囲も見渡す限りに草原が続いているわけでは無く、少し離れた場所からは文明の明るさが目視できる。

 二人はとりあえず、その灯りを頼りに歩みを進めていく。


「なるほど、それでは結局、原初神は復活してしまったと?」

「ああ、復活したばかりならどうにかなるかと思ったが、結果はこの様だ。相手の大魔術を相殺しきれず、空間を飛ばされるなんざ、俺もまだまだだぜ」

「正真正銘の神の攻撃を相殺した時点で、かなりの偉業だと思うのですが、それは」

「いやぁ、まだまだだ。英雄とは間違っても名乗れねぇな……少なくとも、あの異影牙の爺に胸を張れねぇ」


 激戦続きで心が休まる暇も無かった賢悟であるが、そのおかげで考えなくて済んだこともある。それは、ジョン・ドゥとの戦闘で死んでしまった者たちの事だ。

 それは、己を庇ってくれた異影牙だけに留まらず、十二神将のモヒカン、忍者、あるいは皇都で死んでしまった見知らぬ者たちについて。

 どれだけ言葉で言い繕うとも、賢悟にとっては取り返しのつかない損害だった。


 王都のテロの時も人は死んでいたが、それでも、まだ数は少ない方だった。顔見知りは居なかった。

 けれど、皇都で起きた惨劇は違う。

 十二神将が容易く殺され、美しい街並みが地獄絵図に変えられたのだ。中々、割り切れるものでは無い。

 特に、己の力が足らずに死んでしまった者に関しては。


「俺が弱かったから、助けられなかった……なんて、うぬぼれるつもりはねぇ。だが、俺が強ければ、死ななくて済んだかもしれないってのも事実だ。ならよ、せめて背負うだけ背負って行くしかねぇよな」


 ぎゅう、と己の右拳を強く握りしめ、拳の中に新たな重みが生まれたことを知る。

 賢悟はその重みを、生涯手放すことは無いだろう。


「…………」


 強がるように笑う賢悟に、リリーは何も言葉をかけられなかった。

 弱く、縋るだけのリリーには、賢悟を慰めることも、支える言葉も見つからなかった。だから、静かに恥じ入るように沈黙している。

 だが、そんなリリーの頭へ、ぽん、と拳から開かれた掌が乗せられた。


「だから、今更女の一人ぐらい背負ったところで、大して重みも変わらねぇだろ。まぁ、そういうことだから」


 ぶっきらぼうに、目線も合わさずに賢悟は告げる。

 しばらくはあまりの衝撃に、呆然とすることしか出来ないリリーだったが、しばらく経ってやっと一言。


「ありがとう、ございます」


 感動で震える声で、たったそれだけを絞り出す。

 ぬぐい取ったはずの涙は、とめどなく溢れ出すのに。

 リリーは喉が震えて、ただ、それだけしか言えなかった。



●●●



「えー、しばらく探索した結果から言うと、ここは皇国じゃねーな、うん」

「…………」

「それどころか、『マジック』ですらない」

「…………あの」

「いやはや、まさかこんな形で戻ってくるとは思わなかったが、そう、此処こそが――」

「賢悟様、あの! 今は逃げるのに集中した方がよろしいかと!」

「そう! 此処こそが、俺の故郷の世界――『サイエンス』だ、こんちくしょう! あのクソ神野郎ぉ! 何処まで飛ばしやがった!?」


 青い制服の警察たちから逃げ回りつつ、賢悟は恨みを込めて叫んだ。

 賢悟とリリーの周囲には、奇抜な二人に目を奪われ、携帯電話のカメラを向ける若者たち。闇を許容しない、電灯の煌びやかな灯りの数々。油を燃やし、排気と共に動く自動車。

 溢れんばかりの科学が、この世界――『サイエンス』にはあった。


「ちくしょぉおおおおお! いかにも外国人という風情の未成年が夜の街を歩いていたら、そりゃ、職務質問からの補導コースだよな! まったく、日本の治安の良さには参ったぜ!」

「賢悟様、賢悟様! あの警察共、王国のそれより練度が低いです。ここは、仕留めた方が早いのでは?」

「国家権力に歯向かうと、色々面倒なんだよなぁ」


 とりあえず警察を巻いた賢悟とリリーで合ったが、それでも油断はできない。

 なぜならば、此処はサイエンス世界。魔法が、ファンタジーが存在しない科学の世界。法則の違いにより、リリーの魔術は全て封じられ、ボロボロの衣服から着替えることもできない。加えて、外見が日本人離れした美少女二人は、どうしても目立ってしまう。無遠慮な携帯カメラはともあれ、これではいつまでだっても警察から逃げ続けなければならないのだ。


「…………はぁ、とりあえず、ここならしばらくは大丈夫だろ」


 賢悟とリリーは、人の視線を掻い潜り、なんとか都市の路地裏に隠れ潜んでいる。

 だが、もっと大きな中心都市だったのならともかく、此処は地方都市だ。いずれは虱潰しに探し出されてしまうだろう。そして、戸籍が無い二人にとって、警察のお世話になるのは、とても面倒である。最悪、武力で脱出する計画も考えておかなければならないほどに。


「んー、入れ替わり前のツテが使えるかね? そうだったら、金さえ用意すれば、戸籍ぐらいだったら何とかなるんだが」

「……賢悟様のツテは一体何なのでしょう? 後、やけにこの街の歩き方というか、道を知っていますね? 何度か来たことがあるのでしょうか?」

「というか、此処は俺の故郷だな。都心からちょっと離れたベッドタウンでな?


 それなり田舎で、それなりに都会な街だが、特徴としては――」

 賢悟が言葉を続ける前に、野卑な声が二人の耳に入る。


「あれあれー? 美少女ちゃんが、こんなところにいるよー?」

「うっわ、マジかよー。これってあれ? やっちゃっていい奴?」

「おいおい、せめて、室内でやれよ」


 そして、二人が隠れていた路地裏へ、いかにも頭の軽そうなカラフルカラーヘッドのチンピラたちが登場する。ヘリウムよりも脳が軽いので、その内気球のように飛んでいく可能性も否定できないタイプのチンピラたちだ。

 そんなチンピラたちの登場に、賢悟は何処か懐かしそうな眼差しを向けて、ため息を吐く。


「はぁ、この通り、中途半端な不良気取りが湧いてくる。あんなこと言っているけどな? 実は童貞ぞろいで、足が震えているかわいそうな存在なんだ」

「ち、ちげぇし! 童貞じゃねーし!」

「はぁ!? 証拠とかあるんですかぁ!」

「お、俺たちはあれだし! やりまくりの悪だしぃ!」


 必死に弁明するほどドツボに嵌っていくチンピラたち。

 そんなチンピラたちを憐れみつつも、容赦なく賢悟は遠当てで全員の意識を奪う。完全に意識が無いことを確認すると、チンピラたちの懐から現金を抜き取り、軍資金を調達。後は、下半身を素っ裸にして、警察に変質者として通報のコンボを食らわせた。

 一見、慈悲が欠片も無いような対応だと思われるかもしれないが、これでも賢悟にとっては優しい方である。何せ、チンピラたちの誰も、目立った怪我を負っていないのだから。これが、異世界転移前の賢悟であったなら、確実にそれぞれの骨の一本は折っていたはずだった。


「やれ、俺も甘くなったもんだぜ」

「賢悟様は何時だって、優しい方ですよ」

「んー、優しいというか、甘いというかー。なんなんだろうなぁ?」


 自身の変容に首を傾げつつも、賢悟は当面の予定を組み立てていく。

 親切な方々による寄付によって軍資金は手に入った。ならばまずは、服装の調達を。できるならば、目立つ外見を隠せる服装を。

 そして何より、当面の宿が必要だ。

 ビジネスホテル程度なら泊まれる資金はあるが、未成年の外見二人は難しい。普通に通報されてしまう。できるならば、賢悟たちの事情を詮索しないような、そういう都合の良い宿があればベストなのだが。


「……あの宿は非合法だが……いや、駄目だ、この外見だと難しい……ええい、せめて俺が男の体だったら…………ん、待てよ」


 いくつかの考えを巡らせていく内、妙案とも呼べるものが一つ、思い浮かぶ。

 確実に、約一人に迷惑が掛かるが、それでも当面の宿はクリアできそうな妙案が。


「くくく、よし、どうせならドラマチックにやってやろう。憧れのシュチエーションから、思いっきり落としてやる」

「ああ、賢悟様がまた悪だくみを」


 にんまりと笑みを浮かべる賢悟を、リリーはいつも通り無表情に眺める。

 けれど、無表情なはずの横顔は、どこか嬉しそうだった。



●●●



 小野寺おのでら 喜助きすけは、ちょっとした英雄願望を持つ、どこにでもいる普通の男子高校生である。ただ、一身上の都合で、広々とした屋敷で一人暮らしをする羽目になっている。明らかに男子高校生の一人ぐらいには不要なほど広い屋敷であるが、半年ほど前までは、そこまで広くは感じていなかった。

 それもそのはず。

 なぜならば、半年前までは騒々しい仲間を引きつれて、屋敷へやってくる客人が居たのだから。


「…………はぁ」


 喜助は日課の積みラノベの消化を終えると、鬱々とため息を吐く。

 そして、椅子の背もたれに体重を預けたかと思うと、ぼそりと呟いた。


「あー、突然美少女が主人公補正を持って押しかけてこないかなぁ?」


 控えめに言っても、頭の病院を勧められるレベルで痛々しい呟きだった。

 だが、仕方ない。喜助は小柄で童顔、そして根暗で友達が皆無系の男子だ。必然とライトノベルやアニメなどのオタク文化に嵌って、ついつい魔がさしてこんな事を言ってしまうのも、仕方ない。それが思春期という物なのだ。頭の中に春がやってくる年齢層なのだ。


 もちろん、喜助も現実でそんな出来事が起こるはずがない、ということも知っている。知っているが、それでもついつい、つまらない現実に打ちのめされて、そんなことを呟いてしまったのである。


「は、なんてね? こんなこと、先輩に聞かれたら『きめぇ』って殴られちゃうぜ。いや、でも、そもそも……もう、先輩は……」


 現実逃避のためにラノベを読んでいたというのに、喜助は嫌な現実を思い出してしまう。どうにもならない、つまらない現実を。


「…………今日はもう寝るかなぁ……って、んん?」


 嫌な現実から逃げるようにベッドに向かう途中、呼び鈴の音が響く。

 それも、何度も。ぴんぽーん、と切羽詰ったように。


「ええっと、夜中だよね、今?」


 現在時刻は芯や十一時半ほど。到底、まともな来客が予想される時間帯ではない。


「…………」


 喜助は、かつて『先輩』から習った護身術を思い出しながら、恐る恐る玄関へ。そこには、玄関のライトに照らされた小柄な人影が一つ。


「あのっ、すみません」


 鈴の音が鳴るような美しい声が、少女の物であると気づくと、喜助は考えるよりも先に玄関の扉を開ける。


「どうしましたか!? 不審者ですか? 変質者ですか? 不良ですか?」


 喜助が住む町は、中途半端に治安が悪い。そのため、中途半端な不良が夜を闊歩し、良く補導されるのだ。ただ、その途中で女性に絡むたちの悪いのも稀にいる。喜助はそれを考慮して、素早く扉を開けたのだが……その瞬間、喜助は目を奪われた。


「いえ、そうじゃなくて、その…………とある人から、此処を頼れって言われて、その……」


 喜助の目の前に現れたのは、白髪の少女だった。

 頭からすっぽりと灰色のフードを被り、パーカーとジーンズという色気の無い出で立ち。けれど、そんな出で立ちでも少女のスタイルの良さは分かってしまった。いや、それよりも、何より喜助の目を惹くのは、その緋色の瞳である。大よそ、喜助が知る普通から逸脱した瞳、それに、何よりも惹かれて……そして、やっと少女の造形が絶世の美少女と呼んでも差支えが無い物だと気づく。


「…………っう」


 美しさで息が止まるのは、初めての体験だった。

 喜助はただ、目の前の存在に圧倒され、陶酔するしかない。


「そ、その、本当にすみません! 貴方を、小野寺喜助さんを頼れって言われて……だからその、しばらくここに置いてもらえませんか?」


 潤んだ瞳に、上目遣いという美少女のコンボ。

 それは女性経験の少ない喜助では、到底抗いようも無く、頷くしかない。

 いや、それよりも、喜助は現状巻き起こる、このラノベのような展開に戸惑っていて、それどころでは無い。混乱しながらも、「え? 俺って主人公だったの!?」と心が躍るような奇妙な感覚に襲われている。

 なので、喜助が取り繕うようにかっこいい台詞を吐き出せたのは、しばらく経ってからになった。


「事情はよく分からない。けど、尊敬する先輩からの教えでね。困っている女の子には、できるだけ優しくするようにしているんだ。まぁ、そいつが悪党だったら躊躇わず殴れ、というおまけ付きなんだけどね」


 喜助の言葉に、白髪少女は一瞬だけ目を丸め……その後、柔らかな微笑を喜助へ向ける。


「ありがとう、ございます。私、本当にもう、どうしたらいいのか、わからなくて」

「あはは、事情は知らないけど、とりあえず話を聞くよ。困っているのなら、ここをしばらく貸すぐらいだったら全然構わないし。なにせ、部屋はたくさんあるからね」


 若干早口になりつつも、何とか喜助は言葉を噛まずに格好つける。


「…………本当、ですか?」

「ああうん、本当、本当」


 だから気付かない。

 既に白髪少女は媚びるような上目遣いを止めて、口元に笑みを浮かべていることに。


「――――そうか、それはよかった。流石は、俺の『後輩』だ……なぁ、喜助」


 聞き覚えのある口調の言葉が少女の口から告げられたところで、ようやく喜助は違和感を持つ。疑問を感じる。

 そしてなぜか、喜助の思考は奇妙な跳躍をして、『有り得るはずの無い結論』へと至る。有り得ないはずなのに、真実であるそれに。


「…………えっ、『先輩』っすか?」


 唖然とした喜助の言葉に、白髪少女――――賢悟は満足げに笑って見せた。


「おうとも、久しいなぁ、後輩」


 こうして、世界を越えた再会は果たされる。

 ただし、一方が性別と肉体が変わってしまい、それに伴ってもう一方に消えないトラウマを刻まれてしまったが。

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